【ONE PIECE】天駆ける竜   作:柚木 彼方

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28.好きも嫌いも抱き締めて

トレーボルはなんとか引き留めた。

でも、時間がない。

重い体に鞭をうって、足を動かした。

 

走れ、走れ、走れ。

バッドエンドがくる前に。

後ろから追い縋る死神に、追い付かれる前に。

 

 

(お願い、間に合ってーー!!)

 

 

聞こえてくる銃声は、きっと気のせいだ。

消えてしまえ。雪にかきけされてしまえ。

この銃声は、きっと、バレルズ海賊団のものに違いないーーーそう、願っていたのに。

 

 

「ーーーロシーッ!!!!」

 

 

目の前に広がる光景を、信じたくはなかった。

 

けれど銃口から煙をくゆらせているドフィと、血を流して倒れているロシーを見たとき、私は心のどこかで「やっぱり」と思ってしまったのだ。

 

駆け寄って、息を確認する。

浅いけれど、まだ息はある。意識はないかもしれないだろうけれど、まだ助けられる。

 

 

「…ひどい」

 

「ひどい? 裏切り者に対する罰に、ひどいも何もねェ…」

 

「……家族、なのに」

 

「あァそうさ。…だがコイツは家族でありながら、おれたちを裏切った!! …アンタもそうだ」

 

 

銃口を向けられた気配がした。

それなのに、何も感じない私は、どうかしてしまったのだろうか。…いや、元々どうかしていたんだ。

 

包帯では抑えきれない血を流すロシー。早く、どこか病院につれていってあげなきゃ。助けなきゃ。

 

私よりずっと大きいロシーを抱き上げた。火事場の馬鹿力ってやつだろうか。重みを感じない。

 

 

「…おれが逃がすとでも?」

 

「……どいて、ドフラミンゴ」

 

 

初めてってくらいに呼んだ愛称以外の呼び方に、ドフラミンゴは少し眉を動かした。

動揺してるんだな、と思った。それ以外になにも感情は浮かんでこなかったけど。

怒りに支配されるって、こんな感じなのか。不思議。

 

 

「シャク」

 

 

雪の中に隠れていた大蛇が姿を現したことで、ドフラミンゴファミリーが一瞬退いた。その隙は見逃さない。

シャクの背中に手早くロシーを紐でくくりつける。

 

 

「ッア……!」

 

 

胸を貫く弾丸は、気にしない。今は関係無いことだ。

朦朧としかけた頭でくくりつけたロシーに掴まって、シャクと共に斜面を滑り降りる。

後ろからファミリーの怒号が聞こえてきた。……何発撃たれただろう?

 

 

「待て!!!」

 

 

ドフラミンゴの怒号のような、それでいて悲鳴のような声が聞こえてきた。

 

可愛い可愛い私の天使。……そんな風に、今は呼べる状況じゃないけれど。

 

 

「っ、ローに必要なのは恨みじゃない、悲しみじゃない!!! 愛されること、ただ、それだけなのよ……っ!!」

 

 

ドフラミンゴファミリーに最後の力を振り絞って叫ぶ。

ドフラミンゴの能力からの脱出はシャクに任せた。

 

 

「ーーーあなたたちにローは、渡さない!!!」

 

 

血を吐きながら、叫んだ。

ロシーを抱き締めてる手にもベットリとした血が広がってきて、焦る。このままじゃ海に飛び込んだあと、ロシーは助からないかもしれない。

どうにかできないだろうか。どうにか……。

 

 

「っうわ!!」

 

 

シャクが糸を咬み千切り、跳んだ。さすが、毒蛇。

少し遠くにとめてある船までシャクは泳いでくれるだろうけど、ロシーの命が危ない。

 

ーーー咄嗟の判断だった。何が起こるかもわからずに私は……

 

 

「“巻き戻し”」

 

 

そうして意識を手放したのだ。

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