砲撃の音に噛み砕かれて、今にも消えてしまいそうな泣き声が、ミニオン島に響いていた。
止まることを知らない、この世界のすべてを恨んでいるかのような声。
それはその声を発している少年の故郷が焼き尽くされた時より鋭く、悲しげだった。
この世に必ず救いはある。慈悲深い手はさしのべられる。そう、故郷のシスターが言っていたのを思い出す。
言う通り、優しい優しい人たちが、少年の前に現れた。
暖かい笑顔と心で、凍った心を溶かしてくれた。助けてあげたい、と泣いていた。何も知らないクセに、と迫害に怒ってくれた。それはこの世のすべてを否定しようとしていた少年の心を大きく動かし、世界に色をつけてくれた。
冷たい心が割れて、心臓が鼓動している感覚を、とても間近に感じられたというのに。
その人たちは、もういない。
少年を守って、きっと死んでしまった。
見てはいないけれど、声が出ていることが何よりの証拠。
昔は恩人にこの声で怒鳴り散らしていたくせに、今はーー声が出なければいいのに、と心から思う。
いつまでもずっと、あの人の魔法にかかっていたかった。
大袈裟な動き。派手なメイクに喜怒哀楽豊かな表情の彼は、まさにピエロ。
けれど彼はそんな滑稽なものではなく、人に本当の笑顔を届ける人だった。
そしてその姉、時折頭を心配するほど考えなしな彼女。
素直でまっすぐ、と言えば聞こえはいいが、自分を犠牲にすることに躊躇いのないおかしな女。
少年には生きていてほしいと言うのに、自分はすぐ命を捨てるような真似をする。
彼、彼女たちのそれが危なっかしくて、……幸せだった。
でも、もう笑えない。一緒にバカをして、笑うことは叶わない。
なぜなら彼らは、もうローの手の届かないところへ行ってしまったからだ。
ついさっきまでいちばん近い場所だったはずなのに、おれが行けなくなったとたんにそっちへ行くなんて、ひどい。いじわるだ。
だっておれは生きなくちゃいけないのに。
“安眠じゃ、おれの右に出るものはいねェ!!”
「……こら、さん…」
コラさん。安眠じゃアンタの右に出るヤツはいねェんだろ?
おれを寝かせてくれ。
何も聞かなくていい、何も思い出さなくていい。“凪”のように静かに、おれを眠らせてくれよ。
“ローを救って、ローを幸せにする!”
「レン、……さん…っ!」
早くおれを幸せにしてくれ。
おれはこんなに泣いている。全然幸せじゃない。
珀鉛病よりずっと、ずっと。胸が痛いんだ。
そこの雪陰から飛び出してきてくれよ。なあ。隠れてんだろう、どうせ。
笑って、…笑って、おれのところにいてくれよ。
「ーーうわ"あぁぁぁあ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!」
今だよ、今だ。今なんだ。
…今、信じられる人が欲しいんだ。
このままレンさんの言っていたように肝臓を治せば、きっとおれはもう、ホワイトモンスターなんて呼ばれない。
病院に行っても追い出されない。
肌を見ただけで怖がるバカも居ない。
なのに、
……なのに、あんたたちだけがここにいない。
“愛してるぜ!!!”
“あんたたちにローは、渡さない!!!”
それだけでこんなに寒いなんて、おれは知らなかった。
後悔しても、もう遅い。
遠く遠く、どうやっても手の届かない空へ、少年は哭いた。