「…えっと」
私にしがみついてなきじゃくる小さいロシーと、粥を持ってきたアオさん。その二人に囲まれて、まだ頭の整理ができていない私は冷や汗を流した。
正直、聞きたいことはたくさんある。あのあとどうやってここへ来たのか。どうしてロシーはこんなに幼くなったのか。その他諸々。
「聞きたいことが多そうだね。…いいよ、答えよう」
「ありがとうございます。…じゃあ、いいですか?」
アオさんが少し口角を上げたのをオーケーの合図と受け取って、私は口を開く。
まず、一体どうやって私たちはここまでたどり着いたのか。
だいたい、手袋はなかったはずだし、意識すらなかった。それがここまでこれる理由は…
「シャクさ。あの子がアンタたちをここまでつれてきた。そして、町についたとき意識を取り戻したアンタの弟…ロシナンテが、店までアタシを呼びに来たってワケ」
「シャク…」
「あの子は今、船で休んでる。ところどころ撃たれていたしね」
やっぱりか。
あの子は賢いから、私たちを助けるならここしかないと選んだのだろう。
船まで歩けるようになったら、ご褒美の魚をいっぱいあげよう。ありがとうといっぱい言おう。
さて、次に。ロシナンテについて。
「…これについてはアタシもわからない。けど心当たりがあるとすれば、アンタのリモコン能力…“巻き戻し”。これ以外ないと思うけど」
「使った記憶はなんとなくあります。あやふやに…人に効くかわからないけど、傷を治すくらいできたらなって。まさかこんなに巻き戻すとは思わなかったけれど…」
「年齢としてはだいたい12、3くらいだと思うよ」
アオさんが困ったように笑う。
「聞けば、元の歳は26だって? 半分遡ったのか、すごいね」
ロシナンテは照れ笑いつつ泣きながら頷いた。
自分に引っ付いてくる温かみを懐かしく思い撫でると、ああ、泣いてしまいそう。
弟たちの成長過程を見られなかったことが後悔のひとつだった私からすると、これはかなり嬉しいサプライズであった。記憶の中のものより少し成長しているロシナンテにだらしなく頬が緩む。
それからアオさんが私を回収して、町のお医者さんになんとか助けてもらった、という過程を聞いて、やっと私はこの数日間の状況を把握することができた。
……にしたってひどい。ひーふーみ、…軽く7発は体に穴が空いているし、呼吸する度骨が軋む。生きづらいなぁ、くそぅ。
点滴に繋がれたこの状態では満足に動けない、足に力が入らなくて歩けすらしない。
まったく不自由な体にしてくれたもんだ。お陰さまで体には銃痕が7つ残るだろうし、姉弟の間には決定的な溝ができた。オーマイゴッド。
「でも気を付けな、レン」
「気を付ける? 何に?」
「巻き戻しされて、巻き戻しが終わってるってことは今、ロシナンテは再び成長をしてる。成長期をまた迎えたりするってことだ。…元に戻っているからね」
ああ、そうか。巻き戻しをして私が意識を失ったから13年若返ってとまっただけであって、また再度成長しているのか、ロシーは。…と、いうことは?
「要するに、アンタが死ぬかロシナンテに早送りをかけるか、もしくは今から13年たったそのとき。アンタが塞ごうとしたロシナンテの傷は再び現れることになる」
「!」
ロシーが体を揺らした。そりゃ怖いよな、あんな激痛が再び現れることになるかも、なんて言われたら。
「また巻き戻しをすることは?」
「できないだろうね。悪魔の実はそんなに万能じゃないはず。やってみても構わないが…アンタかロシナンテに何らかのデメリットが生じることは確かだよ。特にアンタのような“時”に干渉する能力者は」
病人のそばだからか、キセルを取り出しかけてやめたアオさんの手は、行き場を失って宙をさ迷い、ベッドの上の私の手にそっと重ねられる。その手はどこか、汗ばんでいるような気がした。
「干渉することが許されるもの、許されないもの。…時の流れは人が干渉するべきじゃないものだ。今回は何もなかったかも知れないけれど、いいね、時なんて操るものじゃないよ。いつかおかしくなる時が来る」