「これからどうしようか?」
「そうだな…」
ベッドに腰かけてきたロシーを撫でつつ、これからについて話し合うことに決めた。
居場所を失い、敵対した相手の情報網がものすごい今、何でも屋を再開してしまうのは危ない気がした。
せっかく消息不明になっているのだ。自分達からわざわざ尻尾を出しにいく理由もない。
閉業かな、と笑った。お金は十分すぎるくらい貯まってる。これから二人で暮らしていく分には、困らないはずだ。
ああ、ローを捜す旅に出るのもいいかもしれない。けれど今私たちが接触して、3人まとめてドフィに見つかるのもアホみたいだ。
「姉上」
「ん? どうしたの? 何かしたいことある?」
「…おれやっぱり、ローのことが気がかりだ。今会いに行くべきじゃないのは知ってっけど、無事かだけでも知りてェ」
「……だよねえ」
さてどうしたもんか、と頭を悩ませた。
私だってローのことは気になるのだ。それでも慎重に動いてしまう。
「ローについては調べておくつもり。…それより今は、私たち。今ここで大きく稼ぐような必要はないから、おとなしくしていて問題はないけど、あんまりアオさんに迷惑もかけられないし」
「あァ。…住む家を決めなきゃな」
住むならどこだろう。北の海は選択外だ。ここの海はだいたいドフィの配下だから、居て良いことは何もないのだし。
やっぱり東の海かな。いちばん平和だし、住まわせてもらえそうな場所なら検討はついてる。
ドフィにも嗅ぎつけられなそうで、尚且つ安全。さらに情報が手に入りやすいところ。
そっとロシーの頭を撫でて、「引っ越す準備をしよう」と笑った。
昔もこんなことあったな。
「東の海に、とても平和な村があるの。そこに住もっか!」
「早いな姉上…」
「何事も迅速な行動が大事! ごめん、姉上今あんまり動けないから、アオさん呼んできてくれる? 話さなきゃ」
「仕事はいいのか? 姉上仕事が生き甲斐みたいなところあっただろ?」
「そりゃそうだけど、今やるべき! ってことでもないし…また落ち着いたら何か暇潰しやるわ。気にしない!」
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「良いんじゃない? いい判断だと思うけどね」
「本当ですか? えへへっ!」
引っ越すことをアオさんに伝えれば、すんなりオーケーが出た。
私は大して持ち歩くような荷物は持っていない。ちょっと黒の強いグレールートに浸ってたときに取り扱ってた悪魔の実ももう全て売り捌いてしまったし、品物は骨董品だとかそんなものばかりになってしまった。
基本お金は手元にあるし、貯金は船の倉庫に。
「東の海は平和だしね。それにアンタがいこうとしてるのはフーシャ村だろう? あそこはいいよ、のどかだ」
「ですよね! …そこにいる面倒なジジィはおいといて、ですけど」
「アッハッハ! そうだね。…決めたなら急ぎな。いつここにアンタの弟が嗅ぎ付けて来るかもわかりゃしない」
「こわいこと言わないでくださいよ…」
持っていくべきなもの…いや全部金品だけど、それを持って、ロシーを連れて、私はここを去ることに決めた。
もちろん傷は完治してないけど、のどかなあそこでゆっくり療養しようと思う。
「しばらくはここへ来ないほうがいいかもね」
「えーっ!? 来ていいときは連絡くださいよ?」
「ふふ、まぁ、そうだね…」
アオさんはここへ来たときとなにひとつ変わらない笑顔を私に向けた。
ここへ来て早18年。永遠の別れではないだろうが、ここを離れる時が来てしまったことを心から悲しく思う。
最後に、と甘えるように抱きつけば、いい香りが抱き締め返してきた。
私に居場所、生きる術、仕事…全てを与えてくれたこの人は、第2の母と言っても過言ではないだろう。
「……また戻っておいで。ここはいつでもアンタの家さ」
「…っ、はい」
ロシーの手をそっと握る。
ここにはじめて来たときは一人だった手が、今ではふたりぶん。
にこりと笑って、ドアノブを捻る。ドアを開ければ、そこは東の海ゴア王国フーシャ村。
「ーーー行ってきます!」
「…いってらっしゃい、レン」
光輝く新生活へと、私はーー私たちは、足を踏み出した。