1.新生活、はじめました
「わぁ、いらっしゃい!」
「あーっ、マキノちゃーん!」
バタバタと居酒屋に現れた私たちを見て嬉しそうに微笑んだ若き店主に、思わず顔を綻ばせた。
時は数分前、北の海からここ東の海へとやってきた私たち姉弟。私たちはぜひここの村に住むため、この村の情報通でありそうなマキノちゃんを訪ねていた。
グラスの当たる音と、あんまり品のない笑い声。それでもここの居心地がいいのはなぜだろう。
緊張しているらしいロシーをつんと小突いた。かわいい。
「レンさん、今日もお仕事? ガープさんってば容赦ないんだから、もう…」
「あはは…ガープさんに容赦がないのは認めるけど、今日は違うんだ。仕事じゃなくて、完全な私用」
「私用? 珍しい! ついでに良かったら寄っていって!」
嬉しいお誘いに深くうなずくと、「ここに家を紹介してくれる人いない?」と聞いてみた。
しばらくキョトンと私の言葉を噛み砕いていたマキノちゃん。けれど少しして、言葉の意味を理解したのか、カウンターを勢いよく叩いて前のめりになる。え、ちょ、近い! 勢いすごい!
「うそ、ここに住むの!?」
「う、うん…ダメかな?」
「だめなわけない! だめなわけないわ! やった!」
うそ、やった、と騒いでくれるマキノちゃんに、今度は私がキョトンとしてしまった。まさかこんなに喜んでくれるなんて。私が住むことで喜ばれたのはドフィ以来…あれはどうなんだろう、半ば強制?
とにかく嬉しいらしいマキノちゃんは私の手をひっつかんでぴょんぴょん跳ねた。あぁ、可愛い……。
「あ、この子は…えと、弟のロシナンテ」
「弟? へえぇ、想像してたより幼いんですね?」
「ま、まぁね! あはは」
「よろしくお願いします、…マキノ、…さん?」
ロシーとしても自分より年下に継承付けははじめてかもしれないけど、仕方ない。今は13歳なのだから。
ヘンテコ能力で13歳の可愛いショタに戻されちゃった実際は26歳の海軍本部中佐なんです~、北の海のボスみたいな凶悪海賊に潜入調査してたらばれて死にかけてこんな姿になりました~、なんて某高校生名探偵みたいなストーリーは通じないだろう。
それを説明するくらいなら、多少「お父さんとお母さん頑張ったのね~」感が否めなくとも素直に「弟です」と言った方がマシってもんだ。
可愛いわね、と言われて膨れっ面のロシー。でもそのあとにお姉さんに似てる、と言われて反応に困ったままキャンディを貰ったため、絶妙な表情で飴を舐めている。…そういうところが可愛い。
「空き家を持ってる人はいるわ。案内するわね! それから村長に挨拶にいって…あ、ルフィ大きくなったわよ! 外にいるから後で会いに行きましょう! きっとロシナンテくんも仲良くなれるわよ! それから…」
アツい。マキノちゃんがアツい。
よほど嬉しいのか、小さくスキップすらしながら居酒屋を放り出して家を持っている人のところへ連れていってくれた。大丈夫なの、お店。
…ああでも村の人しか居なかったみたいだし、大丈夫かな。いい人ばかりだし。
すると、話においていかれ気味のロシーが袖をくいくいと引いて尋ねてきた。
「…なァ姉上。ルフィ…って、やっぱり同い年くらいの子供だよな…?」
「そうよ。確か…6歳?」
「ベビーたちより下じゃねェか…うまくやれるかなァ……」
どうやらルフィくんとうまくやれるか不安らしい。まぁこの間まで子供嫌いを演じていたし、優しいロシーとはいえ今は自分も子供なのだ。どうしていいかわからないんだろう。
「大丈夫よ、ルフィくんいい子だし」
少し肩を強ばらせ気味のロシーの手を握りしめた。