「かあさまただいま!! ごめんなさい、お夕飯の準備手伝うのちょっと待って!」
「え、ええ。どうしたのレン?そんなにあわてて?」
「なんでもない!」
走ったせいか疲れている二人の弟たちに謝って、私は自分の部屋に飛び込んだ。大丈夫、まだ来ないはず。
私が天竜人だったとき、親戚の人から貰った宝石類。そして、ロシーが大好きな飴玉の包み紙。その包み紙に、宝石類を手早く包んだ。見た目はなにも、おかしくないはず。
そうしたら肩かけカバンにそれを詰め込んで、水やお菓子、…あと仕方ないから威嚇ぐらいに、とドフィから取り上げていた銃も入れた。
これで、なんとかなるはずだ。…たぶん、大丈夫。
(家族は、私が守らなきゃ)
きっとこれから来るであろう怒りと恨みの塊から家族を守るためには、私が頑張らなきゃ。
だって私は、お姉ちゃんなのだから。
(あれれ? おかしいぞ?)
そう決意を固めて早数ヵ月。
…なーんもない。いや、本当に。何もない。
気のせいだったのかな? いや、でもそんなはずは。
首をかしげまくっている私にドフィとロシーが不思議な視線を送ってくるけど、まあ気にしないで。
夕飯であるハンバーグがいい香り。でも、意識はそっちにいかない。ごめんなさい、母上。
「いただきます!」
「…どうかしら? 今日のハンバーグは美味しくできたと思ったのだけど」
ぱくっと一口食べてみて…ううん、ちょっと焦げている。まぁ、元々料理なんてしたことのない母上だったから、この進歩はかなりのものだ。
私も母上と一緒に料理をして、それなりのものは作れる。一応人が食べれるレベルのものは、だけど。
私の反応がイマイチなのを見て、母上は少ししょぼんとしてしまった。ご、ごめんなさい母上!
「お、おいしいよ母上!」
「本当に?」
「うん! ちょっとお焦げがあるところもすきー!」
「お焦げ? おかしいわ…今日は焦げていないはずなんだけれど」
「えっ?」
口の中にはほんのり、焦げ臭いのが広がっている。でも、母上は焦げてないって言ってるし…それに見た目的にも、真っ黒ではないし…むしろ、普通だ。
じゃあこれは、なんの臭い? と考えたとき。謎の寒気がつつ…と私の背中を撫でた。
あわててドフィとロシーの方を見る。ドフィもロシーも口いっぱいにハンバーグを頬張っている。…やっぱり!!
焦げ臭いとあんまり食べないドフィが、食べている!!
…いや、弟の成長を喜んでいる訳じゃなくて。問題なのはそこじゃない。
「私だけが焦げ臭いと思っているのでは」というところだ。…だとしたら、なぜ。
嫌な予感がして立ち上がる。行儀は悪いけれど、私の部屋へ急いで、カバンをひっつかんで辺りを見回した。
ーー焦げ臭い。家の中が。
そう気づいてしまった瞬間、私は外にいる大量の人の気配を感じてーー駆けた。
「みんな逃げて!! はやく!!」
「姉上…?」
「レン、何を…」
「家が焼けてるから!! 裏口から逃げて…っ!」
なぜ、という顔をしている両親を無理矢理に外へ押し出す。ーー案の定、家は人々のもつ松明によって焼かれていた。まだ全焼ではないが、家からはもうもうと煙が上がっていた。
(始まってしまった……)
慌て、不安げな顔をするドフィとロシーに「大丈夫だよ」と私は声をかけた。
その声が、震えないように気を付けながら。