落第騎士の転生先(凍結)   作:五月時雨

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今回ようやく、珠雫が登場します。
ここまで十話。短いですし、実はまだ原作一巻の半分にも届かないというヤバさでございます。
 UA30,000を突破いたしました。
 始めて一ヶ月も経たず、話数も十話と少ないのに、多くの方に見ていただいて嬉しい限りです。


黒鉄 珠雫

 

 

 

 どういうことだ。

 

 その思いで僕の頭の中は埋め尽くされていた。

 珠雫がここに来るのは、予想できていた。前世でもそうだったし、今世でも同じだろうと。

 

 でも、なんで―――

 

 

 珠雫が()()()()()()()()()()()()()()()固有霊装(デバイス)を掲げて、ステラ(ぼく)に懐かしむような笑みを向けた。

 

 

 

 

 

 

 始業式は前世と相違なく、クラスも一組で変わらなかった。折木先生は変わらず吐血したし。

 前世で僕がそうしたように、一輝が先生を保健室に連れていき、戻ってくると解散を伝えた。ここまでは、前世と全く同じだったし、日下部さんが来るのも予想通りだった。全く以て前世と同じ。だから、あの可能性を忘れていたのかもしれない。

 

 ステラの魂が、別の人に宿った可能性を。

 

 

 

 

__________

 

 

 

 「せんぱぁ〜〜いっ!!」

 

 ひしっ!または、ぎゅっ!と効果音がつけられるような雰囲気で、一輝に全力で抱きつく様子にステラは、こんな事もあったなぁ…と思う。

 一輝に抱きついてきたのは、日下部加々美。前世ではクラスメイトで友達、神出鬼没な新聞部部長その人だ。いつの間にか倉敷君との戦いをすっぱ抜かれたのはいい思い出だ。

 そんな加々美は、一輝と話してみたいクラスメイトの意を汲んで大袈裟な行動に出ている。無理矢理でも一輝との距離を縮めて、親しみやすい人であると周囲に知らせようとしているのだろう。その心遣いに、前世ではかなり困ったが。

 

 そうこうしている内に、いつの間にか一輝が女子たちに囲まれていた。取材させてください!とか言って加々美が抱きついているのが目に入る。

 

 と、

 

(なんか、つまらない……)

 

 もやもやするというか、ムッとするというか…端的に言って、面白くない。そんな、よく分からない感情の波に苛まれ、つい――

 

「良かったわね、()()()()で。取材させてあげたら?せ ん ぱ い?」

「な、なんかステラ、怒ってない?」

「べっつにー?抱きつかれて表情が情けないことになってる人になんて、何にも思ってないわよ」

 

 こうして一輝にあたってしまう。八つ当たりなのは分かっているが、どうしても思ったことがそのまま出てしまった。

 いやいや、胸を押し付ける加々美が悪い。これはきっと、昔の自分を客観的に見て自己嫌悪しちゃっただけだと、ステラは自分に言い聞かせる。

 

(はぁ…。一輝ってやっぱり、女の子の耐性が無いよなぁ。でも、()が跨っても驚いただけだったのに……)

 

 胸を押し付ける強さが増した。一輝はタジタジでまともに対応できていない。

 そろそろ助け出そうか。いやいや別に嫉妬なんてしてない第一精神は同じなんだからそんな気持ちを抱くのは色々ヤバイ。と、内心で捲し立てて理由とか理屈とか言い訳とかとかとか。

 

「ちょっとそろそろ―――」

 

 一輝を放して、困ってるわよ。そう鉄壁の理詰めカッコかりをして、救出しようとした時――

 

「おいセンパイ、オレたちともお話しましょうや」

 

 敵意を孕んだ粗暴な、獣の唸り声にも似た声がかかった。

 

(あぁ…もう。最近は前世の細かな事を忘れるなぁ。なんで彼が絡んでくるのを忘れてたんだろ)

 

 こんな事になるなら、もっと早く救出すれば良かった。というか、最近では前世にあった細かな出来事を思い出せない。デパートの解放軍や桐原君、倉敷君との戦い。今の時期から一番近い事柄で思い出せるのは、これだけだ。尤も、転生して15年が経ってなお、そこまで覚えていれば十分かもしれないが、ステラは気付かない。

 それは、目の前で繰り広げられる敵意むき出しの会話に集中しているからだ。今にも霊装を顕現して襲いかかってきそうな5人組に対し、一輝はなんとか宥めようと奮闘するも、彼らは聞く耳を持たない。

 

(これはまぁ、一輝がなんとかするかな)

 

 技術に関しては、前世の自分自身と相違ない力を持つ故に、ステラは心配しない。

 いつの間にか相手が霊装を構えていようが、黒鉄一輝を相手にするには荷が勝ちすぎている。

 

「先輩、私ちゃんと正当防衛だって証言するよ!だから、やっちゃってっ!」

「―――いや、その必要はないよ」

 

 そう、必要ない。何故なら

 

「霊装を出すまでもないわ」

 

 絡んできた真鍋を除く取り巻き四人を一瞬で()した一輝は、あろうことか机にあった消しゴムを天井に跳弾させて、真鍋の霊装であるリボルバーの機能を殺す。突然のことに反応できない真鍋は、そのまま猫騙しでノックアウト。鮮やか且つ極限まで手加減した一連の動きは、多くの学生を驚愕させた。

 

「あ、あれ。ステラ、………なんか教室の空気が冷たいんだけど…」

「そりゃ、限界まで手加減して()()なら、誰だってこうなるわ」

「でもこれ、ステラもできるよね?」

 

 確かにできる。前世でもやったし、今の五人の動きも普通に反応できる。

 

「確かにできるけど、今回絡まれたのは一輝だもの。手を貸しちゃ悪いかなって」

 

 ステラが、自分もできると言ったことに周囲が驚愕した、次の瞬間、

 

 パチ、パチ、パチ……………

 

 

 教室の入り口から、拍手が聞こえてきた。

 

(ついに来たか)

 

 ステラだけは、誰が来たのか察した。確信を持って視線を向けると、そこには廊下から差し込む陽光を背に、一人の小柄な少女が立っていた。

 短い銀髪に、淡い翡翠色をした瞳。

 全体的に色素の薄い容貌の、強く人を引きつける美少女。

 

「雑魚が何人いようと関係のない強さ。流石ですね。―――お兄様」

 

(あ、れ―――?)

 

 なんだ、これは……?ステラは何か、決定的な違和感を感じた。前世ではあった、全身から感じる儚さが無く、その瞳には、僅かに()()()()()()を感じる。小柄でありながら、その存在感はここにいる誰よりも――それこそステラにも並びうる程に大きい。

 何より、その身から感じる魔力が、前世のそれより()()()()()()っ!

 

「珠雫―――ッ!!」

 

 ハッとして、ステラは現実に引き戻される。

 容姿は、完全に珠雫だ。だが、一輝に抱きつくだけでキスをしない珠雫の中身は、決定的に違った。見極めが、出会い頭のキスという所が色々とおかしいが、それはさておき。

 兄と妹の感動の再会を周囲は邪魔をしないよう、只々眺めていた。ただ一人、カシャカシャしてる新聞部部長がいるが、ステラは軽く小突いてカメラを奪う。『兄妹感動の再開!二人の愛に迫る!』なんて書いてるメモもついでに。

 スクープがぁぁああ!とか言ってるが知らない。メモを破き、新しいページに『俺の腕でMOGAKE 鬼畜なルームメイトと過ごした皇女の密着72時間に迫る!』と書き込んで突き返す。端っこにすんごい小さく『現実に存在する人物とは一切関係ありません』と書くのを忘れない。間違いではない。前世の話だもの。

 鼻血を吹いて、特大スキャンダルきたーーー!とか言ってるけど、後で気付いてガッカリすると良い!

 

「すすステラちゃんっ!後で取材させてね!」

「ええ。良いわよ。事細かに詳細まで語ってあげるから」

「やったーーっ!!」

 

 鼻息荒く、絵文字にすれば( ´Д`)ハァハァとしてる加々美だが、全て嘘と知ったらどんな顔をするだろうか。百パー殺されるな。と思い、メモを最後までよく見なさいと言っておく。

 

 

 

 

 あ、崩れ落ちた。

 

 

 加々美と戯れるのはこれくらいにして、珠雫について考えねば。よくよく感じ取ってみると、魔力量はステラ自身の半分以下ではあるが、平均の十倍はあるだろうか。前世の珠雫は平均をやや上回る程度だったことを考えると、やはりかなり増えている。

 一輝との会話から少しずつ、その精神性を理解していく―――と。

 

(んんん………??)

 

 なんだろう。既視感にも似た、()()()()()()()()を感じる。いや、まさか。あり得るのか、そんなことが!

 まだ途中だが、《完全掌握(パーフェクトヴィジョン)》で観た珠雫の絶対価値観(アイデンティティ)が、ステラ(一輝)()()()()()()()()()()()混乱していた時、不意に珠雫がこちらを向いた。

 

()()()()()()()、ね?」

 

 その瞳には、()()()()()()()()()何かがあった。その口調に、瞳に、声音に乗る感情に、ステラ(一輝)は遂に確信する。

 

「はじめまして、で良いのかな?珠雫(ステラ)

こうして(この世界で)会うのは初めてだもの。それで良いと思うわ」

「君が、ここにいるなんて思わなかったわ」

「まだ混乱しているなら、これで分かるかしら。

 

ひれ伏せ。―――《(みずち)》」

 

 言霊と共に顕現するは、彼女の身長をゆうに超える斬馬刀。刀身には爬虫類のような蒼い鱗が全体的に広がり、自然と珠雫の周囲に霧が立ち込める。その霧は意思を持つかのようにうねり、捻り、翼を持つ胴体の長い東洋龍のようにも見える。

 

「あ、あははは………」

 

 どうやら、間違いないらしい。()を見て、こうして懐かしむ視線を向ける彼女は、間違いなく僕の知る黒鉄珠雫(ステラ・ヴァーミリオン)その人だ。

 でも、どういうことだ。彼女がここに居るのは事実だが、なぜ彼女がここにいるのかが分からない。だって、僕は死んだからここにいる。まさかステラも死んだのか?七星剣舞祭のあとの世界で。それとも、寿命を迎えてからここに来た?

 

「し、珠雫!ここで固有霊装(デバイス)を出すのはまずいって!というかなんで出したの!?」

「あたしがあたし(ステラ)であることの証明をするためですわ。お兄様」

「訳が分からないよっ!?」

 

 一輝が霊装を出しちゃいけないと窘めているけど、それで完全に分かったのだから珠雫はけろっとしている。

 

「でも、ステラは分かったのよね?」

「うん。……うん。分かった。何でかは後で聞きたいけど、とりあえず、()()()()()()()事実は、疑いようもなく分かったよ」

「二人共、知り合いなの?すんごい砕けた口調なんだけど…」

 

 確かに、珠雫(ステラ)()も、前世とほぼ同じ口調で話していた。危なかった。

 

こうして(この世界で)会うのは初めてよ」

「つまり、僕との時みたいに、波長が合った、と」

 

 理解してないけど、分かってはもらえたらしい。詳しくは説明できないから、ある程度で納得してもらえてよかった。

 いつの間にか珠雫は霊装を消し、ステラと向かい合うように立つと、

 

「これから時間ある?少し話しましょう?」

「良いわよ。私も話したいことが山ほどあるわ」

 

 話そうと提案し、ステラは快諾。もはや一輝は置いてけぼりを食らい、二人で教室から出ようとする。周囲の呆然とした雰囲気もなんのそのだ。

 

「ではお兄様。あたしはこの人と色々と話し(認識を擦り合わせ)たいので、失礼しますね」

「今日は遅くなると思うから、夕飯は珠雫と食べてくるわね、一輝」

「う、うん分かった。分からないけど分かった」

 

 一輝の返事を聞き、二人は揃って教室から出る。身長が違うから歩幅も違うが、自然と二人の歩くペースは一致していた。

 

 

 

__________

 

 

 

「改めて、久しぶりね。一輝。いえ、この場合はステラと呼んだほうが良い?」

「ここなら誰もいないし、前世の方で良いよ。違和感は凄いけどね、ステラ」

 

 誰もいない校舎裏で、二人は対面する。互いに七星の頂きをかけて競い合った実力者。感知範囲は広く、周囲百メートルに人がいないことは分かっているし、その圏内に魔力反応もないので、何かの異能で会話が聞かれる心配もない。

 

「中身が一輝だって知ってるから、さっきまでの女の子口調は笑いを耐えるのが大変だったわ。似合わないもの」

「流石に、皇女が『僕』なんて使うのはまずいからね。その辺は、ステラの方が分かるだろう?」

 

 もしこの会話を誰かが聞けば、物凄い変な会話だろう。珠雫はステラのことを『一輝』と呼び、ステラは珠雫を『ステラ』と呼ぶ。口調も今までの二人とは比べ物にならない程だ。

 

「それで早速だけど、ステラはどうして、この世界に?僕は決勝戦で死んじゃって、気付いたらここにいたんだけど」

「あたしも同じよ。一輝の上半身と下半身をお別れさせたと思ったら、一輝の剣が私の心臓を貫いていたの。一輝が先に死んじゃったから記憶がないだけで、あの決勝戦は勝者無しで終わったのよ」

 

 まさかの事実発覚である。というかステラ(一輝)は、見事に真っ二つに斬られたらしい。考えただけで恐ろしいが、あの炎剣のことだ。切断面はしっかりローストされたことだろう。それはそれで嫌だが。

 

「じゃあ、最後の試合は引き分けなわけか」

「あたしとしても、こうして目覚めて再戦のチャンスを与えられたと思ったけどね」

 

 僕もできるならそうしたい。そうステラは思う。でも、七星剣舞祭の決勝戦はこの世界の一輝と戦う約束をした。もし試合相手が前世と同じになれば、珠雫とは当たらないだろう。その事については、あまり言及しないでおこう。

 

「そういえば、ステラの今の異能って何?」

 

 先程見せてきた、霧でできた東洋龍は、前世の珠雫では成し得なかったものだ。それができるということは、ステラの魂が《竜》という概念を引っ張ってきたとしか思えない。

 

「あたしも予想でしかないけれど、珠雫(うつわ)に適正のある《水》と、ステラ(たましい)が持っていた《竜》がうまく混ざったのか、概念干渉系《水龍》が、私の異能よ」

「それはまた…僕の天敵だね」

 

 炎で形作られた竜と、水で形成された龍。どちらが有利に試合を運べるかは一目瞭然だろう。その事に苦笑し、負けられないな、と思っていると、珠雫(ステラ)が視線を落とす。

 

「……………それでもアナタなら、不利もひっくり返してくると思っていたわ」

 

 その言い方に、違和感を覚えた。なぜ、過去形なのか。

 

「『思っていた』っていうのは、どういうことだい?」

 

その問いに、珠雫は断言する。

 

 

 

 

「言葉通りよ。一輝、()()()()()()()()

「え―――?」

 

 

 弱く、なった?そんなつもりは無かった。鍛錬だって欠かしたことはないし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 それなのに、珠雫はステラが弱くなったと断言した。

 

「じゃあ聞くけど、なんでお兄様との模擬戦、()()()()()()()()()()()()?」

「それは、一輝の力を見ることが目的で――」

「だからおかしいのよ」

「だから、それの何が、」

 

 途端に語調が強くなる珠雫の言葉に、ステラもまた釣られるように苛立ちが募る。だがそれは、次の一言に一瞬で冷やされた。

 

 

 

「昔のあなたなら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!」

「っ―――!」

 

 

「魔力が増えた?異能を使えるようになった?()()()()()()()()?」

 

 

 

 「何甘いこと言ってんのよ一輝!!」

 

 

 前世を彷彿とさせる大声は、周囲には聞こえない。珠雫が叫ぶ前から準備し、周囲を水のヴェールで包み込み、音を遮断していたのだ。ステラに気付かせることもなく。

 

「アナタ、何年命がけの戦いから身を引いた?」

「何年って―――あ………っ」

 

 言われて、漸く気付けた。前世の一輝(ステラ)は、僅か一手でも間違えれば致命傷の綱渡り。そんな試合を何試合、何十試合と続けてきた。

 それが、今はどうだ。

 一年?二年?いやもっと前から。それこそ、()()()()()()()()()()()()()()()。ステラの身に憑依したことを自覚し、初めて模擬戦をした時のことを思い出す。

 確か、確か―――

 

「異能の力だけで、勝った………」

 

 ステラとして生まれ直してからただの一度も、命懸けになるような綱渡りの試合をしていない。

 

「やっぱりね。気持ちは何となく分かるわ。あたしだって、前世では天才と持て囃される事に嫌気が差したから、日本に来たんだし。

 でもね―――」

 

 

 

 だからこそ、あなたの()は鈍ってしまった。

 

 

 

 その言葉が、ズンとステラにのしかかった。

 

 

 

 

 

 

嘘予告

 

 

 力ではなく、魂が弱くなったことを自覚したステラはもう一度、一から己を磨き直すことに決めた。

 

「最初に謝らせてください。桃谷先輩」

「な、んだよ、この魔力は―――っ!?」

 

「私の()()を以って、僕の決意(さいきょう)を取り戻すッ!」

 

 ステラの全身を、鮮やかな赤の魔力光が包み込んだ。

 

「《朱羅刹》」

 

 たった一秒。生存本能(リミッター)を外すという所業が。昔はすぐにできた集中が、今やたった一秒しか保たなかった。その一秒で試合を決めたので、結果としては勝ったが、(なま)ったことを再確認した試合。

 

 

 

 

 

 試合開始直後、緊張から心と身体が噛み合わなかった一輝は苦戦する。

 

「君には卒業がかかってるんだからさぁ?」

 

 誰もが嘲笑する中、ステラの声が響いた。

 

「―――黙りなさい」

 

 普通に話す程度の声量にも関わらず、会場全体に響き渡ったその声は、一輝の意識を身体と噛み合わせる。

 

「捕まえた。そして僕はもう君を逃さない。

僕の最弱(さいきょう)を以って、君の最強を捕まえるっ!」

 

 

 

 

 

「何だよ………これ―――っ!?」

 その会場は、異様な雰囲気に包まれる。気温がマイナスまで低下した場内は、小柄でありながら誰よりも巨大に見える()()に怯えた。

 雷使いの上級生は、低下した気温に震え、一瞬体を硬直させてしまい、それで全てが終わった。

 

「ここは、あたしだけの世界。《青色支配》」

 

 フィールド全体の水分を掌握した珠雫の支配対象には当然、()()()()()()()()()()()()()

 もはや、相手に勝ち目はない。血液の流れを強制的に操作され、身動き一つ取れず、抵抗すれば血流が止められる。

 

「り、リザイン……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようやくアナタと戦えるのね、ステラ」

「私も楽しみだよ、珠雫」

「「今度こそ、決着をつけましょう」」

 

 前世から磨き続けた珠雫(ステラ)と、完全に磨き直し、取り戻したステラ(一輝)

 幻想の生物をその身に宿す二人の怪物が今、激突する。

 

「《神竜化身(ドラゴニックプロモート)》――ッ!」

「《蛇龍変化》――っ!」

 

 その身を炎を纏う巨竜と水のヴェールを纏う巨龍に変化させた二人は、さながら神話のごとくぶつかり合う。七星剣舞祭の会場は既に役に立たず、二人はなおもはるか上空で戦う。

 

「《妃竜の葬爪(フレア・クロウ)》!!」

「《蒼鱗殻龍》」

 

 超高温の炎を纏った爪による攻撃を、龍の概念によって形成された防御鱗で防ぐと、

 

「《天壌焼き焦がす竜王の焔(カルサリティオ・サラマンドラ)》!」

「《終末を告げる海龍の息吹(ヤトノカミ)》!」

 

 本来は百メートルを超える焔の剣と同じく百メートルを超える超高圧水流の剣が、その威容をリュウの息吹(ドラゴンブレス)に変え、上空で激しくぶつかる。

 

 

 戦いは、まだまだ終わらない。

 

 

その頃一輝は、この神話対戦を繰り広げるどちらかと決勝戦をすることに、冷や汗をかいていた。

 

「これ、事実上の決勝戦じゃだめかな……?」

 

折角、王馬兄さんに勝って決勝進出を決めたのに、次こそ本当に勝てる気がしない一輝だった。

 

ちなみに、王馬くんもこの二人の戦いを見て震え上がっていたとか。で、悟った。

 

「《竜》か《龍》そのものを持つアイツらに、俺の《龍爪》では足りんか…。ふっ、それに、アイツ(一輝)にも負けられん。怪物を倒してこそ英雄(さいじゃく)なれど、弱者を踏み潰してこそ怪物(さいきょう)なのだから」

 

 同じ龍とはいえ、爪だけでは、ダメージは与えられても決定打にならないと思い、絶対価値観(アイデンティティ)から磨き直す。

 しかも一輝くんをライバル認定し、もっと己を磨き再戦を誓う。

 

王馬くん、強化スタート

 

 

うそだよん




はーいネタ切れー

珠雫ちゃんはステラちゃんでした。
 ロリっ子が巨大武器ブンブンするロマンを実現していただくため、このように。予想していた人はいただろうか。
 霧でできた龍。見た目の元ネタは金色のガッシュ‼に登場するパティの『スオウ・ギアクル』。わからない人はスオウ・ギアクルで検索。面倒なら、ドラゴンボールのシェンロンにコウモリみたいな翼をくっつけてください。似たような感じになります。但し、体色は白か水色。
 一輝とステラ(精神的ボーイズラブ)
 ステラと珠雫(物理的ガールズラブ)
 三人によるくんずほぐれつ という三つのルートが出現しました。三人の明日はどっちだ!

 原作のユリちゃん☆、真鍋が絡んでくる所は大胆カット。色んな人ので読み飽きてると思った。

実は弱くなってたステラ(一輝)
 これは最初から考えてました。いや、うん。誰だってさ、突然大きな力を持てば、油断もしちゃうんじゃないかな。模擬戦の決着の話のときに、ボツバージョンがあったのはこれが理由。
 独自解釈ですが、原作一輝くんの気質は全力の相手には全力で応えると思うんですよ。また、勝負事に真剣な所があると思います。だからこそ敢えて今作では模擬戦で、一輝らしからぬ『手加減による負け』を書きました。
 前世の一輝くんとしての精神がそのままであれば、『手加減して勝ちを譲る』ことは『圧倒的力の差で叩き潰す』事よりも酷いことだと、分かっている筈です。相手のプライドがズタズタですからね。
 それに気付けていないのは、ステラとしての生が彼の精神を、正確には黒鉄一輝としての気質を鈍らせたということです。
 最初は書いてる時に、感想で批評されると思いました。一輝らしからぬことをしてるので、『原作ちゃんと読め』『このステラは一輝じゃない』くらい言われるのを覚悟してましたが、言われずにここまで来てしまった…(;^ω^)
 ステラ自身も気付いていない無意識的なモノだったので、読者様に勘付かれないように、ステラの強さ(技術)を前面に、一輝をからかうので紛らわしました。
 からかいが多かったのか、ストーカーみたいになってしまいましたが(-_-;)
 模擬戦の話の辺り、特にステラの心象で『最初から、僕の敗北で決まっている』は一輝らしからぬものでしょう。全力の相手にすんごい失礼な考えですよね、これ。

 また、珠雫(ステラ)ちゃんに、そういったことが無かったのは、一輝の逆の現象ゆえです。最高峰の才能が、小さな器に閉じ込められてしまったために、油断も慢心もなく鍛え続けたのが、この珠雫となっております。ちなA級。


嘘予告
 嘘です。感想で、王馬くんのメンタルを心配する方がいたので乗っかりました。安心して!王馬くんはあの程度じゃへこたれなかったよ!
 むしろ一輝をライバル認定して余計に強くなって戻るつもりだよ!

 この辺で一度、ステラ編を切ろうと思います。
『転生先』の性質は、色んな人への逆行憑依ですので、そろそろ他の人もやろうかと。
 また気が向いたら続き書きますが、二、三人は別世界を書くかと。
 あと、多分誰も得しないけど、これの連載版をその内に書くかも。そしたらこっちは、どっかでルート分岐かな。
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