落第騎士の転生先(凍結)   作:五月時雨

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新章スタート。
ステラ編より前から考えてたけど、全然かけなかったキャラ。すんごい短い。掴みというか、何というか。

たぶんステラ編より需要ないな


黒鉄珠雫は見守りたい
プロローグと呼んでいいのか怪しい何か


 

 剣を振るう

 

 その動きは未だ稚拙で無駄も多く、決して綺麗とは言えない。

 

 だが、その姿は綺麗だった。

 

 才能がなくても。不当な扱いをされても。彼は全くに諦めていないから。自分という可能性を。

 

 その姿に、()()()()と感じて。

 

「―――おにぃさま…」

 

 かつて、自分を慕ってくれた大切な妹が使っていた呼称が、まだ少し舌足らずな口から洩れる。

 

「ん?どうしたの、()()()?」

 

 汗をびっしょりと滴らせながら振り向いた()

 陰ながら見ていて、小声で呟いたはずが聞こえていたらしい。その事に驚き、私は物陰に隠れてしまう。どうしてこの兄は、こうも私の声を必ず聞きつけるのだろうか。

 物陰で数秒蹲る。そうすることで平静を取り戻し、兄の前に出た。この頃からかつての面影を既に感じる。昔は若干幼い顔立ちが不本意ながら好評だったらしいが、今のお兄様は本当に幼い子どもの顔だ。いや、まだお互い小学校(リトル)ですらないから、幼いのは当たり前だけど。

 

「きょうも、たんれんですか?」

「うん。ぼくには剣しかないから。人よりすごく才能がないから、人よりたくさん剣を振るんだ」

「おにぃさまは、まどぅきしになるのですか?」

「それが、ぼくの夢だからね」

 

 昔、珠雫に言われたことを思い出す。『お兄ちゃんは魔導騎士以外なら何にでもなれるんだから、そっちを目指した方がいい』と。でもそれを私が、いや僕が口にするのは、かつての僕のあり方を自分で否定することになる。それだけは、しちゃいけない。

 かつての技術(ちから)は失った。この身体に、接近戦の才能はほぼ無い。この身体でできたのは、たった一つ。

 記憶の殆ども欠落し、断片的なままだ。

 

それでも、()()()()()()

 

 ()黒鉄一輝(ぼく)たらしめる意志と誓い(たましい)は。

 

「――なれますよ。おにぃさまなら、ぜったい」

「しず、く…?」

 

 その道の先を知っていながら、敗けた(死んだ)()とは違う運命を、辿ってほしいから。

 

「おにぃさまならきっと、どんな運命でも斬り裂ける」

 

 ほぼ全てを失ってなお、斬り開いた先(運命の外側)に立つ先駆者として、黒鉄一輝を肯定する。だがきっと私は、お兄様に何かを教えたり、過剰な協力をしたりはしないでしょう。

 

 

「己の(やいば)で運命を切り拓く姿を、しずくに魅せてください」

 

 教えずとも、黒鉄一輝は己の力で切り拓く。下手に協力するのは、黒鉄一輝には邪魔なものだ。

 

 

「英雄へといたるその道を、おにぃさまのすぐそばで見させてくださいね?」

 

 

 

 だから私は、お兄様の行く末を見守りたい。




珠雫ちゃんでした。
今プロットを作っているのは、珠雫編含め三人。しかもステラ編の連載版を加筆修正して作成中なので、次回は遅くなる。
今回のは珠雫編スタートって掴みなだけ

舌足らずな珠雫を妄想して可愛さに吐血しました

続け……

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