落第騎士の転生先(凍結)   作:五月時雨

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 まずは謝辞をば。

遅れに遅れてごめんなさいっっ!!m(_ _)m

 一ヶ月以上ぶりに筆を取ったので、どう書けばいいのかスッカリ忘れていた(今もまだ忘れてる)ので、こんなに遅くなった上に珠雫編じゃありません。

 と言っても、珠雫編を区切りの良いところまでやったら書くつもりのモノです。
 次回更新については、後書きと活動報告に上げておきますので、良ければ確認してください。


Re.落第騎士の英雄譚
唐突に挿入された何かだから読み流せ


 

「それで、僕が喚ばれたのは何故でしょうか」

 

 簡素ながら、どこか厳かな雰囲気の漂う部屋の中で、二人の人物が対面していた。

 

「そう身構える必要は無い。お前も先日で元服したのだ、まずは付き合え」

 

 一人は、齢七十は超えるであろう、長い白髭をたくわえた老人。手には年代物のワインが。飲みながら話そう。つまりはそういうことだろう。

 

「………先日の報告書の作成を」

「数日なら遅れてよい」

 

 一人は、元服したての黒髪で左目に眼帯をした少年。目の前で椅子に深く腰を落とす老人の言葉にため息を付き、グラスを手に取った。

 もとより、この老人が誘った時点で拒否権は無いようなものだ。少年も仕方ないと割り切り、酒に付き合うと決めた。この、(ざる)どころか(わく)の酒豪に、どれだけ付き合えるか分からないが。

 

「僕はあまり、強くないのですが」

「構わん。仕事の話もある、()()()()()()()

「三本もワイン開けるつもりですかっ。二杯で僕は十分です」

 

 が、流石に自制してワインボトル三本はヤバイ。その内に樽で飲みそうだなと思いながら、二本片付けるように促す。

 ちなみに、取り出したワインは全て超高級品だ。この部屋のワインは平均価格三十万は降らないので、これだけで百万はいくだろう。

 若者が何を言ってる、と呆れた視線を向けた老人は、仕方ないとばかりに二本を仕舞い込む。その姿は、孫に(たしな)められた祖父のそれだ。厳かな室内に、哀愁が漂う。

 

「最近、どうだ?」

「変わりないですよ。騎士団の者も良くやってくれていますし、問題ありません。そちらこそ聞きましたよ、また大国同盟(ユニオン)と会談だったとか」

「あぁ。最近、解放軍(リベリオン)の動きが怪しいのでな」

 

 飲みながら、ありふれた会話をする。とても元服したての少年との会話とは思えない。もう一度言うが、二人にはありふれた会話である。

 

「おっと、もう終わったのか……。いや、丁度お前呼んだ理由も思い出したので、そろそろ本題に入ろう。今言った通り、解放軍の動きが怪しくなってきている。それについて、調べてほしいのだ」

 

 ワインボトルの口を覗き込み、残念そうに本題に入ろうとする。

 祖父と孫のような雰囲気から一転、上司と部下のそれに変わる。そして老人からの依頼に、少年は心当たりがあった。

 

「解放軍が怪しい、ですか。それなら心当たりがあります。内部分裂―――いえ、たった一人の《使徒》による反乱(クーデター)です」

 

 そう断言する少年の姿に、老人はため息をこぼす。まさかとは思っていたが、既に調べていた事に呆れたのだ。そして、『たった一人の《使徒》』。つまり伐刀者(ブレイザー)とはいえ一人でそんな行動を起こせるのは…行えるような異常者は、一人しかいない。

 

「一応聞こう。―――誰だ」

 

「――《傀儡王》オル=ゴール」

「理由は……いや、聞くまでもないな。『つまらない』『飽きた』。この程度か?」

「恐らくは。そして彼は、日本の首相である月影(つきかげ)獏牙(ばくが)と《末端》を介して接触。利害が一致したようで、《傀儡王》は末端一体ですが、力を貸すようです」

 

 少年が騎士団で調べ上げた事を報告すると、老人は頭が痛いと米髪(こめかみ)を押さえる。だがそこには、僅かに少年を憂う表情が伺えた。月影獏牙が首相を務める日本は、少年の祖国だから。

 

「バクガめ……何が狙いだ?」

「挙がっている情報からの推測で良ければ」

「話せ」

 

 姿勢をただし、鋭い視線を向ける老人に向き直る。七十を超えてなお健在の眼光は鋭く、その躯は異様なまでの存在感がある。

 

「目的は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()。方法は、解放軍が瓦解した後に起こる勢力均衡の崩れに乗じた()()()()()()()()()()()()退()

「なんだとっ!?……いや、ヤツならやりかねん!」

「えぇ。月影獏牙の固有霊装(デバイス)である《月天宝珠》は過去と未来を映し出せる。そこでもし、日本が大戦の惨禍に呑まれていれば……彼は行動に移すでしょう」

 

 最初の頃の緩やかな雰囲気は既になく、張り詰めた空気が場を占める。

 

「加えて《傀儡王》ですが、そう遠くない未来に解放軍を壊します。そうすれば――」

「《暴君》の死を待つ前に勢力図は大きく変わる。バクガめ、同盟に鞍替えするつもりかっ!」

 

 今の異能者の社会は、大きく三つの勢力に分類される。小国が集まり、互いに支え合う国際魔導騎士連盟。先進国のアメリカや中国、ロシアなどが属する大国同盟(ユニオン)。そして、世界最大の犯罪組織である解放軍(リベリオン)

 この三組織が三大勢力として均衡を保ち、ギリギリのところで戦争に発展していないのが、この世界の現状だ。

 だがここに来て、解放軍の盟主である《暴君》の寿命が近づいている。もし《暴君》が亡くなれば、解放軍は崩壊する。そしてその構成員の多くは、裏で繋がりの深い大国同盟に流れるだろう。そうなれば、二勢力の均衡は一気に傾く。もう、第三次世界大戦は秒読みとなるだろう。

 そして、《傀儡王》というジョーカーまでいる。《傀儡王》が解放軍を崩壊させたとしても、時期が早くなるだけで結果は変わらない。

 月影獏牙はその大戦で日本という国が巻き込まれる前に、同盟に身を寄せることで自国が巻き込まれることを避けようというのだろう。

 しかもそこにはもう一つ、月影獏牙の意思を決定づけた理由がある。

 

「また、大国同盟のトップである《超人(ザ・ヒーロー)》エイブラハム・カーターはまだ若い。いくら貴方が強くとも、年には勝てない。それも、彼を計画に導いた理由でしょう」

 

 ようは今後の未来を考え、将来性の高い方に天秤を傾けただけだと、少年は老人に――《白髭公》アーサー・ブライトに言った。尤も、もし月影獏牙がもう一つ、この少年のことを知っていれば、彼の行動は真逆に進んだだろう。

 

「また月影獏牙は、連盟を抜けることに賛同を得るために、結果を欲しています」

「つまり、数年以内に表舞台に出てくるということか。いったい何処に…」

「ありますよ。年に一度、日本で開かれる祭典

 

 

       七星剣舞祭が

 

 その大舞台で、彼が集めた生徒たちで優勝すれば、連盟のやり方が間違っているという彼の考えが証明される。今はまだ、計画予定の学園の生徒を集めている頃でしょう。実行は二年後だそうです」

 

 調べていた事は良い。情報が揃いすぎているのも、まぁ良い。だが流石にこれでは、()()()()()()()()()()()ようではないか。騎士団で調べていたのだろうが、こんなことが可能だろうか。そう、アーサーは思う。

 

「我々としても、困っていた案件だったので、調べていただけです。ついでに、この件について()()()対応する用意も出来ています」

「心を読むな。お前の《完全掌握(パーフェクトヴィジョン)》は相変わらずだな。して、用意とは?」

 

 二人の間に、もはや細かな会話は必要ない。もう、十年近く孫として、騎士として少年を鍛えてきたアーサー(義祖父)と、卓越した洞察眼によって相手の絶対価値観(アイデンティティ)を掌握し先読みする少年は、以心伝心レベルで相手の考えていることが分かる。

 その事実に重大案件を話していながら、頬の緩みを感じるアーサーだったのだが、次の瞬間、少年の言葉に度肝を抜かれた。

 

 

 

「ぶっちゃけちゃうと、僕の騎士団員の一人、《天蠍(てんかつ)》のフィーアが勧誘されたんですよね。月影獏牙が作る、暁学園に」

「……………はっ?」

 

「ついでに《天秤(てんびん)》も付いて行って、《獅子》は解放軍に潜入して情報が入ってきますし、《磨羯(まかつ)》が逐一入る情報を精査していたので…どんな状態でも先手が取れます」

 

「はぁぁぁあああああ!?」

 

 遂に絶叫したアーサー。これはひどい。いやだって、少年の騎士団員が敵に勧誘されて、すでに二人は潜入してるなんて聞かされればこうもなろう。解放軍にも一人…しかも目の前の少年を除けば騎士団で正面戦闘力トップが潜入しているのだ。

 つい先日、重苦しい会談でまる一日を費やした自分がアホらしくなるくらい、少年たちの行動は何というかヤバかった。

 だが、彼らにそんなことができるのも『彼らだから』で説明がついてしまう。この少年がゼロから創り上げた彼のための騎士団は、それほどの実力を持つ。

 完全少数精鋭。少年自身を含め、たった十二人の星座を冠したコードネームを持つ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()。その実力は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()。国際魔導騎士連盟が数年間、ずっと秘匿してきた最高戦力達。

 そして、その中で最強として君臨するのが、この元服したての少年なのだ。総合的な戦闘力で次席が彼の一つ年下なのも、驚くべきことである。ずっと秘匿してきたのは、構成員の約半数が元服していないためであり、全員が元服した後に公表するつもりだった。

 秘匿は、かつては偶然の運命しか操れなかったが、今では世界のあらゆる運命を書き換える程に成長した《天秤》が行った。そのため、たとえ月影獏牙といえど、かれらの情報は一片たりともすっぱ抜くことはできない。

 

 アーサーは深い、それはそれは深いため息を溢す。確かに納得した。この騎士団が出た以上、何も心配はいらない。騎士団の半分の六名で大国同盟すら落とせるだろう彼らだ。

 

 そして先程、相手が行動を起こすのは2年後と言っていた。丁度いい。その頃には全員が元服しているし、この問題の解決を以って彼らを世界に知らしめよう。

 

 だが、それとこの、色々と徒労に終わったことによる苛立ちは別だっ。

 

「ならば、この問題は正式な指令とし、お前に命令を下す」

 

 長らく沈黙した後、唸るような低い声音で、少年に指令を出した。

 

 

 

「黒星騎士団団長 ()()()()《鬼神剣》イッキ・(クロガネ)・ブライト!

 来年から日本の騎士学園に入学し、本問題の解決に当たれ!」

 

「……………はっ?」

 

 

 

 精々公表した時に戸惑うがいい、我が孫よ!

 ケケケケケッ!

 

 

おわれ

 

 

 

 

補足

 

 実はずっとやりたかった話だけど、色々と纏まらずに投稿できなかった。『転生先』をやろうと思ったきっかけ。一輝くんは構成中の物語で1番のチート予定。

 

その2

 かいわれ…傀儡王が色々してる。原作じゃステラちゃんにご執心だったけど、ここではそれよりも早くから解放軍に見切りをつけてたり

 

その3

 気付いたら騎士団つくってた。何を言ってるか分からないだろうが、私にも分からん。気付いたらできてた。名称は適当。




 
 と言うわけで、久しぶり過ぎて過去最高に最低辺の駄文となりましてございます。

 ですが一輝→一輝は私が最初からやりたかったもので、ステラ編よりも先に構想だけありました。
 原作では《覚醒》を超えた神の《祝福》なんてものも登場してきたので、ここの一輝君がどこまで行ってるのか、ご期待ください。
 と言っても、これの続きは珠雫編の後ですがねっ!流石に読者様をこれ以上待たせるわけには……っと、次回更新について忘れてました。

次回更新ですが……


遅くなります(いきなり待たせる発言の作者の恥)

 いや、一応言い訳すると、まだ勘が戻らないというか、『導師を継ぐ者』と連載版ステラ編を流石に書かないとヤバイんです。
 なので、もう暫くは3作品を順番に、週1作品で投稿していく予定であり、次回は3週間後と言う大変申し訳ない状態であります。

 既にひと月以上待ってくださった読者の皆様方は、あと3週間くらい一瞬に感じると信じてます。信じさせてください心からお願い。
 それか2週間後に予定している連載版ステラ編を楽しみにしててください。加筆に加筆を重ねて仕立て直すつもりです。

 というわけで、亀より遅い投稿速度ですが、海より広い心の持ち主と私が信じてやまない読者の皆様、その心の海を揺蕩いながら、気長に待っていてください。

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