『痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います』でも投稿してますが、そちらとは文調がやや違うので感覚がズレてる。
『PS極振りが友達と最強ギルドを作りたいと思います。』
落第騎士の英雄譚を中心としたクロスですので良ければ。
前話と繋がりはありませんが、過去編の始まりみたいなものです。
むしろ前の話を飛ばしても良い。
だってこっちが始まりみたいなモノだもの。
そう、父から投げかけられた無機質な言葉に、『僕』は理解が及ばなかった。
いや正確には、
頭を駆け巡るのは、膨大な記憶の数々。十六年という、決して短くない
「話は終わりだ。自室に戻っていい」
状況を飲み込めず混乱した頭で気付けば自室に戻っていた。
僕の名前は、黒鉄一輝。
破軍学園一年のFランク騎士――――だった。
少なくとも僕の記憶は、あの七星剣舞祭決勝戦で途切れている。目の前のライバルを。愛する人を倒したいと願った最後の一刀。それは紛れもなくステラの命に届いた。だがそこで僕の記憶は途絶え、気付けば今だ。
この忘れもしない
半ば放心していたから気付けなかったが、身長も骨格も子どものそれだ。
「夢、なのか……これは」
それが一番納得の行く理由なのだが、明晰夢なんて生まれてこの方体験したことはないし、この世界はあまりに
何せ放心状態から意識が浮上した時、思いっきり転んだから。さすがに痛かった。痛みで夢じゃないと実感するとかテンプレすぎる。
「ここが夢じゃなく現実とすると、今の状態はいったい何だ…」
考えられる可能性は、今のところ三つ。といってもどれも荒唐無稽でありえないのだが。
一つは文字通り時間が逆行した。新宮寺理事長のような時間操作系能力者なら可能かもしれないが、日本にあの人を除いて時間操作の能力者は現状いない。
もう一つ。これもまた考えたくないが、僕の頭の中を巡る十六年の記憶、その全てが
それに、
「それにステラに抱いたあの気持ちだけは、幻想だなんて言いたくないしね」
そうなると、最後の一つ。
「可能性の世界、かなぁ…」
可能性の世界。もしも僕にもう少し才能があったら。もしもステラと出会わなかったら。もしもステラとの模擬戦の勝敗が違ったら。そんなあらゆる場面の違ったかもしれない無数の『もしも』の数だけ形成される世界線。いわゆる、平行世界と呼ばれるもの。その一つに僕が紛れ込んでしまったのかもしれない。
その存在は、有史以来まことしやかに語られているし、運命を司る
とはいえ僕はそんな能力者じゃないし、もしかしたら過去を追体験する夢だって可能性も残っている。今は深いことを考えても何にもならないことだけは明白だ。
「一先ず、今の僕の状態を確認した方が良いよね」
その確認作業は慣れたもので、早速自分の内側。内面に意識を向ける。
―side other―
次の瞬間、一輝は光に満ちた場所に立っていた。
正面には、どこまでも続く光の道があり、後ろを振り向けば、暗黒の洞窟がある。
鍾乳洞のような濡れた冷たい岩肌を覗かせるその暗黒に、一輝は見覚えがあった。
あそこが、本来自分がいた場所だと。
足元に目を向ければ四肢に巻き付いていた、暗黒の先に続く黒い鎖が千切れて散乱している。
黒い鎖。一輝自身が引きちぎった、
先程から一輝はどこか、自分の内側から湧き出る力を、充実感を感じていた。
それは、かつて持っていなかった力。あの決勝戦の終局において到達した領域。
それを認識するとともに、一輝の意識は現実のもとに引き戻される。
そして浮上する意識の間際、砂となり空間に溶ける鎖と、光の中に飲み込まれ、永遠に消えゆく暗黒を一輝は見た。
「……やっぱり、二つ目の可能性はなくなった、か。僕はあの世界で運命を超越した。そして、何らかの理由で
更に、消えていった暗黒の様子を思い、もう運命の内側に戻ることは無いと本能的に理解した。
自身に起こった。自分の意志で引き起こした現象の意味は分からない。光の中で感じた一輝自身の魔力は、確かに増大こそすれど、未だ平均の半分にも満たないものだった。だが、そんなことはどうでもいい。増大したという事実こそが重要であり、魔導騎士の常識を揺るがす大問題だ。
「秘匿、した方が良いよね…少なくとも、この現象を知る人間に接触するまでは」
例えば《比翼》のエーデルワイス。一輝が知る中で最強の剣技と体技を持つ彼女は、あの時には確実にこの運命を超えた
「そう考えると、KOK上位や世界的に有名な騎士もそうなんじゃないかと思えてきた…」
かつての記憶。あえて前世と呼称することに決めた一輝は、前世で有名な、それこそ一人で戦争をひっくり返せるであろう化け物たちの《二つ名》をいくつか思い出しため息をつく。
………この世界、怪物多すぎじゃないかな、と。
◇◆◇◆
「やっぱり夢じゃなかったかぁ…」
朝起きたら元の世界で元の体に戻っていた。なんて微かな希望は、起床とともに打ち砕かれた。
夜が明け、外から鍵がかかった、ベッドと小さな机以外何もない部屋。外側から補強された窓。そして己の幼い身体を順に見て、ため息を落とす。
時刻は早朝五時。予期せぬ現象に見舞われた心的疲労もあったはずだが、本能が前世の習慣を覚えていたらしい。破軍学園で早朝トレーニングを始めていた時間には目が覚めた。
「折角この時間に起きたんだから、色々と確認したかったんだけど…」
ベッドから降り扉のドアノブをひねるが、やはり開かない。
‘鍵掛かってるよね…’と口の端からこぼれ落ちた。激しい動きを室内でやれば下の部屋にいる人が起きるだろうし、朝早くから落ちこぼれが騒ぐなと怒鳴り散らすだろう。そうなると自然と今の一輝にできることは限られる。
「当然だけど身体能力、心肺機能は格段に落ちてるか」
昨日のうちに確認したのは自身の最奥。
結果として分かったのは、一輝の予想の通りのものだった。
身体能力は前世の半分にも満たず、心肺機能もまた、全盛期の三割程度。体力も相応に落ちているだろう。もっとも、今の一輝は五歳児なので相応なのだが。
「来てくれ、《
試しに自らの
元々が小型の霊装ならば大きさに変化がないこともあるが、一輝の霊装は日本刀。子どもが振るうには大きすぎるし、一輝の記憶が正しければ初めて霊装を握ったときは小太刀よりやや大きいほどの長さしかなかった。
だが、今一輝が霊装を展開すると前世で最も長い時を共にした姿のまま。一瞬ふらつきはしたものの、優れた体幹とバランス感覚を以って《陰鉄》を持ち上げるが、やはり子どもの腕力では持ち上げるだけで一苦労する。
だがそれもすぐに慣れるだろう。体力の強化にはうってつけの重さであり、この刀を今の身体で自在に振るえるようになれば身体能力はかなり向上するはずだ。
とはいえ、だ。一輝の身体は五歳。前世のような無茶なトレーニングをすれば身体が付いてこれず、将来的にも大きく影響が出る可能性がある。もちろん、悪い意味で。
「心肺機能は落ちて筋力も無い。見事なまでの無い無いづくし」
呟き、一輝は小さく丸っこくなった自分の手のひらを見つめる。
僅かな時間刀を握っていただけで、手のひらが引きつるような痛みと熱がある。
鍛えた身体は、完全に失われた。
だが――
「………ふふ」
今まで鍛えてきた身体を失ったにもかかわらず、一輝の表情に陰りはない。
いやむしろその小さな口は、力強い笑みすら浮かべていた。
「今まで以上に力を当てにできないのなら、技を研ぎ澄ませるしかないよね」
そう。
一輝はあろうことか、この状況すらも自らが成長する好機と捉えていた。
(結局、決勝戦の決着は分からない)
だが一つだけわかるのは、大切な人を残してしまったこと。
あれはだめだ。
愛する人を残してしまうことだけは、二度としちゃいけない。
そのためにはまだまだ、技量が足りない。
幸い、時間はたっぷりある。学園に入るまでに十年。かつて歩んできた道のりを、時間を、その濃度を。また一から。いやゼロから積み重ねていける貴重な機会。
剣技も《
しばらくの間、この身体と対話を続ければ、この身体に合わせた動き方も見えてくるし、模擬戦は難しいだろうが、自らが想像する動きと現実との齟齬も埋められるだろう。
まずはそこまでを――半月でクリアする。
そこから、
(ははっ…やることなんて沢山あるじゃないか!)
かくして黒鉄一輝は、この生まれ直しを更なる飛翔の糧とすべく、誰より早く動き出す。
文字通り黒鉄家の朝の鍛錬が始まる前から。
一輝くんは一輝くんです。
ここからどうやって強化していくか、計画はあるけど文章にならないんだよなぁ……過去の情報が少ないし、あまり原作で出てない部分を捏造したくないので。
と言うわけでまだ『凍結』は消えません。
今回は少し溶けて水が流れた程度ですので。
今のメインは『防振り』二次です。
見た目エーデルワイス、才能倉敷くん、その他色んな作品からちょっとずつクロスしています。