ホントに需要ないから!
紅蓮の皇女は来日する
空港から一歩外に出た瞬間、無数のフラッシュが彼女の顔を照らした。中には報道のカメラも回っており、中継でその様子を日本全国にお伝えしていることだろう。時刻は朝七時。朝のニュース真っ最中である。
カメラに向かって薄っすらと
そんな事実があったことなど、誰も気づかなかったのだが。
空港の前には、一台のリムジン。現実でそれに乗れる人がどれ程いるかはさておき、彼女は故郷でも見慣れたその車体に、静かに身体を滑り込ませた。
「よく来たな。私は、お前を歓迎するぞ?」
中には運転手の他に一人の女性。スーツ姿の麗人だが、無駄にタバコを咥える姿が似合う新宮寺黒乃がいた。
「理事長先生、宜しくお願いしますね」
静かに、その長い車体が自身がこれから通うことになる学園――破軍学園へと向かい出す。
後方では取材班が、その様子を全国にお伝えしていた。
「い、今!ヴァーミリオン皇国第一皇女ステラ・ヴァーミリオン殿下が、破軍学園へと出発しました!」
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《
己の魂を《
《固有霊装》の形は十人十色千差万別。操る異能もまた然り。人でありながら、人を超えた奇跡。
一説には過去の数多くの権力者を始め、今では神話に語られる神々や生物さえ、伐刀者だったのではないかという仮設もある。この世界は遥か太鼓の時代から、伐刀者の力無くして成り立たない。
故に、力を正しく振るうための教育機関もまた、存在する。
『国際魔導騎士連盟日本支部旗下破軍学園』
日本に存在する七つの『騎士学校』の一つであり、これからステラ・ヴァーミリオンが通うこととなる学園。
東京都に東京ドーム十個分という広大な敷地面積を誇るそこは、かつて一年に一度の武の式典『七星剣舞祭』において優秀な成績を修めていた。
が、
「数年前から成績が低迷。今では七星剣舞祭でもなかなか勝ち上がることができていない。でしたっけ?」
走る車内から流れる景色を眺めながら、ステラは隣に座る女性に質問した。尤も聞いた全て、ずっと
「恥ずかしながら、その通りだ。だからこそ、この状況を打破すべく私が理事長として
「まぁ、私はなんでも良いですけどね。日本には来てみたかったですし、あの国にいても
昔ステラが言っていた事を言いながら、かつての記憶と擦り合わせ、少しずつ
「……そういえばヴァーミリオンの皇族は親日家が多かったか。お前もその口か?」
「えぇ。というより、私が日本に興味を示した事で、家族も――という感じですね。日本には理事長先生を含め、優秀な伐刀者が多いので、自然と興味を持ちました」
用意していた言葉はすんなりと口から出て、隣の新宮寺黒乃も納得の様子だ。
「なるほどな。なら断言しよう、こうして留学してきたことは正解だ、とな」
「学生騎士で私より強い人がいる、と?」
かつての人がそのままの実力だとするならば、今のステラよりも強い学生騎士はいなくなる。
「優るとも劣らない奴なら、な。そろそろ学園に到着する、降りる支度を整えておけ」
黒乃のどこか含みのある笑みを見て、ステラは誰の事を考えているか検討がついた。十中八九、《彼》だろう、と。
「わかりました」
前方に大きな建物が見えてくる。ステラはどこか、
「あぁ後、これがお前の寮室の鍵になる。相部屋になるが、構わないな?学年は同じだ」
「先輩と同室なら緊張したでしょうが、同学年なら問題ありません。………あ、理事長先生?去年までと違う体制を知りたいので、寮に荷物を置いたら、理事長室に行っても構いませんか?」
ステラは内心、言葉とは違う理由を思い浮かべながら、黒乃に問うた。時間ありますか?と。
「それくらいなら構わん。―――まぁ、他に来る理由が増えるかもしれないがな」
後半に小さく紡がれたその言葉を、ステラは聞こえない振りをしてやり過ごし、部屋番号に目を向ける。そこには、かつての自室と同じ番号が。
「…………ようやく、か」
不安と期待を膨らませた言葉が漏れる。
運転手が何を勘違いしたか「時間がかかって申し訳ありませんっ!」と冷や汗を流したことで、ステラの意識は弁解へ向かった。
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何が理由か、なんの因果か、因果なら紫音君ならやりかねない。なんて冗談を何十回何百回と考えた。
「いや、理由なんて考えても分からないよね」
分かるのは私が―いや、僕、黒鉄一輝が七星剣舞祭の決勝戦で命を落としたこと。そして本当に訳がわからないけれど、赤子として生まれ直したこと。他ならぬ
かつての記憶は幻想だったのか、今のステラとしての生は何なのか。僕としての意識が覚醒したときから、その疑問は尽きない。ただかつて、前世とも言うべき記憶の中でステラは
義父になってほしいと思った相手は血の繋がった父になったと理解したときは、かなりの衝撃だった。また、本当の意味で『あ、やっぱりステラのお父様だなぁ』と実感した。性格ソックリだもの。
「さて、荷物も片付け終わったし、一応制服に着替えて理事長室に行こうかな」
一人のときは、どうしても前世での口調が出てしまう。所々、女性的且つかつてのステラのように癖づいているけれど、根本のところはやはり、黒鉄一輝のままである。
「そういえば、僕とステラの出会いって―――」
この時、僕は完全に失念していた。前世での僕たちの出会いがとても、それはとても劇的であったことを。制服に着替えるために下着姿になった時、寮室のドアが開く音で、かつての思い出が急激に蘇った。
ステラ(一輝)ちゃんでした。
初っ端から需要ないね。精神的な面で見ると、一輝と一輝が色々していく……と思う。
この章の主人公は一輝。ヒロインも一輝(ステラ)。需要以前の問題だな。
続けられたら続く