後書きで皇室剣舞について裏設定を載せてあります。長いけど。設定厨の特徴です、仕方ないね。
設定ばかりよく思い浮かぶのに、圧倒的に書くための
設定にこだわりすぎた結果、自分でも良くわからなくなるという杜撰さ。矛盾あったら指摘してください_(._.)_
今回の一輝との模擬戦。僕は、最初から自身の扱える技術にいくつもの制限を掛けていた。
エーデルワイスの剣技、体技の不使用。
使う剣術は、
使う魔術は三回だけ。
魔力による身体強化をしない。
本来の能力である《竜》の力の不使用。
《
我ながらかなりのハンデを背負っていると思う。だがエーデルワイスの剣技と体技は理事長がレフェリーをしている時点で使うわけにはいかない。《竜》はそれこそ試合を一瞬で決めかねない。一輝として培った技術は使わず、ステラとして体得した技術だけで戦うつもりだった。
使う魔術も、最初から決めていた。《
他には絶対に使わない。
だからこの模擬戦の結果は、最初から僕の敗北で決まっている。
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ステラさんの使う剣は、さながら舞のようだった。まず、音がない。いや、剣撃の音はするけれど、着地や踏み込みの動作がまるで無重力を思わせ、次の動きに繋げる時に無駄な力が全くない。舞を意識したような一見無駄に思える身体動作は、目の前にいる
何より、つま先から頭、指先に至るまで、彼女の動き全てが優雅だった。剣舞。剣の舞とはこういうことを言うのだろう。
《
どんな相手にでも上を行き、先手を取るためにはどうすれば良いか。その答えとも言うべき僕だけの剣技。相手の剣技から枝葉を読み取ることで理を暴き、その場で欠点を是正した完全上位互換の剣技を作り出す。それが、《
だがステラさんの剣技…いや、剣舞というべきそれは、予想以上に研ぎ澄まされていて。
どんな技、コンビネーション、相手への対応があるのか等を暴くことはできた。だが、
「《
上位互換なんて作れない。彼女の使うあの型が、既に完成されているっ!事実として今、僕は彼女の剣舞を使っていてなお、攻めきれないのだから。
「当然よ!私の
「ッァ!!」
『すごい……模擬戦じゃないみたい』
『あぁ…まるで舞踏だ』
『あの留年生、皇女様と互角だぞ!』
確かに今、全く同じ皇室剣舞を使っている様子を観戦すれば、二人で
久しぶりだよ。こんな経験、《
互角?そんなわけない。僕は今でも食らいつくので精一杯だ。五分もの時間を要し、枝葉を読み取ってなお、完全上位互換は作れなかった。
剣の腕で圧倒されたのは、本当に久しぶりだ。
「ふふっ。楽しそうね、一輝」
「え?……ははっ、そうか。ああ、そうだね。剣戟で圧倒されたのは久しぶりだったから、どうにも楽しくてね」
互いの剣がぶつかり合い、その反動を利用して二十メートルほどの距離を取る。偶然にも、模擬戦を始めた初期位置へと降り立った。
僕は笑っていた。どうしようもなく、込み上げてくるこの感情が抑えられなくて、頬が釣り上がるのを止められない。
「楽しい、ね。剣術バカはどこまで行っても剣術バカなのかしら」
「ははっ。僕が剣術バカなら、ステラさんは剣術オバケかな?」
自分で言うのもなんだが、この年代で僕以上に剣術を磨く人は少ない。いないとすら思える。それだけの無茶をしてきたと思っているし、それだけの力があるとも思っていた。だけど……なにせ
「なにせ、それだけの才能を持ちながら、僕以上に努力を欠かさなかった。《
一体、どれほどの修練をすればその境地に到れるのだろう。一から剣舞を創り上げ、弱点を一つ一つ潰す。修正に修正を重ね続けた先の今が、どれほどの道のりの先にあるものなのか、僕には想像もつかなかった。
このままじゃ、良くてジリ貧。悪くてすぐにでも押し負ける。偶然にも流れの切れた今、僕の
そう思い、勝つための唯一の手を切ろうとする僕の前で、ステラさんが左の剣を鞘に納めた。
__________
思ったとおり、一輝は食らいついてきた。《
だが、このままじゃ『私』の最強も一輝の
そう決意し、僕は左の剣を鞘に納めた。
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「ねぇ一輝。これ以上続けても決着はつかないと思わない?」
………何を言ってるんだろうか。明らかに自分が優勢であるにも関わらず、そして剣で決着をつけると言ったにも関わらず、ステラさんは何を思ってそんな事を言うのだろうか。
「それにほら。観戦席の人達も、そろそろ飽きてくるでしょう?」
「………戦いにエンターテイメントを求める必要は無いんじゃないかな?」
「私の想像以上に、あなたは私に食らいついてきた。そのご褒美みたいなものよ。………最大限の敬意を払い、私の
不敵に笑い、宣言するステラさんに、流石の僕も理解した。
「次で決着をつける…ってことで良いのかな?」
「ええ。そして、私にも見せてみなさい。あなたが持つ、たった一つの強い輝きを――っ!」
『一輝』という名前に掛けて言ってるんだろうな、と考えなくても分かった。それに元より、僕にできるのは最初から一つだけ。
ステラさんが、一足飛びで観戦席との間を隔てる壁際まで飛び退いた。まさか、また《
ステラさんを中心に、膨大な量の魔力が、竜巻の如く吹き荒れる。それは炎という形に変換されずとも、自然と赤い魔力光を放っていた。
「蒼天を穿て、煉獄の焔」
《
『な、なんだこれぇぇえ!!』
『滅茶苦茶じゃねーか……っ。これで同じ人間なのかよ………!』
百メートルを超える太陽の如き光の刃は、あらゆるモノの存在を許さない滅死の極光。
これぞAランク騎士ステラ・ヴァーミリオンが誇る
一輝との剣での競い合いをやめ、
「さぁ………死に物狂いで足掻きなさい。あなたの実力で、敗北を受け入れた先にある普通の幸せを否定してみせなさい……っ!!」
敗北の先にある普通の幸せ、か。確かにここで敗北を受け入れ、魔導騎士になる道を諦めれば、ごく普通の幸せを手に入れることはできるだろう。
「妹にもよく言われたよ。『お兄ちゃんは魔導騎士以外なら何にでもなれるんだから、そっちを目指した方がいい』って。……確かにそうだ。ここで敗北を受け入れ、普通の幸せを甘受した方が身のため。僕には、魔導騎士の才能が無いから」
僕が魔導騎士になるには、
でも。今のステラさんの言葉はどうだ?こんな才能が無い僕に発破をかけ、妹にすら否定された魔導騎士への道を応援するかのように、
「は…はははっ!あぁ退かないよ、ステラさん。魔導騎士になるのは、僕の夢だから。今この場を降りることを、僕を僕たらしめる誓いが許さない」
だから、
「だから考えた。最弱の僕が最強に打ち勝つための方法を。僕が僕を貫き通すためには、何をなせば良いのかを」
《陰鉄》の切っ先を持ち上げ、勝敗より僕への試練を優先してくれたステラさんに感謝して。
「これが、その答えだ。
僕の
そう宣言し、全身から炎のように揺らめく魔力光を発する。それに呼応するかのように。
「《
光の刃が、振り下ろされた。
皇室剣舞(裏設定)
拙作の中では一切出てこないので、ステラ(一輝)ちゃんが創り上げた剣舞の設定です。
皇室剣技を基盤として、歴史ある流派から独自の技能まで、あらゆる剣技や体技を《模倣剣技》で習得し、皇室剣技に合わせて作り変え、組み入れたもの。
組み入れたのは前世を含む百を超える剣術や体術の他に、皇国で対戦した多くの伐刀者の技術。
剣技の中に舞のような動きを取り入れており、見惚れるほどの完成度で相手の判断を付きにくくさせる。
創り始めたのは三歳。魔力を暴走させたことが原因で、一時期は魔術より剣を振るった。まだ一輝としての記憶も断片的で、全身を大火傷したことが炎に対する恐怖心を煽り、剣に逃げたとも言える。
だが剣技に邁進するステラの姿を見て、パパさんが『ステラは剣なんか持たなくていいんじゃー!』と怒った結果、ステラは
パパさんが怒ったのは、さすがに三歳から剣技を磨くのはやりすぎと思ったかららしい。
皇室剣舞として認められたのは、ステラが八歳の時だが、型ができたのは七歳。前話で『十年近く〜』とあるが、事実は八年である。
七歳の頃には、一輝としての記憶は完全に蘇っており、《竜》を持っていたことも分かっていたため、完全にコントロールできるように魔術の鍛錬を始めた。
そして、この剣舞の最大の特徴は、
原作一輝の剣技が、様々な剣に先手を取る為に至った《無形の剣》であるならば。
拙作ステラの皇室剣舞は、皇室剣技を主軸に成長し続ける《無限の剣》。
本文にある一輝の“習熟している”やら“完成している”的な発現は、皇室剣舞を成す理の量を読みきれず、完全な模倣ができなかった。