落第騎士の転生先(凍結)   作:五月時雨

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今回のは少し読みにくいかも。
 ()内はステラの心情
 地の文は一輝よりの三人称
最後に今話の粗筋があります。
読みづらい人はそちらへ

投稿に当たり、章の名前を変更と、エイプリルフールネタを一番上に並べ替えました。


負けず嫌い

 

 その後ひと悶着あったものの、黒乃が「あとは若い二人で話したまえ。私はまだ仕事がある」と言って退室したことで、一応の落ち着きを見せた。

 今は一輝とステラの二人だけで居る。そして事ここに至って、一輝は重大な問題に気付く。

 

な、何を話せば良いんだろう…と内心で頭を抱えていた。

 

 机を挟んで対面して座る二人。黒乃がいなくなった途端に会話が終了したのである。だが、こうして悩んでいるのは一輝だけではなかった。

 

(どうやって話を切り出そう…)

 

 ステラもまた、悩んでいたのである。奇しくも二人は共に一輝。思考回路は基本的に同じであった。全く良いところがない。

 そうして、沈黙が数分続くと。

 

「あのさ」

「ねぇ」

 

「「…………」」

 

 (かぶ)った。話しかけるタイミングが一致した。やはり同じ一輝。期待を裏切らない。またも沈黙。傍から見たらコミュ障である。

 

「「えっと一輝(ステラさん)から」」

「「………」」

 

 譲り合いの精神を見せる二人。話が進まないが、片方が未来を歩んだ以外に魂が同じなため、仕方ないのかもしれない。

 

「じゃ、じゃあ、私から良いかしら?」

「う、うん」

 

 このまま何もしなければ話にならないと業を煮やし、切り出そうとするステラ。一輝としてもレディーファーストができて安堵した。

 今の二人の雰囲気を例えるなら、付き合いたてのカップルである。

 だが、そんな初々しい空気は何処へやら、唐突にステラが頭を下げた。

 

「えっと、ね。色々と謝らせてちょうだい」

「えっ、ちょっ、ステラさん?どうしたの急に」

 

 一輝は心底訳がわからない表情を浮かべるものの、ステラは顔を上げずに続けた。

 

「急じゃないわ。理事長室で、嘘とはいえ傷付けるような事を言ってごめんなさい。…模擬戦で手を抜いてごめんなさい。…さっきも、あなたの事情を理事長に勝手に聞いて……ごめんなさい」

(さすがに、慌ててたとはいえ言い過ぎちゃったしね…前世との齟齬がないかの確認もしたかったとはいえ、少し軽率だった)

 

 段々と消え入りそうな声でひたすらに謝罪するステラ。その声に、先程までの一輝をからかっていたような感情は見受けられない。だから、一輝も真剣に先程から気になっていたことを聞くことにした。

 

「………二つ、聞いても良いかな?」

「何かしら」

「一つは、理事長室で言ったっていう嘘。多分、同等とは認めてないってやつだと思うんだけど、それってつまり…」

「私は最初から一輝の事を認めていたわよ。特に、その精神性はエーデルベルク並みに高く買ってるわ」

「世界最高峰の山を例えに出すほどなんだ…」

「それとも、マリアナ海溝より深いって言った方がいいかしら?」

 

 キッパリと言い切ったステラの様子に、一輝は逆に呆れ返った。しかも次に出てきたのが一万メートルを超える深さの海溝だというのが笑えない。エーデルベルクが九千メートルを超えるのだから、尊敬度が増している。だが人は学習する生き物。ステラが浮かべる表情から、一輝は彼女なりの冗談だと分かった。

 

「言っとくけど、エーデルベルクは本気よ」

(こうして対面すると分かる。一輝が、そしてかつての僕が持っていた決意は相当なものだ。昔の僕は、それを誰かに肯定してほしかった気がする。だから僕が肯定しよう。自信を持てって)

 

 前半は本気だった。一輝から乾いた笑いがこみ上げる。

 

「あと理事長先生にも言ったけど、本音は一輝と戦ってみたかっただけよ。何かしら理由がないと、あなたは受けてくれないと思ったの」

「まぁ、僕には戦う理由がなかったからね」

 

 図星だった。いづれ戦わなければいけない相手であることは分かっていたが、理由も無しに戦う戦闘狂(バーサーカー)ではないつもりの一輝である。ステラもそれが分かっていたのが、「そう言うと思ったわ」と薄く笑う。

 一輝の境遇に怒って…なんて理由は最初からなく、あくまで後付けに過ぎないと、そう言ったステラに、模擬戦中に抱いた僕の感謝は何だったのかとため息をつくも、

 

「じゃあ二つ目。模擬戦で手加減したのは、ステラさんなりに僕の事を考えてくれた結果だよね?」

(やっぱり、聞いてくるよね…確かにそれは目的の一つだ。もう一つは、まだ前世と同じようにしたかったから)

 

 それが聞きたい二つ目だったため、躊躇なく聞いた。

 

「まぁ、理由の一つには含まれるわね。でも一応、皇室剣舞(インペリアルダンス)は本気だったわよ?他の理由は個人的なことだから、教えるつもりは無いわよ」

(前世とは違う結果にしてしまえば、僕でも予想できない未来になる。それに、ここで才能の力で勝つと、一輝が潰れてしまう可能性もあった。同じ僕だから諦めないとは思うけど、まだ完全にかつての僕と同じとは決まったわけじゃない)

 

「まあ僕も全部話せなんて言わないから、構わないよ。それにしてもあの剣舞、凄い綺麗だったからね。受けてて見惚れたよ」

「あ、ありがとう…。一輝こそ、不完全とはいえ私の剣舞を盗んだのは凄いわ。その前も五分も受けきってたし」

 

 共に剣を磨いている者同士であり、(一輝は知らないが)同じ魂を持つ者同士、剣の話になれば盛り上がる。最初の付き合いたてのカップル(コミュ障)はなんだったのか。

 

「《模倣剣技(ブレイドスティール)》は、僕の生命線だからね。どんな相手にだって確実に先手を取るために考えた、僕だけの剣だ。尤も、ステラさんの剣舞は見切るだけでも五分使ったし、超えることもできなかったけどね」

「あなたの観察眼があるからこそできる技よね。模擬戦の最中は、筋肉の繊維まで見透かされてる気分になったわ」

 

 模擬戦を振り返り、互いの剣技を称賛する。と、ステラがあることを思い出した。

 

「あ……私、まだ謝罪の返事聞いてないわ」

(僕からの話はこれで終わりなんだけど…一輝の話って、絶対に()()()()だよね…)

 

「えっ……あ、あぁ。そうだったね。つい剣技の話に行っちゃった。―――うん、良いよ。僕はステラさんのことを怒ってない」

 

 返事をもらうまでジーっと見つめてきそうな雰囲気のステラに若干気圧されながら、一輝は朗らかに微笑む。

 

「ありがと、一輝。私の言いたいことはそれだけよ。次は一輝、どーぞ」

(《完全掌握(パーフェクトヴィジョン)》で一輝の考えてる事が分かるからなぁ)

 

「あ、うん。―――ステラさん、さ。模擬戦で()()()()()()()()()()()()

「し、証拠はあるのかしら」

(もはや疑問系ですらない…いや、そう来ると思ったけどさ。てか今の僕の言い訳が証拠だね)

 

 若干挙動不審になりながら尋ねるステラに、一輝は笑いそうになる。自分をからかいっぱなしな人が、こうも狼狽える姿を見れば当然かもしれない。

 

「その言葉が証拠だよ、っていうのは冗談だけど。ステラさんほどの伐刀者(ブレイザー)が身体強化もせずに戦うなんておかしいだろう?それにステラさんさ、《一刀修羅》を使った僕の事、目で追えてたよね?最後の瞬間も、本当なら()()()()()()()()。」

 

 それは確信だった。ステラは一輝が振り下ろす直前、左手を伸ばしていた。《妃竜の双罪剣(レーヴァテイン)》の片割れがある、腰元に。

 確信を持って告げた言葉に、言い逃れはできないと思ったのか、ステラは降参の意を示す。

 

「降参よ、よく見てたわね。最初から皇室剣舞と魔術だけに決めていたのよ。魔術は回数制限まで設けてね」

(前世は魔力を節約していたけど、だからこそ魔力の制御力は高かった。正確には魔力を扱う際の集中力が。だから、この身体にある膨大な魔力で()()()身体強化なんてしてしまえば、《一刀修羅》に対抗できてしまう)

「それに素の身体能力同士でも、十分に私が押してたじゃない」

(まあ、全力でやらなければ良いだけなんだけど。僕の固有霊装(デバイス)がサーベル型になって速度でも互角だったからなぁ)

 

「ぐっ……確かに剣舞は圧倒されたし、ステラさんは二刀流だから手数でも負けたけどさ……。というか、魔術にも制限かけてたんだ。これもう、実質僕の負けじゃない?」

 

 魔術にまで回数制限を掛けていて、剣で圧倒されて、身体強化もしてなかった人に、勝ちを譲られた。それが悔しくて悔しくて……だからこそ勝ちたくて。

 今回は負けでいい。次こそはと思い、自身の負けを提案したのだが。

 

「それはダメ」

(ダメに決まってる。制限を掛けたのも手加減したのも僕なのだから、その結果僕が敗北したのなら、それは僕の過失だ。一輝の勝利は揺るがない)

 

 即答で却下された。どっちが負けかで譲らないあたり、『負けず嫌いとは』で哲学本ができそうである。

 

「本当は防御できていたのだとしても、事実として私が斬られた。それは変わらないわ」

(確かに、防御できたのは事実だ。でもあの瞬間、あのタイミングから防御するためには、エーデルワイスさんの体技を使う必要があり、使ってしまえば理事長先生から何を言われるか分からない。使うわけには行かなかったんだよね…)

 

 毅然とした態度で負けを譲らないステラの姿に、一輝は諦めた。できればステラの全力を見てみたかった一輝は、だからこそ、

 

「本当なら勝ってたのはステラさんで、実際に勝ったのは僕。だからステラさん、()()()()()()()()()

「え………?」

 

 勝負を預けることにした。ここでは決着はつけない。どっちが負けたかで言い合うなんて不毛でしかない。全力でない戦いの勝敗にも意味なんてない。ならば、ここでの勝利はいらない。そう、一輝は思っていた。

 

(予想外だ。中途半端に《完全掌握》をやっていたのもあるけど、()()()()()()()()()()()()()()()。やっぱり、微妙に僕たちとは違うのかな?)

 

 このステラの認識には、ある計算違いがある。それは、ステラ(一輝)自身。ステラ(一輝)は前世のステラの性格を基準に考えたが、ステラ(一輝)の行動は、前世におけるステラとは違う。ステラ(かのじょ)はそうと言ったら曲げない頑固さがあり、そのためかつての一輝(かれ)は折れるしかない。だが、ステラ(かれ)にその頑固さはない。そのため、一輝が受け止めるステラの印象も僅かながら変化し、こうして《完全掌握》にも誤認識が生まれてしまった。

 そう混乱している間にも、一輝は続ける。

 

「僕たちの決着は、正式な場所で決めよう。例えば―――七星の頂きをかけて」

 

 挑発的な物言い。今はまだ、及ばない。剣舞で負けた。手加減されていた。勝ちを譲ってもらった。でも、次は全力でやろうと。今度こそ、手加減も手心もいらない。七星の頂きをかけて死合おうと。

 模擬戦を持ちかけた際のステラにも優る獰猛な笑みを浮かべ、どこまでも挑戦的に。

 

 『次は負けない』と。

 

「ふ…ふふふっ。あはははははは!」

(あぁ、そうだ。違うのかもしれない。僕と似てるけど違う、いわゆる平行世界の一輝かもしれない。でもやっぱり、君は黒鉄一輝だ。自分を諦めず高め続けられる人だ。魔導騎士になれるチャンスの場を私達の決着の場にしてしまうほどに。だったら)

 

 笑う。(わら)う。(わら)う。どこまでも楽しそうに。嬉しそうに。誰よりも人間(さいじゃく)な存在が理不尽な怪物(ドラゴン)に挑むから。

 でもステラは知っている。英雄だから怪物を倒すんじゃない。怪物を倒した(偉業を成し遂げた)から英雄と呼ばれるのだと。

 何より、自分もかつて彼のように、決勝の場で戦おうと持ちかけたのだから。

 

 ゆえに、一輝の挑戦は正当なものだ!

 

「いいわ。今度こそ、全力で。決着の場では、殺すつもりで刃を振るいましょう。命の限り、戦い尽くしましょう。

その結果前世と同じ道を辿っても(あなたを殺してしまっても)、今度は悔いなんて残さない」

 

 突如、ステラの眼光が鋭いものに変わる。否。その瞳が、()()()()()ものへと変化した。紅玉(ルビー)の瞳は金色に変わり、爬虫類を思わせる縦のスリットが入る。

 一輝からは見えないが、身体のあちこちで紅い鱗が発現していた。それは、ステラが持つ概念の発露。強すぎる《竜》の概念が、ステラの意思に呼応するかのように表面化していた。

 だが、一輝は臆さない。むしろ、彼女の強い意思に引き上げられるように、身体のコンディションが上がる。今なら、もう一度《一刀修羅》も使えるのではないかと錯覚すらする。

 

「あぁ。その時は、僕も死力を尽くそう。僕ができる最弱(さいこう)の力を出しつくそう。その果てに、君を殺してしまったとしても、僕が歩みを止めることは無いからね」

 

 どちらが負けたかで譲らないほど、今回の戦いは不完全燃焼なものだった。だから誓うのだ。再戦を。全力を出し尽くした果てにある、決着を。

 今度こそ、完全な勝利を得たいから。

 ならば、

 

 

「「次に戦うまで、誰にも負けないでよ」」

 

 

 この二人は、同じくらい負けず嫌いだ。

 

 

 

__________

 

 

 

 互いに宣戦布告をしてから数分たち、ステラの瞳も元に戻っていた事に気付いたら頃、寮のチャイムが鳴り響いた。

 それは、八時を告げる合図だ。

 

「あっちゃぁ。大分話し込んじゃったみたいだ。参ったな」

「そういえば八時に食堂が閉まるんだったわね」

「食堂のこと、知ってたんだ。晩飯どーしよ」

「え、えぇ。日本に来る前から調べていたから」

(あぶなー、つい口が滑った)

 

 門限は九時だから、スーパーに買いに行こうかと考えるも、《一刀修羅》の後は筋肉痛が辛いので料理なんてしたくない。そう一輝が思っていると、

 

「私が作りましょうか?」

「え?いいの?」

「あんな後先考えない技使ったんだから、反動で動くのも辛いんでしょ?」

 

 よく分かってらっしゃる。今日初めて会ったはずなのに、もう十年来の友のように理解されている気がする一輝。

 

「門限も九時だから、早く買い物に行っちゃいましょ。これでも料理には自信あるんだから」

 

 なんとも興味のそそられる話である。女の子が自分から手作りしてくれるというのは、そういった気がなくとも嬉しいのだ。

 その辺、一輝も男の子なのだ!

 

「分かった。なら一緒に近くのスーパーまで行こうか。荷物持ちくらいするよ、ステラさん」

 

(むむっ。っと…なんか昔のステラの気持ちがわかった気がする。再戦を申し込んだりまでしたのに、いつまでも他人行儀じゃイヤだな)

 

「ステラ、よ」

「え?」

「これから一緒に生活するルームメイト兼ライバル兼友達が他人行儀なままじゃ気に食わないわ」

「えぇ……、それは抵抗あるなぁ。だってステラさんは本物のお姫様だし……というか、ルームメイトも友達もいいんだ?」

「むしろなりたいんだけど?というか、同室の人にお姫様扱いされるのは息苦しいからやめて欲しいのよ。正直疲れるわ。ただの友達扱いがいい」

(ただでさえ、『僕』(小市民)の意識が強いんだから、年がら年中畏まられると疲れる)

 

「ともかく!」

 

 ビシッ!とステラは人差し指を一輝の鼻先に突きつけて、

 

「ステラって呼ばないと返事しないし、一日一イタズラするわよっ」

「一日一イタズラってなに!?」

 

 怒ったような、でもどこか恥ずかしそうな可愛らしい顔で命令する。

 さすがにお姫様相手に呼び捨ては抵抗があるが、……本人が疲れると言って嫌がっているわけだし、と言い訳を重ねに重ねて。

 

「……………ふぅ。わかったよ、ステラ」

 

 結局一輝は、ステラの言葉に従った。

 というか、出会って以降、ずっと会話のペースを取れていない気がする。お姫様の話術パない。

 

「うんっ。じゃあいくわよ、一輝!暴漢に襲われたら、一輝が助けてよねっ」

「はいはい。

でも僕より強い人に言われてもなぁ…」

「ちゃんとエスコートしてって意味よっ」

 

 呼び捨てで読んだだけで、こうも嬉しそうに笑ってくれるのなら、これからもステラのことは呼び捨てで呼ぼう。

 

 一輝はステラの笑顔に釣られるように微笑んで、そう思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(これは、あなたの為の英雄譚(キャバルリィ)

怪物(わたし)を倒し、英雄と讃えられるまでの物語。

 

怪物に負けて(死んで)怪物になった『僕』が、

過去の自分に試練を課す転生譚(リスタート)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ステラ 『手加減してごめん!』

一輝  『いいよー、でも力半分だったね』

ステラ 『そんな分かりやすかった?』

一輝  『これやっぱ、僕の負けじゃね?』

ステラ 『いいえ!私の負けよ!』

一輝  『くっ…強情な』

ステラ 『そっちこそ!』

一輝  『じゃあ決着は持ち越そう』

ステラ 『次は全力で叩き潰してあげるわよ?』

一輝  『やってやんよー』

二人  『だから他の誰にも負けんなよ!』

 

___

 

一輝  『お腹空いたー』

ステラ 『私が作る!呼び捨てにしてくれたら』

一輝  『荷物持つよ、ステラ!』

ステラ (満面の笑み)

 

だいたいこんな感じ




『なんか昔のステラの気持ちが分かった気がする』分かってない。
最後にステラちゃん、変なこと考えてますが、深い意味はありません。たぶんきっと、今後の指針でも練ってんだろ。

多分今後は(良くて)週一投稿になります。
圧倒的に執筆力(はやさ)が足りないので多目に見てください。
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