最近ドールズフロントラインの二次創作を多数読み、ぶるぶると震えるものを感じて筆を執った次第です。お楽しみいただければ幸いです。
指揮官にはおよそ3話終了時点でなる予定です。
ハジメマシテ! 私、転生者! フォールアウトの世界にいると思ったら今ドルフロの世界にいるの!
……ぐらいのテンションがないとやってられない日常である。
あの日、トラックにふっとばされて即死したはずの私は、再び現代にて赤子として生を受けた。
海外在住の日本人夫婦の間に生まれたのはいいのだが、ケーブルテレビか何かによる日本人向け放送ばかり見ているために、ここがどの国なのかはさっぱりわからなかった。たまーにやってくる父の同僚と思しきオジサマ方は、拙いながらも日本語でコミュニケーションを取ってくるために判断材料にならない。
転機があったのは、両親がそろそろ幼稚園にでも入れるか、と話していた時期だった。幼稚園ってなーに、と無邪気を装いつつ、現地言語を話せないことにそこはかとなく不安を覚えつつも両親の話を聞いていたところ、突如テレビが日本語アニメから現地語緊急ニュースへと切り替わったのだ。
その時、父が、
「ついに始まったか……」
と、ぽつりとつぶやいたのをよく覚えている。冷静な父が半分取り乱したかのような様子は初めてだった。
あとから考えてみると、あの日、第三次世界大戦が始まったようだ。その後のことは特に記すべきことはない。6年続いた戦争は国というものと地上をズタズタにし、人類の生存圏は大きく狭まった。
第二の転機があったのは、私がおよそ15歳ぐらいの頃だ。
第三次世界大戦が終わった後、父が銃の訓練をしよう、といい出して、拳銃の扱いを習い、身のこなしを習い、そして電子戦のいろはを習った。父が何者か気になったが、戦争中も家族を安全に避難させ、その手の系統の技術を教えられるということは軍人か何かだったのだろう。
その日、私は退屈を持て余し、スーパーや商店に新入荷がないかチェックして回っていた。私がこういうことをするのはよくあることではあるので、店番のおばちゃんとだらだら話をして、何か周辺で不審なことや困ったことがないかを聞いて回る、いわば情報収集という名目の世間話であることはよく知られていた。新商品? 無論、そんなものはなかった。
大体の店を回り終え、帰るかな、と考えていたところ、集落の外から何か肌色の物体がのたのたと這いずって入ってきたのが見えたのだ。その時、私には衝撃が走った。
「け、ケンタウロスだー!?」
芋虫のような胴体から人間の手が足代わりにずらりと並び、胴体の先端からは腕のない人間の腰から上が生えて。さらにその頭部の口からは触手のようなものが何本も出ている、つまるところ人間がぐずぐずに溶け合ったようなキショいアボミネーション、それがケンタウロスだ。
後から考えてみればただの確率の低い偶然だったらしかったのだが、そこで私は勘違いをした。
ここはフォールアウトの世界だと。ナンバリングは3~4及び76までのみやっており、やったことのない欠番があることが、こんな場所が舞台の作品がどこかにあるのだろう、と片付けさせた。
さて、ケンタウロスの行動は単純だ。感づいた目標に向けてゲロのような何かを飛ばしつつ前進、近接打撃に移る。もっとも、前進速度は速いとは言えず、ゲロのような何かの射出から着弾までも長い。
ならば、一箇所に留まらず引き撃ちをしてやれば良いだけのこと。
父に与えられていた拳銃、後で聞いたが59式、マカロフのコピーモデルらしい、を引き抜き、訓練のときと同じように、撃った。拳銃弾では大したダメージではなかったようだが、連射して蜂の巣にしてやった。恐怖感はなかった。ゲーム中では、見た目がグロいだけの雑魚であったので、オワタ式プレイでも脅威に感じていなかったからだ。実際、威力が足りないとは言え、マガジン3つ分を叩き込めばあっさりと崩れ落ちた。
「隊長……その、娘さんに一体どんな過酷な訓練を……?」
「ん? 何かあったのか? 普通の内勤新兵向け訓練を一通りと、まあちょっと趣味で電子戦を教えただけだが?」
「えぇ……本当ですか? 娘さん、今日、街にやってきたE.L.I.Dを、恐ろしいことにあの59式一丁で撃ち殺してたんですよ!?」
「は!? え、アレ倒したの娘!? 何してんのぉ!?」
思い込みの力とは恐ろしいもので、銃器についての勉強と分解清掃等による実地でGun Nutを習得した気になり、さんざっぱらアボミネーション、今はE.L.I.Dというのだったか、それの小型の物を狩り回ってGunsringerとRiflemanを習得した気になり、父の銃器ロッカーをピックしてこじ開け、ついでにデータベースも漁りまくった。最近の銃器データの出処はここである。
つまるところ、転生チート気分だったのだ。いや、実際に戦闘能力が恐ろしく高くなったから転生チートでも間違いないかもしれない。なにせ、思い切り集中するとV.A.T.S.すらできたのだから。もっとも、Vault-tecは存在しないはずだから、オリジナルに置き換えてO.A.T.S.とでも言うべきか。軍人と弁護士の夫妻もPip-boy無しでV.A.T.S.できたのだ、私だってできない理由はない、と考えていた。
最終的に、魔改造したナタ一本でE.L.I.Dの首を狩ってただいまー、とやることができた。
ケンタウロス(偽)の頭を持って帰ったときの、父の呆れたような顔はよく覚えている。ついで、銃の扱いはお前の身を守るために教えたのであって、E.L.I.Dを狩りまわるために教えたんじゃない、汚染地域に踏み込んでお前がE.L.I.Dになったらどうする、と怒られた。あと、近接格闘を教えたのは誰だ、とも。
サーセン、反省してまーす。あと、格闘は独学でーす。
この歳でお尻ペンペンは勘弁してください、パパ様。マジでやりやがったらしくてしばらく動けなかったが、その状態にスリッパで追撃を噛ましてきたママ様にもお恨み申し上げます。
第三の転機は、そう、有名なあの蝶事件と、その少し手前の一件だ。
結局、父はPMCか何かの部隊隊長か何かだったらしく、企業に就職してサラリーを得る、という生活がもう一般的なものではなくなってしまっている以上、その娘たる私も部隊の下っ端として活動することになっていた。父や母、私が乳児の頃からよく顔を見せてくれていた父の部下達からも、女の子がそんな物騒な稼業に手を出す必要はない、と再三説得されたものの、私がプータローとならずに生活の糧を得る方法が他にあるのか、と問い返すと結局誰も対案を出すことができず、私は父のPMC部隊に加わることになった。
とはいえ、フォールアウト的超常現象クラスの戦闘能力を手に入れていた私には、数の暴力以外恐れるものは何もないと天狗になっていたのも事実。それが間違いだと気付かされたのが、蝶事件の少し手前の部隊ミーティングのときだ。
「お嬢が予想に反しまくって、保護対象どころか特記戦力になってるってのも事実なんスけどね。最近数の上で負けてることで、劣勢になってることがとても多いので、増員を希望するッス。……まあ、だいたいお嬢が蹴散らしてくれてるんですけど、お嬢に頼り切りってのも問題ッスから」
「増員、といっても今更新兵入れても、使い物になるまでがどうしようもな……。いっそ、戦術人形でも買うか?」
……戦術人形!?
そう、私は間違っていたことに、ここで気づいたのだ。
ここ、フォールアウトじゃなくてドルフロだ、と。アボミネーションのことを、エリッドとか変な呼び方するなあ、なんて暢気に構えていた自分にケツバットをかましたい。
「そうなると思って、検討済みっすよ。コスト面で考えるならば鉄血工造のLink拡大してあるものを購入するのがいいと思うッス」
「だめっ!」
思わず叫んでいた。鉄血の人形を購入するという意見が出てくるのならば、今は確実に蝶事件の前だ。暴走すると、被害が出るものが解っているものを購入する訳にはいかない。
「……お嬢? でも、I.O.Pの戦術人形未Link1体の資金で、鉄血はLink拡大したものが買えるっすよ?」
「それでもだめ、絶対にだめ!」
「え、お嬢、なんでっすか?」
「え、えっと……鉄血の人形は、メーカー製バックドアみたいなのがあるの。全部。いざという時にハックされそうなものは、絶対にだめ!」
割とでまかせだが、後に蝶事件が起きると判っていれば、それっぽいことは言える。それに、鉄血のインタフェースにアクセスしたら感染するんだったかの傘ウィルスの存在もあったような。これは詳しく思い出せなくてもどかしいが、とにかく鉄血のデータベースやらなんやらにアクセスしたAIデバイスはほぼ使い捨てになる、もしくは電脳を使わず人力ハックしろ、ということだ。
「え、マジっすか!?」
「……どこで掴んだんだ、そんな情報!?」
そりゃあ聞かれるよね!
アボミネーション、もといE.L.I.Dを狩りまわっていた時に、Vespidの残骸を見つけてハックして解析した時に気づいたということ、ついでに、ハックに使ったデバイスには逆にウィルスをぶっこまれて初期化する羽目になったということにさせてもらった。
で。
金額に渋る部下さん達に、いくら安くても反乱の可能性がある人形など意味がないと説き伏せてやってきたI.O.Pの戦術人形がコチラ。
「59式よ~今後もよろしくね~」
I.O.Pの戦術人形は、鉄血と違って取り扱う武器の名称がそのまま戦術人形の名称となっているのは知っての通り。
よりによって、私が初めて持ち、そして今もサイドアームとなっている59式がやってきたのだ。
ロングの髪にツーサイドアップ、メガネ。上端をベルト留めの紺色チューブトップワンピースに、内側にマガジンポーチを仕込んだ白衣。確かに見た目は可愛いが、なんというか部隊内で当然最年少の私よりも更に幼い外見、そう、若いじゃなくて幼い外見なのはどうなんだろうか。強いてあげれば私に似ているような気がするので、父が親ばかでもやらかしたんだろうかとぼんやり考えていた。
「おおー、可愛い子っすね。というか、まるでお嬢の妹のよう。特に胸のないところとかそっkほげえええええっ!」
「立ったまま死ぬ?」
UMP45じゃないが、とりあえず鼻を掴んで捻ってやった。
そして。
蝶事件の日がやってきた。
そして書いてみてわかった、他著者様方の凄さ。
投稿できる体裁を整えるまでに物凄く掛かった労力。
コンスタントに投稿できる方は本気で尊敬に値すると思い知りました。