人形指揮官   作:セレンディ

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忙しいの波は急にやってくるのが困りモノ。
はい、言い訳です……。

それはさておきe3-4クリアできました!
いるかわかりませんが、私の公開宿舎にクリア勲章掲げておきました。


進撃

 さて。

 

 お忘れかもしれないが、我がR08地区指令室の戦略目標は、クソマップを実効支配して補給路の確立をすることである。最初に一回、小規模な哨戒があったのみで、それ以降は全くの梨の礫。何故そうなのかはイマイチわからないが、こちらもステルス搭載のドローンで哨戒しているから、鉄血の哨戒部隊が来ていないことは断言できる。

 

「というわけで、制圧しちゃおう」

「なにがというわけかはわからないけど、制圧ってことはあの渓谷の狭いルートから先を、ってことだよねお嬢?」

 

 毎朝のブリーフィング。最近は農作業だの水の確保だのといった例えるなら内政に注力していたが、そろそろ軍事行動も起こさねばなるまい。

 

「USPコンパクトを回収した時の一件以来、鉄血のアクションがまるでないからね。それなら、こちらからアクションを起こして、奪い取れるようなら奪い取っちゃいましょう、ってわけ」

「そう……でございますね。本部から提示されている、作戦目標達成期限にはまだ余裕があると言えますが、不測の事態が起きませんとも限りませんし……」

「ま、そういうことね。もしかしたら大侵攻の準備してるのかもしれないし、もしかしたらE.L.I.Dの大繁殖でそれどころではないのかもしれない。繁殖するものなのか知らないけど。あるいは、もう、戦略的価値と奪取するコストが見合わないと見てるのかもしれない。全部かもしれないのだから、確定させる必要もあるし」

 

 カリーニンの言葉に頷き、ふんふんとさせつつプロジェクター(私作成)で壁に作戦図を大きく映し出す。

 

「まずは、あの狭窄路までのルートを制圧するわよ。ここまでは現状、今現在でも鉄血の姿は見られないから、制圧自体はさっくりと行くと思う。問題はこの狭窄路から先ね」

 

 レーザーポインターで示しつつ、先を見る。

 

「ぶっちゃけ、ドローンの行動半径を超えるんでここから先は不明。とりあえず私も同行して、狭窄路のど真ん中にセントリーボット付きの監視所を組み立てて、そこを拠点にその先の輸送路予定コースを制圧。後は適宜セントリーボットを配置して警備に当たらせつつ、支配半径を広げていくわよ。今の段階で質問はある?」

「ある」

「はい、CZ75、どうしたの?」

「セントリーボットでせめちまわねーの?」

「あれはセントリーの名の通り、防衛向きなの。あと、見りゃわかるけど他言無用の弱点があるから攻めるのには向かない。足もタイヤだし。歩けるけどくっそ遅いわ」

「わかった」

「他には?」

「あの……以前ここまできたような、二足歩行爬虫類型E.L.I.Dが出てきたらどうしたらいいんでしょうか……? 記録映像で見たっきりですけど、私が以前襲われたのとはレベルが違う気がするんです」

「あれなー……」

 

 さて、これは難しい。なにせ、ゲーム中でも不意の遭遇でもしようものなら場合によっては詰むクラスの連中だ。定番はV.A.T.Sで脚を破壊だったが、先日のアレは片脚を吹っ飛ばしても腕を使って軽快に走り回るとか悪夢のような代物だ。素早く両足を吹っ飛ばすぐらいしか対策が思いつかない。あるいは、陣地構築して人形総出で蜂の巣にしてやるか。

 

「とりあえず、出てきたら手脚を吹っ飛ばす方向で私が撃つわ。後は、みんなで蜂の巣にするぐらいしか思いつかないけど……セントリーボットの銃撃とミサイルを耐えたんだよねえ、あれ。もしかしたら装甲があるのかもしれない」

 

 嫌そうな雰囲気が広がる。それもそうだろう、この場にいる全員、徹甲能力を持たないのだから、本来は。

 

「そんな顔しなさんな、HGとARは全員銃器改造で徹甲能力もたせたでしょ? いささか反則気味のような気もするけど、手をこまねいてやられたくはないもの」

 

 軟目標ではないがガチ硬い装甲目標でもない、つまりは軽装甲な連中には対応できるぐらいの破甲は持たせられたはずだ。夜戦のクソウザイ砲台野郎も楽に始末できるだろう。

 

「まあそんなわけで、久しぶりの出撃よ! 気合い入れて行きましょう!」

 

 と、59式スタイルの私はキメ顔でそう言った。

 出撃は第一、第二部隊双方とも出撃。一時的にUSPコンパクトにセントリーボットやタレットの操作権を与え、HK45と一緒に指令室を守らせる。指揮はカリーニン。

 

「まあ大丈夫大丈夫、あのタレットの山を越えてセントリーボットをなぎ倒して来れるやつなんてそうそういないいない。プロテクトロンも数機出しておくから」

 

 と伝えたところ、やたらと不安そうな顔をしていたが、まあ問題はなかろう。あるいは今度はアサルトロンを作るということで。……射撃をするならロボブレインだが、さすがにあの脳みそドーンなヘッドパーツはヤバすぎるしな……。メスメトロンは誤爆が怖いし。

 

『アルファワン、無戦闘で地点一を占領』

『ブラボーワン、地点三を占領、地点二は包囲占領。同じく無戦闘』

『地点六を占領』

『地点七を占領』

『地点九』

『目標地点Aを占領。指揮官、第一目標をクリアしたよ』

「オッケー、私も急行するわ」

 

 クリアリングしながら占領地域を広げたので、配下の地域は遠慮なく移動できる、ということで廃品再生バギーでがーっと走り抜ける。狭窄路の手前まで一気に移動して、設営されていた簡易拠点にたどり着く。狭窄路に対して警戒を向ける人形たちを横目に、偵察用ドローンを出して狭窄路の向こうへの覗き見を開始した。

 ただの視覚情報でよいならすぐにも結果は出る。

 

「うっそだろオイ……」

 

 あまりの惨状に思わず声が漏れた。

 元のFalloutには、時折デスクローアイランドだのデスクローの楽園だの、デスクローの住処的なランドマークが存在する。そういう場所は、デスクローの巣があり、デスクローの卵を採取できる他、デスクローそのものもうろついていて時にガントレットの素材やブラックチタンを得るべく襲撃を繰り返すツワモノも存在した。ただ、現実のデスクローの多分アルファ個体はそんなサクッと収穫するように倒せる手合ではなく、真正面からぶつかるとなぎ倒されることを覚悟せねばならない。

 そんな、現実では悪夢としか言う他ないデスクローたちの(色んな意味で)愉快すぎる楽園がそこにはあった。後ろでドローンの画像を見ていた59式もあんぐりと口を開けている。

 全くもって手出しをしたくはないが、我々の任務はここの平定である。ガチやべえ。

 

「……とりあえず、することは決まったわ」

「撤退?」

「すごく同意したいけど、違う。狭窄路の出口に、コンクリと金属でバリケードを作って塞いで、相対しないで済むようにしてから上から狙撃」

「あたしたちもライフル担ごうか?」

「そうしてくれると助かるわ。とりあえず、一方的に蜂の巣にするだけなら、移動ターゲットでの射撃訓練と変わらないでしょ」

「え、ええ……?」

 

 

「あらよっと」

 

 どすん、という音とともに、少し前に重厚なコンクリートの防壁が現れる。

 

「もいっちょ」

 

 さらにコンクリートの防壁が。その後ろに、土台の高さを調節して作った、狙撃用の歩哨台とタレットを載せるための台。

 大型発電機をどすんどすんと並べ、エンジンの唸り声をBGMに伸びる電線からつながる先はレーザータレットとスポットライト。ヘビーマシンガンを置きたいところだったが、実弾防御がエライ値になってる可能性がある、というのが先日の防衛戦での見解だ。よって、多少威力が低かろうがレーザータレットを置くべきだろう、という判断。人形たちに配ったのは、半分がレーザーライフル、残りがプラズマライフル。レーザーライフルの耐久力のなさは折り紙付きなので、壊れたら次を取れと指示して予備も渡しておく。

 これでとりあえずキルゾーン形成用の陣地はできた。

 

「さて、後は、釣って殺して釣って殺して、巣を破壊して駆逐して、拠点を別の場所に移しながら、完全駆逐するまでヤるだけね」

「お嬢、その、重機の必要性って知ってる……?」

「知ってる。だが私には必要ない」

 

 頭が痛そうな人形たちをよそに、構築した陣地を背にしてふんぞり返る私。

 

 さて。

 長距離リコンスコープをつけたプラズマライフルを構え、皆で防壁の上に横並びになる。ざっと探して近いのから仕留めよう、ということで、もっとも近いデスクロー(仮)に狙いをつけ、リコンマークをセット。

 

「マークを付けた奴を狙うわよ。着弾確認後、総い……あ、いや、59式は周辺警戒、残りは着弾確認次第同じやつをとにかくレーザーライフルで撃って」

「りょうか〜い」

「了解!」

「ラジャー!」

 

 この距離からなら、前回のような非常識個体であっても、近づく前に仕留めきれるだろう。というわけで、脚を狙って……ファイヤッ!

 緑色の光球が勢いよく飛び、左脚をぶち抜く。ちぎれるには至っていないようだが、十分に重傷だ。追加で乱れ飛ぶ多数の赤い光線が着弾、左脚をちぎり取り、胴体にいくつも穴を開けるも、やはり致命傷には至らない。派手に発射音を立てて乱れ打ちしたので当然認識されて、ものすごい勢いでこちらに駆け出し始めるが、追加のプラズマに右足を切り取られ、倒れ込んだところをレーザーに連打されて動かなくなった。

 

「おや、意外と簡単にいったな。次」

 

 かなり騒いだつもりだが他の個体には気取られていないようだ、が、

 

「お嬢!!」

 

 ハイハイ気づいてますですよ。

 マチェットを抜きざまに久しぶりのO.A.T.Sを起動。引き伸ばされた時間の中、私に襲いかかって来ているのは、驚いたことに鉄血のハイエンドモデル、処刑人だった。確か刀で遠距離まで一閃するスキルを放ったところで、衝撃波がこのスローな時間でもかなりの速度で迫ってきている。一方、私に命中しかねないそれからかばうべく、59式のダミーが飛び込んで……ちょっとまて、あれメインフレームじゃないの!? あまつさえ、知らなかったからしょうがないが、処刑人のスキルにかばうはそんなに意味がない。

 とりあえず、覚悟を決めねばなるまい。59式がロストするなぞ許せるはずもない。

 59式に向けてVlitz、ぶん殴って動きを止めて、その瞬間私の胴体スレスレを衝撃波が駆け抜けて、発生する痛みを強引に抑え込んで再度Vlitz。切実にMED-Xが欲しい!!

 

 処刑人の刀を握った腕と、私の左腕が同時に宙を舞った。


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