目処が立ちましたので投稿します。
本日更新の1/2です。
404小隊の面倒をみる、つまるところ指令室から離れる任務を行う等のような、長期間離れることができなくなったということである。
ゆえに、最近は指令室内の設備拡充に時間を割いている。例えば訓練施設をアップグレードしたので、擲弾兵PPS-43は嬉々として通って模擬手榴弾を投げているし、適当に購入した映像アーカイブのデータを談話室のNASに放り込んでおいたところ、カリーニンが引っかかって映画を見ながら泣いていた。地下から聞こえるウィーーーーーンという音の二重奏も欠かせない。もしかしたら三重奏も必要かと考えていたが、意外とどころかかなり強力な核融合発電機は、インジケーターによると一台で指令室の消費電力を賄うまでに至ったので、宿舎におけるドライヤーの使用を解禁した。余剰電力でバッテリーのチャージも行っている。なお、本部にはこいつの存在は内緒だ。もっとも、撤退するなら一瞬で解体できるのだが。やろうと思えば5分で指令室をただの更地にしてみせよう。
404小隊の面々については、まずは銃器の改造が完了した。G&K所属である以上、例えば404小隊の面々の口座内容を頂戴するとかボディを完全分解して売っぱらうとかそういうのはデメリットだらけでやるメリットが皆無に近く、加えて私が説明しては余り意味がないので、45がハッキングしてきそうなところにそれっぽいテキストファイル記載の日記としておいておいた。それ以前の日付のはアーカイブ済みとして中身が漫画の圧縮ファイルをそれっぽいデータ量になるようにして並べておいたので、まあ大丈夫だろう。中身は見られたらバレるので、「よくぞ気づいた!」とテキストファイルを一つ放り込んである。覗かれたログが残ってから数日経っても45とかが文句をつけに来る様子はなかったので、アーカイブを解凍できなかったのだろう。
404小隊の懐柔は順調に進んでいる。昨日は資材収集の仕事を代わりにやってもらうことで、酒を提供した。なお、資材収集の仕事内容を聞いたとき、例の産業廃棄物処理場からジャンクを持ってくる仕事、とだけ聞いて楽勝ね、という雰囲気を出していた416だったが、現場を見て私の渡したガスマスクの意味を悟ったらしい。二度とやりたくないとぼやいていたそうな。まあ酒や嗜好品がほしけりゃ何度でもやってもらうんですけどね!
一方で、銃器以外の改造提案は受け入れられなかった。運動能力や耐久性については魅力だが、整備性が問題だそうだ。確かに、整備が私しかできないのであればこの辺りの近くに作戦行動範囲が限定されてしまう。出張サービスをしてもよいが、それも常に受けられるわけではないだろう、ということだった。逆に、銃器の修理は自前でできるのでどうとでもなるらしい。部品交換すると段々とストック状態に性能が戻っていくだろう。訪ねてきたらいつでも修理改造整備は承る、と伝えた。
UMP45たちは、徐々にではあるがヤサグレた目をしなくなり、私の知る404小隊の姿に近づいてきた気がする。貧すれば鈍するとはよく言ったもので、自身のメンテナンスもろくにできないほどに追い込まれればそりゃあ野犬のような雰囲気にもなるよ。後で、肥料生産所を作ってみてもいいかもしれない。バラモンのミルクはそれはそれで美味しいらしいし、あれでホットケーキを作ったらきっと美味しいだろうし、それを食べさせた時の404小隊の反応が楽しみだ。
後は、UMP45へのアメリカ式ハッキングの伝授である。若干の暗号学も含む前提知識と、PDAツールとその使い方を教えようとしたことに、UMP45は最初は難色を示したが、EscapeArtistの応用で、一瞬視界外に逃れて後ろに回り、首のメンテナンスソケットにコネクタをぶっ刺してそのまま全身の自由を奪ってやったら非常に従順になった。R-08地区指令室に来る前からのUMP45によるハッキング履歴を全部並べたのもあるかもしれない。
「ロブコ・インダストリ……? 聞いたことのないメーカーね」
「そりゃまあそうでしょうねえ……」
今回の教材は、プロテクトロン(セキュリティレベル1)。ド素人には無理だが、少しかじればなんとかなるレベル。
「どこの企業なの?」
「北米」
「アメリカ? そんな企業あったかな?」
データインストールを済ませ、簡単な実習をしつつ時折雑談が混ざる。UMP9とか416が時折横で見ていくが、
「全然わかんない!」
とUMP9は離れていった。逆に416は、
「指揮官、私にもデータインストールを」
と、何故かやる気を見せていた。
「え、あなた電子戦型じゃないでしょ?」
「こういうものは、複数人できればより便利でしょう?」
「そこまで言うならインストールするけど……無理はしないでよ?」
やる気が出ているのを無理に引き止める必要もあるまい。ソファに座った416のメンテナンスソケットにコネクタを刺して、私作のハッキングパッケージレベル1をインストール。まずは様子見ということで。もう一台プロテクトロンを持ってきて、416の前に置いた。ハッキングに成功すれば、とりあえずメンテナンスコマンドにアクセスできる。各々、首のメンテナンスソケットとプロテクトロンのアクセスソケットにコードを繋ぎ、ハッキングを試みる。
『メンテナンスモードへようこそ。こちら、プロテクトロン、ユーザーカスタム。ID、Rob8327jh98l0』
『エラー、侵入を検知しました』
「ふむ……」
さっそく、416の方のプロテクトロンが侵入警報を吐いた。遊び心で載せておいた黄色回転灯が光って回る。
「さ、もういっかい」
「もう一回やるわよ」
『メンテナンスモードへようこそ。こちら、プロテクトロン、ユーザーカスタム。ID、Rob8327jh98l0』
『エラー、侵入を検知しました』
が、結果変わらず。
「うーん……指揮官、これ結構難しいよぉー」
「どうして……この私が……」
二人共、頭を抱えている。というか、これ、かなりの過負荷じゃなかろうか……?
ふと、最初の出撃終了後のデータルームでの騒ぎを思い出す。なれない処理をさせた人形たちは、それこそ全員が疲労で寝込んだほどだ。となれば、人形たちに搭載されている頭脳が戦術系以外の処理に適していないのではなかろうか? いっそ、傘の抗体免疫ができたから直結でやりたいという彼女らの希望を尊重したが、そう言わずに人形でもPDAツールを使ったほうがいいかもしれない。
「ねえ、二人共。こっちのPDAツール使ってみない? 多分、人形の頭脳での電子演算って、向き不向きの都合で負荷が高すぎる、はず?」
二枚のPDAを二人の前に置く。普段私がハッキングを試みる際に使っているものと同じもので、性能は悪くない。それに、直結と違って、攻性防壁相手にしくじった場合でも身代わりがいるから安全だろう。
「指揮官がそう言うなら」
「こ、この私が……」
妙に従順すぎて怖い45と、プライドがうまくできないことを認められない416がそれぞれ受け取って、再度プロテクトロンに繋ぐ。
『メンテナンスモードへようこそ。こちら、プロテクトロン、ユーザーカスタム。ID、Rob8327jh98l0』
『メンテナンスモードへようこそ。こちら、プロテクトロン、ユーザーカスタム。ID、Rob5576kj99l0』
「へぇ、使いやすいのね」
「どうよ、できたわ!」
「おおー、一発。ツールの扱いはそりゃインストールしたし問題ないみたいね。それじゃあ、レベル2、行ってみようか」
ふんす、といった様子の416達に、拍手を送る。
そんな騒ぎを横目に、G11はアイマスクまでしてよく寝ていた。いやほんとよく寝るなこの子?
最終的に、ハッキングパッケージレベル3までをインストールし、UMP45は時間が掛かるもののセキュリティレベル3まで、HK416はレベル2までハックできるようになったのだった。