さて。
人員数総計が十七名になったので、部隊編成を少し見直してみた。
もっとも、第一部隊は変わっていない。59式をメインタンクに、PPS-43をサブタンク、Five-seveNを中衛において、後列にL85A1とガリル。素早いやつとかそういうのを仕留める方向性。
第二部隊は、R08地区の栄誉ある壁、AA-12を筆頭に、シプカをサブタンク。ここでSPP-1が部隊移動、M1919A4がイン。後はグリズリーとCZ75で支援とかしてくれたまえ。
第三部隊。処刑人がトップ。本人曰く、並の人形五人分ぐらいの耐久力はあると豪語したのでワントップ。最後尾にItBM59。残りのSPP-1、GrHK45、M1895でガッツリ支援していただく。特に、前世ではM1895は逆レアリティ詐欺筆頭と呼ばれていたし、最適化率も高いので期待している。
処刑人を自陣に組み込むことについて、もしかしたら本部が何か言うかもしれないが(知っての通り鹵獲品は大抵整備や修理が問題になるのが常である)、私はそれらが問題にならない特性を持っているため、運用に躊躇いはない。テロリストをバンバン蹂躙して欲しい。
なお、本人希望によりUSPコンパクトは、執務手伝い&TD型防衛担当である。出撃の優先順位が下がるだけであって、別に訓練とかも免除されないと説明したのだが、強い希望によりこうなった。本当に前線に出たくないタイプらしい。一方、面白いことにスプリングフィールドは、整備も執務も戦闘も、なんでもやりたがっている。パッケージインストール領域は大丈夫なのかと聞いてみたところ、なんと手持ちのNASのような高容量タブレットのオバケみたいなものを持っており、一定以上の速さが不要なパッケージは、そちらに入れているそうな。……退職金で買ったそうで、高かったそうで。まあ、データの復帰は保証できないが、破損した場合の修理ぐらいはしてやろう。
そして、昨今は鉄血の襲撃頻度が皆無と言ってよく、脚部をロボブレインに改造して機動力をもたせたプロテクトロンに巡回コースを設定して付近一帯を哨戒させているが、そちらも反応がない。そして、地下の下水路は404の置き土産であるトラップに埋め尽くされている。ちょいちょいと細工したりレーザートリップワイヤーを設置するなどして、突破はともかく気づかれずに抜けることを難しくしておいた。無論、ダメージトラップも存在するが、すべてのトラップにいわゆる鳴子機能は搭載済みである。
「んー……」
だが、まだ、見落としているような気がするのが止まらない。確かに、プロテクトロン頭部の感知能力は高くなく、隠密した何かがいた場合に気づけずにスルーされる恐れがある。追加でアイボットを沢山作成し、四分の一を通常装備、残りをより高高度を取るよう調整し、担当地域に合わせた迷彩柄を施し空中でも停止すれば非常に目立たなくなるようにして、周辺地域に放った。通常型は囮で、それを発見して回避したやつを、さらに上空からチェックすることで見つけるという二段構えの方法である。
さて、これの結果が出るには暫く掛かる。その間に執務をしよう……きっと、この後鉄火場が来る。
補給用車両の通過許可申請がいくつか。これは全部OKでいい。処理フォルダに入れてスイッチポンで後はカリーニンに回しておけばいい。
協力申請が一件。え、協力申請?
「カリーニン」
「なんでございましょう、指揮官様」
「協力申請ってどういうこと? なんでよその基地がうちに協力申請投げてくるの? しかも、U05? かなり離れてるじゃない」
「軽度汚染地域でございますからね、U05。しかも、近くに最近正規軍が徹底的に空爆した地域がありまして、何かがアウトブレイクしたのではないか、という噂まであります」
「物騒ねえ……」
返答しつつ、協力要求内容に目を通す。主に情報面での共有などがメインのようだ。救援要請も盛り込まれているが、その場合の問題は距離だ。遠すぎる。補給支援をするなら、キメラテックロボットプロビジョナーを用意すればいけるだろうか……?
「そもそも、E.L.I.Dの氾濫疑いが空爆理由なので、注意喚起として指揮官以上の閲覧制限データでE.L.I.Dの情報が本部経由で回ってきていますよ」
「どぉれ……?」
タブレットに指を滑らせ、E.L.I.Dのデータを呼び出す。出現地域で絞り込み、U05近辺、今回は爆撃地域のU08も加えてフィルタリング。
……。…………。
「マジか」
思わずつぶやいてしまった。
要警戒、交戦非推奨対象として表示されているやつは、前世で見たことがある。ゲーム名称は忘れたが、総称がキメラのグリムとかクロウラーとかそんなので、他生物を苗床にして増殖するえげつないやつだったはず。恐るべきことに独自技術を所持していて、SFちっくな能力を持つ銃器も多数所持していたはずだ。
次々スライドを表示させていけば、出るわ出るわ、マイアラーク、ラッドローチ、デスクローの見飽きたメンツに始まり、イヤンクックとかネクロモーフとかオイオイオイここ石村じゃねーんだぞと突っ込みたくなるものまでいた。
間違いない、こいつらの撃破経験があるとなっているU05地区指令室の指揮官は転生者だ。でなきゃあんなものがその地区周辺にゴロゴロ出てくるわけがない。核変異生物はともかく、最初のキメラだったか、あれらは本気でアウトブレイクを起こしかねない繁殖力を持っていたはずで、徹底的に対処するには何よりも物量と資材が必要だ。ということで、この協力申請は距離があろうと受諾することに決めた。
「カリーニン、この協力申請受諾するわよ。後でメール一本投げて、物資支援もする。プロビジョニング用ロボットを作成するわ」
「かしこまりました」
「輸送ヘリが使えればいいんだけど……無理でしょうね……」
「……そうでございますね。この指令室にはありませんし、本部も余剰は無いようです」
「ベルチボット発着場作れたらいいんだけどなあ。まあしょうがない、キメラテックロボットプロビジョナーで何とかしよう」
さて、早速ロボット作成に移ろう。
頭部、プロテクトロン。胴体、セントリーが使いたいところだがぐっとこらえてロボブレイン。両腕はセントリーで、ミニガンとガトリングレーザー。脚部はアサルトロン。耐久性重視でゴッテゴテに油圧フレームなどに換装し、AIを感情サブルーチン動作モードでセットアップ。後は、協力居留地扱いでU05地区指令室を目的地に設定し、何故か、本当に何故か現れたパックバラモンに要求された資材を五割増しで積み込み、ついでにオマケとして修理用電子部品を入れておく。ウェイストランドグルメバラエティアソートセット()とRAD-AWAYも積み込みたかったが、私か私が改造した人形が投与するかされるかしないと薬物は効果がないからしょうがない。未だにこの不思議物理法則には戸惑う。
後はメールだ。
『拝啓 U05地区指令室指揮官フランシス・フランチェスカ・ボルドー様
協力申請を受諾しました。ロボットキャラバン隊に物資をもたせて出発させたので、近い内に届くと思います。ロボットキャラバン隊の外見と、物資目録を添付しておきますのでご確認をよろしくお願いいたします。
また、こちらはフォールアウト核戦争前のアメリカ企業、Vault-tecの技術を保有しておりますので必要と状況が許せばそちらにお伺いして修理や生産活動の準備を行うこともできるかと存じます。あるいは、設計図があれば該当物品や部品なども生産できると考えています。
一度通信などできればと思っております。
よろしくお願いいたします。
かしこ。R08地区指令室指揮官』
メールルールぐちゃぐちゃだが、こちらも転生者ですよアピールのためだからしょうがない。
送信して一息ついてから、アイボット達の索敵結果にアクセスする。
案の定、いた。
プロテクトロンと囮のアイボット達の索敵範囲の隙間を縫うようにして、無数の迷彩柄のDinergateとScoutが。
へっへっへ、ついに私もコラボでございますよ!
イナダ大根氏の、「U05基地の化け物ハンター」
E.L.I.D出現リストでも出ていた通り、やべーやつらがやべー物量で侵食してきちゃってる、当方と同じくドルフロと他ゲームコラボ系基地です。
U05基地に駐留中の、圏外出身の化け物ハンターたちの活躍にどうぞご刮目あれ。