人形指揮官   作:セレンディ

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投稿ペースの下落が抑えきれない……うごごごごごごごご
おまたせしました。


アイボットと装備

 さて。

 

 休暇を終え、法官による襲撃の後始末を終えて、全ての残骸の分解、全ての人形とロボットの修理、破損した防衛設備や施設の修復を終えて今しばらく。

 何故かスプリングフィールドに妙に懐かれている中通常営業に戻った。指令室周辺の農村としての開発でも行うかな、とか考えつつ、最近の警戒・探索レポートサマリを眺めてみると、特定方面で妙にアイボットの行方不明数が多い。何か予感のようなものを感じたので、通常の索敵、監視範囲から大きく超えて特定方面、つまり例のクソFPSマップの向こう、元デスクローの繁殖地からさらにその向こうへとアイボットを複数派遣してみる。ある程度散開させつつ、互いが互いの索敵範囲に常に入るようにしながら、時折通信中継機を設置させながらさらに進ませる。映像の送信は通信負荷が高いので、いわゆるコマ送り状態での現地画像を見つつ、ゆっくりと前進させ続けた。

 

「お嬢、こっちって、キツい山があるから攻められないし攻められもしないって行ってなかった?」

「そうなんだけどねー。念のために出してたアイボット、こっち方面に行くと妙に行方不明が多くてさ。何事にも例外はあるから、チェックしておくべきでしょ。アイボットだから、撃墜されても安いし。鉄血のプロウラーでも一機破壊して回収して解体すればお釣りが来るし」

「私にはアイボットのほうが、反重力システム搭載してるしコスト重く見えるんだけどなあ……」

「あら、あれはジェット噴射よ。軽いから微々たるものだけど、噴射口が下にあって、陽炎が見えるはず?」

「あれも、まさか核……?」

 

 59式と、横で聞いていたカリーニンが慄いているが、気にしないことにした。

 当然、今回のアイボット達には迷彩塗装を施してあり、ついで哨戒効率よりも隠密性を重視したコースで偵察を行うように設定している。無論随時指示変更も可能。

 しかし、アイボット達が行方不明になるような原因は見つからない。今偵察している地域はもちろん通常の巡回コースには入っておらず、何か異常があるのであればすでに見つかっていなければおかしいのだが……はて。そして、行方不明=撃墜されたと思われるのだが、そのアイボットの残骸も見つからない。こちらも疑問だ。侵攻経路を人間基準で考えすぎたか? 人形などによる人間では踏破が厳しいルートでも構わず通ってきているのだろうか? しかし、その場合でもアイボット達の索敵ローラー作戦に全く引っかからないのはおかしいはずだ。

 

 何を見落としている……?

 

 考え込んでいる間にも、アイボット達は前進を続け、山地の頂点を越えて、向こう側が視界に入ってきた。地図データでは山向こうは第三次世界大戦で放棄された街があるだけのはずだが変わりはないようで街の残骸が鎮座しており、気候的に砂塵を含んだ風は吹かないが、荒涼とした、一部を雑草により埋め尽くされた通りを野犬がうろついている。……まて、あれは本当に野犬か?

 即座にアイボット達に前進停止を指示。最大望遠で野犬の姿を追わせると、野犬、というにはずいぶんと筋肉質なボディがカメラに写った。

 まさかな、と思いつつ、一機を木が視認の妨げになるような、広葉樹の枝の上あたりに移動させ、残りを一旦街が見えない、向こうからも見えない位置に下げる。ここからは持久戦と考え、観測中の一機以外は省エネモードで待機させてその一機でじっくりと探った。ふと気になったので、待機中の一機を再起動させ、山のこちら側に見慣れない足跡が無いかを探索させる。木がまばらに生えている山は、そう足跡が残らないし、残ってもアイボットのセンサーでは解析まで行けるかどうかだが、やらないよりはマシだろう。

 

「何を見ているの、お嬢?」

「今の所野犬しか見えないんだけど、その野犬がやけにマッチョな犬に見えてさ。悪い想像が当たってると、この街ってE.L.I.Dの制圧下にある可能性が」

「えっ!?」

「だから確定すべく観測中なんだけど、これ以上アイボットを近づかせると、悪い想像が当たってたら火薬庫に火をつけるようなものでさ。ちょっと慎重になってる」

 

 こわごわとモニターを覗く59式。なんとなくその頭にぽん、と手を載せてから、アイボットの望遠レベルや観測角度を変えて街のそこかしこを見る。今の所、怪しいものもその痕跡も見当たらない。連中が拠点を占拠すると、狩りをしてゴアバッグなどを作ったりするから、それが観測できれば一発なのだが……繰り替えすが今の所見当たらない。

 

 無論、いるんじゃないかと疑っているのはスーパーミュータントである。野犬は、スーパーミュータントハウンドではないか? と。

 FEVウィルスがここにもあるのかどうかは知らん。あったら滅菌確定だけれども、あくまでE.L.I.Dとして存在するのであれば、コーラップス液を感染(と呼称する)させて仲間や犬を増やしているのかもしれない。これは非常に怖いことを意味していて、汚染地域で放射能に対する完全な免疫を持った生物が、コーラップス液のキャリアーとなりつつ増殖する、ということになる。さすがにゾッとしない案件である。

 が、警戒している私をあざ笑うかのごとく、SMやそれに類するモノの姿は確認できない。先程の野犬も姿を現していない。ログを見返してみて、私、59式、カリーニンの全員であれは野犬かそれに類するものだがシルエットが大きく筋肉質に見える、という意見の一致を見ているので見間違いはありえない。とりあえず一昼夜程度はじっくり監視するつもりで増援、交代要員のアイボットを送り出しつつ、動くものが現れたらアラームが鳴るようにしてひとまず休憩を入れよう。

 ……一番楽な可能性は、スクリプト湧きかなんかで突如出現しただけで、排除したらもう現れない、ってところかなあ……。その場合だとしたら、街の拠点化が行われておらず、例のゴアバッグ等が見えないのも理由がつくのだが。

 

 

 結局、日が落ちても変化はなかった。最悪、私単独で潜入も計画に入れねばならないだろうか?

 

「却下」

 

 が、59式に却下された。

 

「それをするぐらいなら、私達に部隊編成して偵察命令を出してって言ってるじゃない」

「そーなんだけどさあ……最悪の予想が当たっちゃった場合、敵の想定火器が小型ミサイルランチャーだから……」

「私みたいなHGとか、SMG人形なら見てから回避が余裕でした、だよ。AA-12なら正面から受け止めてもいいんじゃない?」

「めんどくさい特性があるかもしれないから困っててねえ……いや、待てよ?」

 

 高密度ボディアーマーを全員に支給しておけば、ミサイルやらフラググレなどの爆発物は怖くないのではないか? よし、とりあえず全員分の高密度ヘビーレザーアーマー(胴体)を作ろう。そもそもの基礎的な防御能力は人形の躯体能力依存だしね。……AA-12の防弾ベストだけコンフリクトするかな、まあ、防弾ベストなしでも防御力は十分にあるだろう。

 ……と、考えてとりあえず59式に装備させてみたところ、絶不評。重いのが一番気に入らないらしい。うーん、これはダミーを使って実験するしか無い、かな……?

 

 

 と、言うわけで、人形たちを集めて射撃場に、訓練用ダミーSKS人形を用意。通常のダミー人形とそもそも同程度の耐久力があり、さらに私の改造も施してあるので基地にいる人形たちと同程度の耐久を有している。

 

「まあそんなわけで、この高密度アーマーがどれだけ爆発物のダメージを減少させるか、というのを実験するよー」

 

 なんだなんだ、といった具合に集まった人形たちに、ダミーSKS人形を指差す。

 

「爆発物による面制圧の厄介さは、HGとかSMG人形なら身にしみているでしょ? その、爆発物のダメージを大きくカットするのが高密度アーマー。当然重いのが難点だけど、これでも軽いやつなんだから。とりあえず……PPS-43に投げてもらおうかな」

 

 と、PPS-43にフラググレネードを手渡した。

 

「ypa-!」

 

 ばぁんっ

 

 ダミーSKS人形へのダメージが表示される。そもそもの爆風によるダメージや、それによる手足などの駆動部分へのダメージ等、それなりの被害が記録されていた。

 

「それじゃあ次、高密度化アーマー装備」

 

 ダミーSKS人形を交代させ、そちらには高密度レザーアーマーを装備させている。再度PPS-43にフラググレを手渡し、投げさせる。

 

「ypa-!」

 

 ばぁんっ

 

 再度、ダミーSKS人形へのダメージが表示される。参考情報として並べてある無装備状態へのダメージ情報の隣に、今回の測定されたダメージが並ぶ。

 

「……え、四分の一以下……?」

 

 PPS-43の呆然とした声。さもありなん、爆発物によるダメージを最大のダメージソースとしていたPPS-43の長所が殺された瞬間である。大丈夫、鉄血がこれらを装備してくることはほぼ無いから安心したまえ。

 ただ、予想ではダメージ四割減のはずだったのだが、それにとどまらず四分の一八分の一レベルへの減少となっている。手榴弾スキルによるダメージは装甲無視だったはずなのだが、どういうことだろうか。アーマーを与えたことでDRが発生し、DRによる軽減が発生した以上は装甲無視効果も無視された、などだろうか……? 

 詳しいことを確定させることはできないだろう。とりあえず言えることは、高密度化アーマーの配布で爆発物ダメージが著しく減少するということだ。……破壊者からのダメージも著しく減るのだろうか? まあ、それは破壊者を鹵獲してから実験でいいか。

 思考がアチラコチラにフラフラするのをとりあえず引き戻し、ざわついている人形たちを、手を叩いて静かにさせる。

 

「はいはい、それで高密度化アーマーの有用性はわかってもらえたと思うのね。それで、今回の想定敵は主武装がミサイルランチャーとスレッジハンマー。あと猟犬による突撃、自爆兵による突撃」

「自爆兵!?」

 

 ざわっ、と人形たちがざわついた。

 

「……まあ、いないと思うけど。この自爆兵、接近してくると『ピッピッピッ』って発信音が聞こえるから要注意。後、持っている爆弾が核爆弾だから、必ず接近される前に抱えてる右手以外を撃って殺してね」

『核!!??』

 

 それ以上にざわついてある種混乱まで。

 

「ま、待って指揮官、核爆弾って繊細なもので、そんな抱えて走って自爆なんてできるものじゃないはずですよ……!?」

 

 半ばパニクったSPP-1の言に、周りの人形までうんうんと頷いているが……

 

「といっても、実際にやってくるからなあ……ほら、私の最終兵器、ファットマンの弾薬のミニニューク。あれ持って走ってきてタッチダウンしてくるんだわ、マジで」

「ファットマンって……小型核カタパルトの……?」

「そう」

「つまり、核爆発する?」

「うん、する」

「あの青い爆弾よりも……?」

「多分。爆発影響範囲が読めないから気軽に実験できないからやってないけど」

 

 おっとPPS-43が倒れた。

 

「だって、ヌカクアンタムグレネードのノーRADならともかく、確実に放射能が出るから第三次世界大戦再開の引き金になりかねないじゃない」

「……そ、そんな核爆弾があの放棄市街に転がってるんですか……?」

「あくまで可能性……だけどね」

「ねえお嬢……あの放棄市街区、一体何がいるの……?」

 

 重々しく問われた59式の問いに、私はこう返した。

 

「それじゃあ、スクリーンとか使って説明しましょうか」

 

 

「あくまで仮称だけど、私がスーパーミュータント、もしくはナイトキンと呼ぶE.L.I.Dが、あの放棄市街にはいると推測してる。多分前者。こいつらがよく伴っている犬のE.L.I.Dが見えたのがその判断理由」

 

 ホワイトボードに、緑の巨人と青の巨人を描く。青の方には「可能性:低」と添えて。

 

「あの、そのようなE.L.I.Dの報告が上がっていた記憶がありませんが……」

「なんで私が知っているのか、というのは説明が難しいわ。『何故か知っていた』で今は済ませて頂戴」

 

 カリーニンの疑問には答えられないことを添えておく。

 

「こいつらの性質として、まず、大多数は同類以外に対しては非常に攻撃的、狩猟対象と見なして襲ってくるわ。巨体を維持するためにそれなりの食料を必要とするからと推測される。……僅かな例外もいるにはいるけど、多分ここにはいない。そして、こいつらはそのタイプに応じていくつかに特徴が別れる」

 

 共通:同類以外には獰猛、食料にするために襲ってくる。見た目通りタフ、怪力、廃材再利用型のアーマーを着用していることがある

 スパミュtype4(高知能):自爆兵の存在確率高、爆発弾体射出武器を多用傾向にある

 スパミュtype3(低知能):自爆兵の存在確率低もしくは無、近隣から人を浚う傾向にある

 ナイトキン:一部指揮個体が高知能。部下を殺すと敵討ちモードに入り、その前であれば場合によっては交渉も可能。僅かな揺らぎ以外完全に見えなくなる光学迷彩が基本装備なので注意。

 こう、書き連ねてみるとやっぱりコイツラヤバすぎてもう。

 

「……やっぱ隠密偵察は私が適任だと思うんだけどさあ。行っちゃ駄目?」

『駄目!(だ!)(です!)(よ!)』

「ちぇー」

「ちぇーではないぞ。指揮官の謎能力のおかげで、我々は指揮官と指令室さえ無事ならいくらでも立て直しが可能なのだからな」

 

 処刑人にも言われてしまった。鉄血ハイエンド人形も、バックアップは取れたので復元できるようになったからか。ダミーリンクはダミーを作成できない以上できなかったので、アサルトロン随伴部隊とかつけたいものだ。ドミネーターはマジ硬いからな……。

 ただ、スプリングフィールドだけはバックアップがとれないので復元もできないのは注意しておくべきだろう。

 

「むぅ……じゃあ、まあ、部隊編成しましょ。相手が鉄血じゃなくてE.L.I.Dだから……少し変則編成にしましょう」

 

 とりあえず、現地見取り図を机に投影し、人形たちそれぞれを表すコマを取り出した。

 放棄市街の中央地区に、大きめの建造物があるので、よほどの理由がない限りその大きめの建造物、恐らくはデパートか何かが拠点となっていると考えられる。周辺の住宅等の上に登るのは、より高所となるデパートから丸見えになるため一時的な偵察以外は非推奨……いや、It BM59と、スプリングフィールドを分散配置して、デパートの屋上などに敵影が見えないか探り、場合によっては狙撃で排除してもらおう。その一方で、59式主軸、Five-seveNとグリズリー主軸の偵察部隊と、AA-12主軸、鉄血人形主軸の突撃部隊、という感じにいけばいいだろう。偵察部隊でサーチしつつ、突撃部隊と連携してスパミュを排除、でいいだろう。

 もし、敵がスパミュじゃなかったら?

 デスクローとかのクソ硬害悪E.L.I.Dでも無い限りどうにでもなるし、万一そういうのが出てきたら私が出張る。これについては私しか対処できないので人形たちに同意させた。

 

 さて、狩りの時間だ。ハントマスターは私、ターゲットは推定スーパーミュータント。勢子も射手も人形たち。

 ……で、いいのだったかな……?

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