人形指揮官   作:セレンディ

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本来なら閑話のお時間ですが、
事態進行中につきあとに回されます。


強化外骨格スーツ

 カチコミかけるにしても、生身の私込みという点が良くも悪くも足を引っ張る。

 極端に言えば、私は対スパミュに限定すれば、非常に高い攻撃力を発揮するものの非常に脆いユニットという扱いである。エレベーターで上ったはいいものの、アイボット偵察を目論んだときと同じように、開幕ミサイルランチャーの歓迎で吹っ飛ばされるのは遠慮したい。スティムパックで一発治癒が可能とはいえ、スティムパックは打つという動作が必要であり、万一両腕吹っ飛んだとかあった時に使用不能に陥りそのまま死ぬとかがありうる。頭がもげたら当然即死だ。

 よって、ここは少しばかり別行動を提案しよう。具体的に言うと、アサルトロンドミネーターを送り込んだときと同じように、私はエレベーターのカーゴの上に潜み、八階まで上がったらそのままメンテナンスハッチに向かってそこから降りる。そして、一旦道中のエネミーを無視し、もしくは自殺個体が残っていればそれのみ排除して進み、最終的にエレベーター前の攻防を後ろから襲撃して援護する。その後、パワーアーマーシャーシを確保、という予定だ。パワーアーマーシャーシが動作するものであれば、その場でステーションを作成して外装を作成、取り付けし、私も人形たちの戦列に加わることができる、という塩梅である。なにせ、パワーアーマーがあれば、プラズマガトリングなどの集弾性が段違いに向上するので、対敵集団にぶちまける使い方しかできなかったものが対単体に火力を集中できるのだ。

 

 当然というかなんというか、今までの人形たちの反応を考えれば当然なのだが、猛反対に遭った。

 

「私は反対だよお嬢、途中で万が一見つかったら、お嬢の運動能力だと避けきれないよ」

「とはいっても、私が今までに隠密でバレたことないでしょ?」

「確かに無い、けど……」

「とはいっても、ミサイルを受け止めてみた感じ、指揮官では高密度ボディアーマーがあっても余波だけで死にかねないぞ」

「だから隠密狙撃に徹するんだってば。……中華スーツとかステルスボーイ欲しいわぁ……」

「無理なものは無理だ、指揮官」

「危険だ、意義が薄い、リスクが高すぎる。とりあえずこの場の人形の総意だな、指揮官」

 

 鉄血人形すら否定にかかってきた。が、正直、このパワーアーマーシャーシの確保のためには割と高いリスクであろうとも被るつもりでいる。思った通りのものであれば上々、たとえ破損していたとしても修理、もしくは解析することで設計図を用意できれば、パワーアーマー部隊の配備すら可能になる。Aegisなど目じゃない装甲とパワー、運動性能が手に入るのだ、やらない手はない。

 

「あと、ほら、それ確保できれば私の安全性が増すよね?」

「……我々を言いくるめるための思いつきをさも考えていたように話さないでほしい」

「前線に出なければそもそも安全なのだが」

「デスクローとか出てきてから指揮官に応援要請でええやん?」

 

 ……。

 

 うるせー! シャーシの確保は私の悲願なんだ、断ってもついていくからな!

 

「あ、逆ギレした」

「指揮官、カルシウム足りてますかぁ?」

 

 キシャー!!!

 

 

 エレベーターが上昇を開始する。

 足元のカーゴの中には、デパート内部に突入した人形たち全員……は、さすがに入り切らないので、AA-12主軸班と鉄血人形班が乗り込んでいる。ドアが開き次第、AA-12と法官が強行前進する予定、ミサイルの爆風が狭いカーゴの中で暴れ回らないようにするためだ。その上で、順次PPS-43やガリルたち、処刑人が飛び出してスパミュ共を排除にかかり、その間に地下四階から残りの59式含む人形が上がってくる予定である。その間に、私は上のメンテナンスハッチから侵入していろいろ排除しながらシャーシを確保予定。

 

「よし……まもなく八階ね。任せたわよ」

『……私は完全同意したわけではないからな。ともあれ任された』

 

 カーゴが八階に到着、ドアが開き始める少し前に、私はシャフト内部を登り始めた。無理くり登るのではなく、メンテナンス用はしごがあるので特に危険はない。

 

『どぉりゃあああああああっ!』

 

 AA-12が、万一を考えダミーを戦闘に横一列に突撃、エレベーター前に陣取っていたスパミュを転倒させつつ奥へと押し込み、

 

『ふんっ!』

 

 彼女の頭上を飛び越え、スパミュ達のど真ん中にダメージゾーンを拵えた法官がまたジャンプして戻る。ガリルとL85A1のコンビが、それぞれ膝を砕きPPS-43が手榴弾で頭を砕くルーティーンを回す一方、処刑人が首をはね、あるいは唐竹割りに開きに仕上げる。データ共有があれば、未見の敵であっても倒し慣れた敵のように始末できるらしい。……これ、私の援護いるかな……とも思いかけたが、万一自殺個体が出てきたら非常にややこしくなる。なるべく急ごう。

 屋上に何もいないのは確認済みなので移動速度重視で走り抜け、非常階段から十階の内部へ

 

 ガコッ

 

 ……鍵がかかっていたのでピッキングでねじ伏せ、十階内部へ。隠密移動を開始し、スニーキングキルのお供、消音ライフルで片っ端から見かけたスパミュの頭を砕きながら進む。被発見? されるつもりもないし仮にされても一瞬でも視界を切ってやればこちらを見失うので改めて皆殺せばいい。九階へ降ると、下に集っているのかスパミュの姿がない。これ幸いとまっすぐ走り抜け、八階。そろそろ下の戦闘音も聞こえてきたので再度隠密を開始し直し、従業員通路のエレベーター前へ向かう。

 っと、あれは自殺個体だ、さすがにこんな所で自爆するとは思いたくないが、スパミュだからなあ……ということでサクッと始末。

 

「キョウダイーッ!?」

 

 お前らその兄弟呼びしたやつに自爆突撃させんなよ。

 

「おまたせっ」

 

 もはや死体隠蔽の必要もないので、プラズマライフルを構えてO.A.T.S起動、片っ端からぶち抜く……ちょっとAP足りなかったので缶コーヒーをぐいっと一本。その後驚いた顔しつつ振り向いている頭をふっとばしてやる。粘液化率が高いのは楽しいねえ。汚い沼があっという間に出来上がった。

 

「……指揮官の、E.L.I.Dへの大火力っぷりは相変わらずだな」

「最近E.L.I.Dしか相手にしてないからわかんないけど、きっとテロリストとか鉄血にも威力高いんじゃないかな」

「はー……確かにこら、単独潜入でどーにかなりそうな相手なら、うちらいらへんなあ」

 

 好き勝手言ってくれる。だが許そう、私はとても気分がいい。

 

「気分がいいというか、玩具を前にした子供というか」

「あれはもうシャーシでしたっけぇ、それ以外頭にありませんねぇ」

『……二十一才児?』

『機材バカ?』

 

 おうこらスプリングフィールドにItBM59、喧嘩なら買うぞ。

 ともかく、パワーアーマーシャーシをチェック。コアは無いし外装も全部ない、完全にシャーシだけの状態だ。だが、損傷は見られない。そもそも傷つくものでも無いし、目の前で爆発物炸裂しても無傷だったしな。うっかり核ミサイルに巻き込まれた時には、演出上消滅していたが。手持ちのコアをとりあえず一本差し、バルブハンドルっぽいところを左にひねる。

 

 がこんがしゃしゃぎゃっ

 

「わ、開いた」

 

 念の為、髪の毛を巻き込まないように服の内側に放り込み、乗り込む。

 

「……頭丸出し?」

「ヘルメットパーツが無いからねえ。とりあえず歩いてみるか……お、いけるいける」

「正直、そのような外骨格でなぜそこまで軽快に動けるのかが疑問でならないのだが」

「法官、気にするだけ無駄ではないか?」

「そうかもしれないが……」

 

 シャーシだけの状態でも、落下ダメージ無効化とサーボによるアシストシステムはしっかり働いている。スパミュのスレッジハンマーがちょうどよく転がっていたので拾い上げて、なんとなく壁をぶっ叩いてみた。

 

 ぼごぉっ

 

「……」

「……」

「……これは、確かに、Aegis等比べ物にならない出力だな……こんなもの、どこが開発したんだ?」

「アメリカ軍部開発局。ところによりマイナーチェンジとか現地改修とかがあったわ、確か」

「……知っていたか?」

「知らんぞこんなもの」

『今壁を壊したのは指揮官ですか? いきなり一部壁が崩落して驚きました』

『そういうのは声を掛けてからやってよね』

「ああ、ごめんごめん」

 

 狙撃班の二人に謝ってから、とりあえずシャーシからは降りた。マナーとしてコアは抜いておく。

 

「それで指揮官、それはどうするんだ?」

「こうする」

 

 持ってきた資材からパワーアーマーステーションを作成、規定位置にシャーシを配置。ゲームではPip-boyに配線をつないでいろいろとコントロールしていたが、私はPDAにつないで各部をコントロール。そのまま……んー。量的には問題なかったが資材が種類的に足りない。X-01を作りたかったが、帰るまでお預けだな。とりあえずこの場ではT-60アーマーを作る。がしょこん、きんきんきんという懐かしい音。

 

「……今、どうやって作った……?」

「呆れた」

「見ると驚くよね」

 

 続けて、衝撃補正機能を両足、テスラブレイサーも両手、ターゲティングHUDとジェットパックをセット。まあ後々解体するだろうが、今現在の性能は多少資材の無駄遣いであろうと欲しい。……なんとなくではあるが、これ、私が時間使って技術開発できそうな気がする。まあいい、いずれにせよ帰ってからだ。

 組み上げ、今回は塗装は無しで再度コアをはめ込み、バルブをひねる。

 

 がこんがしゃしゃぎゃっ

 

『よし、オーケー! ねんがんのぱわーあーまーをてにいれたぞ!』

「そう かんけいないね」

「……? あー、59式がなんか言うたっちゅーことは、何かしらのレトロゲーネタやな? さすがにわからんわー」

『なによー、あれは名作なのよー』

「と言われましても、ヤーパン語のゲームとか私達にはできませんし……」

『ぐぬぬぬぬ……』

 

 帰ったらローカライズ済みレトロゲーパックを買おう、そうしよう。




時々、別のものを書きたくなるんです最近
メジャーな異世界転生とか転移とかものとか、悪役令嬢とかのあれこれ。
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