人形指揮官   作:セレンディ

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整備と人形

 修復及び整備室。

 この部屋に入った瞬間、なんか体が理解した。

 ここはわたしのしろだ!!

 

 

 

「おはようございます、指揮官様。よくお休みになられましたか?」

「それなり~」

 

 翌朝。

 朝食後、カリーニンの挨拶には適当に答えた。指揮官用の個室はそこそこ良いものが揃っていて、場合によっては何か作るかと考えていたぐらいだが、その必要もなかった。59式にもちゃんとした個室が与えられたと本人から聞いた。

 

「それでは早速、今日は修復及び整備室から始めましょう」

「……んー、そうね。整備室を見終わるぐらいには、今日来る戦術人形のリストとか来るかしら」

 

 昔の公民館か病院らしきものを再利用して作られたこの指令室は、内部の移動がスムーズにできる。襲撃を受けたときの防衛には向かないが、日常の利用面では便利だ。一階の、大きめの部屋。以前はレクリエーションルームかカンファレンスルームか、といった配置の部屋が整備室のようで、そこに入る。

 

「こちらが整備室でございます。あちらから順に、銃器の整備工作機械。そのまま銃器の整備工作用ですね。次が人形躯体の整備工作機械。こちらもそのまま人形躯体の整備工作機械。ダミーの整備も当然可能です……指揮官様?」

 

 済まないがちょっとまってほしい。

 この、超高級整備工作機械どもの群れは何だ!? 機材のアップグレードの果てにあるものが勢揃いとかどーかしてんぜ!? 後は必要な資材さえあれば何だって作ってやるし整備してやんよ!! やばい、早く使いたくてたまらない、これはすごい、すごすぎる!! 見ろよこの工作機械、超小型の最新鋭溶接テーブルまで備えてるし、切削精度もダンチの型番じゃない! 人形整備機器のOSもあのクソたっけぇOSが搭載されてるし、ダミーの再構築だって簡単にできそうだ!! 銃器の改造だって今まで以上に正確に素早く頑丈に仕上げられそうだし、場合によっちゃいままでできなかった弾薬変更すらできるかもしれない! バックアップからの再構成のためのASSTシステムの機械を悪用して、本来なら影響が出るような銃器を正規のエッチングとして認識させることすら可能かもしれない……

 

「しきかんさまー」

「しきか~ん」

 

 はっ!?

 

「そのご様子ですと……機材に対しての説明は必要なさそうですね? もしかして、全部使い方がわかっちゃったりします?」

「おじょ……指揮官のことだから全部わかってるんじゃないかな~」

「……上が、データルームから資金を奪ってでも整備室を充実させた理由が何となくわかりました」

 

 呆れた眼差しとため息のカリーニンと、なんかもう悟った顔してる59式がいた。……ちょっと、59式、アナタの性能は私の整備と改造あってのことだってわかってます?

 

「逆に、整備室の人員は現時点では配備されておりません。ある程度の戦術人形の頭数が整うまでは、指揮官様が全てなさったほうが逆に効率的と判断されたからです」

 

 ただ、聞き捨てならないこともこの後方幕僚はのたまっている。

 

「ちょっとまて、それ私が過労死コースじゃないの?」

「およそ10体を超えるまでは、ですので、上も割と早めに人員を送ってくるのではないでしょうか?」

「……あまり信用できないから、とにかく頭数を増やすことにするわ。戦闘中に保護、救出した人形は、特に所属が判明しなければここの所属にしていいんでしょう?」

「確かにそうでございますが……この近辺で行われた戦闘はそう多くないので、救出、保護はあまり望めないかと……」

「……マジ? じゃあ、まずは種別無視して頭数増やすところから始めないといけないのね……となると問題は資源? 後方支援要請はちゃんと来てるわよね?」

「はい、そちらは」

「ならいいわ。後は、哨戒への対策と、妨害案と迎撃案を練りましょ。資材が十分にあれば、ヘビーレーザータレットでも置きたいところだけど……核物質ないだろうなあ」

 

 はー、とため息。

 核物質は、核融合発電機にヘビーレーザータレット、各種ターゲッティングシステムに必須なので潤沢に欲しいところなのだが……などと考えていると渋い顔のカリーニンと目が合った。

 

「あの、指揮官様。核物質の陳情は今朝方申請したのですが、当然5分で却下されまして。ヘリアントス上級将校直々のコメントで、最悪の場合の指令室放棄の際に、確実に問題になるため、と」

 

 ……。

 あ、59式までほっとした顔してやがる。

 

「わかったわ、非合法ルートで調達してこいってことね」

「物騒なことを言わないでくださいませ!! 放射能汚染は下手したら一万年の荒野なんですからね!?」

「へーい、わかりましたよーう」

 

 ちぇー。副産物の劣化ウラン弾とか作りたかったぜ……。え? 劣化ウランはそういうものじゃない?

 

 

 

 昼食後。

 

 ピピッ

 

「お」

「メールですね、指揮官様」

 

 執務室でカリーニンと確認事項を処理していたら、メールが来た。差出人と件名をチェック。といっても、今ここにメールを送ってくる用件があるものなど一箇所しかいない。案の定、そしてようやく、本部司令室から配属予定の戦術人形のリストが来た。

「本部からの配属人形のリストね。いいのが来るといいんだけど……」

 呟きながらタップしてリストを開く。

 

 一人目、Five-seveN。

 ハンドガンか。59式もそうだったが、ゲームでは通常の製造で出ないイベント限定、なんて括りは存在しないのだろうか?

 ともあれ、ハンドガンの中でもハイエンドと言っていい性能をしていたはずなので大歓迎である。

 

 二人目、SPP-1。

 またハンドガンか。そしてまたイベント産。実銃は水中拳銃だったか、とても珍しい括りのハンドガンだったかと思う。

 陣形効果が優秀だったんだったか……確かFive-seveNと食い合うんじゃなかったか? 59式だっけ?

 

 三人目、CZ75。

 またまたハンドガンか。そしてまたまたイベント産。ハンドガンなのにいわゆる竹槍運用ができるやつ……だっけ? 斧はそういや扱ったことないなあ。

 ともかくそこまで育ててなかったのでイマイチ判らない。

 

 ていうか全員ハンドガンかよ!? 確かにレアリティは高いかも知んないけどさあ!? バランスってもんはどーなってんのさ!?

 

「……カリーニン」

「はい、指揮官様」

「全員ハンドガンなんだけど、何かの陰謀? SMGは? ARは? RFは? いないの?」

「……は?」

 

 カリーニンのタブレットにリストを転送してやった。それを見て、カリーニンの顔が曇る。

 

「……その、人形製造にランダム要素がある以上、配備される人形にランダム要素もあるので……そ、そのせいでは……?」

 

 カリーニンにも予想外らしい。

 

「あとは……哨戒は当然夜間も行われるので、その為の索敵能力を優先させた結果……かと」

「それっぽいけど流石にその理由だったら、見張るだけになるからねーわよ」

 

 とりあえず抗議も兼ねて、合コンの負け犬もといヘリアントス上級将校に状況と理由を伺うメールを出しておく。

 ……というか、合計で戦術人形が4人しかいない以上、残り一枠、まさか私じゃねえだろな……?

 あくまで私は人間であるので、多Link人形のような手数と火力と耐久は到底持ち合わせていない。仮に一撃の威力が倍のARを持ち出したとしても、4Link人形のほうが更に火力は倍となるはずだし、59式のような、人間と比して圧倒的な回避能力があるわけでもない。いや、……対装甲もかねて狙撃支援ぐらいはできるか?

 後は、効率が落ちるのであまりやりたい手段ではないが、戦術人形に別の銃器をエッチングしてしまうか……それは最終手段か。

 というところでふと思い出す、もっと別の根本解決手段があったではないか、と。

 

「カリーニン、とりあえず一体、人形の製造申請を出しておいて。使用資源は、くっそネゲヴレシピも回せない……130ALLかしら……」

「いきなり製造でございますか?」

「お、新しい子~?」

「とりあえず一部隊分をフルメンバーで運用できるようにせにゃならないもの。頭数は大事よ?」

 

 いきなり少ない製造権利チケットを切ることになったが、これらは最終的に枯渇するまではただの数合わせにしか過ぎない、という考え方もある。死蔵して襲撃を受けて撤退するか死ぬかするより、現状では使い切っておくぐらいのほうが有意義だろう。

 

「そうそう、快速製造チケットも切っておいてね、それなら、最悪でも結果だけはさっさとくるでしょうし」

「かしこまりました」

 

 というやり取りを経て、昼食後の作業は再開された。

 

 

 

 その後、新たな確認すべき書類の確認等のデスクワークをしていると。

 

 ピピッ

 

「……お。早いわね」

 

 早速だが、製造結果の通知が来ていた。

 戦術人形は、ASSTシステムにおいて最大限の恩恵をうけるために、扱う銃器に合わせて躯体や性格面がデザインされるというのは知っての通り。だが、なぜ製造が狙ったものだけ生産できないのかと考えると、おそらくは戦術人形のコアとしての製造面で、カオス理論的なサムシングのせいで特定の人形向けのコアだけを生産できるものではないのだろう、という推測が立つ。ダミー修復どころか素材からの再生を行ったこともある私は、躯体の生産はそう手間ではない事もわかっている。

 全てはコア生産がランダムなのが悪いのだ。

 

 グリズリーマグナム。

 ハイエンドモデルハンドガン。

 

 そう、ハンドガン。

 

 とりあえず、徹甲弾装填したスナイパーライフルを担いだ私が狙撃支援をしなければならないことは確定した。

 ハンドガンで装甲目標を貫けるわけ無いだろいい加減にしろ。




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