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気がついたら五歳児になっていましたまる
今現在、僕はクレヨンで汚れた使い古した画用紙に向けて先に述べたような文章を書いてみた。
やけに大きく感じるA 4サイズの画用紙とは相対的に、握って閉じて握って閉じてを繰り返した後に自分のものだと判定したもちもち肌の小さな手を使って、子供サイズの椅子にぴったりフィットしながら腕を組み、辺りを見渡した。
全体的に何もかもが大きい。いや、実際は僕が小さくなったのかもしれない。
……めいびーの話をしているのではなかった。事実、身体が縮んでしまっていたのだから!
「あれぇー?こうひ君はお描かきをしてるのかなぁー?」
唐突に横から声がした。振り向いてみると見知らぬエプロンをつけた女性が中腰で話しかけていたのだが、知らないはずなのに、何故かこの人が先生だとわかった。
そして、身に覚えのないはずなのにしっくりする名前も。
「先生」
「どうしたのぉ?なんだか少し大人しくなっちゃったねぇ。お絵描きに疲れたのかな?何を描いたのか、せんせー気にな、るぅ……なぁー………」
急遽引き攣った表情をした化粧で若作りをしている先生の視線の先を辿った。
【気がついたら五歳児になっていましたまる】
達筆とは言えないがある程度読める字で書かれた漢字を含めた文書がそこにはあった。
「こ、こうひ君ぅ?これは────」
「本に載ってました」
「え、え?えーっと、いつの間に上手に話せるように────」
「えほんに発声練習をよくするための論文が書かれてました」
「ろ、論文……!?な、なんでそんな難しい単語を────」
「難しい単語を使いたい時期なのです」
以前、婚活に失敗して職員室で一人泣いていたの見られてお菓子で取引をした先生の言葉を完全に論破?した僕は改めて文字を見直した。
頭を悩ませながら重い足取りで何処かへ行ってしまったぶりっ子気味の独身な先生を無視して、文字に目を馳せるも、違和感を抱えたものだった。
なんか、こう……昨日の夕飯を思い出せないでいる感じだ!
……いや、これも違う。なんかしょぼいしこれ以上適切な表現が──
『数分前に置いたスマホの場所はどうじゃ?』
無造作に置いてしまって度々見失うアレか!ついでにマナーモードで待機させるため自力で探さないといけない疲労感。思い出せそうで思い出せないあの感じ……!まさにそれだ。
───で、何で神様のじいさんの声が聞こえるんじゃん?
『お主が転生できたか確認するためじゃんじゃん?』
渋さの欠片もない声が僕に合わせた回答をしてきた。
威厳がなく普通に近所に住んでいそうなじいさんだが、僕はこの人に会った。その事は覚えていた。いやだって数分前別れたばっかだし。
でも、今はこのじいさんのことなどどうだっていい。
────神様のじいさん、僕、なんか色々と記憶がないんすけど?
『え?あたりまえやん。自分から言ったんやで?俺に前世の記憶など必要ない!!とな』
────はいはいダウト!僕は”俺”なんて一人称使いませーん!
『でも必要ないって言っておったぞ?黒歴史は』
────な、に………ッ!
脳内に直接流れる忌まわしき単語に思わず幼いくりくりとした愛らしい双眸を……鏡みてないからわからんか。
いや、ちょっと待てよ僕。転生した僕は容姿が変わってイケメン君に変身しているかもしれないのでは……!
淡い希望に胸が踊る。きっと今、キラッキラな効果音がつくほど黒い瞳が……黒い…黒、黒れき、し………
────なんだろう、この心臓を抉るような焦燥感。
『それが…………恐怖じゃ』
……なにスカしたこと言ってんの?
だが、じいさんが言うことも一理ある。何があったかなど知らない。
グッバイ、我が闇の───あ、やっべ。バイバイ黒歴史だった。
『うむ。いいことじゃ。君の黒歴史など見るにも耐えれんわ。忘れてしまった方がいいじゃろ』
……気になるけど聞きたくないなぁ。
気になることは多数あるがじいさんの言う通り忘れた方がいいのだろう。
無駄なことを考えるのをやめた僕には次の確認事項があった。
咄嗟に思い浮かんだ僕は妙に慣れない身体を動かして手洗い場に向かった。
『何処に行っておるんじゃ?』
───いつまで僕に構うんですか?暇神なの?
『失礼じゃのー。これでも一応最高神じゃよ?』
───ハッハッハ!なら世界はとっくに終わっているね!
『えー少しは儂を労っておくれよー。めっちゃ世界を見てて疲れておるんじゃよー』
孫に甘えるような接し方にイラッとする。なんでじいさんを労わなきゃならないのだ。ってか可愛いねーちゃんにでも頼めよ。女神様とかいないの?
『セクハラパワハラはNGに決まっておるじゃろ。これ以上ばーさんから拳骨くらいたくないわい』
────あれ天使の輪っか的なやつの神様バージョンじゃなかったのかよ
『ただのばーさんの殺神拳骨じゃ』
────くたばっとけば良かったのに
じいさんから「よよよ……」と下手な泣き真似が聞こえてきたが無視をする。すると僕とは違った純粋無垢な声が他方から聞こえてきた。
先生(結婚相手募集中)がいたように、此処は幼稚園だ。
生後五年間で見てきた知識を使って的確に廊下を進む時にチラリと見た時計は昼過ぎを示しており、ご飯を食べた後で元気が有り余っているのだろう。
少々距離があるのでついでにじいさんに質問しとこう。
────なぁじいさん。なんで僕は五歳で転生したっていう記憶あるの?
『なんじゃお主、幼稚プレイが好みだったのか?お主の母親は容姿がいいから確かに興奮するかもしれんが赤ん坊の身体ゆえ反応しないのでの。悶々とするのは嫌じゃろ?だから儂が気を使って五年と六ヶ月と二十一日後にいらない記憶を外して転生させたのじゃ』
尚、話し相手にするのではない。
要件が完全になくなったので、「儂もかわゆい女子に甘やかされたーい!」と駄々を捏ねるじいさんを無視して短い足で歩いていると、やっとの事で低い位置にある鏡を見つけた。
『ぷりぷりの尻を撫で────おっと。鏡を見に来たのか。顔面評価が気になるのじゃな?』
────黙れ変態ジジイ。奥さんの尻に敷かれてろ
『えー若い子がいいー』
会ったことのない神様のおばーさんと知り合いたくなったが、今は後だあと。
さあ、見せてくれ。長い時を共に過ごすこととなる僕の顔面よ!!
(・_・)←ここまで目は丸くない。寧ろ鋭い。
一瞬にして足が崩れ去った。
う~~~ん。微妙!!てか目付き悪ッ!くりくりしてるどころか鋭いよ!そして濁ってね?
『神様を放置した結果じゃね?あと、顔はランダムじゃから儂関係ないもーん』
────なんだよそれ……。でもまぁ、前世に比べれば……あれ?前世の僕ってどんな顔だったっけ?
『黒歴史レベル』
────それは酷い
何も言えなくなった僕は自身の顔をぺたぺたと触ってみた。
でき物や脂は全くないすべすべしたお肌に硬い表情筋────って、表情筋硬ッ!うそーん、スマイル連発できないじゃん。
あ、でも目が濁った目つき悪い男のスマイルなんて需要ないからいっか。供給だけあっても赤字確実になるだけだし。
しかしじいさんが言うことに、マシになったからよかったのかしら?よくよく見たらいい感じだし?
ちなみに自画自賛ではないはず。まだ他人の顔のような気がするし。
『必死に自分の顔を正当化させておるとこ悪いがもうすぐ教室に戻った方がよいぞ?』
────正当化って……まあ、そうだけど。
正当なことを言われて癪に障るが、大人しく来た道を逆に歩く。
一番の不安要素を取り除けた僕は少しスキップ気味に鼻歌を歌いながら廊下を渡って行った。その間は面倒だがじいさんの話し相手となっている。
『最近の世の中は辛いのぅ』
────初めてまともな事言ったな
『コンビニでエロ本が買えんじゃと………?男の夢を潰す気か!』
────訂正。政治とか全く関係ない話だった
『じゃと言っても、儂神だから人間の政治などどうでもいいんじゃが』
────それもそうか。でもじいさんは普通にいるじいさんみたいだからてっきり新聞読んで庭園でお茶啜りながら勝手に意見言ってるかと思ってた。
『それはばーさんじゃ。儂はお茶を入れる方な』
────尻に敷かれてるじゃん
『だから可愛い娘がいいと……やっべばーさん帰ってきた。それじゃ、暇になったら話しかけるのぅ。そちらから話しかけてもいいぞ?』
────出来ればそんな機会がないようにするよ
思考より早く口吟む鼻歌を聞きながら歩いていると玄関に辿り着いた。
もう少しで所属しているクラスに着く。取り敢えず子供っぽいことしていた方がいいのかと考えている時だった。
「と~~~ぅ」
どんっ
気の緩むような声と共に少し危なげな擬音が聴こえた。何事かと思う前に訪れた衝撃に驚いた僕だったが、バランスをとって何とか背中に付着した何か、いや誰かの方を見た。
「おー、こーくん、ぐっど~」
僕の名前を渾名で呼び、尚且つ五歳児とはいえど異性相手に強制的におんぶをさせる相手など、一人しか検索に引っ掛からなかった。
合わさった記憶から、背中に引っ付いている女の子の名前も簡単にでてきた。
「モカ、危ないから飛びつくな」
「えぇ~。いつもなにもいわないのに~」
確かにいつもは何も言わない。転生して記憶を受け継ぐ前の僕は諦めて何も言わなかったのだ。
……色々と言いたいことはあるが諦めたのは僕でしたわ。だから何も言えないのである。
それを良しとして幼い銀髪の女の子──幼馴染の青葉モカはご機嫌な様子で僕の首に手を回して落ちないように強く抱きしめ始めた…………
「ねーこーくん。さっきうたってたけどなんのうた?」
「……………」
あの、モカさん?
「もかちゃんはねー。うたうのもすきだけどパンがたべたいな~。こーくんはいくつたべたい?」
「………ひゅぅ……」
「きゅう?9こたべたいの?じゃーあー、もかちゃんは10こたべる~」
唯一発音が完璧だったパンの話はいいですから、手を話してくれません?
あ、もう虫の息になりかけ、て………あっ
「モカちゃーん、青葉モカちゃん!いませんかー?
尚、僕の意識は二十代で去年ご結婚なさった別の先生により万が一はなくなりました。
これが、都築 光琲の新しい生活の始まりの日だった。
***
『こーくんだいじょーぶー?』
『だ、だいじょーぶだから、首を……あと頬、触るの、らめ………』
『このたいせーじゃないとほっぺたのまっさーじできないのだ~。こーくんはほっぺたこってるからねー。いたいでしょー?』
『………もう任せます。先生。モカの相手は僕がしときます』
『教室にいないから探したけどいつも通り見たいね。先生が見える範囲で遊ぶのよ?』
『は~い』
目を濁らせる少年の目から光が消えかけた様子が画面に移されるのを見届けて、一人、いや一柱の神である老人は頭にできた真新しい二重にできたたんこぶを摩りながら視線を外した。
「どうやら新しい世界に適応出来たようじゃのぅ」
安心した様子の老人が見つめた先にあるものは一枚の新聞。
そこには大きくとある報道がされていた。
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《天才ギタリスト、死去。自殺の裏には何が》
昨日午後、有名ギタリストのーーーーが屋上から飛び降りた。病院に緊急搬送されましたがまもなく死亡。ーーーーは18歳となる今年、バンドグループのリーダーでプロ入りを声明していたが話し合いの結果ソロでのプロ入りを最終的に発表した。ソロとなった理由は明らかにされていないがメンバー内でトラブルになっていたと聞く。関係者によると、他のバンドメンバーの実力が足りないとスポンサーから告げられていたがーーーーはこれを拒否。しかしこの事が種となってメンバー同士が対立。
このことをSNSではーーーーを保護し、他のメンバーをーーーーの決意を無下にしたと批判が殺到し、メンバーの一人が同じく自殺をした。警察は────
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そこに書かれていた名前は文字化けを起こしたように読むことは不可能だった。
『………僕はもう死んだんです。だから生き返りなんて必要ないんでもう、楽にさせてください』
絶望を具現化させたような酷い顔をしていた。ピクリとも動かなくなった青年の表情だけは、ランダムで決められた顔ではない。無意識のうちに彼が硬直させているだけだ。
だが、彼の表情を取り戻すことは老人にはできなかった。
故に、多少無理矢理であったが彼を転生させた。
その彼は幼い少年となって、今は同い年の少女によって解されていた。
願わくば、彼女が彼の心の支えになりますよう。
祈り、そして話し相手としかなれないが彼には幸せになって欲しいのだ。
老人は立派な庭園から夕焼けの空を見上げた。空のように、彼が広く、そして前世で叶えられなかった夢を続けられるように───
「アンタ!お茶の準備は!!」
「へ、へい!ただいま持っていきます!!」
「久々に仕事をしていたと思ったら尻尻尻連呼して………ついでに皿洗いもしときな!」
「へ、へい!ただいま始めます!!」
───儂、最高神なのに……
他人の色恋話をこっそり見るよりも前に奥さんの御機嫌を取り戻すことが重要なのだと老人は溜息を漏らした。
「ちゃっちゃと終わらせな!」
「うわー!儂も幼馴染が欲しいー!」
「じーさんが何言ってんだい!!」
ゴフっ
老人は彼と同じタイミングで気を失ったのであった。
ゲームでスター大量入手―――――――でも当たらない。