モカちゃんわ~るど~   作:永遠の孤独者

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不定期投稿ですがきちんと書きます。
よろしくですm(_ _"m)


バイト後はつらい

喉かな春風が窓から吹いてくる。

暖かな陽気にあてられ、窓を二箇所ほど開けたとあるロビーに、僕こと都築光琲は高校のブレザーを脱ぎさってベストを着込んだ状態で受付に座っていた。

 

 

「───暇だ」

 

僕が転生してから十一年ほど歳月が経過した。

驚くほど笑わないショタから青年へと進化したわけだが、おそらく二度目の高校生活は特に思い入れはない。

あ、おそらくって言ったのは前世の記憶がほぼほぼないからです。前に神様のじいさんが例えたように無意識に置いたスマホの場所のように突如思い出すこともあれば引っ掛かる程度で記憶の壁により阻害されることもある。

 

幸いなことに学習してきたことに関してはそのまま記憶が継続されていたため”見た目は子供、頭脳は大人”がリアスがちでできたのである。

前世からそこそこ成績がよかったみたいな僕は小中学校で天才と言われながらすくすく育った。高校の勉強も振り返りすれば解けないことはない。ついでに文系だ。

他の学生諸君が必死こいてテスト前に暗記シートを持っている様子を高望みすることができたわけだが、そのぶん他の学生と違って時間が余る。

 

僕が通う高校は男子校だ。女子との甘ーいシチュエーションなど皆無…寧ろそんなことがあれば後の処理が大変なためしないが、とにかく暇なのだ。

ならばバイトをしよう!

 

そう思ったのだが……

 

 

「受付は特にすることがないな」

 

 

僕がそう言っても誰も受け答えしない。

一人寂しく受付内でボーッとしてますはい。

 

 

『衛生兵!ここに暇人がいますぞ!』

 

────あんたも同類だろ暇神

 

『儂神じゃもーん。おなじヒマジンでも人と神様とで格が違うんですぅー』

 

 

なんか近未来の介護用ロボみたいだった。

少しでもボケないように話しかけてくるアレだ。

 

 

────神えも~ん。どこでもドアだしてー

 

『あんな木製の不思議ドアなどできるわけないじゃろ』

 

────早々多くの子供たちの夢をぶち壊すなよ

 

『現実を知らせることも大切じゃろ?』

 

 

僕は皆に神の実態を知らせたい。下手したらこの世に宗教が全て消えるかもしれない爆弾を世に示しあげたい。

 

 

『文系なお主なら小説でも書いたらどうじゃ?タイトルは”最高神様さまに転生させてもらった僕はがんばります”とか』

 

────ラノベかよ。大ヒットしてもぜってー宗教幹部の方々読まないし、題名がもう安直すぎて初めてネットに投稿した小学生が書いたやつかよ

 

『残念。中学生が書いたやつじゃ』

 

────黒歴史確定だな

 

『そうじゃな。これが友人にバレて一時期登校拒否したし。映像化させて流そうか?お主がベットの上でひとり言い訳している動画』

 

 

僕かーい。

確かにこれは黒歴史だ。グッジョブ、記憶を消させた前世の僕よ。

大人な僕は今世の中学時代静かに過ごしていた。だから今は安心できる。黒歴史がないだけでなんて清々しいんだ。世界ががらりと変わって見える。

 

 

『余韻に耽けておるところ悪いんじゃが動画をお主のスマホに転送しようか?』

 

────余計なことすな。そして無駄にハイテクだな

 

『だって神様じゃもん』

 

────どこでもドア作れないのに?

 

『いつでも好きな時に瞬間移動できるし。ついでにタイムマシン的な時間移動も可。さいこーじゃろ?』

 

────神様まじやべー。僕の黒歴史消せない?

 

『バタフライエフェクト知っとるか?ヒトは過去は変わらないと結論づけた。だから儂はそんな面倒なことしないんじゃ』

 

────けちー

 

『なんじゃとー!儂はばーさんにめっちゃ買い物させておるぞ!どうじゃ、太っ腹じゃろ!』

 

────ただの威厳がない夫じゃん

 

『…………………何も言い返せない自分が憎いっ!!』

 

 

このやり取りももう十年は続けている。

たまに忙しい時があるらしいが大体が暇なため話し相手になっているのだ。

駄目神様は奥さんである神様の愚痴を延々と語っていたが、何か気づいたようで僕に言った。

 

 

『そろそろ退職したいんじゃがばーさんがまだ働けとしつこく言いおるから───ん?お主、メール来たぞ』

 

────いきなり便利ツールみたいに言うなよ。誰から?

 

『モカちゃんじゃな』

 

 

数年僕の話し相手となったということは当然僕の身の回りも知られている。

『こんな孫欲しいの~』と以前呟いていたじいさんはモカを気に入っているらしい。おかげさまで僕がモカを怒らせると必ずじいさんからお叱り言葉がかかる。

 

早く返信するんじゃぞ?とモカに激甘なじいさん。

溜息を吐いて、中学は同じだったが高校生となった今でもかなりの頻度で交流している幼馴染のメールを見ようと何故か指紋認証ができなかった一年使い続けたスマホのパスワードを打ち終わったその時だった。

 

 

「仕事中だよ。携帯はよしな」

『相変わらずうちのばーさんよりキツイな』

 

 

じいさんの声は無視していいにしろ、無視できないお方から声が掛かった。

 

いつの間にか受付の前で腕を組んでいた女性。五十は確実に超えているが未だに腰が曲がることのない姿勢で睨みつけるその人。

僕のバイト先であるライブハウス「SPACE」のオーナーにして────

 

 

「婆ちゃん」

「光琲。此処ではちゃんとオーナーって呼びな」

 

 

わたくし都築光琲の祖母である都築詩船であった。

衰えることのないハリのある声で孫相手に容赦しない性格の祖母は僕が持つ携帯を睨みつけた。

 

 

「緊急かい?」

「いや、モカからだと思う。要件はまだ確認していない」

「そうかい」

 

 

ふぇぇ~。おばーちゃん怖いよぉ~。

内心心臓ばっくばくな僕だが表に出ない。

神様のじいさん曰く、表情筋硬すぎて感情が乗らない、らしい。

 

いやーん。ただのクールなイケメン君になるじゃないですか~!

 

 

「まーた、変なこと考えてたろ」

「ごめんなさい。しかし婆ちゃん。今日は予約も入ってないし当日予約もないから他の仕事はない?手伝うけど」

「ないね。だからあんたも今日は早く帰んな」

「ん?後片付けとか───」

「いいよ。残りの従業員でやるから。今日はあんたの父親が帰ってくるんだろ?出迎えてやんな」

 

 

───さ、さすがお祖母様!さすおばです!

 

僕の父親、つまり婆ちゃんの息子なんだが。親父は社畜まっしぐらのサラリーマンで各地を転々と出張している。

普段は息子だろうが孫だろうが厳しい婆ちゃんであるが我が家の団欒のために……!

 

 

『うちのばーさんもたまにでいいから優しくして欲しいなー』

 

────もっと財布にでもなったらいいんじゃね?あといい所で会話に入るな

 

 

帰った帰ったと追い返したらわざとらしい泣き声を上げて退散していったじいさんはやっぱり無視して、僕は椅子から立った。

 

 

「ありがとう婆ちゃん。親父に伝言ある?」

「いい加減土産を持ってきなと言っといてくれ。光琲もお母さんと一緒に来な」

 

 

家は別々なため、僕は月一くらいで婆ちゃん家に行っている。昔はもっと頻度は多かったが今はバイト先であっているため減ったが。

遠回しに家に来なさいと言った婆ちゃんは嫁姑関係であるうちの母親とは仲がいいため誘ってきた。

 

ほんと、平和な家系である。

前世では親孝行など何も出来なかったと以前思ったことがあったのだが、何故かそこまで後悔しなかった。

前世の思い出が欠けているためそれが原因かわからないが、今の両親と祖母には必ず恩を返そうと思う。

 

 

学校帰りにバイトに来たため学校指定のバックをからってライブハウスを後にした。

楽器を弾いたことなどないはずだが扱い慣れた感覚のある僕は貸し借り用の楽器の手入れ等を主にしていた。

そんな毎日の仕事を終え、見慣れた道で帰ろうと思った矢先、忘れていたことを思い出した。

 

 

「モカからメール来ていたな」

 

 

何事だろうとスマホを開いた僕だったが、文面を見てすぐに肩の荷が下がった。

 

 

迎えにきて~

 

 

棒線含めて六字の文章に呆れた気分が大半を占めた。

時計を見る。親父が帰ると電話で言っていた時刻まで時間はあった。

急遽予定を変更して、僕はとあるコンビニに向かった。

と、そのまえに。歩きスマホは感心しないから返事を忘れない忘れない。

 

 

「自分で帰りなさい、っと」

 

 

少々足取りを早めて、呑気に待っているであろう幼馴染のバイト先へ向かった。

 

***

 

 

少しばかり歩いたところ、小さな公園が見えた。遊具もほんの僅かしか揃っていない質素な公園だ。

いつもなら気にかけないはずの公園がふとした拍子に目に入ってから何故か離れない。

気になって除いてみる。

中央に砂場があってその側にすべり台とブランコがあるだけの最初と同じ印象を与えるものだった。

古びた遊具だったため雨風に晒されたのだろう。媚びれついた錆は変色して鈍い色にしていた。

小さな公園の周りには僕と同じくらいの身長ほどの丈のある植物の葉が囲っていた。その下元には地元の人達が植えたのであろう鮮やかな春の植物が花を咲かせていた。

夕日がさしこもうとする時間帯だ。

オレンジに照らされた花たちが別の姿を見せる様に柄ではないが見蕩れていた。

その時だった。

 

 

「おぉー。こーくんだ~」

 

 

横から僕の名前を呼ぶ声がした。

まったりとした安定感のあるその声は周りの静寂に流されることなく、ゆらりと僕の耳まで届いていた。

振り向くとそこには色はげたベンチがあった。一脚だけの休憩場にはひとり、堕落してそこに座る少女が。

 

先程の花たち同様、夕暮れが染める色が彼女の美しい銀髪をより鮮明に輝かせていた。

そしてなにより、

 

 

「どうしたのー?モカちゃんのかわいさに見蕩れたのー?」

「いや。肉まんあつあつだなって」

 

 

彼女が美味しそうに頬張っていた肉まんに湯気が見えた。めっちゃ美味そうです。

 

『まったく、お主は乙女心がわからんのぅ』

 

────わかるなら奥さんの機嫌直して出直してこい

 

『グフッ!!な、なんてブーメランを………!』

 

 

すぐさま退場したじいさんの声は聞かなかったことにして、モカが持っているビニール袋にもう一個肉まんないか尋ねようとしたのだが、

 

 

「なぜに詰め込んだ?」

ふぇふひー(べつにー)?」

 

 

全ての肉まんを小さい口に詰め込んだモカの頬は両方とも膨らんでいた。

そして、これまたなぜか目がジト目であった。悪いことでもいったのか?

 

 

『何も言っておらんからダメなんじゃ』

 

─────じいさんシャラップ

 

 

もうレッドカードだから。ほんと。

 

だが、じいさんの言うことが仮にも、万が一にも正しいとしたら何か言い忘れたことでもあったか?

 

 

「なんで此処に?」

ほーふんふぁ(こーくんが)───」

「食べ終えてからでいい」

「──ごくんっ。……こーくんが遅いなーって思ったから。でもー、疲れたから休憩してたのだ~」

「そうか。ならばいつも言うが僕を呼ばずに帰ればいいのに。リサさんと一緒じゃダメなのか?」

「リサさんもいいけどー、私はこーくんと帰りたかったのぉ~」

 

 

そっぽを向いてしまったモカ。

しまった。また何か選択ミスった。

更に不機嫌となったモカはビニール袋から最後の一個と思わしきほかほかの肉まんを掴みそして一口……って、

 

 

「モカ。一口くれ」

「鈍感さんなこーくんには必要ありませーん」

 

 

えぇっ。なんで鈍感認定されてんの。

こちとらピュアっピュアでシャイーんな敏感さんだよ?顔面固まってるけど内心ばっくばくだよ?

 

 

「そんな怒らないでくれ」

「べつにー、怒ってないよーだ」

 

 

いやいやいやん。それ完全に怒ってるやん。

さてどうしよう。

リアルの世界ではギャルゲーよろしく選択肢など存在しな───

 

 

『選べ!

①「モカ。夕焼けに染まる君は……美しい」

②「しゃーないなー。この俺様がなんでも言うこときいてやんから許してちょ」』

 

────あんたが決めんなよじいさん

 

『えー。でもこれ一種の神託じゃよ?聖女ちゃんが必死におねだりして聞いてる神託を無償できけたんじゃよ?』

 

────おねだりって……キャバ嬢じゃないのに

 

『それよりいいのか?ギャルゲーで培ってきた儂の神託は伊達じゃないぞ?』

 

────あんた神託舐めてんな?………ほんとにどっちか言った方がいいのか?

 

『イグザクトリー!さすれば好感度うっはうっはじゃ!』

 

 

べつにモカ相手に好感度などいらんのだが。幼馴染だし互いによくわかっている仲だから好感度云々などとうの昔にどっかいった!

しかし、今回は僕自身が言葉を思いつけないのでじいさんを、じゃなくてギャルゲー知識を信じよう。

 

「仕方がない。なんでも言うこときいてやるから許してくれ(しゃーないなー。この俺様がなんでも言うこときいてやんから許してちょ)」

 

 

……言葉に出すとなんか自然に翻訳された件について。

僕のピクリともしない表情筋は意志とは裏腹にイケボでクールに選択肢の文章を変換して言った。

まぁ、一番は元からクサイセリフだったためパスしたがそこまでキザなことは言ってないから黒歴史にならないだろう。

一安心したとほっとしたその時だった。

 

 

きらーん

 

 

モカの目が光った。え、チカっと閃いたの?

 

 

「仕方ないなーこーくんは。ココロが寛大なモカちゃんはどーしよーもないこーくんを許してあげる~」

「あ、あぁ。だから一口肉まんを────」

「肉まんもあげるから~…………今度の日曜あけといてね?」

 

 

ぴ、ぴきゃやああああぁぁぁあああッ!

も、モカが、あのモカが久々に普通に喋ったあああっ!

やっべ。バットのルート選んだ。じいさん!セーブは!

 

 

『人生にセーブなんてあるわけないじゃろ?』

 

正論だよこんちきしょー!

ってかじいさん!バッドルートあるなら教えろよ!

 

 

『何言っておるんじゃ。両方ともグッドじゃ。いや~日曜が楽しみじゃの~』

 

 

くっ!この色ボケじいさんが。

こっちは日曜に財布の中身すっからかんになるかもしれないんだぞ。モカのことだ。大量のパンを購入させるに決まってる。しかも二日分。絶対銀行直行だ。

下手したらあれ買う金もなくなるぞモカの雰囲気的に。

僕が頭を抱えて(内心で。外面は微動だにしてない)いると、口になにか入った。

 

 

「あっつ!……くないな」

「ちゃんとモカちゃんがふーふーしたのだー」

 

 

ちょうどいい温かさの肉まんを押し付けられたため遠慮なく一齧りした。

タイミングよく肉まんが離れると、二つの歯型が重なっていた。

 

 

「えへへ~。間接きすだね~」

「いや、今更じゃないか?」

 

 

すかした顔で言う僕。

え?全然ピュアっピュアでシャイーんじゃないって?

でも内心は

 

〈ぎゃあああぁぁぁあああああ!間接キス!間接キスだぁあああああああ!は、恥ずかしい!恥ずかしいよ僕は!そしてモカちゃん!はにかむようなその天使の笑顔はなんですか!なんてハレンチですかけしから羨ましい!あ、僕が当事者だった。うん。………うぉおおおおおおおおおおおおおお!なんて日────〉

 

大興奮でございます。隠すつもりは微塵もありません。

でも、外面に現れないからこのままでいきます。

 

下から覗き込むように僕の顔を覗うモカだったが、残りの肉まんをすぐさま完食すると、荷物を僕に持たせて歩き始めた。

 

 

「日曜日も楽しみだけどー、先ずは出発しんこー」

「……はぁ。お手柔らかに頼むな」

「わかってるよ~。こーくんに迷惑はかけないよー。それより早く帰ろー?晩御飯はすき焼きだってこーくんママ言ってたよー」

「わかったわかった。……………何故うちの晩飯を知ってるんだ」

「ごちになりま~す」

 

 

母さん……モカを夕食に招待するのはいいけど先に息子に連絡くださいよ。

結構前からモカに甘すぎじゃないでしょうか?誕生日プレゼントだって僕には五千円の図書カードなのにモカには七千円のパン詰めとか意味わかんねぇよ。

 

 

「楽しみだね~こーくん」

「まぁ、そうだな」

 

 

とにかくモカ。いきなりとびきりの笑顔を見せてくるのはやめてくだされ。許しちゃうから。

僕は二人分の荷物を持ちながら、手ぶらのモカの隣を歩いて帰った。

 

 

 

 

 

『ほほえま~』

 

───あんたは来んな

 

 

 

 




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