Afterglowのメンバーはおそらく次にでます。
ちゅんちゅんちゅん。
枕元のスマホから起床のアラームが鳴った。
部屋に響き渡る大音量で流れた鈍い鳥の囀りにイラつきながら、自分が設定したアラーム音を憎んだ。
機械の鳥の囀りなど雅さの欠片もない。鬱陶しいだけだった。
「光琲くーん。起きたの~?」
「………あぁ、今起きた」
僕の部屋は一戸建ての二階の一室。兄弟はおらず、大きめな部屋を一人占領していた。
鳥の囀りがリビングにも漏れて、朝から眠気を誘う甘ったるい声をした我が母のモーニングコールに返事をして、朝食をとりに一階へ向かった。
朝は食欲がないためカロリー○イトだけで十分なのだが、いかせん母親が許さない。
「おはよう光琲くん。昨晩はお楽しみだったわね」
「………朝から変なこと言わないでくれ」
ほんと、その朝一番の挨拶はやめて欲しい。事実無根なのにいい迷惑だ。
毎日言われ続けるため目覚めから頭が痛い。
『確かにお主には冗談めいた話じゃなー。童貞じゃし』
────じいさんシャラップ
『いいじゃんいいじゃん事実だし』
────もしも僕が卒業していたらどうするんだ!
『仮に、もしもそんなことがあったら儂がお主に卒業記念品でも贈呈してやろう』
────あんたは僕を魔法使いにしたいのか!
『なんかお主、達観しすぎて年齢疑うもん。儂と同じく可愛らしい女も全て”ほほえまー”って見てるじゃろ』
────人を枯れているようにいわない!あと朝から変な話しません!
じいさんとの会話の最中に完全に目覚めた僕は四十は越えたはずなのに二十代で通じる若々しさをもつ母親がエプロンをつけて大量のトーストを焼いていた。
「………母さん。こんな量食べられない」
「あら~?モカちゃんはー?」
「いや、いるわけないから」
「あららー?あー、そう言えばモカちゃんは
ついでに補足すると、モカの性格はモカの母親とうちの母親に毒されたものだと青葉家と都築家の男性陣でだした結論だ。
それはとにかく、何やら不穏な言葉が聞こえたな。
「変な誤解はやめてくれ」
「まぁ~照れちゃって~。はーい、あまーいコーヒーでーす」
親父はすでに出張に出かけた。故に母さんの相手を一人ですることとなり本当に疲れる。
でも、悪くはない。寧ろ心地がいい。
『お主はやはり砂糖が半分を占めるコーヒーよりあまいのぉ』
────べつにいいじゃん。甘いコーヒー。ってか何故に僕とこの激甘コーヒーを比較した。
『いや、だってのぉ。お主が色々と断れずに流される性格じゃから今日も日曜なのに出かけるんじゃろ?儂としてはほほえまーなのじゃが』
────最近ほほえまほほえま言い過ぎじゃないですかい?
『それくらいお主の青春がほほえまーなのじゃ。リアルギャルゲーする気分で面白いのじゃ』
────こっちがプリ○ュアを見ずに日曜の朝から出かけるというのに呑気なことしやがって……!!
『リアルタイムで中継してやろうか?めんどーじゃから声は儂の声じゃが』
────じいさんが語尾に”ルン”ってつけだしたその日には脳内で延々と成仏させるためのお経を唱えてやる。
『儂、神様じゃから成仏しないルン』
────南無阿弥陀仏!
『お主ぜんぜんお経知らんじゃろ』
どうでもいい会話をしているとすでに一斤のパンが僕の胃の中に収まっていた。どっかの誰かがよく食べ歩きの概念を越えた大食いをしているのに付き添っていたためかなり食べるほうだがまだあるパンの山を見たら双眸から光沢がなくなった。
朝食を終えた僕は外出の準備をして集合場所となった駅に向かっていった。
途中、ガチでプリ○ュアを中継しやがって『キラやば☆』と連呼するジジイのために本気で神撃退のための修行をしようとしたところで、自宅から少しばかり遠いが大きな駅に到着した。
時刻は集合時間の三十分前。
今回は男友達と遊びに行くのではないので男として早く来たのではない。
────じいさん。駅前のパン屋か駅中のパン屋。どっちにいる?
『儂を便利ツールと勘違いしておらんか?』
────CMより鬱陶しい話し相手になるツールなんて便利ツールなんて呼びません。で、どっち?
『まったく、年寄りをもっといたわらんか!駅前にいるなんて絶対に教えてやらんもん!』
────前から言いたかったけど最後に”もん”つけるのやめい
『じゃあやはりル────』
────次それ言ったらじいさんの奥さん信仰して連れて帰ってもらう
黙り切ったじいさんを放って、僕は駅前のパン屋へ向かった。
小さな店は全面ガラス張りで、フリースペースが設けられており、日曜ということで学生達が多く座っていた。
その中に少し大きめのパーカーを来て、いくつものからの袋をテーブルに放置したま ま、おそらく最後であろうパンにかぶりついている少女を発見した。
強化顔面である僕のクールフェイス(泣)を見ても動揺しないパートのおばちゃんに歓喜しながらレジに並ばず、彼女の元へ向かった。
「それで全部か?モカ」
「おおーさすがこーくん。グッドタイミングだよ~」
口元についていた生クリームを拭き取ってあげながら、前回「なんでもいうことをきく」と言ってしまった数日前の僕を恨みつつ、笑顔ではにかむ少女を見た。
「えへへー。ありがとーこーくん」
一瞬、ごろごろして居間にいるじいさんと目が合った。なるほど、これが萌え死ぬということか。
『なわけないじゃろ』
────比喩だよ比喩
今のモカの笑顔はかなりほほえまー、であった。表情筋かたくてよかったよ。常人だったら一発ノックアウトだったよ。
和みきって内心だと酷い顔をしている僕もすぐに平常心を取り戻して、とてとてとゴミを捨てて戻ってきたモカに視線を向けて尋ねた
「モカ。今日の予定は?呼び出したからには買い物に行くんだろうが」
「そーだよ~。こーくんの休日ははモカちゃんにまかせなさーい」
いつの間にか程々に成長していた胸に手をあてて、そのまま僕の腕を掴んで誘導するモカに言われるがまま、僕は歩いていった。
ご機嫌な様子のモカは終始笑顔であった。
***
「とーちゃく~」
僕の腕を掴んだまま、最後にはその手をぶんぶん振りながら楽しそうにモカが歩いているのを横目にみながら歩いているといつの間にか大型ショッピングモールが目の前にはあった。
……やべぇ。最近いつの間にか物事すっぽかしてること多い気がする。ス○ンドに目覚めたのかな?キ○グクリムゾンは授業中絶対便利だよね。どっかのじいさんと比べて。
何故か反応してこないじいさんに不思議に思いながら、引っ張られて店の中に入った僕だったが、その時ぱっとモカの手が離れた。
「?もう腕はいいのか?」
「う~ん。モカちゃんにはまだ早いかなーって思ったの~」
腕を掴むことに早いも遅いもあるのか?
対面にきて両手を絡ませながら僕の表情を覗き見したモカはすぐに背中を見せた。
あれだけ腕をぶんぶん振ったので暑いのだろうか、耳元がほんの少しだけ赤かった。
いつまでも入口で屯うわけにもいかない。
モカの案内の元、最初の目的地だと言う服屋に来ていた。
「長くなりそうか?」
「だいじょーぶー。サイズを合わせるだけだよー」
チラシか何かで欲しいものでも見つけていたのか?
用意周到である幼馴染に感心しながら、少しキョロキョロと辺りを見渡して目的のものをみつけたらしいモカの後ろを着いて行った。
そこにあったのは───
「ペアのパーカー?」
「そうなのだ~」
そこにはモカが好むようなデザインのパーカーがあった。
大々的に限定品と書かれており、値段もそこそこするパーカーだった。
色は一色だけなので選ぶとなるとサイズだけだ。モカが手に取ったものを買ってあげようと考えていた僕だったが、チラリとモカを見ると彼女は僕をじーっと見るだけだった。
「………どうした?」
「んー?こーくんのサイズはなにかな~って」
「何故に僕のを?」
「良いではないかーよいではないか~」
煽ってくるモカの考えが読めないが教えない限り彼女の性格からしてそのまま居座るだろう。
だから僕は自分のサイズを言った。
すると、
「わかった~。じゃーあーこれとこれ~」
「………ん?ちょっと待て。何故二つ?」
僕の質問の意図がわからないという風に首を傾げるモカの腕の中には僕のサイズのパーカーとおそらくモカのサイズだと思わしきパーカーが収まっていた。
「こーくんはなに言ってるのー?」
「いや、片方は僕のサイズのだろ?なんで───」
「こーくん~。ここになんて書いてありますかー?」
モカが指さす方向には堂々と”ペア”とあった。
成程、僕は埋め合わせ的なやつだったのか。
スッキリした僕は尚のことパーカー二着を自分で買おうと思ったが、財布を取り出しているとその間にモカが会計に向かっていた。
「おいモカ───」
「これくださ~い。袋はおんなじでいいでーす」
時すでに遅し。
モカはポイントカードが大量に詰まった財布を取り出して会計を済ませてしまった。
店員さんにより同じ袋に入れられたパーカー二着を嬉しそうに眺めていたモカはそれを受け取ると、店の外で待機していた僕の元へ駆け寄ってきた。
「はい、片方はこーくんのだよ」
「すまなかったな。いくらだったか?僕が払うか────」
「こーくん」
財布から諭吉さんを取り出そうとした手をモカが止めた。
少し真剣な声色になったモカに気づいて顔を上げるとモカは微笑みながら語った。
「これはー、モカちゃんからのプレゼントなのです。バイトの初任給で買ったんだよ~」
「だったら尚更じゃないか。そう言うのはモカの家族に───」
「おかーさんとおとーさんには言ってあるよ~。どーしてもこーくんにプレゼントしたいって」
……………………ヤバい。泣きそう。
固まった涙腺により涙は流れないが心は歓喜しながら号泣しています、はい。
何か背筋が凍るような感じもあるがこの喜びを噛み締めて───
『外堀埋められておらんか?』
じいさんが事実をいいやがった。
うん、確かにこれは次にモカの両親と会ったらどうすればいいか悩む案件ですね。
でもなぁ~
「どーしたのー?こーくんだいじょーぶー?」
「大丈夫だ。問題ない」
余計なことはいいや。今はこの感動だけを胸にしまおう。
次いでに財布の中身もそのまましまいたかったが、昼飯代をこちらで持ったため消えてしまった。
***
「ご飯おいしかった~」
「………際ですか」
諭吉さんがあることを見せたため一切の同情もないモカの食いっぷりに違う意味で号泣しだした僕だが、モカからの予想外のプレゼントへの投資だと思えば安いものだ。そう思おう。
二着のパーカーが入った袋を二人で一緒に持ちながら店内を散策しているとある場所で立ち止まった。
「そー言えばこーくんのおばちゃんってオーナーさんだったよね~」
「お陰様で素人だがバイトさせてもらっている」
広々とした楽器専門店へ自然と足を踏み入れた僕らはまずギターが置いてある棚へと向かった。
「モカは新しいギターとか考えないのか?」
「私の相棒はあの子なので~」
まだギターを初めて間もないモカだがその腕は上昇している。練習中にたまに見るがとっくに素人の枠は超えていると断言できる。
……ん?僕は音楽とか関わった記憶ないんだけど何故に断言できたんだ?
「こーくんもバンドしないのー?私たちなら大歓迎だよ~?」
「ガールズバンドに参戦したらまずいだろ。それに僕は大して上手くないさ」
「えー。でも小学校と中学校での音楽でふつーにピアノとか出来てたじゃんー。つぐもじょうずだーって褒めてたよー?」
「なんで弾けたんだろうな」
そうボヤいた僕はお試し用のギターを手に取った。確か以前にモカはこうやって持ってたなーと考えている間に、僕は自然とギターを弾く体勢になっていた。そして、
「────────あれ?」
「おー。こーくんじょーずー」
意識せずに何故か弾けましたまる
それもかなり上級者がやるようなものだった。曲は聞いたこともないはずのものだ。なのに何故かしっくりくる。
野次として聞いていたらしい別のお客さんも拍手をしてくれる中、僕はひとつの結論をつけた。
『ぎくぎくぎくっ!!』
────おお、じいさんちょうどいい。僕、わかったんだ。僕は、
『ま、まさか思い出したのか……!最高神である儂が施した封印を………!』
────やっぱりス○ンドに目覚めてたらしい
『……………お主よ。早くアンコールに応えてやってはどうじゃ』
────え?違うの?何か目覚めたんじゃねぇの?
『それ以上は考えんでもよい。それ以上いくと────』
────なんでだよじいさん。まさか前世の僕が天才ギタリストだったとでも───
『黒歴史になるぞい』
────僕はいたって凡人です
深く考え込んじゃいけないこともあると、あらためてその日僕は学習した。
そして、あくまで試供品は試すものであって本格的にギターを弾いたら店員さんに注意されるということを。
***
店員さんのお叱りをうけてその後大人しくテキトーに歩いていると夕方になっていた。
待ち合わせという面倒なことをしたが家はご近所の都築家と青葉家なので二人一緒に帰路についていた。
何気ない世間話や僕やモカの幼馴染である他の四人の学校での様子を聞いていると青葉家に到着した。
「今日はありがとね~」
「こちらこそありがとう。パーカー、大切にさせてもらう」
僕のぶんのパーカーは自分のバックの中に移したため、袋を持ったモカが家に入ろうと……あ、忘れてた。
「ちょっと待てモカ」
「?どーしたの~?」
「これ、渡すのを忘れていた」
危ない危ない。
僕もプレゼントを買っていたのをすっかり忘れていた。
バックからラッピングされた小箱を取り出してモカに手渡す。
モカは一瞬驚いたがすぐに真剣な表情になってラッピングを丁寧に取り除いていく。
一分も待たずに開かれた小箱の中には宝石などないシンプルなデザインであるがバイトしている高校生でもそこそこの値段のネックレスがあった。
それに、このネックレスはモカも知っている。
「これって……」
「中一の時に今日みたいに遊びに行って見つけてから言ってたろ。いつか欲しいって。その後もネックレスはしてなかったからちょうどいいなと思って買った。ついでに初任給だ」
まぁ普通にバイトしてたら払えない額だったが僕は楽器のメンテナンスも何故かできたためそれをして小遣いを稼いでいたのだ。
内心でドヤ顔をして、あとはモカの喜ぶ顔でも見れれば万々歳だと思っていたのだが。
「も、モカ?」
「…………」
そこには俯いて肩を震わせるモカがいた。
な、何か悪かったのだろうか。
まさかこれじゃなかった?
それとも実はもう持っていたりするの?三年前に聞いたことだから悩ませた結果、勢い込んで買ったのだが……。
「気に入らなかったのか。すまない。また今度べつの物を買うから今回は許してくれ」
「……………ちがう」
「ん?な、何が違うん─────」
囁くように話すモカの声を聞き取るため彼女に近づいた。
ちがうと答えたモカの心情はわからない。目を見て話した方がいいだろうと思い近づいた。
すると鼻腔にさらさらとした銀髪から香る甘い匂いを吸い込んだ。
何事かと思うと涙を目元に溜めたモカの顔がすぐ近くにあった。
いきなりの出来事に反応できない僕はモカのなすがままになり、勢いよく抱きついてきたモカを受け止めた。
そして、
ふむふむ
………………………え?
「………………………え?」
久しぶりに意思と発した言葉が一致した。
そんな呑気なことなど普通だったら考えられないが、奇妙なほどに今の僕は思考がクリアになっていた。
「ありがとーこーくん。一生大切にするね」
当の本人はすぐに離れてそう言って家の中に入っていった。
その顔はショッピングモールに入る前よりも更に赤く染っていた。
「…………帰ろ」
明日にはいつも通りのモカが電話してくるか一緒にバイト後に帰るだろう。
そして、やはり僕にはキ○グクリムゾンが宿っているとどうでもいいことを考えながら気を紛らわせつつ、お互いに感極まったと感想を抱きながら数分もせずに僕は帰りついた。
余談だがその時の写真をモカママがパシャリとしていたことを、この時の僕はまだしらない。
読んでくださりありがとうございますm(_ _"m)
今回高評価してくださった
エシルさん、灰鳥さん、ココアの魂さん
ありがとうございます‼