・1月20日(映像つき)
今日から任務に復帰する事になった。
流石にまだ完全に筋力が戻ったわけではないが、戦闘自体は問題なくできるから良いけど。
今回はグリフィン管轄の都市の一部にE.L.I.Dが侵入したらしい。
自分の家も似たようなシュチュエーションで潰されているからか少し力が入る。
まぁ、実際に戦闘になったら自然体でいる事ができると思う。
今は移動のためにヘリに乗っている。
「間もなく到着だよ、みんな降りる準備をしておいてね」
いつものようにアーキテクトのアナウンスが入る。
俺はバレットを背負いなおして、SCARの状態を軽くチェック。
腰に装備しているベレッタもチェックをして、すぐにでも戦闘ができるようにした。
目的地に近づくにつれて着陸のためにヘリが高度を下げる。
「うわっ⁉」
「……どうした?」
「着陸ポイントに大型E.L.I.D多数‼このままじゃ降りられないよ‼ミニガンで処理できなくもないけど硬いから時間かかる‼その間にさらにE.L.I.Dが寄ってきて悪循環だよ‼」
「……ミニガンでの掃射はやれ、スナイパー組は扉から狙撃支援。俺もバレットを使う」
「ちょ、バレットを持ち上げて撃ったりなんかしたら身体が……」
「パワータイプの外骨格をつけてるから問題ない」
それだけを言うともう話すことはないとばかりに弾倉を取り付けてコッキングして、弾を装填する。
全員から心配そうな視線を受けるが、本当に問題ないんだ。
それに多少の無茶もしないといけない。
甘くしてもいいことはない。
ケイティは悲しそうにうつむいてしまう。
任務中じゃなかったら泣いてしまっていることだろう。
「……ドアガンスタンバイ完了」
「ファイヤ」
アーキテクトがドアガンを構えるのと同じタイミングで俺もバレットを構える。
そして俺の合図で射撃を開始した。
轟音と共に12.7mmの弾丸が銃口から発射されて1体の大型E.L.I.Dの頭を粉砕した。
その次にミニガンの砲身が回転する音がして、超連続射撃が始まる。
バレットよりも有効射撃は少ないとはいえ数がある分、やはりE.L.I.Dも粉々になっていく。
俺のバレットの2つめの弾倉が空になる頃には着陸地点をうろついていたE.L.I.Dは1体残らず物言わぬ肉の塊と成り果てていた。
「はい、着陸‼」
「行くぞ」
移動しようとしたタイミングでヘッドセットに通信が入った。
相手はヘリアントスさんのようだ。
「こちら下垣」
『どうやら無事に降りる事ができたようだな』
「ええ、これから移動しようと思ったのですが……」
『1分待て。今チヌークが足を乗せてそちらに向かっている。移動はそれを使ってくれ。なんせ今回は行動範囲が広くなるから徒歩じゃきつい』
「了解」
E.L.I.Dを警戒しながら待つこと1分。
ローター音と共に、ヘリのシルエットが大きくなっていく。
“足”を積んだチヌークだろう。
チヌークは先程俺達を降ろした場所に静かに着陸すると、中身を降ろした。
「野戦バイクか」
中から出てきたのは最近開発された高性能バイク。防弾性能、馬力、地形踏破力。
どれをとっても文句の付け所のない素晴らしいマシンだ。
まぁ、当然その性能を活かし切るには運転する人の技量が高くないといけないが。
もちろん訓練は受けているから乗りこなすことは出来るからなんの問題もない。
バイクには跨り、エンジンを掛ける。
『よし、準備はできたな。そこから東に5キロの地点に市民が孤立している。E.L.I.Dが集結していて長くは持ちそうにない。チームリーパーは急行して市民の救助に当たれ』
「了解」
ヘリアントスからの指示を受けてバイクのエンジンを吹かし、市民のいる場所まで移動する。
数分して、だんだんと様子が見えてきた。
市民は建物に閉じこもっているらしい。
その建物の周りにE.L.I.Dが群がっている。
幸いなことにヘリの着陸地点にいたような大型のE.L.I.Dは見当たらない。
だからこそ今まで耐えることができたんだろう。
とはいえ標準サイズでもE.L.I.DはE.L.I.D。
人間より硬く、力も強い。
このままだといつか建物を崩されてしまう。
「よし、スナイパー組はE.L.I.Dの排除、それ以外は周囲警戒だ」
「了解」
俺達はバイクから降りてバイクを横にして伏せて、建物を攻撃しているE.L.I.Dを撃ち始める。
数体撃ち続けていると俺達に気がついたのかこちらにノロノロと向かってくるが、カーラやWA2000達の容赦ない射撃でことごとく無力化される。
E.L.I.Dは次々と無力化されて、見える範囲でのE.L.I.Dは全部倒しきった。
『大方処理が終わったようだな。そこから4キロ先に地下シェルターが存在する。そこまで護衛をしてくれ』
「……了解」
正直に言うと護衛はやりたくないが、雇われの身である以上命令には従わなくてはいけない。
怯えきってしまっている市民をなんとか誘導してシェルターに入ってもらう。
中には助けがおそすぎると文句を言ってきた輩もいるが、これでも最速で向かってきたのだ。
ようやく最後の一人の収容が終わり、次の地点に向かおうとしたときだった。
「人類の敵がいるぞ‼」
「人形だ‼」
「殺れ‼」
今度は人権団体の残党とやらがわらわらと出てきた。
さっきから聞こえていた銃声はこいつらのか。
全くE.L.I.Dで溢れているときにご苦労な事だ。
『こいつら……』
ヘリアントスが明らかに面倒そうな表情になる。
まぁ、こいつらの相手はめんどいよなぁ……
「そこの君‼人形たちをこちらに引き渡せ‼そうすれば命は助ける」
ほーん……
「だが、渡さなかった場合は……がっ‼」
「⁉」
言ってる途中で言葉が途切れる、というか俺が途切れさせた。
一瞬で抜いたベレッタでベラベラと演説していた男を射殺しただけの話だ。
隣でWA2000が目を見開いていたけど知ったことじゃない。
「貴様……‼」
「テロリストとは交渉しない事に決めたんで」
「ちっおまえた……ち?」
後ろを振り返っても絶命した仲間の姿があるだけ。
ゲーガーが静かに処理していた。
「な……な……」
「残念だったな」
「き、貴様〜‼」
「どうにもできないだろ。大人しくしてろ」
屈辱で真っ赤になっている男を武装解除してから椅子に縛り付けた。
それから尋問を始める。
正直こんなことは時間の無駄でしかない気がするが、もしかしたら他の残党の活動場所がわかるかもしれないという淡い期待の元、尋問を続けたが……
この男からは特に有益な情報を得ることはできなかった。
「クソッタレが……」
叩かれたりしていた男が悪態をついている。
クソッタレはこっちのセリフだ。
弾を無駄に撃った上に、情報も出てこないとくれば完全に無駄しかない。
「はぁ……とりあえず手足を縛って本部に…何をしているの?智樹」
WA2000が言い終わる前にベレッタを抜き、男の額を撃ち抜いた。
テロリストは頭から血を流しグッタリとして絶命する。
WA2000は唖然とした様子で俺を見ている
他のメンツを見ても信じられないような表情になっている。
カーラなど口元を手で被っていた。
WA2000は険しい表情で俺の方によって来た。
これは面倒な事になりそうだ。
下垣君冷酷な人間になってしまったんですかね……?
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4月16日 修正