親友に会いに行ったら何故か異世界召喚されたんだが... 作:晴月
渡辺 冬馬。彼は尚文と共に本棚から落ちた本を手に取り読んでみた。すると突然、急激な睡魔に襲われてしまい二人はその場に倒れこんでしまうのだが、
「おお...!」
感嘆とする声に尚文と冬馬は目を覚ます。
「何だ.....?」
「何処だ.....ここ?」
戸惑いながらも周りを見回すと二人と同様、状況が呑み込めていない様子の男が三人。
此処は一体どこで、彼らは何者なのか? そんな疑問が二人の頭を埋め尽くす。
更に周りを見回すと、石造りの壁に床には幾何学な模様が描かれており冬馬達の前には祭壇らしきものが設置されている。
「何かの儀式.....なのか...?」
冬馬は一体何の儀式なんだろうと再び、疑問を感じ取っていた。
「はっ....そうだ、尚ふ.....み?」
冬馬が振り向くとそこには何故か右腕に小型の盾を装備している尚文が呆然としていた。
「おい、尚文....尚文!」
「はっ...いけない、突然の出来事に頭が....」
どうやら別の場所にやって来たことと自分に装備されている盾のことでパニックになって思考が停止してしまったらしい。
「しっかりしろ......それにしても、此処は一体?」
「あの、すいません...ここは?」
冬馬がそんな事を言った直後、剣を携えた青年らしき人物が近くにいたローブを着た人物に尋ねた。
(あれ?....今の声、何処かで聞き覚えが....何処だっけ?)
剣の持ち主の声に既視感を感じてしまう冬馬だったが、
「おお、勇者様方!どうかこの世界をお救いください!」
「「「「「はい?」」」」」
ローブの男からの突然のカミングアウトに異口同音で冬馬達は答えてしまう。
「それはどういう意味でしょうか?」
(何だこの展開の早さ.....なろう系か?....なろう系なのか?)
近くにいた男の一人がローブの男に事の真意を問いただしているとき、冬馬だけ何故か現実味を感じずに、まるで良くあるネット小説的な展開の早さだなと考えていた。
「色々と込み入った事情があります故、ご理解する言い方ですと、勇者様達を古の儀式で召喚させていただきました。」
「古の....儀式」
それが異世界に俺達を召喚することか。
と納得した冬馬。
「この世界は今、存亡の危機に立たされているのです。勇者様方、どうかお力をお貸しください。」
ローブを着た男は深々と冬馬達に頭を下げる。
「まぁ...話ぐらいなら....なぁ?」
「あぁ。」
「嫌だな」
「そうですね」
「元の世界に帰れるんだよな?話はそれからだ」
冬馬達が話を聞こうとした途端、他の三人は遮るように口々にそう言い放った。
(は?....今なんつった、コイツら。)
三人の発言に異を唱える冬馬。どうやら三人の態度にカチンときた様子だ。
(頭下げて頼んでる相手に対してなんて態度だよ、せめて話くらい聞いてやればいいじゃねぇかよ。)
冬馬と尚文が三人を睨み付ける。すると三人は二人に視線を向ける。
(何でコイツら半笑いなんだよ....もしかしなくてもこの状況を楽しんでるのか?)
「人の同意無しでいきなり呼んだ事に対する罪悪感をお前らは持ってんのか?」
剣を持った男、見た目は高校生くらいの年齢だ。
(あっ、思い出した....こいつの声、もしかしなくても....やっぱそうだイキ○トだ...もしくは魔法...)
それ以上はいけない。
「仮に世界が平和になったらポイっと元の世界に戻されてはタダ働きですしね。」
弓を持った男も同意してローブの男達を睨み付ける。
(なんかコイツ、三人の中で一番ムカツクんだけど....何でだろうか?)
冬馬の主観はスルーしてと、
「こっちの意思をどれだけ汲み取ってくれるんだ?話に寄っちゃ俺達がこの世界の敵に回るかもしれないから覚悟しておけよ。」
槍を持った奴も散々言う。
(あー....つまりは、自分達の立場の確認と後の報酬に対する権利の主張か.....。)
なんとも逞しいというか強欲というか....そんな感じの事を言い放つとローブの男は、
「と、取り敢えず王様に謁見して頂きたい。報奨の相談はその場でお願いします。」
ローブを着た男は重苦しい扉を開させて道を示す。
「...しょうがないな」
「ですね」
「ま、どいつを相手にしても話は変わらねぇけどな」
三人はそう言って着いていく。冬馬達も遅れないように追いかけるのだった。
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「ほう、こやつ等が此度の勇者達か」
冬馬達のさが通された場所は玉座の間らしき場所でそこには爺さんが鎮座していた。
(まるで値踏みするように俺達を見ているな。)
「ワシがこの国の王、オルトクレイ=メルロマルク32世だ。勇者共よ顔を挙げい。」
(下げてすらいなかったけどな....それにしても国王ねぇ....まるで俺達を使い捨ての道具のようにする腹積もりなんじゃないだろうか?)
「さて、まずは事情を説明せねばなるまい...この国、更にはこの世界は滅びへと向かいつつある。」
王様の話を要約すると、この世界には終末の予言が存在し、その内容というのは、いずれ世界を破滅に導く幾重にも重なる"波"が訪れる。その波が振りまく災害をはね除けなければ世界は滅びるといった内容だそうだ。
そして今年がその予言の日であり、予言の通り、古から存在する龍刻の砂時計の砂が一度落ちきった時、次元の亀裂がこの国、メルロマレクに発生して凶悪な魔物が大量に亀裂から這い出てきた。その時は何とか凌ぐ事が出来たが次の波はそれよりも強力なものとなる。その問題を解決するために四人の勇者を異世界から召喚したそうだ。
(何とも都合のいい話だな....)
冬馬は王様の話を聞いて疑心に陥る。何とも彼らに都合が良すぎるからである。
「話は分かった....で、召喚された俺達にタダ働きしろと?」.
「都合のいい話ですね」
「......そうだな、自分勝手としか言いようが無い。滅ぶのなら勝手に滅べばいい...俺達にとってはどうでもいい話だ。」
(コイツら.....さっきまで内心喜んでた癖に何を今更、)
と思ったが、
「確かに、助ける義理も無いよな...タダ働きした挙げ句、平和になったら『さようなら』とかされたらたまったもんじゃないし...というか帰れる手段があるのか聞きたいし、その辺りどうなんだ?」
(尚文....お前もか....。)
親友がまさかあの三人に便乗して意見するとは思わなかった為、冬馬は尚文を見た表情がエネル顔のようになってしまう。
「ぐぬ...」
王様は自分の思い通りに勇者達を操れると思っていたのか、悔しそうな顔をしている。
(そう簡単に人を操れるかっての。)
冬馬は王様が何かよからぬ事を考えている事を悟り、そう悪態を心の中でついた。
その後、王様の臣下が勇者達には報酬を与えると言うと、尚文を含めた四人は喜んだ。
「では勇者達よそれぞれの名を聞こう。」
王様が勇者達に名前を訪ねる。
「俺は天木 錬。年齢は16歳、高校生だ。」
(まんまイキリ..)
それ以上はいけない(二度目)...剣を携えた少年はそう名乗る。
「俺の名前は北村 元康。年齢は21歳、大学生だ。」
槍の勇者も名乗る。
「僕の名前は川澄 樹。年齢は17歳、」
それに続いて弓の勇者も名乗る。
「俺は岩谷 尚文。年齢は20歳、大学生だ。」
これで勇者は全員名乗り出た...筈だった。
「お主は?」
「...へ?...俺?」
何故か王様は勇者ではなく巻き込まれただけの冬馬に目を向けた。
「あの~王様?...俺は異世界召喚に巻き込まれただけの一般人なんですけど?」
と、冬馬は語る。だが、
「ほう...では、その"腰に携えた短剣"は何だ?」
「へ?」
確認すると、確かに冬馬の両側の腰の辺りに短剣が携わっていた。
「え...何で?」
「お主は、言い伝えの通りならば...波が起こる10年に一度現れるとされる"双剣"の勇者に間違いないだろう。」
(何だそれ?)
冬馬は困惑した、自分と尚文が読んだ本には四大勇者の事は描かれていたが、"双剣"の勇者などという名前は一行足りとも出てきてはいないからである。
(こじつけっぽいけどな。)
とはいえ、名乗れと言われた以上名乗らなければならないと思い
「冬馬...渡辺 冬馬 年齢は20歳、大学生だ。」
冬馬も名乗った。
「ふむ、錬、元康、樹そして冬馬か。」
「王様、俺を忘れてる。」
「おっとこれは失礼した。」
(わざとじゃねぇの?)
王様の発言に裏があるような気がしてならない冬馬。
「では皆のもの、己がステータスを確認し、自らを客観視して貰いたい。」
「「「「ステータス?」」」」
異世界で聞く事が無いと思っていた言葉を聞いて四人は、戸惑う。
「えっと、ステータスってどうやって見るんでしょうか?」
おずおずと樹が王様に進言する。
「何だお前ら知らなかったのか?」
錬が冬馬達を呆れた様子で見てくる。
(このイキ○ト...って、文字が隠されてる!?)
危ない発言はこのように規制が入りまーす。
(ふざけんなよナレーション!)
....気を取り直して、話を戻そう。
「視界の端にアイコンみたいなのがあるだろ?」
「ん....ああ。」
「それに意識を集中するようにしてみろ。」
なんとなく上から目線がムカついた冬馬だったが、錬の言葉通りにすると、自分のステータスが可視化された。
渡辺冬馬
職業 双剣の勇者 Lv1
装備 スモールダガー (伝説武器)
異世界の服
スキル 無し
魔法 無し
色々な項目があったがとりあえず冬馬はこの情報に着目する。
「最初はレベル1か...これは不安ですね。」
「そうだな、これじゃあ戦えるかどうか分からないな。」
「というか何だこれ?」
「勇者殿の世界では存在しないのでステータス魔法と呼ばれるこの世界のものなら誰でも使える物ですぞ。」
と、補足説明が入る。
(成る程、肉体の状態を数値として見れるのか....まるでRPGの世界だな。)
「それで?俺達はどうすればいいんだ?」
「勇者様方にはこれから冒険の旅に出て、自らを磨き、伝説の武器を強化してもらいたいのです」
「強化?この持ってる武器は最初から強いんじゃないのか?」
「はい。伝承によりますと召喚された勇者様が自らの所持する伝説の武器を育て、強くしていくそうですよ。」
「伝承ね、その武器が武器として役に立つまで別の武器とか使えばいいんじゃね?」
と、くるくると槍を回しながら元康が意見する。
(それもそうだ、だが何か理由があるのかもしれない。)
と、冬馬は考える。
「そこは後々、片付けていけばいいだろ...兎に角、頼まれたのなら俺達は自分磨きをするべきだよな。」
異世界に勇者として召喚されるという燃えるシチュエーション。
是が非でもやってみたいという思いが沸々と湧いてくる。
「そう言えば、俺達全員でパーティーを組むのか?」
「お待ち下さい勇者様方。」
「うん?」
これから旅に出るという所で大臣から進言される。
「勇者様方は別々に仲間を募り、冒険に出る事となります。」
「ほう、それは何故?」
「はい、伝承によると伝説の武器はそれぞれ反発する性質を持っておりまして、勇者様達だけで行動すると成長を阻害すると記載されております。」
冬馬は試しに、尚文の盾に自分のダガーを近付る。すると、
《注意、伝説の武器同士を所持した者同士で共闘する場合、反作用が発生します。なるべく別々行動しましょう。》
「本当みたいだな。」
(というかこの説明、まんまRPGだな。)
「てことは仲間を募集した方がいいのかな?」
「ワシが募集しておこう。今日は日も傾いておる...勇者殿、今日はゆっくりと休み、明日旅立つといいだろう。」
「ありがとうございます。」
「あー王様、その....悪いんですけど、」
王様の言葉に対して歯切れが悪そうに冬馬が話しかける。
「?....どうされた冬馬殿?」
すると冬馬はこう言った。
「俺と尚文は自分達で探したいんですけど...明日、探してきていいですか?」
「なっ!?」
冬馬の言葉に王様は驚く。
「王様が募集をかけてくれるのは非常にありがたいのですが、俺は自分が見て、聞いて、感じたものしか信用できない人間なので、申し訳ないですが、俺と尚文の分は無しでお願いします...では。」
「え、ちょ、冬馬殿!?」
冬馬はそう言って尚文を連れて、玉座を後にする。
果たして二人は無事に冒険の旅に向かうために仲間を集められるのか?