親友に会いに行ったら何故か異世界召喚されたんだが...   作:晴月

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異世界へと召喚された冬馬と尚文は、王様の頼みで冒険の旅に出て"波"を防ぐよう言われる。そして王様が仲間を募集しようという所で冬馬は「尚文と共に自分達で探す」と言って尚文を連れてその場を後にするのだった。


第三話 レベリング

「おい冬馬!何処に連れていく気だ!」

 

「少し待ってくれ。」

 

冬馬に引っ張られて玉座の間を出てしまった尚文は訳が分からず、冬馬に理由を求めるものの冬馬は何かを気にしてか、何も話してくれない。

 

「....ここならいいか。」

 

ようやく冬馬が止まった。その場所は玉座の間からかなり離れたいわゆる物置小屋の前であった。

 

「そろそろ説明してくれ....何で王様の計らいを断った?」

 

「簡単な話、尚文....お前、王様に良く思われて無いみたいでな。」

 

「えっ?...そうなのか?」

 

「ああ、間違いない...恐らくあの王様は、仲間を募集とか言いながらお前だけは自分で雇った冒険者か暗殺者を使って無き者にでもしようって魂胆だった筈だ。」

 

「そうか?」

 

冬馬の予想に疑惑の目を向ける。

 

「そうそう尚文、お前"あの本"読んだよな?」

 

"あの本"とは二人が異世界に飛ばされる前に読んでいた本のようだ。

 

「あ、ああ...読んだ。」

 

尚文の言葉を聞いて冬馬は尚文に目を向ける。

 

「なら...知ってるよな?...."双剣"の勇者が存在した。....なんて出来事は何処にも載ってなかった事を、」

 

「ああ。確かに載ってはいなかった。」

 

「なのに俺は、その"存在しない"筈の双剣の勇者としてこの世界に召喚された.....これっておかしいと思わないか?尚文。」

 

「...つまり、何か"イレギュラー"がこの世界で起こってる。....そう言いたいのか?」

 

尚文が自分の意図を汲んでくれたことに対して、冬馬は笑った。

 

「そうだよ!....良かった、尚文だけは俺の考えてること、分かってくれるんだから。」

 

冬馬は尚文と肩を組むと嬉しそうに笑った。

 

「さて、話を変えよう.....今後のことなんだが....」

 

「.....えっ!?」

 

冬馬の提案に尚文はただ驚くしかなかった。

 

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その頃、玉座の間にて

 

「ぐぬぬぬぬ。」

 

王様は一人、悔しそうな顔をしている。

 

「何故だ、何故あの男はワシの言うとおりに動かない!」

 

どうやら冬馬の言動に対して腹を立てている様子である。

 

(もう少しで盾の勇者を貶める事が出来たのに....)

 

「ぐぬぬぬぬ....どうすれば....ハッ!」

 

その時、王様の頭の中で尚文を貶める策を思い付く。

 

(そうじゃ...この方法なら、奴を陥れる事ができる....今に見ていろ....)

 

クックックッ、と下卑た笑いを響かせながら明日を待つ王様の姿がそこにはあった。

 

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翌日、早朝

 

街の外にて

 

「やっと着た。」

 

「お前なぁ....流石に.....早すぎるだろ...。」

 

息を切らしながら走ってくる尚文に対して冬馬は、

 

「悪い悪い....昨日言った試したい事を実践するならこの時間がちょうど良いと思ってな。」

 

後で詫びはする、と言って早速互いに背を向けて武器を構える。

 

「まさかお前が"こんなこと"を試してみたいとはな。」

 

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昨日、話の続き

 

「ひとつ....試してみたい事がある。」

 

「試してみたい事?....何だよ改まって?」

 

冬馬からの提案に何かあるのだろうと思い、尚文は聞いてみる事にした。

 

「さっき大臣が言ってただろ?..."勇者の力には互いに影響を及ぼす反作用がある"って。」

 

「...確かに言ってたな。」

 

「だが、それも"ある条件下"では無効になると...俺は考えている。」

 

「ある条件下?...何だよ、それは?」

 

「簡単な話...距離だ。」

 

「距離?」

 

冬馬はそこから話し出す。

 

「大臣の言っていた反作用ってのは勇者同士がパーティーを組んでいる場合、互いの成長に悪影響を及ぼしてレベリングが出来ないというものだった筈だ。....ならその場合、勇者同士の"距離"はどうだ?」

 

「!!!」

 

「どうやら、俺の言いたい事が分かったみたいだな....そうだ、どれだけ離れて行動すればレベリングに悪影響を及ばさないか....そういうことだ。」

 

「成る程...一理あるな。」

 

(確かに大臣は勇者同士がパーティーを組んだ場合の話をしていたが、勇者同士の"距離"は言わなかった....つまり、冬馬の言うとおり、離れて行動すればレベリングが出来る...そういうことだろうな。)

 

冬馬の提案に尚文は面白そうだ、と思い、

 

「分かった、冬馬...お前に付き合うよ。」

 

そう告げた。冬馬は嬉しそうに尚文の手を掴む。

 

「だよな!...尚文ならそう言ってくれると思ったぜ!...なら、明日の早朝、街の外に集合な...それじゃあ!」

 

「えっ!?...ちょっ、冬馬!?」

 

明日の集合時間を告げると去っていってしまう冬馬、それを見て尚文は、走っていく冬馬の姿を見送るしか出来なかった。

 

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「...それで?なんでこんなに朝早くから始める必要があるんだよ?」

 

「そんなの決まってる....あの王様が俺らに対して難癖付けてくると思ったからだ。」

 

「難癖?....どんな?」

 

「例えば、だ.....」

 

「成る程...確かに。」

 

 

冬馬の言葉に尚文は納得するしかなかった。

 

 

━━━━━━━━━━━━

 

数時間後、

 

玉座の間にて

 

「錬殿、樹殿、元康殿、そして冬馬殿.....と、尚文殿」

 

あからさまに尚文を除け者にして四人に話し掛ける。

 

「....それで王様、俺達の仲間を募集しておく...という話でしたが....集まりましたか?」

 

(いやいや、昨日の今日だぞ....幾らなんでも早すぎr)

 

「おお、集まっておるぞ。」

 

(集まってるのかよ!?....幾らなんでも手回し良くないか!?)

 

ここまで手回しが良いと、明らかに何かあるなと思ってしまう。

 

「先ずは錬殿から...入るがよい。」

 

王様が指を鳴らすと、背後から様々な格好をした冒険者達が出て来る。

 

「彼らが必ず錬殿の助けになってくれる筈じゃ。」

 

「ありがとうございます。」

 

そう言って錬は、玉座の間を出ていってしまう。

 

「次に樹殿。」

 

また王様が指を鳴らすと騎士の格好をした者や、魔法使いの格好をしたものなど様々な格好の冒険者が現れる。

 

「彼らが必ず樹殿の助けになってくれる筈じゃ。」

 

「ありがとうございます。」

 

樹も玉座の間を飛び出していく。

 

「次に、元康殿。」

 

「はい。」

 

王様が指を鳴らす、すると現れたのは、

 

「な!?」

 

なんと全員女性であった。

 

これには、冬馬も驚いて絶句してしまう。

 

「彼...ではなく、彼女達が必ず元康殿の助けになってくれる筈じゃ....多分。」

 

(王様...引いてないか?)

 

これには王様も驚いているようで、発言が少しおかしくなっていた。

 

その後、元康も玉座の間を出ていく。

 

「最後に冬馬殿だが、」

 

(この野郎....とうとう隠さなくなったな。)

 

「おっと、王様....昨日、俺は確かに言いましたよね?...仲間は自分達で見つける...と。」

 

冬馬は王様の発言に異を唱え、自分の申し出を思い出すよう言う。

 

「確かに昨日、言っていたな...だが、まだ(・・)見つけていないのでは?」

 

「!?」

 

(そう来たか。)

 

王様の言葉に冬馬はたじろぐ。

 

それを見て王様はしたり顔を見せる。

 

(やはり、奴の仲間はまだ見つかっていない!....さて、こいつはどう扱ってやろうか....。)

 

王様は自分の考えが的中していたことに安堵し、冬馬をどう操ってやろうかと考える。

 

「....」

 

冬馬は王様の表情を見てこう思った。

 

(かかった(・・・・)!と。)

 

「そこでじゃ!....冬馬殿にはワシの近衛兵を二人付けようと思うのじゃが....どうじゃ?」

 

もはや提案というより、脅迫に近い。つまり王様は決まっているならこの場に連れてこい、それが出来なければワシの言うとおりにしろ....そう言いたいのだろう。

 

(....出来れば、ここを出た後で反故にするつもりではあったんだが.....仕方ない、"プランB"だ。)

 

「さぁ、連れて来てワシに見せてみよ。」

 

「王様.....仲間なら誰でも(・・・)いいんですね?」

 

「?...勿論じゃ、冬馬殿が決めたのならワシは文句など言うつもりも無い。」

 

(言質は取った...ここから反撃だ。)

 

「....仕方ない...尚文、連れてきてくれ。」

 

「分かった。」

 

冬馬が尚文に頼むと、そのまま何処かへと向かっていった。

 

━━━━━━━━━━━

 

「お待たせしました....彼女達が俺達二人の仲間です。」

 

「な!?」

 

王様は驚愕した。何故なら、その仲間というのが...

 

奴隷(・・)...じゃと!?」

 

首に輪を付けた奴隷の女の子が二人....冬馬と尚文に鎖を握られて立っていたからだ。

 

「俺は、彼女を....尚文はあの子を...それぞれのパーティーメンバーとして迎える事にした....これなら問題無い筈ですよね....王様?」

 

ニッコリと毒気の無い笑顔で王様を見る冬馬....だが、

 

「み、認められるか!!!!....人間ならまだしも....何故、そんな薄汚い亜人等を...!」

 

「おいおい、王様?話が違うんですけど?....あんたさっき言ったよな?....俺が決めたならどんな(・・・)仲間でも良いと。」

 

「じ、じゃからそれは人間だと...」

 

「冒険者や人間を連れてくるとは一言も言っていない!!」

 

「ぐ....ぐぬぬぬぬ!!!」

 

王様は心底悔しそうな顔を見せる。

 

それもその筈、先程までは冬馬は仲間をまだ決めておらず、冬馬を自分の意のままに操る事が出来る。そう思い込んでいたのだ。

 

それに連れてくるという仲間も人間の冒険者だろうという先入観で勝手に決めつけており、奴隷等を仲間にするなど考えてはいなかったのだ。

 

「兎に角、俺達は奴隷をメンバーにする.....異論は断じて認めない.....行くぞ尚文。」

 

「ああ。」

 

尚文は心底落ち込んでいた。それもそうだ。先程、王様が仲間募集の時、冬馬を"最後"と言った事で、冬馬の言っていた事が真実だと理解したからだ。

 

━━━━━━━━━━━━

 

さて、話は数時間前に遡る。

 

「さて、仲間なんだが.....悪い、決めてない!」

 

冬馬の言葉にずっこけそうになる尚文。

 

「お前....ここまで来ておいて幾らなんでもそれは無いだろ!?」

 

「だって、なんかあの王様ムカついたから....」

 

現在はレベリングと実験を終わらせて城に戻る道中、二人は街を歩きながら次に打つべき手を考えていた。

 

「いやー...まさかあの距離で反作用がなくなるとは、」

 

「そうだな....まさか"600m"で互いの反作用が消失するとは...思わないよな。」

 

二人は反作用が起こらない"距離"を知るために街の外に出たのだが、冬馬は"1km"程距離を取らないといけないと考えていた。だが結果はまさかの"600m"。予想よりも400m程近くであった。

その事実にもはや、反作用って何だろうと考えていた矢先、

 

「もし、そこのお二人。」

 

「「!?」」

 

急に誰かに呼び止められる。

 

「こちらですよ。」

 

声がした方向を向くと、そこにはスーツ姿のいかにも怪しげな男が立っていた。

 

「貴方がた....今、仲間を探してるのでしょう?」

 

「...まぁ、そうだけど....それが何か?」

 

見るからに怪しげな男に対してぶっきらぼうに冬馬は答える。

 

「でしたら、私からある"提案"をさせていただきます。」

 

「"提案"?....一体どんな?」

 

「でしたら、私に付いてきてください。」

 

見るからに何かおかしい怪しげな男、だが自分達も切羽詰まっているのは事実、仕方ないので男の後に付いていく事にしたのだった。

 

━━━━━━━━━━━

 

「こちらです。」

 

後に付いていくとそこにはサーカスで使用するような大きなテントが張られており、男の後に続いて中へと入るとあちらこちらに檻が置いてあった。

 

「成る程..."奴隷"か。」

 

「その通りでございます!」

 

男は嬉しそうに冬馬に顔を向ける。

 

男の説明では、奴隷は全て亜人と呼ばれる人間の姿をしてはいるものの、人間よりも身体能力が高く、人間には難しい力仕事も楽々こなす事が出来る種族らしい。

 

その種類は様々で未だに見つかっていない種族もいるかもしれないとのこと。

 

「話は分かった.....それで予算なんだが、」

 

冬馬が財布代わりに使っている袋の中身を男に見せる。

 

「ほうほう....この程度の額でしたら、」

 

男がスタスタと歩いていく。

 

「このスペースに置いてある檻の亜人をお売り致しましょう。」

 

檻の中の亜人達は見るからに強そうな風貌をしている。

 

どうやらレベリングでそこそこ金を稼いだようだ。

 

「あー...申し出は有難いんだが、....その、この後装備を整えたいから...出来ればもう少し安い奴隷を売ってくれないか?」

 

冬馬の言葉に男は考える素振りを見せた。

 

「でしたら....こちらに。」

 

男に連れられて来たのは衛生管理がなされていない...非常に汚い奥の部屋であった。

 

「彼らはあまり売り物にならないので....先程の額から値下げしますと...こちらの商品しかお売り出来ません。」

 

「そうか...」

 

冬馬はそう言うもののその表情は、何処か嬉しそうであった。

 

「ん?」

 

並べられた檻、その中の一つが気になった。

 

「こいつは....」

 

檻には《キャット種》と書かれていたが残念ながら冬馬と尚文はこの世界の文字が読めない。その為、どんな種類の亜人なのか分からなかった。

 

「この亜人ですか?....こちらはキャット種という大変珍しい種類の亜人の少女です....しかし、人に対してかなりの恐怖心を持っているようで、....残念ながら売り物としては、最低価格となっております。」

 

「成る程....」

 

説明を受けた冬馬だったが、それよりもこの少女から何故か目が離せなくなってしまう。

 

「決めた....俺は、この《キャット種》を買わせてもらう。」

 

「宜しいのですか?」

 

「ああ、何故かこいつじゃないと駄目な気がする。」

 

「そうですか....分かりました...それで、もう一人のお客様は?」

 

「そうだな.....こいつかな?」

 

尚文が指差した檻には《ラクーン種》と書かれていた。

 

「そちらの奴隷はよく引き付けを起こすので注意が必要です。」

 

「別に....何でもいいし。」

 

今の尚文は冬馬の無茶振りに振り回されている状態なのでもう全てがどうでもよく思えていた。

 

「分かりました。」

 

男は手慣れた様子でキャット種とラクーン種の奴隷を檻から出し、胸にインクを落としていく。

 

「それは?」

 

「これは特殊なインクでして、これで奴隷の証である奴隷紋を書くのです。」

 

「それで奴隷を縛れるのか?」

 

「はい。...こちらの奴隷紋が身体に浮かび上がっている間、主人の言う事には絶対に逆らえません。」

 

「成る程。」

 

男が説明を終えると同時に奴隷二人の奴隷紋を書き終える。

 

「これで契約は完了しました。」

 

「代金だ。」

 

「ありがとうございます...また何時でもご利用のほどお待ちしております。」

 

テントを出た冬馬と尚文は次に向かう場所を話し合う。

 

「取り敢えず、まだ時間はあるし...もう一度レベリングに行くか。」

 

「ああ、そうだな!」

 

二人はまた街の外へと向かい、新しく仲間にした二人の奴隷の事をよく知る為に再びレベリングに向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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