この素晴らしい世界にドラまたを!   作:猿野ただすみ

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前回のあらすじ

借金、もとい水の女神アクアが見つけたクエストは、湖の水を浄化するというものだった。
カズマの発案により、アクアを檻に閉じ込めた状態で水に浸け浄化させることになり、これでモンスター対策もバッチリ、と思ったらモンスターに襲われたショックで、アクアはすっかり引き籠もり状態に。
アクアの願いを聞き入れて、檻に入れたまま街に帰ることになったあたし達。ホントにこれでいいのか?

カズマ「いや、トラウマの半分はリナのせいだろ?」

うるさいカズマ、余計なこと言うんじゃない!


この勇者と決闘を!

僕の名前は御剣響夜。日本人の転生者だ。

若くして死んだ僕は、女神様に選ばれ勇者としてこの世界にやって来たんだ。女神様から授かった、魔剣グラムを携えて。

転生した僕は

 

~以下略~

 

……って、ちょっと待ってくれ! これから僕が転生してからの

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

ガラガラガラガラ…

 

馬が引く荷車の、街の石畳の上を移動する音が響き渡る。遠巻きにあたし達を見つめる視線が、とても痛い。

そりゃそうだろう。何しろ荷台には、檻に閉じ込められた(見た目は)美しい少女がいるのだ。しかも物悲しい歌まで歌って。街の人達がどう思うのかなんて、想像に難くない。

 

「なあ、アクア。もうその歌はやめてくれ。……というか、いい加減その檻から出て来いよッ!」

「……いや。この中こそ私の聖域よ。外の世界は怖いから、しばらく出ないわ」

 

何を軟弱な! ……って、半分あたしのせいだけど。

 

「……何だか以前の俺みたいだな」

「「「ん?」」」

「いや、何でもない」

 

そんな会話をしていると。

 

「女神様! 女神様じゃないですか!」

 

そんな声が聞こえてきた。慌ててそちらを見れば、甲冑姿の男が檻に手をかけ、鉄格子をひん曲げてこじ開けた、って何じゃそりゃあ!?

 

「何をしているのですか、女神様!」

「おい!」

 

アクアに尚も語りかける男の肩に、ダクネスが手をかける。

 

「私の仲間に軽々しく手を触れるな!」

 

おお! ダクネスが何だかまともだぞ!

そして男がダクネスに気を取られてる間に、カズマがアクアに小声で尋ねる。

 

「あれ、お前の知り合いだろ? 女神とか言ってたし」

「……女神?」

 

…………ん?

 

「そうよ! 女神よ、私は!」

 

をいこら、ちょっとまてぃ! 今までその事忘れとったんかい、このアマ!?

アクアは檻から出ると胸を張り。

 

「さあ、女神の私に何の用かしら?

…………アンタ誰?」

 

知らんのかいッ!

 

「僕です、御剣(ミツルギ)響夜(キョウヤ)ですよ!」

 

ああいや、どうやらアクアが忘れてるだけっぽい。

男は腰からロングソードを引き抜き、手を添えながらアクアに見せる。

 

「貴女にこの[魔剣グラム]を頂き転生した、御剣響夜です!」

 

……なるほど。つまりはカズマと同じ世界から来た、勇者の一人って訳ね。

 

「……ああ、いたわね、そんな人も! ごめんね、すっかり忘れてたわ!

結構な数を送ってたし、忘れてても仕方がないわよねー?」

「……え、ええ」

 

今ので納得するんだ!?

 

「ところでアクア様は、どうして檻に閉じ込められていたのですか?」

 

いや、アクアが引き籠もってただけなんだけど。……ただ、この男がそれで納得してくれるかどうか。何しろ半ば、アクアに対して崇拝に近いモノがあるから。

 

 

 

 

 

「はああああ!? アクア様をこの世界に引きずり込んで、しかも檻に閉じ込めて、湖に沈めたああああ!?」

 

いや、そう言われると、ただの鬼畜みたいじゃない。

 

「ちょっと! 私はここに連れて来られたことも、もう気にしてないから!」

「この男にどう丸め込まれたか知りませんが、貴女は女神なんですよ!」

 

いやいや、彼女はこの世界を思いっきり堪能してますよ?

 

「因みにアクア様は、今どこで寝泊まりを?」

「えっと、馬小屋だけど」

「はあっ!?」

 

驚愕した彼は、掴んでいたカズマの胸ぐらに更に力を込める。

 

はあ…

 

あたしは一つ、ため息を吐く。

 

「ちょっとアンタ、キョウヤとか言ったかしら?」

「……何だい、君は?」

「あたしはリナ。カズマの知り合いよ」

 

そう言ってあたしは、キョウヤの前にツカツカと近づく。

 

「アンタはどうやら、アクアが冷遇されてるって思ってるみたいだけど、あたしから見たら思いっきし妥当だと思ってるわ」

「「なっ!?」」

 

キョウヤとアクアが、非難の視線をあたしに向けた。

 

「『なっ!?』じゃないわよ、アクア! アンタが騒ぎ起こしたり、借金こしらえたりするから、カズマはお金が貯められないんでしょ! 馬小屋生活から抜け出したいんなら、ちょっとは自重なさいっての!」

「うう~、だって私は女神なのよ? 敬われて然るべきだと思うの」

「敬われるだけの成果も上げずに、なに言っとんのじゃあああああ!!」

 

すっぱあああああん!

 

あたしはアクアの頭をスリッパで、勢いよく引っ叩いた。

 

「いったあぁぁい!」

「アクア様! おいキミ、アクア様になんて事を!」

「やっかましい! 爆裂陣(メガブラ)喰らわしたろか!?」

 

このアクア信奉者に喰らわせようと、呪文を唱え始めると。

 

「イヤッ! やめてッ! 怖いの! リナの魔法は怖いのおおおおおお!!」

 

……あー。そーいや、トラウマ植え付けちゃったんだっけ。

仕方なしにあたしは、呪文を唱えるのをやめた。

 

「……気を取り直して、他にも理由はあるわよ?

カズマはアクア以外に特典もなく、職業は最弱職の冒険者。

仲間のアークウィザードは爆裂魔法が使えるけど、他の魔法を覚えていない上に一発で打ち止め。

クルセイダーは防御力は途轍もないけど、剣の腕はからっきしでオマケにドM。

そしてアクアは、アークプリーストで各種支援魔法はピカイチだけど、言う事聞かない上に余計なことして事態を悪化させる。

これでカズマにどうしろと?」

「あ、ええと…」

 

さすがにこれには、キョウヤも言い返せなかったようだ。

 

「あーその、リナ。擁護してくれるのは有難いんだけど、俺達にも結構なダメージがあるんだが…。あ、ダクネスは除く」

「くはぁっ!? リナから連携の言葉責めだとっ!? 貴様ら、何という高等テクニックを…!!」

 

うん。ダクネスは少し黙ろうか?

 

「……君はどうなんだ?」

 

キョウヤはあたしにも聞いてきた。だけど。

 

「あたしはカズマとパーティー組んでるわけじゃないもの。ダクネス…、クルセイダーの子がパーティーに馴染むまで一緒にいてくれって、彼女の友人から頼まれたのよ。

……ま、あとは、彼らと(つる)んでると楽しいから、かな?」

 

そう。今のあたしの立ち位置は、クリスに近いんだろう。それがいろんなパーティーを渡り歩くのか、特定のパーティーなのかの違いってだけで。

 

「ちょっとばかし話が逸れたけど、そんな彼らは持ちつ持たれずの間柄、アクアが不遇ってんなら、それは彼女自身のせいよ」

「……えっと、も少しオブラートに包んでほしいのだけど」

 

アクアがなんか言ってるが、それは無視。

 

「そもそもカズマがアクアを連れて来たのだって、アクアにバカにされたのが原因だって聞いたわよ?」

 

カズマも、詳しいことは言いたがらなかったけど。多分、相当情けない死に方だったんだろう。

 

「それに檻に閉じ込めたのだって、アクアがどうしてもこのクエストをやりたいって言ったから、安全確保のためにやったわけだし。

ハッキリ言ってカズマ達じゃ、ブルータルアリゲーターは倒し切れなかったと思うし、結構妥当な策だったと思うわよ?」

「だ、だけど、アクア様を閉じ込めたままアクセルに帰ってこなくても…」

 

まあ、これに関しちゃ、キョウヤの言いたいこともわかる。あたしだって事情を知らずに目撃したら、カズマ達が虐待してると思うだろう。

 

「ワニが檻を攻撃してきたから引き上げようか尋ねたんだけど、アクアはお金のために、それを頑なに拒んだのよ。その挙げ句にトラウマで『外に出たくない』とか言うから、仕方なく檻ごと運んできたってわけ」

「半分は…、いや、何でもない!」

 

余計なことを言おうとするカズマを、睨みを利かせて黙らせた。

あたしの弁に、キョウヤは押し黙っている。

 

「……どうやら納得してくれたみたいね。それじゃあみんな、行きましょ!」

 

そう言って、ギルドに向かって歩き出そうとした、その時。

 

「いや、待ってくれ!」

 

キョウヤはあたし達の前に回り込む。

 

「何? まだ文句があるの?」

 

さすがにこれ以上は、穏便に済ませる気もないんだけど。

 

「いいや、もうキミ達に…、いや、彼に文句は無いよ。

ただ、アクア様は僕にとって大事な恩人なんだ。納得ずくとはいえ、その様な境遇に置かれていることは、やっぱり我慢ならないんだ」

「……ふぅん。それで?」

「僕にもチャンスが欲しい」

 

そう言って彼はアクアを見る。

 

「そしてそれが赦されるなら、方法はアクア様に決めて戴きたい。いかがですか、アクア様?」

「えっ、私?」

 

自分を指差しながら言うアクア。キョウヤはこくりと頷く。

 

「……いいわ、任されたわ。

そうね、方法は決闘。最終目標は魔王討伐なんだから、当然よね。

勝利条件は、どちらかが戦闘不能になるか負けを認めた時。ただし、大怪我させたり殺したりしないでよ? 治療したり生き返らすの、面倒くさいから」

 

なっ、こっちの世界じゃ、死者の蘇生なんて出来るの!? いや、まあ、あたしは異世界から転生したわけだし、そう考えれば有り得なくはないんだろーけど。

 

「そして闘うのは、当然カズマさん!」

「ちょっと待て! どーして当然俺なんだよ!?」

 

カズマが文句を言うとむしろ、どうしてわからないの? という表情でアクアが視線を送る。

 

「だって私を特典に指名したの、カズマじゃない」

 

カズマがしまった! という表情になる。

しかしアクア、この勝敗で運命が左右するってのに、随分と楽しんでるわね。

 

「納得した? それじゃあ勝利報酬だけど、負けた人が勝った人の言うことを、何でも一つ聞かなくちゃならない。これでどう?」

 

なるほど。知力が残念なアクアにしては、よく考えた方ね。だけど。

 

「あたしの方から、ちょっと補足させてもらってもいい?」

「ええ、いいわよ」

「うみゅ。戦闘方法だけど、カズマとキョウヤの職業の違いやレベル差から考えて、何でもアリにしない? こう決めておけばお互い納得いくだろうし、あそこで遠巻きに見てる、多分キョウヤの仲間だって、後から文句も言えないでしょうから」

 

そう。さっきからこちらを見てる二人の少女は、キョウヤのパーティーメンバーだろう。キョウヤはまだしもあの二人は、後から難癖着けてくる可能性があるので先手を打っておいたのだ。

 

「僕は構わないよ」

「俺もだ」

 

どうやら二人も納得したようだ。

 

「それじゃあコインが…、コイン…」

 

急に困った表情に変わり、アクアはあたしを見る。全く、しょうがないわね。

 

「それじゃ、あたしが代わりにコインを弾くから、地面に落ちたときが始まりの合図ね。……じゃ、いくわよ?」

 

あたしは、取り出したエリス硬貨を指で弾いた。

 

チリーン!

 

石畳に硬貨が落ちた瞬間、キョウヤが剣を抜きながら駆け出した。一方のカズマは。

 

「『クリエイト・アース』からの『ウインドブレス』ッ!!」

 

魔法で発生させた土を魔法の風で、キョウヤ目がけて吹き飛ばす。けれどキョウヤは、左腕で砂が目に入るのを防いでいる。

だがこれも、カズマの策略の内だった。

 

「『スティール』ッッ!!」

 

キョウヤの動きが止まったのを見計らい、窃盗スキルを発動させるカズマ。次の瞬間には、カズマの手にキョウヤの剣が握られていて。

 

ごいん!

 

刀身の平たい部分を頭に叩きつけられたキョウヤは、あっさりと気を失ってしまうのだった。




クリス、お誕生日おめでとう!

前置きはこれくらいにして、決闘シーン短っ! まあ、カズマの場合、短期決戦じゃないと勝ち目がないので。
『クリエイト・アース』と『ウインドブレス』の組み合わせ、最初の被害者はミツラギさんになりました。アクア様の身代わりならば、彼も本望でしょう。……って、ダメージは受けてないけど。
めぐみんが空気なのはナイショだ!


ファンタジア・リビルドの竜破斬の詠唱、ちゃんと原作版だったのには感動した。
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