カズマの勝利に不服をあげた、ミ…ツツキ? の取り巻き達。それを力技で納得させたリナ。あの魔法、是非喰らって…、あ、いや。
コホン。翌日やって来たミツツキと少しの諍いがあったものの、戦利品の魔剣を交渉の末、ミツツキの買い取りという形で返却することになった。……しかしアクアのあのパンチを喰らったら、私は…、ああ、なんでもない。
そのあと私達はリナの特典の秘密を聞き、魔族という存在を討伐するため神に遣わされた事を知った。
そして。再び緊急のアナウンスが鳴り響くのだった。
リナ「……ってダクネス。途中で変な妄想入れてんじゃないわよ」
へ、変は妄想など! 変な妄想など、してにゃいからぁ!
放送を受けてあたし達は、アクセルの正門前までやって来た。その先にはいつぞやのデュラハンが、首の無い馬に乗って佇んでいる。
デュラハン、確かディル…じゃなくてベルディアだったか。彼はこちらに気づくと、声高らかに叫んだ。
「なぜ城に来ないのだ、この人でなしどもがあああ!」
はて、なぜ城に行かにゃあならんのか。……あ、そっか。
「えっと、何故城に来ないって、何で行かなきゃなんないんだ? もう爆裂魔法を撃ち込んでもないのに、何そんなに怒ってるんだよ」
カズマも同じ事を思ったらしいが、その理由にまでは思いが至らなかったようだ。
「爆裂魔法を撃ち込んでないだと!? 何を抜かす、白々しいっ! そこの頭のおかしい紅魔の娘が、毎日欠かさず通っておるわ!」
……って、はあっ!?
「お前、行ったのか? もう行くなって言ったのに、また行ったのか!」
「ちょおっと、めぐみん。どういうことか、詳しく説明して貰いましょうか?」
カズマがめぐみんの頬を引っ張り、あたしは彼女の顔面を鷲掴みにして力を加える。
「ひたたたた。違うのです、聞いてくださいカズマ、リナ! 今までなら、何もない荒野に魔法を放つだけで我慢できていたのですが、城への魔法攻撃の魅力を覚えて以来、大きくて硬いモノじゃないと我慢できない身体に…」
「ようし、少し黙ろうか!」
もうちょいマシな理由かと思ったけど、ただの自己満足かいっ!
「……たく。まあ、めぐみんへのお仕置きは後でするとして」
「ひっ!?」
「めぐみんは爆裂魔法を撃った後、動けなくなるはずだから」
「そうか、つまり一緒に行った共犯がいるはずだ! 一体誰と…」
その時、視線を逸らし、鳴らない口笛を吹く人物が一人。
「アンタかああああいっ!!」
すっぱあああああん!
あたしは懐から取り出したスリッパで、アクアの頭を思いっきし引っ叩いた。
「だってだって、あのデュラハンのせいでろくなクエストが請けられないのよ!? 私はその腹いせがしたかったんだもの!」
いや、まあ、気持ちは分からんでもないが、そんな事すりゃあ街のみんなも巻き込んでしまうって、分かりそうなもんだろうに。……あ、アクアはおつむが残念だったっけ。そうか、アクアも脳味噌クラゲだったか。
そんな事をしみじみと思っていると、痺れを切らしたベルディアが声を荒げて言い放った。
「俺が頭にきているのは爆裂魔法の件だけではない! 貴様らには仲間を助けようという気はないのか!?」
と。
「仲間を庇って呪いを受けた、騎士の鑑のようなあのクルセイダーを見捨てるなど…」
そこまで言って、ベルディアが言葉を詰まらせる。どうやら視界に映ったようだ、金髪クルセイダーの姿が。
彼女は照れながら小さく手を上げ。
「や、やあ…」
恥ずかしそうに挨拶をする。
「……あ、あるぇえーーーーっ!?」
マジで驚くベルディア。そりゃそうだろう。本来既に亡くなっているはずのダクネスがピンピンとしているのだから。
「もしかして、ダクネスに呪いを掛けて一週間経ったのにピンピンしてるから驚いてるの? このデュラハン、私たちが呪いを解くために城に来るはずだと思って、ずっと待ち続けてたの? 私があっさり呪い解いちゃったのも知らずに?
プークスクス! ちょーうけるんですけど!」
そう。彼は律儀にも、カズマ達がダクネスのために城へ攻め込んでくると思い待機していたのだ。ところが一週間経っても現れず、おまけに毎日爆裂魔法を撃ち込まれ、仲間を見殺しにした行いに対しての憤りと、爆裂魔法を撃ち込まれた事に対する怒りの許にアクセルまでやって来た、というわけだ。
まあ、行き違いがあったとはいえ、彼も思った以上に騎士であるということか。
そんなベルディアを嘲笑うアクア。さすがにあたしでも引くわー。いや、あたしもよくやるけど、あれは相手を煽るっていう戦略的な所もあるのだ。決してあたしの趣味ではない。……まあ、少しはあるけど。
「……おい、貴様。俺がその気になれば、この街の冒険者をひとり残らず斬り捨て、住人どもを皆殺しにすることだって出来るのだぞ。いつまでも見逃してもらえると思うなよ」
「見逃してあげる理由がないのはこっちの方よ! アンデッドのくせにこんな注目を集めて生意気よ!」
怒りを噛み殺し言うベルディアに、アクアは余裕綽々で言い返す。というか、完全に舐めている。
「『ターンアンデッド』!」
アクアが放つ蒼白い光がベルディアを包み込み。
「魔王の幹部が、プリースト対策も無しに戦場に立つと思っているのか?俺は魔王様の加護により、神聖魔法に対して強い抵抗をぎゃあああああああっ!!」
悲鳴を上げた。
「ねえカズマ! 変よ、効いてないわ!」
あたしには充分効いているように見えるのだが、どうやら女神様的には効いてないということなんだろう。
「お前、本当に駆け出しか? 駆け出しが集まるところなのだろう、この街は!?」
まあ、駆け出しには違いないわな。元々のスペックに雲泥の差があるだけで。
「……まあいい。本来は、この街周辺に強い光が落ちてきたと占い師が騒ぐから調査しにきただけなのだが、いっそこの街ごと無くしてしまえばいいか」
ちょっと待てい! なんだ、その短絡的な発想はっ! ……って、あたしもよくやるけどっ!
「アンデッドナイト! 俺をコケにしたこの連中に、地獄を見せてやるがいい!」
ベルディアが配下のアンデッドを召喚し、振り上げた手を下ろそうとしたところで、カズマがからかうような口調で言った。
「あっ、あいつ、アクアの魔法が意外に効いてビビったんだぜ、きっと!」
カズマのこういう所はあたしに似ていると思う。この様にからかったり、あるいは煽ったりしてこちらのペースに持ち込むのである。
「ちち、違うわっ! 魔王軍の幹部がそんなわけがなかろう! いきなりボスが戦ってどうする!? まず雑魚を片づけてからボスの前に立つ。コレが昔からの伝統と…」
「『セイクリッド・ターンアンデッド』!!」
「ひあああああああああっ!!」
ベルディアが弁明しているその途中で、アクアがより高位の浄化魔法を放った。卑怯と言うなかれ。この状況で油断する方が悪いのだ。
しかしアクアは、またもや焦った顔をし。
「どうしようカズマ、やっぱりおかしいわ! あいつ、私の魔法がちっとも効かないの!!」
そう言ってカズマに縋りつく。ふみゅ、どうやら
「この…っ、セリフはちゃんと言わせるものだ!」
「えー? だってあたし達には何のメリットもないじゃない」
「貴様はおちょくっとるのか!?」
あたしの茶々に、怒りの矛先がこちらへ向かう。よし、このままおちょくって、もっと隙を…。
「ええい、もういい! おい、お前ら」
……と、そう上手くはいかなかったようだ。
「街の連中を、皆殺しにせよ!」
思考を切り換えたベルディアが命令を下したのだった。
ベルディアが呼び出したアンデッドナイト達は、あたし達に向かって…って、をや?
アンデッドナイト達は何故か、アクア個人に向かって来た。ううみゅ。これってもしかして、浄化されるのを望んで、本能的に女神であるアクアに集まって行ったって事だろうか?
とはいえ、訳のわかんない彼女は慌てて逃げ出すしかないわけで。アクアがアンデッド達を引き連れ駆け回ってる、という面白可笑しい状況になっていた。ふむ、長生きはしてみるもんだ。一回死んでるけど。
さて、アクアをこのままにしとく訳にもいかないわね。
というわけで。
四界の闇を統べる王
汝の欠片の縁に従い
汝らすべての力もて
我に更なる力を与えよ
「なっ、その詠唱は!」
「何ですかっ、そのカッコイイ呪文は!?」
今の呪文の正体…、
しかしどちらも無視して、あたしは次の呪文を紡ぐ。
大地よ 我が意に従え
術が組み上がると共に、大地へと手を着き。
「
[力ある言葉]と共に大地は揺れ、アンデッド達の足下から無数の地の錐を発生させ貫いていく。よし! アクアに纏わり付いてるうちの半数近くはやっつけたッ!
とはいえ、さすがに今回はアクアを巻き込むとマズいので、彼女から距離をとった分、想定していたよりも倒した数は少ないのだが。
「……なるほど」
カズマが何かを企むかのような、悪い顔で呟いた。そしてめぐみんに耳打ちをすると、助けを求めに来たアクアと共に走り出す。
カズマは時にアクアの手を引き、右往左往するように逃げ回っている。が、それは悪あがきをしているように見えてその実、散在していた残りのアンデッド・ナイトの近くを通り過ぎて、アクアを追いかけさせるように注意を引きつけていた。そして。
「何っ!?」
ベルディアに向かって突っ込んで行き。
「アクア、こっちだっ!!」
その目前で横っ飛びに避ける。一方のアンデッド・ナイト達は咄嗟のことに対応できず、ベルディアへと突っ込んで…。
「めぐみん、やれーっ!」
「何という絶好のシチュエーション! 感謝しますよカズマ!」
そう言ってめぐみんは杖を構え。
「我が名はめぐみん! 紅魔族随一の魔法の使い手にして、爆裂魔法を操りし者! 魔王の幹部、ベルディアよ! 我が力、見るがいい!
『エクスプロージョン』ッ!!!」
その、あまりにも強力な術が、ベルディアとアンデッドナイト達を、共に一瞬で吹き飛ばした。
正門の前に出来た、巨大なクレーター。アンデッドナイトたちは、すべて吹き飛んだ様だ。
「我が爆裂魔法の威力に、誰一人として声も出せないようですね…。ふああ…、口上といい、凄く…、気持ちよかったです」
悦に入るめぐみん。ただし地面に倒れた状態で。本当に、これさえなけりゃねぇ。
そんな彼女にカズマは近づき声をかける。
「おんぶはいるか?」
「あ、お願いします」
めぐみんの活躍に、騒ぎたてる冒険者達。
だが、しかし。果たして本当に、ベルディアを倒すことは出来たのだろうか。
元の世界においてあたしは、数多の魔族達と戦うことになった。その際あたしは、人間が扱える最強の黒魔術とされる
ベルディアは曲がり形にも魔王軍の幹部。更に魔王の加護を受けた相手だ。いくら爆裂魔法が凄かろうと、その様な相手を一撃で倒せるものだろうか。
そして。
「クハハハ! 面白い! この駆け出しの街で、本当に配下を全滅させられるとは思わなかったぞ!」
あたしの予想通り、ベルディアは無傷で瓦礫の中から立ち上がってきた。
「では約束どおり、俺自ら貴様らの相手をしてやろう!」
よし、わかった。
「
ぼごぉっ!
「何ィ!?」
予め唱えていた術を発動させると、ベルディアの足下の地面が消え、出来た穴に下半身がすっぽりと納まった。
あたしは急いで次の呪文を唱え。
「
魔力増幅を除くと、こちらへ来て初めての黒魔術を解き放つ! が、しかし。
「ぐがあああああっ!?
……く、うっ! あのアークプリーストといい貴様といい、何故低レベルの冒険者がこれほどの攻撃を…」
穴から這い上がりながら、文句を垂れるベルディア。ちぃっ!
どうやら魔王の加護とやらはかなり強力みたいだ。まあ、それなりには効いてる様だが。
とはいえ、アクアの浄化魔法にめぐみんの爆裂魔法、あたしの塵化滅に耐えられるのだ。果たしてどれだけのダメージを与えればいいのやら。
と、そんな緊迫感漂う空気を気にもせず、アクアが
「……ねえねえ、リナ。貴女さっきから悪魔臭いわよ?」
「悪魔臭いとは何じゃああああっ!! ……って、もしかして、魔族の力を借りた術を使ったから?」
考えてみれば、悪魔と魔族、細かいところは違うものの似たような存在である。特に人間の負の感情を好むところはまんまだし。まあ、こっちで色々調べてて知ったことだけど。
とはいえ、うら若き乙女に「悪魔臭い」はないだろ。さすがのあたしでも、ちょっとは気にするぞ。
「……何かしら。リナってば今、都合のいいこと考えてなかった? 嘘ではないけど、真実でもないような」
読まれた、だと!? 確かに、前世のあたしは天寿を全うして死んでるけど、こちらでは若い肉体を得て、精神的にも若返ってる。つまり、「うら若き」は嘘ではないが、真実でもないのだ。
アクア、下らないことにはやたら勘がいいでやんの。
「ええい! 人が真面目に語っているというのに、下らない話をぺちゃくちゃと!」
そしてベルディアは、またもや怒りにその身を震わせていた。ここはひとつ茶々を入れたいとこだけど、さすがに沸点も低くなっているようなので止めておこう。とりあえずは誠意を持って。
「いやー、ごめんねー?」
「このっ、ふざけおって!!」
どうやらあたしの誠意は通じなかったようだ。
ベルディアの敵意が剥き出しになった、その時。
「ビビる必要はねぇ! すぐにこの街の切り札がやって来る!」
「魔王軍の幹部だろうと関係ねぇ!」
冒険者達が声をあげる。しかし切り札ってまさか…。
「一度にかかれば死角が出来る! 全員でやっちまえっ!」
そう言って冒険者達がベルディアを取り囲んだ。
しかし、あたしは知っている。世の中には、その程度では実力差を埋められない相手がいるという事を。あたしはかつての旅の仲間を思い浮かべていた。
「余程先に死にたいらしいな」
そう言ってベルディアは自らの頭を上空へ放り投げ。
「やめろぉ! 行くなあああっ!!」
危険を察知したのだろう、カズマが有らん限りの声で叫ぶのだった。
前回から今回までの間に「このすば三期」と「爆焔」のアニメ化が決まるとは(新作アニメ化としての情報はあがってたけど)。……って、もっと更新速度上げろって事ですよね。すみません。