この素晴らしい世界にドラまたを!   作:猿野ただすみ

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なかなかキャベツ狩りにいけない。


この最弱冒険者にスキルを!

「何やってんだ、アクア?」

 

ごちゃごちゃやってるあたしたちの所に、カズマがやって来た。そのすぐ後ろには、三角帽子に黒マントという出で立ちの、めぐみんと呼ばれていた少女がいる。

 

「ちょっとカズマ! 彼女、あのリナ=インバースなんだって!」

 

スリッパではたかれて涙目になってたはずなのに、もう元気になっているアクア。なんて立ち直りの早い。

 

「ああ、知ってるよ。てか、アクアもリナのこと知ってんのか?」

「もちろんよ。私は日本担当の女神よ。小説(ラノベ)だってよく読んでたもの」

「それって要は、サボってたってことだろ? そんなだから駄女神なんだよ!」

「なによ、引きニートに言われたくないわ!」

「俺はニートじゃない!」

 

んーむ。仲がいいのか、悪いのか。

そんなことを考えていると、袖口をくいくいっと引っ張られる感触が。そちらを向けば、あたしに近寄ってきためぐみんがいた。

 

「あの、昨日(さくじつ)は助けていただきありがとうございました」

 

ほほう、なかなか礼儀正しいじゃないの。

 

「いやー、別に構わないわよ。あたしもおかげで、規定数まで退治できたしね。

ところで、自己紹介がまだだったわね。まあ、もう知ってるとは思うけど…。

あたしはリナ=インバース。リナでいいわ。あなたは?」

 

あたしが尋ねると、バサリとマントを翻しポーズをとって、彼女は言った。

 

「我が名はめぐみん。紅魔族随一のアークウィザードにして、最強たる爆裂魔法を操りし者!」

 

……この子は…。

 

「なんですか、その眼差しは。言いたいことがあるなら聞こうじゃないか」

「あー、ごめん。ちょっと昔の仲間のことを思い出して、ね」

「仲間、ですか?」

 

キョトンとした顔であたしを見るめぐみん。あたしは軽くうなずく。

 

「その子はなんてゆーか、極度の正義オタクでね。悪人に遭遇すると、高いとこから口上述べたりしてたのよ」

「ど、どのような口上なのですか!?」

 

おお!? すごい食いつきようね?

 

「うーん、毎回決まった口上があったわけじゃ無いけど。

そうね。あの子なら多分、『……道を踏み外した者どもよ。まだ、その胸の内に正義の心が残るなら、悔い改めなさい。さもなくば、このアメリア=ウィル=テスラ=セイルーンが正義の名の下に成敗しますっ!!』って感じかな」

「か、格好いいです!」

 

ううみゅ。やっぱり同じ穴のムジナだったか。でも、これでも抑えてる方の口上なんだけど。

 

「私もその人に会ってみたいものです」

 

めぐみんはそう言ったけど。

 

「残念だけど、その子とはもう長いこと会ってないし、今どうしてるかもわからないのよ」

「そうですか。それでは、仕方がないですね」

 

あたしの、嘘ではないけど真実を語ってはいない言い訳に、めぐみんが目に見えて落ち込む。ちょっと罪悪感があるけど、ホントのこと話すのもどうかと思うし、ここは潔く諦めてもらおう。

 

「めぐみん、リナとなに話してんだ?」

 

アクアとの言い合いをやめたカズマが、あたしたちの話に割って入る。少し離れてアクアが、

 

「カズマが、カズマがぁ~…」

 

と言いながら泣きじゃくっているところを見ると、口論はカズマに軍配が上がったようだ。

 

「ああ、カズマ。リナの知り合いの子が、なんだか私とフィーリングが合いそうなんです!」

「ん?」

 

カズマはあたしに近づくと、小声で問いかけてきた。

 

「(おい、それってもしかして…。

セイルーンのおうぢさまの娘のことか?)」

 

ぐはぁっ!

 

カズマめ! まさかここで、精神世界面(アストラル・サイド)への攻撃を仕掛けてくるとはッ!

……まあ、それは冗談としても、いまだにフィルさんをそう呼ばれると、けっこぉ精神的に来るものがある。いいひと、なんだけどねぇ。

 

「……そうよ。それと、その呼び方はやめて」

 

力なく言うあたしに、ニヤニヤしているカズマ。

コイツ、絶対わざとだ。くそぅ、いつか締めちゃる!

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

俺は席に戻ると、冒険者カードを取り出し。

 

「たまったポイントでスキルを習得出来るんだよな?」

 

そう呟いた。

ギルドのお姉さんに聞いた話だと、冒険者は全てのスキルを習得できるらしいんだけど…。

するとめぐみんが、スキルの習得方法について説明してくれた。

 

「まずは誰かに、スキルの使い方を教えてもらうのです。するとカードに項目が現れるので、ポイントを使ってそれを選べば習得完了なのです」

「つまり、めぐみんに教えてもらえば、俺でも爆裂魔法が使えるようになるって事か」

「その通りです!」

 

しまった。コイツの爆裂魂に火をつけちまったようだ。

めぐみんはとにかく、爆裂魔法の素晴らしさをやたらと熱く語ってくる。おまけに顔が近い。

 

「落ち着け、ロリッ子。つーか今、3ポイントしか無いんだが…!?」

 

あれ、めぐみんの様子がおかしいような。

 

「ロリッ子。この我が、ロリッ子…」

 

どうやらロリッ子というのに結構ショックを受けてしまったらしい。言っとくが、俺は決して悪くない!

 

「あーあ、何かお手軽なスキルって無いかな」

 

そんなことを呟いていると。

 

「捜したぞ」

 

そう声をかけてきたのは、昨日の女騎士。

やべぇ! やんわりとお断りしたのに、俺の意図がまったく伝わってねぇ!

 

「私をあなたのパーティーに入れ…」

「お断りします!!」

「うっ、くう! 即断、だと…!」

 

だめだ、コイツ! 喜んでやがる!!

チラリと視線を巡らせると、リナが少し離れた場所で、俺から視線を逸らす。くそっ、この薄情モン!

 

「ダメだよダクネス、そんな強引に迫っちゃさ」

 

そうダクネスに話しかけたのは、右頬に小さな刀傷のある、銀髪ショ-トの女の子。俺より1つ2つ年下か?

 

「ええと、あなたは?」

「この子は盗賊のクリスよ」

 

俺が尋ねると、近づいてきたリナが紹介してくれた。……てか、リナの知り合いなのか?

 

「やあ、リナ」

「昨日はありがとね、クリス」

 

そう言いながらリナは小さな袋を取り出し、クリスと呼ばれた子に手渡す。

 

「これ、借りてた千エリス。シュワシュワはまたあとでね」

 

借りてた、千エリス!? もしかして登録料か!?

 

「ずりぃぞ! 俺たちなんて登録料手に入れるのに、すげー惨めな気持ちになったんだぞ!?」

「いや、そんなの知ったこっちゃないし」

 

確かにそうだけど! 何、この格差?

 

「まあまあ、落ち着いて。

ところでキミ、スキルを覚えたいんでしょ? それだったら盗賊系のスキルがおすすめだよ」

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

カズマはシュワシュワ1杯で、盗賊のスキルを教えてもらうことにしたようだ。

因みにあたしもシュワシュワを奢ったので、2杯のシュワシュワにほくほく顔のクリスだった。

その後カズマ、クリス、ダクネス、そしてあたしの4人は場所を路地裏に移し、カズマは敵感知や潜伏を教えてもらっていた。まあ、大きなタルに隠れたクリスが、石をぶつけられたダクネスにタルごと転がされてたけど。

かく言うあたしは、盗賊系スキルと冒険者のスキル習得に興味があってついてきたのだが。

 

「……とまあ、盗賊系のスキルには敵感知や潜伏とか色々あるけど、特にアタシの一押しはコレ。

いくよ、よく見てて」

「ウッス! クリスさん、よろしくお願いします!」

 

クリスに対して気合いの入った返事を返すカズマ。そんなカズマに、クリスは右の掌を向けて。

 

「『スティール』!」

 

言葉を紡いだ瞬間、クリスの掌が閃光を放つ。

光が治まったあと、一度閉じられていた手を再び開くと、掌の上には小さな布袋があった。

 

「あっ、俺のサイフ!」

「コレが窃盗スキルの『スティール』。成功すれば相手の持ち物を奪い取ることが出来る」

 

へぇ、そりゃ確かに勧めるだけのことはあるわね。

もっとも。あたしの場合は、相手を倒す(いじめる)って行程()愉しんでるワケだけど。

このあとクリスは、カズマに勝負を挑んできた。それは盗賊スキルを覚えてサイフを奪い返すというもの。

カズマは考え込むものの、すぐにこの話に乗ってきた。

 

「じゃあ、冒険者カードを使ってスキルを習得してみて」

 

クリスに言われ、カズマはカードを確認する。

 

「敵感知・1ポイント。

潜伏・1ポイント。

窃盗・1ポイント。

花鳥風月、……花鳥風月?」

「さっきギルドで、あなたの仲間がやっていた宴会芸スキルだ」

「宴会芸のくせに5ポイント! (たっか)!!」

 

ダクネスの説明にツッコミを入れるカズマ。いや、まあ、あたしもそう思うけど。

カズマが3つの盗賊スキルを習得する。そしていよいよ勝負! というとき。

 

「当たりはこのマジックダガー。40万エリスは下らない一品だよ。

そして残念賞は、この石だ!」

 

それは、ダクネスに石を当てるときに拾っていた物。どうやらコレを予想して多めに拾っていたようだ。クリスもなかなかどうして、抜け目がない。

どうでもいいもの(小石)を複数所持していれば、大事なものを取られる確率は極端に減るわけだ。窃盗の効果を無効に出来るわけではないけど、安全策としては充分に機能している。

 

「やってやる! 『スティール』!!」

 

それでもカズマは挑戦する。確かにルナさんが言っていたとおりなら、カズマはあたしをはるかに超える幸運の持ち主。それなら当たりの確率は、プラス方向に修正されるはず。

果たしてカズマが手にしたのは…。

 

 

 

 

 

「あ、カズマ」

「どこ行ってたのよ。私の華麗な芸も見ないで。

……って、その人どうしたの?」

 

アクアは泣いているクリスを見て尋ねた。カズマが答えようとするけど、それを遮るような形でダクネスが。

 

「クリスは、カズマにぱんつを剥がれた上に、有り金を毟り取られて落ち込んでいるだけだ」

「おいあんた、何口走ってんだ! 待てよ、おい待て。間違ってないけど、ほんと待て」

 

そう。カズマの窃盗(スティール)は成功した。ただ、その手にしていたのは1枚の白い布。クリスの下着(ぱんつ)だったのだ。

 

「アタシが、いくらでも払うからぱんつ返してって言ったら、自分のぱんつの値段は自分で決めろって…」

 

うむ。

 

ずぴしっ!

 

クリスの後ろ頭にあたしの手刀が決まった!

 

「……ったぁ。リナ?」

「クリス。あんたが仕返ししたい気持ちは分かるけど、それじゃあさすがに、カズマが完全な悪者になっちゃうでしょ。

そもそも、勝負を挑んだのはクリスの方じゃないの。

勝負に勝ったカズマからしたら、妥当な請求をしただけだと思うけど?」

「う…」

「リナ」

 

クリスは言葉に詰まり、カズマがあたしの擁護に感動する。

 

「……まあ、手にしたぱんつを振り回して、『当たりも当たり、大当たりだー!』なんて叫んでいる姿は、ゲス以外の何者でもなかったけど」

「なぁっ…!?」

 

あたしは別に、カズマの味方ではない。

周りの、主に女性の冷ややかな目に、カズマはプルプルと震えだし。

 

「……すんませんでしたぁ!」

 

それはもう見事な土下座をして謝った。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「……それで、カズマは無事にスキルを覚えられたのですか?」

 

土下座をする俺に、めぐみんが尋ねる。俺は立ち上がると、不敵な笑みを浮かべ、めぐみんに言った。

 

「まあ、見てろよ? 『スティール』!」

 

めぐみんに向かって仕掛けた俺の窃盗スキルは見事に成功し、その手には黒い布が握られていた。

……おや? これってまさか。

 

「……なんですか? レベル上がってステータスが上がったから、冒険者から変態にジョブチェンジしたんですか?

……あの、スースーするので、ぱんつ返してください」

「あれっ? お、おかしいな。こんなはずじゃ…。

ランダムで何かを奪い取るスキルのはずなのに!」

 

予想外の出来事に困惑してると、リナが俺の肩をポンと叩いて言った。

 

「カズマ。お約束って知ってる?」

 

……しまったぁぁ! 俺は自らフラグを立てていたのかぁッ!

俺はそう、心の中で絶叫していた。




遅くなりましたが、続きです。
はっきり言って書き上げられなかった理由の一つが、アニメの3話目が手元になかったからです。もっと言うと、保存してある話が9話目(かのサキュバス回)以降という。
取り敢えず開き直って、途中から小説のセリフの一部ををアニメ風に置き換えて続きを書き上げた始末です。
次回はさすがにキャベツ狩りになると思うので、それほど時間はかからないかと。
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