この素晴らしい世界にドラまたを!   作:猿野ただすみ

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お久しぶりです。


このクルセイダーに呪いを!

「お、お前かぁ! 俺の城に、ば、爆裂魔法を撃ち込む大馬鹿者はぁぁ!!」

「んなことするかぁッ!! ……って、死霊騎士(デュラハン)!?」

 

ヒドい濡れ衣を着せてくる相手を見れば、首無し騎士のアンデッドだった。いや、だからなんなのこの状況。

 

「えーと、リナはそんなこと…、いや、何でもない」

「ちょっとカズマ! 何で途中でやめんのよ!」

「いや、爆裂魔法がドラスレだったら、ありそうだなーなんて…」

「何の理由もなくそんな事、するわけないでしょ!」

「理由があったらするんだな」

 

ハッ! しまった、これは誘導尋問!?

 

「おい、貴様ら! 俺を無視するんじゃないッ!」

「ハンス、うるさいわよ!」

「ハンスって何だ!

俺はそんな、軟体動物の様な名前ではない。俺の名前はベルディアだ!」

「ディルギア?」

「ベルディアだ! ベ・ル・ディ・ア!!」

 

いやー、打てば響くってのはまさにこの事ね。

因みにハンスってのは、向こうの世界で知り合った死霊騎士(デュラハン)だけど、いい意味で純粋な奴だ。ハッキリ言ってアンデッドにしておくのが勿体ないほどだった。

ディルギアは下ネタ獣人で、スポット(笑)だ。

 

「おい、リナ。あんまりからかわない方がいいぞ。アイツ、噂の魔王軍幹部だ」

 

アイツが!? でも、一体なんでこんなとこに…。

あ。

 

「そう言や、爆裂魔法がどうこう言ってたわね」

 

そう言ってあたしは、睨むようにめぐみんを見つめる。

彼女は脂汗をかきながら俯いていたが、意を決したのかキッと前を向き、ベルディアの近くまで歩を進めていった。

 

「お前が、お前が毎日毎日俺の城に爆裂魔法をぶち込んでくる大馬鹿者かっ!

俺が、魔王軍の幹部と知っていてケンカを売っているなら、堂々と城に攻めてくるがいい! その気が無いなら、街で震えているがいい!

何でこんな陰湿な嫌がらせするの? どうせ雑魚しかいない街だからと放置していれば、調子に乗って毎日毎日ポンポンポンポン撃ち込んできおって!

頭おかしいんじゃないのか、キサマ!?」

 

うわぁ、あの幹部、相当頭にきてるわね。てか、めぐみんってば毎日魔法を撃ち込んでたのか。

 

「……ッ我が名はめぐみん! アークウィザードにして、爆裂魔法を操る者!」

 

………………。

 

「……めぐみんって何だ。馬鹿にしてるのか!?」

「ちがわいっ!

……我は紅魔族の者にして、この街随一の魔法使い。

我が爆裂魔法を放ち続けていたのは、魔王軍幹部の貴方を誘き出すための作戦」

 

ほほう、言うじゃない。口八丁とはいえ、あそこまではったりをかませるなんて、なかなか肝が据わってるじゃないの。

 

「……いつの間に作戦になったんだ?」

「しかもさらっと、この街随一のと言い張ってるな」

「ホント、あたしを差し置いて…」

 

カズマとダクネスの会話を聞き、あたしも思わず口を挟む。

 

「しぃっ、黙っておいてあげなさいよ。

今日はまだ爆裂魔法を使ってないし、後ろに沢山の冒険者が控えてるから強気なのよ。今、いいところなんだから、このまま見守るのよ!」

 

あー、なるほど。いや、でも、あたしたちの会話、めぐみんに聞こえてるみたいなんだけど? なんかぷるぷる震えてるし。

 

「……ふん、まあいい。俺はおまえらに、ちょっかいかけにやって来たのではない。

しばらくあの城に滞在することになるだろうが、これからは、爆裂魔法は使うな。いいな?」

 

そう言って、跨がっている首無しの馬を反転させて背を向け、立ち去ろうと…。

 

「無理です。紅魔族は日に一度、爆裂魔法を撃たないと死ぬんです」

 

したところで、めぐみんがトンデモ発言をぶっちゃける。

 

「おおい! 聞いたことがないぞ、そんなこと! 適当な嘘を吐くなよ!?

……どうあっても、爆裂魔法を撃つのは止める気はないと?」

 

ベルディアの再度の問いに、めぐみんは深く頷いた。

 

「……俺は、魔に身を堕としてはいるが元は騎士だ。弱者を刈り取る趣味はない。……だが!」

「……ふっ! 余裕ぶっていられるのも今の内です!

先生! お願いします!!

 

って丸投げかいっ!?

 

「しょうがないわねぇ」

「「ハァッ!?」」

 

あたしとカズマは、思わず驚きの声をあげた。

いや、確かにアークプリーストで、おまけに女神のアクアだ。魔王軍幹部になる程の実力を持った死霊騎士(デュラハン)にも、引けを取らないだろう。

だが、それこそ魔王軍の幹部だ。女神相手はまだしも、プリースト、アークプリースト相手の備えをしていないとは、到底思えないのだが。

そんなこと微塵も考えてなさそうなアクアは、水を得た魚のごとく、嬉々とした表情で駆けだした。

その右掌へと光が集束し、先端に花の蕾を象る飾りのついた、長い棒が現れる。あれは、杖? いや、構えからすると槍なのか?

ともかくアクアがめぐみんの横に並び立ち、ベルディアと対峙する。

 

「ほう、これはこれは。アークプリーストか。

俺は仮にも、魔王軍の幹部のひとり。こんな街にいる、低レベルなアークプリーストに浄化されるほど、落ちぶれてはいない。

そうだな。ここはひとつ、紅魔の娘を苦しませてやろうか」

 

ベルディアがそう言うと、右手に黒い、昏いオーラが集まっていく。

 

「私の祈りで浄化してやるわ!」

 

そうアクアは言うが、おそらく今からじゃあ…。

 

「間に合わんよ」

 

あたしの心の声を引き継ぐかのような、ベルディアの言葉。そして。

 

「汝に、死の宣告を! おまえは、一週間後に死ぬだろう!」

 

ベルディアが放った呪いはしかし、めぐみんの前に立ち塞がったダクネスへと降りかかった。

 

「ダクネス!」

 

カズマが慌てて駆け出す。一方のあたしは、歩いてみんなの元へゆく。

……だって、背負った荷物や三振りの剣が邪魔で走れないんだから、仕方ないじゃない。

 

「ダクネス!」

「大丈夫か!?」

 

めぐみんと駆けつけたカズマがダクネスに尋ねる。

 

「……なんともないようだが」

「仲間同士の結束が固い貴様ら冒険者には、むしろこちらの方が堪えそうだな。

紅魔族の娘よ。そのクルセイダーは一週間後に死ぬ」

 

ダクネスの意見を否定する、ベルディアの発言。実際、呪いの類いは遅効性や緩効性であることが多く、速効性のものはむしろ珍しいのだ。まあ、この世界でも同じだったらの話だが。

そして、ベルディアの「苦しませる」と言う発言とねちっこい性格から、即死系の攻撃はないと践んだのだ。じゃなきゃ、今使える数少ない黒魔法のひとつ、黒妖陣(ブラストアッシュ)でもぶっ放していただろう。

 

「これより一週間、仲間の苦しむ姿を見て、自らの行いを悔いるがいい」

 

ベルディアは再び馬を反転させ。

 

「素直におれのいうことを、聞いておけばよかったのだ」

 

そう言葉を残し、立ち去ろうとする。だが。

 

「なんてことだ。つまり貴様は、私に死の呪いをかけ、呪いを解いて欲しくば俺の言うことを聞けと! そういうことなのか!?」

「……え?」

 

ダクネスのドM妄想発言で、再び足を止めることになる。

 

「くっ、呪いくらいではこの私は屈しない! 屈しはしない、が! ど、どうしよう、カズマ。

見るがいい、あのデュラハンの、兜の下のイヤラシい目を! あれは私を城へと連れて帰り、呪いを解いて欲しくば黙って言うことを聞けと、凄まじいハードコア変態プレイを要求する変質者の目だ!」

 

うわあ。ダクネス、想像してたのより遥かに上を行く変態だったわ。

 

「私の体は好きに出来ても、心まで好きに出来ると思うなよ! 城に囚われ理不尽な要求をされる女騎士とか。

ああっ、どうしよう、カズマッ!! 予想外に燃えるシチュエーションだ!

行きたくはない、行きたくはないが仕方がない! ギリギリまで抵抗してみるから邪魔はしないでくれ!

では、行ってくりゅ!」

「き、きちぃ…」

 

そう呟いたベルディアを、誰が責めることが出来ようか。

 

「止めろ、行くな! デュラハンの人が困ってるだろ!」

 

カズマがダクネスを羽交い締めにする。いや、むしろ困らせてやった方がいいのでは?

 

「とにかく! これに懲りたら、俺の城に爆裂魔法を撃ち込むのは止めろ!

そして紅魔の娘よ。クルセイダーの呪いを解いて欲しくば、城まで来るがいい。最上階の俺の部屋まで来ることが出来たなら、その呪いを解いてやろう!」

 

あー、なんかありがちな展開ねー。どうやらベルディアも例に漏れず、この手のお約束が大好きみたいね。……なんでだろ?

ベルディアは魔王軍幹部の威厳を込めたセリフを残し、首無しの馬と共に、今度こそこの場を去って行った。

 

 

 

 

 

青い顔をしていためぐみんが、杖をギュッと握り直すと、街とは逆へと歩き出そうとする。

 

「おい、なにをする気だよ」

「今回の件は私の責任です。ちょっと城まで行って、あのデュラハンに爆裂魔法を撃ち込んで、ダクネスの呪いを解かせてきます」

 

決意を込めた表情のめぐみんを見て、カズマは軽くため息を吐き。

 

「俺も行くに決まってんだろ。お前ひとりじゃ、雑魚相手に魔法を使って終わりだろ?

そもそも俺も、一緒に着いていきながら、幹部の城だって気づかなかったマヌケだしな」

 

ああ。そーいや、めぐみんは爆裂魔法使ったら、しばらくは動けないんだったっけ。

とはいえ、これ以上盛り上がる前に、現実というものを突きつけてやった方がいいだろう。

 

「あー、盛り上がってるところ悪いんだけど」

「ん、なんだ、リナ」

 

話に割って入ったことを特に気にする様子もなく、カズマが聞き返してきた。

 

「ダクネスの呪い、多分問題ないわよ?」

「「は?」」

 

二人は、それはもうマヌケな表情をしている。

 

「リナ、それはどういうことですか? 事と次第によっては、黙ってはいませんよ」

 

めぐみんは、瞳を赤く光らせながら言う。この子、結構仲間思いなのね。でも、もっと冷静に判断しないと、せっかくの頭脳が活かされないわよ?

 

「アンタたちのパーティーには、能力だけは一流のアークプリーストがいるじゃない」

「「あ…!?」」

 

そう答えると、二人は再び、マヌケな返事を返し。

 

「『セイクリッド・ブレイクスペル』!」

 

その時、アクアが魔法を発動させた。

ダクネスの体が淡く光ると共に、黒い何かが霧散していくのがわかる。

 

「この私にかかれば、デュラハンの呪いの解除なんて楽勝よ!

どう、どう? 私だってたまには、プリーストっぽいでしょう?」

「……あー、そうだな」

 

カズマは、それはもう跋の悪い表情で言った。

……どーでもいいけどアクア。「たまに」で「っぽい」じゃダメでしょ!?




お待たせした割には、内容はほぼまんまです。すみません。
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