ワールドトリガー ~ I will fight for you ~   作:ルーチェ

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【オリ主設定】


名前:霧科 ツグミ(きりしな つぐみ)

年齢:16歳(高校生) 11月24日生まれ(くじら座)

身長:162cm

血液型:O型

好きなもの:モフモフした動物、果物、料理、玉狛支部の仲間たち、戦闘モードの忍田の姿

嫌いなもの:節足動物(簡単に言うとゴキブリを含む昆虫)

家族:祖母、叔父

所属:ボーダー玉狛支部(2年前まではボーダー本部所属)

階級:B級隊員(2年前まではA級隊員)

肩書き:完璧万能手(パーフェクトオールラウンダー)(2年前まで) → 狙撃手(スナイパー)(イーグレットのptが一番高いため)

パラメーター:トリオン16、攻撃8、防御・援護8、機動5、技術8、射程20、指揮5、特殊戦術5

サイドエフェクト:「強化視覚」 視力表で視力1.0に該当するランドルト環を100m離れた場所から認識できる(視力20.0レベル)。さらに意識を集中させればトリオン体でできているものなら遮蔽物の裏側(例えば住宅やビルの中)のものでも検索(サーチ)できる。ただし地面の下は不可。
後述の玉狛オリジナルトリガーを使えば射程は2000mまで伸びる。

7歳の時に両親が事故死し、叔父(母親の弟)の忍田に引き取られて育てられた。
(捏造設定1:忍田は母親と一緒に市内の実家で暮らしている)

彼女が忍田の姪であることは旧ボーダーのメンバーと玉狛支部の人間は知っているが、ほとんどの隊員はそのことを知らない。

忍田はツグミのことを溺愛しており、それを本人は非常に困惑していた。
(迅曰く「嵐山が弟妹に接するのに近い」)

忍田家で暮らし始めて間もなくトリオン兵に襲われるが、そこを最上宗一に助けられた。

空閑有吾とは面識があり、その時に彼に息子がいることを聞かされた。

9歳で仮入隊し、第一次侵攻に参戦している(11歳)。

迅に時々「暗躍」の手伝いをさせられることがある。駄賃はぼ〇ち揚。

トリオン器官が他の人間と比べて非常に発達しており、最大のトリオン量もボーダー内ではトップクラス。

風刃を起動した場合、刃は18本出せる。
(適合者であったが、争奪戦で迅とは戦いたくないといって自ら降りた)

普段は特殊な眼鏡をかけており、サイドエフェクトで見えすぎてしまう視力を抑えている。これをかけると視力が2.0程度になる。戦闘体の時にはゴーグルを着用する。
(目を守るためと、テレポーターで視線を悟られないように)

黒髪のロングを後ろでひとつに束ねて、忍田から貰った桜色のリボンで縛っている。

剣術は忍田、狙撃と戦術は東から学んだ。

射手の技術は「なんとなくできた」で師匠はいない。

すべての攻撃用ノーマルトリガーを使えるように訓練しており、その時の戦術や気分によってトリガーチップを交換して戦う習慣がある。

性格は真面目で仲間思い。自分の信念を曲げることはなく、相手が城戸司令であっても自分の意見を述べるほど。
周囲からは実年齢よりもしっかりしていて大人に見られるが、たまに子供っぽい言動をすることがありそれをネタにからかわれることもある。

派閥は玉狛寄りの忍田派。近界民(ネイバー)とは仲良くしたいが、敵となるのなら容赦なく斬る。

元A級1位旧東隊の隊員で、三輪と二宮とはチームメイトだった。
(彼女が脱退してから加古が入隊している)

遠征経験があり、2年前に捕虜となった近界民(ネイバー)の扱いについて隊務規定違反をする。処分は謹慎1ヶ月、B級に格下げ、10000pt剥奪。

謹慎明けに玉狛支部へ転属。
(城戸派の多い本部よりも玉狛支部の方が気が楽だろうということで、林藤に招かれた)

玉狛支部に個室があって、中学を卒業してすぐに引っ越した。
(それまでは三門市内にある忍田家で祖母と真史の3人で暮らしていた)

忍田家を出たのは早く独立したいため。経済的にも負担にならないように通信制高校(六頴館高等学校の通信課程)を選んだ。
(捏造設定2:オリ主の行動の自由度を増やしたいために、六頴館には通信課程があることにした)

忍田家にいた時に祖母から料理を習い、特にダシ巻き玉子(忍田の好物)や煮物・味噌汁といった和食が得意。

たまに彼女の料理目当てで本部の隊員(太刀川や風間)が遊びに来ることもある。

玉狛支部に転属になってからはオリジナルのトリガーを使用している。

【スラッシュ】ツグミ専用(狙撃手(スナイパー)用)トリガー。サイドエフェクトの強化視力と豊富なトリオンを利用したもので、射程・弾速・弾道・威力を自由に調整できる。形はイーグレットに近いが、アイビス並みの出力を可能にするために多少大型化し、トリオンを多量に消費する。スラッシュは英語で鶫(つぐみ)の意。

【リザーブ】ツグミ専用のオプショントリガー。満タンのトリオン量と同量のトリオンを貯めておいてスラッシュ用のエネルギーとして使うことができる。使い捨て。制作費がかかるので、滅多に使用しない。

迅と同様に特定の部隊には所属せず独立的な行動をとる。
(今はB級だが元A級で小南やレイジと同じく一人一部隊扱い)

隊服はライダースジャケットとショートパンツ、ロングブーツのすべてを黒で統一したコスチューム。


オリ主イメージ

【挿絵表示】




Introduction
1話


 

 

 

三門市・人口28万人

ある日この街に異世界への(ゲート)が開いた

近界民(ネイバー)

後にそう呼ばれる異次元からの侵略者が

(ゲート)付近の地域を蹂躙、街は恐怖に包まれた

こちらの世界とは異なる技術を持つ近界民(ネイバー)には地球上の兵器は効果が薄く

誰もが都市の壊滅は時間の問題と思いはじめた

その時

突如現れた謎の一団が近界民(ネイバー)を撃退し、こう言った

「こいつらのことは任せてほしい」

「我々はこの日のためにずっと備えてきた」

近界民(ネイバー)の技術を独自に研究し「こちら側」の世界を守るため戦う組織

界境防衛機関「ボーダー」

彼らはわずかな期間で巨大な基地を作り上げ、近界民(ネイバー)に対する防衛体制を整えた

それから4年

(ゲート)は依然開いているにも拘わらず、三門市を出て行く人間は驚くほど少なく

ボーダーへの信頼によるものか、多くの住人は時折届いてくる爆音や閃光に慣れてしまっていた……

 

 

◆◆◆

 

 

とある初冬の午後、(ゲート)が開き、そこから1体のトリオン兵が出現。

(ゲート)が開いたのは警戒区域内であり、出現してまもなく撃退されたので民間人に被害はなかった。

…と、ここまでは三門市の日常である。

しかし今回はいつもと事情が違っていた。

出現したのはバムスター。攻撃力は低いものの、装甲は比較的堅い大型捕獲用トリオン兵である。

ボーダーの正隊員なら楽勝で倒せる部類に入るトリオン兵だが、その場に正隊員はいなかった。

さらに真っ先に現着したA級7位三輪隊はバラバラになったバムスターの残骸を発見したが、それを倒したと思われる人物の姿はどこにもなかったのだ。

三輪隊は現場付近で民間人の中学生3名を保護するが、彼らがバムスターを倒したのではないのはわかっている。

トリオン兵はボーダーの武器である「トリガー」を使用しなければ対抗できないのだから。

そして使用されたトリガーはボーダーの管理下にあるものではないと判明した。

こうなると「正隊員ではない何者かがボーダー以外のトリガーを使用してトリオン兵を倒した」としか考えられない。

ありえないことなのだが、これは実際に起きたことである。

 

 

 

 

そしてその翌日、今度は警戒区域外に(ゲート)が開いた。

場所は三門市立第三中学校。

まだ生徒たちが多数いる日中に、戦闘用トリオン兵・モールモッドが2体現れたのだ。

モールモッドはトリオン兵の中で最高の硬度を持つブレードが特徴で、その高速の斬撃をかわしながらの戦闘となるために正隊員といえども手練でなければ苦戦する。

当時、現場には第三中学校の3年生でボーダーC級隊員である三雲修(みくもおさむ)がいた。

だが彼ではモールモッドを倒すことは不可能である。

C級隊員のトリガーは訓練用であり、彼の能力ではモールモッドの装甲に傷ひとつ付けられるはずがないのだ。

だが実際には彼のトリガーが使用され、A級5位嵐山隊の現着以前にモールモッドは活動を停止していた。

おかげで生徒・教職員たちに犠牲は出ず、事態は収拾した。

ボーダーのおかげで敵は撃退されました。めでたし、めでたし。

民間人ならそれでおしまいとなるのだが、そういうわけにはいかないのがボーダーという組織、そして隊員たち。

ボーダーでは隊務規定でC級隊員が訓練以外でトリガーを使用することは禁じられているからである。

さっそく修は本部基地に出頭を命じられ、嵐山隊の木虎藍(きとらあい)が同行することとなった。

 

この2つの事件と並行して、三門市内ではいくつかの近界民(ネイバー)関連の事件が起きていた。

通常ボーダーでは(ゲート)が発生しそうになると本部基地の誘導装置が働き、警戒区域内にトリオン兵が出現するようにして、市民に被害が出ないようにする。

しかし誘導装置の効かないイレギュラーな(ゲート)が開く事例がこれらの他に6件発生していたのだ。

そのどれもが偶然付近にいた非番のボーダー隊員の活躍により事なきを得ていた。

 

これらの一連の出来事がこれから起きる近界民(ネイバー)による大規模侵攻の前兆であったことを皆が知るのはもうしばらく先のこととなる。

 

 

◆◆◆

 

 

玉狛支部所属のボーダー隊員・霧科ツグミ(きりしなつぐみ)は防衛任務で市内を巡回していた。

艶やかな長い黒髪をひとつに束ね、桜色のリボンで縛っている16歳の少女。

彼女の隊服はライダースジャケットとショートパンツ、ゴーグルにロングブーツのすべてを黒一色で統一したスタイリッシュなもので、カラフルなジャージタイプの隊服が多いボーダー隊員の中では異色である。

両腕には玉狛支部のエンブレムがついていて、彼女のパーソナルカラーである桜色の部分だけが黒だけの隊服に色を添えていた。

さらに左腰には日本刀のような攻撃手(アタッカー)用トリガー・弧月を差し、鋭い眼光とスキのない一挙一動はまるで古武士のようだ。

B級隊員ではあるがA級レベルの実力を持つ彼女は特定の部隊には所属していない。

まあこれについてはいろいろと事情があるのだが、ひとりで一部隊クラスの戦力があるために単独での防衛任務となっている。

 

ボーダー隊員は交代で週に3-4回の防衛任務に就く。

隊員の多くが中高生であるために学業優先ではあるが、ボーダー隊員である以上は防衛任務にも一定の回数就くことが義務付けられている。

前日からイレギュラーな(ゲート)が開き、トリオン兵の出現が相次いでいたことから通常より多くの隊員が防衛任務に駆り出され、彼女にも招集がかかっていた。

彼女の担当は警戒区域の南西側と市街地の境界付近である。

 

(昼すぎに第三中学校付近に(ゲート)が開いてモールモッドが2体出現したっていうけど、誘導装置が効かないなんてかなりヤバいわよね…)

 

ツグミは6階建てのマンションの屋上のフェンスに腰掛けて南の方角を眺めていた。

彼女の視線の先には校舎の一部が破壊されている第三中学校がある。

しかし避難指示は出ておらず、生徒たちはいつもと変わらずに授業を受けているようであった。

 

(生徒に被害がでなかったのは不幸中の幸いだけど、こんなことが続くようじゃ市民は安心して暮らせない。早く原因を見つけて解決しなきゃいけないけど、今のわたしたちにできるのはこうやってトリオン兵の出現を見張るくらいなのよね…。ああ、もうじれったい)

 

いくらボーダー隊員が頑張っても限界はある。

近界民(ネイバー)の襲撃は何の前触れもなく、どうしても後手に回ってしまうことが多い。

(ゲート)を警戒区域内に誘導することで民間人への被害を最小限に抑えるという手段を講じていたものの、今回はそれが役に立たないのだからどうしようもないのだ。

よって防衛任務に就くボーダー隊員の数を通常より増やして対処しているというわけである。

 

「とりあえずこの辺りは異常なし。さ~て、次へ行こっか」

 

ツグミは大きく背伸びをすると立ち上がった。

しかしその次の瞬間、(ゲート)が発生したことを知らせるサイレンが鳴り響いた。

 

『緊急警報、緊急警報、(ゲート)が市街地に発生します。市民の皆様は直ちに避難してください。繰り返します…』

 

「どこ!?」

 

ツグミは周囲を見渡した。

すると彼女のいるマンションから西北西の方角、約650メートルの場所に不気味な黒い穴が開くのが確認された。

そしてその中から現れたのはバムスターで、その巨大な躯体は離れた場所からも十分に視認できる。

それは児童公園の中に落下した。

敵の周囲にはボーダー隊員はおらず、もっとも近い場所にいるのが彼女である。

 

「ここからの狙撃で十分いけるわね」

 

ツグミは「スラッシュ」を構えた。

スラッシュは彼女専用の狙撃手(スナイパー)用トリガーで、玉狛支部へ転属になった後に作ってもらったものである。

形態はイーグレットの口径を大きくし、さらに銃身を長くしたもので重量もそこそこある。

そして特筆すべきはその性能である。

狙撃手(スナイパー)用トリガーは射程・威力・弾速のバランスの良い万能型のイーグレット、弾速も速く命中させやすいが威力の弱いライトニング、非常に高い威力を持つアイビスの3種あり、狙撃手(スナイパー)はそれぞれ状況に応じて使い分けるのが普通である。

スラッシュはその3種の性能をひとつにまとめたすぐれものなのだ。

射程・威力・弾速を細かく設定でき、イーグレットのような長距離射撃を可能とし、アイビス並みの威力も発揮できる。

ただしその場の状況に応じて即座に設定を変える必要があるので、彼女のようなトリオン能力が高いベテランにしか扱うことはできない。

 

ツグミはスラッシュをイーグレットモードに設定し、銃口をバムスターに向けた。

 

「射程…650、弾速…威力…、よしっ! 発射(ファイア)!」

 

スラッシュから放たれたトリオンの弾はバムスターの頭部に命中。

するとバムスターは悲鳴のような声を上げ、身体をくねらせながらバタリと倒れた。

 

「こいつだけ…じゃないみたい」

 

さらに別の(ゲート)からバムスターが1体顔を出した。

 

「ちっ、キリがないわね。マズイ…場所が悪いわ」

 

場所が悪いというのは、2体目のバムスターが落下したのは民家の密集地で、下に住宅があればバムスターに押し潰されていると思われるからだ。

さらにその付近に民間人がいれば、彼らが危険に晒される。

ツグミは急いでスラッシュを構え直した。

しかしその間にバムスターは建物の陰に隠れてしまう。

居場所はわかっているものの、このままスラッシュを撃てば建物も吹っ飛んでしまうだろう。

さらに倒れればさらにいくつもの住宅が倒壊するのも目に見えている。

 

(どこかに誘導するしかないかな…)

 

ツグミは屋根伝いにバムスターを目指して駆けて行き、バムスターの正面に降り立つと挑発するように叫んだ。

 

「さあ、来なさい! トリオンたっぷりのわたしはおまえにとってオイシイ獲物のはずよ!」

 

近界民(ネイバー)が「こちら側の世界」にやって来るのはトリオンを求めてのこと。

バムスターはトリオン能力の高い人間を捕獲して連れ去るためのトリオン兵であるから、ツグミのような人間はまさに「ご馳走」なのだ。

案の定、バムスターはツグミを捉えようとして襲いかかった。

すると彼女は大きくジャンプして後方へさがる。

 

(食いついたわね…。たしかこの先にけっこう広い空き地があったはず。あそこまで連れて行けば被害は抑えられるわ)

 

ツグミは逃げ遅れた民間人の有無を確認しながら100メートルほど離れた空き地へ駆けて行った。

バムスターも周囲には目を向けず、ただ獲物としてのツグミを追って行く。

そして空き地の中央までやって来ると、彼女は振り返って右手にトリオンキューブを浮かべる。

その直後にバムスターが空き地に侵入してきた。

 

「来たわね…」

 

ツグミはキューブを浮かべた右手を真っ直ぐにバムスターに向けた。

 

通常弾(アステロイド)!」

 

ツグミの右手から放たれた通常弾(アステロイド)はバムスターの目を直撃し、バムスターは断末魔の声を上げて地面に倒れた。

 

彼女は近くにあった電柱に飛び乗ると周囲を見渡した。

新たな(ゲート)は見当たらず、トリオン兵の姿もない。

 

「やれやれ…。これで終わり、かな?」

 

そう呟いて地上に飛び降りる。

 

「ん?」

 

ツグミはバムスターの残骸の陰に動く物体を見つけた。

それはこれまでに確認されたことのないトリオン兵であった。

一瞬見た時は猫か犬といった動物だと彼女は思った。それくらいの大きさなのだ。

しかしその動きはそういう動物のものではなく、6本脚の節足動物を連想させた。

 

「うっ、ゴキブリ…」

 

節足動物、つまり昆虫類、甲殻類、クモ類、ムカデ類など、外骨格と関節を持つ生物が大の苦手のツグミ。

もっとも嫌いなのがゴキブリで、それに良く似た物体を見てしまった彼女は戦慄する。

そして普段は冷静沈着な彼女もこの時ばかりは狼狽し、後先考えずに通常弾(アステロイド)を撃ち始めた。

 

「この死ね、死ね、死ねー!!」

 

もしこれがバムスターのような形状であれば捕獲して調査するという行動に出ただろう。

しかし彼女にとって最大の天敵に似ていたがためにせっかくの貴重なサンプルを失ってしまったのだった。

その新型トリオン兵は欠片すら残らないほど完全に消滅した。

そして自分が大失態をしたことに気がついたのは、呼吸が整ってからだった。

 

「ハハハ…相変わらずだな」

 

ツグミの背後から男性の声がした。

 

「あ、ジンさん…」

 

そこにいたのはS級隊員の迅悠一(じんゆういち)であった。

彼もまた玉狛支部の一員であり、ツグミにとっては兄のような存在である。

 

近界民(ネイバー)に対しては理解があるのにトリオン兵に対しては容赦ないな、おまえは。虫嫌いもそこまでいくと感心するぜ」

 

「だってアレそっくりなトリオン兵だったんだもの。…でも見たことのないタイプだったから捕獲すべきだったと後悔してます」

 

「見たことのないタイプ?」

 

「そう。これくらいの大きさでカサカサカサ…って歩くアレそっくりなヤツです」

 

ツグミは手を広げて大きさや動きを迅に説明した。

 

「へえ~、そりゃ気になるな」

 

「だから内緒にしておいてください。特に本部のお偉いさんたちに知られたら大目玉を食らうことになっちゃいますから」

 

ツグミはとある理由でボーダーの上層部に要注意人物認定されているから、こういった失態を知られるとますます立場が悪くなる。

小さなことでも隠したいという彼女の気持ちは迅にも理解できた。

 

「ああ、誰にも言わねえよ。それよりおまえ…」

 

迅がツグミの顔をじっと見る。

 

「な、何ですか? 何か顔についてます?」

 

「いや、そうじゃなくて…」

 

「もしかして何かわたしの未来が視えてます?」

 

「うん…。まあ、いいか。明日になればわかることだしな」

 

「?…ところで何でこんなところにいるんですか? ジンさんも防衛任務?」

 

「いや、さっき城戸さんに呼ばれて本部へ行く途中だ。バムスターが見えたから駆けつけたけど、おまえに先を越されたってわけさ」

 

「そうだったんですか…。でもそれなら早く行った方がいいですよ。わたしにはジンさんが城戸司令にイヤミを言われる未来が視えます」

 

「そりゃマズイな。じゃ、防衛任務頑張れよ」

 

迅はそう言うと片手を上げて去っていった。

 

 

◆◆◆

 

 

初冬の短い陽が西の山の端に差し掛かりかけた頃、その巨大な躯体を持つトリオン兵は姿を現した。

半透明の鰭のようなものが生えている鯨のような形態で、周回軌道を描きながら市街地の上空を飛行している。

ボーダー隊員ですら見たことのない新たな敵は市街地を無差別に爆撃し、街は第一次近界民(ネイバー)侵攻以来の惨状に見舞われていった。

偶然その場に居合わせた木虎がトリオン兵の背中に飛び乗り攻撃を加えるが、逆に大ダメージを受けたトリオン兵は背中に彼女を乗せたまま街中に落下しようとしている。

ツグミは標的を見つけるとスラッシュを構えたが、次の瞬間そのトリオン兵が何らかの力によって川の中に引きずり込まれた。

そして大爆発を起こし、辺りには静寂が戻ったのだった。

 

 

 

 

ツグミは目の前で起きた出来事を反芻しながら市内の巡回を続けていた。

 

(あの大型トリオン兵にダメージを与えたのはキトラちゃんだってことは間違いないけど、あの様子じゃ彼女にとっても想定外だったというカンジ。何だったんだろう…?)

 

他にも気になることがいくつかあった。

 

(それよりもあの小型トリオン兵のことが気になるのよね…。あの大きさやわたしを襲ってこなかったことから考えられるのは、攻撃や捕獲用ではない別の目的を持っているということ。そうなると…偵察? 他には…ボーダーに悟られにくい個体でのトリオン収集とか。破壊しなけりゃ今頃本部の開発室で調べてもらえたのになぁ…。あ、でも1匹見たら30匹はいるっていうアレに似ているから他にもいるかも?)

 

(それに第三中学に現れたモールモッドを2体倒したのがそこの3年のC級だったっていうし。でもC級が訓練用トリガーでモールモッドを倒すなんて…。ありえないってことはないけど、それくらいの実力者ならとっくにB級で活躍しているはず。それとも本部所属の隊員のことだから、わたしが知らないだけなのかな?)

 

そんなことを考えているうちに、ツグミは問題の第三中学校の校門前にやって来ていた。

もちろん夜間であるために誰もおらず、校内は真っ暗だ。

倒されたモールモッドの残骸はボーダーによって運び出されているが、そこで戦闘があったことは一目瞭然である。

 

(ん?)

 

ツグミは校舎の3階の割れた窓から微かだが明かりが漏れているのを見つけた。

こんな時間に人がいるのはおかしい。

現場はボーダーから立ち入り禁止の命令が出されていて、誰も立ち入らせないように教員から生徒たちに言い聞かせてあるはずだ。

もっとも男子中学生ならトリオン兵が出現した場所だからということで、興味本位で近付くということもありえる。

 

「それとも、まさか…」

 

ツグミは別の可能性を考えた。

 

(あの小型トリオン兵はバムスターの出現場所にいた。同じタイプのものがモールモッドの出現場所にいたとしても不思議はない。それが無人の校内を徘徊しているとしたら…)

 

ツグミは全神経を両眼に集中させ、問題の3階を見た。

するとぼんやりだがしゃがんでいる人の形と、そのすぐそばに小さな塊が見えた。

彼女には「強化視覚」というサイドエフェクトがあり、通常の人間の視力をはるかに超える視力を持っているが、他に「トリオン体でできているものを障害物越しでも検索(サーチ)できる」という能力がある。

校舎の壁くらいなら簡単に透過して中のトリオン体の物質を見極めることができるのだ。

 

(人型…? ボーダー隊員の誰かが調査しているの?)

 

昼間の事件の現場検証にボーダー隊員が派遣されたというのであれば問題はない。

しかし万が一近界民(ネイバー)であった場合は大変なことになる。

 

(念の為に確認しておかないと…)

 

そこでツグミは目標の人物に逃げる隙を与えないよう、一気に突入することにした。

例の小型トリオン兵でなければ冷静に対応できる自信がある彼女は大きくジャンプすると、トリオン反応のある場所から5メートルほど右側のモールモッドによって破壊された壁の穴に飛び込んだ。

するとその気配に驚いた人物がパッと後ろに退く。

その身のこなしは普通の人間ではないとツグミは一瞬で判断し、弧月を抜いて構えた。

よく見るとその人物は小柄な白髪の少年で、この学校の制服を着ている。

手には懐中電灯があるから、この光が窓から漏れていたのだろう。

 

「わたしはボーダー隊員です! あなた、ここで何をしているの!? ボーダー隊員なら所属と階級と姓名を名乗りなさい」

 

ツグミが厳しい口調で問うと、少年は慌てて両手を挙げた。

 

「ち、ちょっと待って。おれはボーダーじゃない。この学校の生徒だよ」

 

「トリオン体である以上はボーダー隊員でないのなら近界民(ネイバー)である」のだが、相手の様子を探るためにツグミは信じたフリをする。

 

「なんだ…驚かさないでよ。でもここは立ち入り禁止になっているって先生から言われているはずよ。ダメじゃないの。…何かあったの?」

 

「えっと…昼間、ここで大事なものを失くして、それを探しに来たんだ」

 

「大事なものって何を失くしたの? わたしも探すの手伝ってあげようか?」

 

そう言うと、少年はブンブンと首を横に振る。

 

「いえいえ、おかまいなく。明日の朝、また探しに来るから。じゃ」

 

少年はそう言って立ち去ろうとするが、ツグミは弧月を握った右腕を少年の方へ真っ直ぐ伸ばした。

 

「背中を向けるなんて無用心よ。それじゃいきなり後ろから攻撃されたら防ぎようがない。それともその状態からでも大丈夫ってことかしら?」

 

「何言ってんの? ボーダー隊員は民間人にトリガーを使っちゃダメなんだろ?」

 

あくまでも民間人を装う少年。

 

「ええ、民間人にはね。でもこれが近界民(ネイバー)になら問題ないのよ」

 

それは暗に「おまえは近界民(ネイバー)だろ」と言っているようなもの。

少年は自分の嘘がバレたと察し、ゆっくりと振り返ってツグミと対峙する。

 

「!」

 

ツグミには暗がりの中でも少年の表情ははっきりとわかった。

その目は数多くの修羅場をくぐり抜けてきた歴戦の戦士のもので、さすがの彼女もその迫力に臆してしまう。

 

「おれとやろうって言うの?」

 

その言葉と態度には揺るぎない自信が溢れていた。

 

(このコ、見た目とは違ってけっこう手練だわ。下手に動けばこっちが殺られるかも…。どういう事情でここにいるのかわからないけど、彼だって無闇に騒ぎを起こしたくないだろうから、こっちが敵意を見せなければ穏便に済ませられるはず)

 

ツグミは弧月を鞘に戻した。

 

「やるかやらないかはあなたの態度次第。わたしは少し話がしたいだけだもの。念の為に言っておくけど、わたしは近界民(ネイバー)がすべて敵だとは思っていないから。こちら側の人間に手出ししないなら、あなたと戦う気はないわ」

 

ツグミの言葉を聞き、少年は彼女に対する警戒を解いた。

 

「話って何? …っとその前に、どうしておれが近界民(ネイバー)だってわかったのか教えてくれる?」

 

「その身体がトリオン体でできているからよ。こちら側の世界にはボーダー関係者以外にトリオン体の身体を持つ人間なんていないもの。で、なぜトリオン体なのかがわかったか、って訊きたいでしょ?」

 

「うん。見た目は完全に生身と同じだから」

 

「そうね。見た目ではまったく判断できないわ。でもわたしにはちょっとした力があって、トリオン体を検索(サーチ)できるのよ」

 

そう言うと、少年は特に驚く様子も見せず納得した。

 

「なるほどね」

 

「じゃ、わたしも訊いていい? あなたはわたしの言葉を信じてくれたみたいだけど、なぜ? 嘘をついているかもしれないわよ」

 

ツグミの問いに少年はにやりと笑う。

 

「おれにもちょっとした力があって嘘ついてるかどうかわかるんだ」

 

「ふ~ん。それがあなたのサイドエフェクトなの? すごいわね」

 

感心するツグミ。

 

「あんたのもね」

 

少年もそう返す。

 

「これは都合がいいわ。わたしの言っていることを信じてもらえるから。わたしはボーダー玉狛支部所属のB級隊員霧科ツグミ。あなたの名前は?」

 

「空閑遊真(くがゆうま)」

 

ツグミは一瞬ある人物の顔を思い出した。

その人物の名も「空閑」であったからだ。

しかし今はその詮索をしている場合ではない。

 

「ユーマくんね。…単刀直入に訊くけど、ここで何をしていたのか正直に話してくれる? その内容によっては、わたしはボーダー隊員としてあなたを拘束しなきゃならないかもだけど」

 

遊真はツグミのことを信用したのか話し始めた。

 

「おれの知り合いにボーダー隊員がいて、そいつから最近イレギュラー(ゲート)が開くって聞いたんだ」

 

「その隊員ってあなたが近界民(ネイバー)だってこと知ってるの?」

 

「うん。昨日こっちに来て知り合った。面倒見が良くてこちら側の世界のことをいろいろ教えてくれる」

 

ツグミは渋い顔をする。

あきらかにその隊員は隊務規定違反行為をしているのだから。

民間人にさえ口外するのを禁じられている事情を、昨日知り合ったばかりの近界民(ネイバー)に教えるなど正気の沙汰ではない。

いや、近界民(ネイバー)である彼にだからこそ相談したのかもしれない。

 

「それでイレギュラー(ゲート)のことを調べていたってこと?」

 

「そう。こいつが心当たりあるっていうから」

 

遊真はそう言って黒い指輪をしている左手の人差し指を上に向けた。

するとそこに炊飯器のような形の黒い物体が現れる。

さっき見た彼のそばにいたトリオン体の小さな塊の正体だろうとツグミは察した。

 

〔はじめまして。私の名はレプリカ。ユーマのお目付け役だ。以後よろしく〕

 

「こちらこそよろしく、レプリカ。…もしかしてあなたってトリオン兵…なの?」

 

〔そうだ。ユーマの父親が作った自律型多目的トリオン兵だ。話を元に戻すが、私はイレギュラー(ゲート)が頻繁に開くことを聞き、あることに気が付いた。トリオン兵の目的が本来のものとは違っているようなのだ〕

 

「どういうこと?」

 

〔これまではトリオン兵がボーダー隊員に知られないようにこっそりとこちら側の人間を連れ去ることを目的としていたが、今回の行動はその効果が全く出ていない。逆に派手な動きをしてボーダー隊員の出動回数を増やし、トリオン兵を無駄にしている〕

 

レプリカの話を聞きながら頷くツグミ。

 

「その通りだわ…。じゃ、今回の目的は何だと思う?」

 

〔たぶん陽動と情報収集だろう〕

 

「あ…もしかしてバムスターやモールモッドを街に放って、大混乱になっている間に別のトリオン兵が潜伏しているんじゃない? これくらいの大きさで、カサカサカサって動くトリオン兵を見たんだけど」

 

ツグミは例の小型トリオン兵のことを思い出し、両手を広げて大きさや形を身振り手振りで説明する。

 

〔それは隠密偵察用トリオン兵のラッドだろう。たぶん(ゲート)発生装置を備えた改造型だと思われる。ラッドを街に放ち、様々な情報を得ようとしているならば、大規模な侵攻を計画していると考えられるな〕

 

「大規模な侵攻ですって!?」

 

〔ああ、その可能性は高い。しかし今のところ物的証拠がない。我々はそれを探していた。よって我々の行動に目をつぶってはもらえないか? もちろんユーマが近界民(ネイバー)であることも黙っていてほしい〕

 

「もちろんいいわよ。ボーダーの知識や経験の範疇外のことが起きているんだもの、こっちから協力願いたいくらいよ」

 

〔そう言ってもらえると助かる〕

 

「あ、ひとつだけ質問させて。ここに現れたモールモッドを倒したのってあなたでしょ?」

 

ツグミは遊真に訊いた。

 

「うん。おれが逃げろって言ったらあいつは自分がやるって。モールモッド相手じゃ絶対に死ぬからな、あいつ」

 

名前を出さないのは近界民(ネイバー)を匿ったことで本人が罰せられるのを恐れているからだろうと、ツグミは察した。

だからそこは追求しないでおく。

C級 ── 訓練以外でトリガーを使うことが隊務規定違反であると知っていても友人を助けようとして無茶な特攻をする少年と、その少年を信頼して協力する近界の少年。

住む世界は違っても心通わす少年たちのことが気に入ったからだ。

 

「ラッドのことがわかったらその()()()を通してボーダーに知らされるのよね? だったらわたしはこれ以上突っ込まない。今夜のことも知らなかったことにするわ」

 

「おれもあんたに会わなかったことにする」

 

遊真の返事にツグミは微笑みながら頷いた。

 

「じゃ、おやすみ。ユーマくん、レプリカ」

 

そう言ってツグミはその場を去った。何事もなかったといった感じで。

そして業務日誌に「第三中学校、異常なし」と書いておいたのだった。

 

 

 

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