ワールドトリガー ~ I will fight for you ~ 作:ルーチェ
戦闘フィールドでは照屋が千佳の
しかし近付けば近付くほど千佳の狙撃が正確になり、容易に接近できなくなっている。
迂闊に動けば確実に殺られるとなれば、慎重にならざるをえない。
一方、香取隊は相変わらず修ひとりに手間取っていた。
そこで葉子が修の気を引き、その隙に若村と三浦がそれぞれバッグワームとカメレオンを起動して修の背後を取ろうという作戦を
「香取隊の不調は華さんにまで感染してしまったみたいですね。この場合、若村さんがオサムくんと撃ち合える
「香取が脚をやられていて機動力が落ちているからじゃねえのか?」
「でも脚ブレードを使えば…って、ヨーコちゃんのことだから過去ログとか見ないから、そんな使い方知らないのかも。だとしてもヨーコちゃんの
相手に届かない弾をいくら撃ったところで何の意味もなく、それに気付いたのか葉子は射撃をやめた。
しかしタダの膠着状態というのではなく、別の手段で修の注意を自分に向けようとしているようだ。
「…なんだか喋っているように見えますけど、会話でオサムくんの気を逸らそうとでもいうんですかね? でもオサムくんがそんな挑発に乗るはずがありません。そしてますますヨーコちゃんがイラつくことになりそう。それにオサムくんの背後から強襲するという作戦は悪くないですが、三浦さんは片手で弧月という非常に不利な状態。それに姿が見えなくてもレーダーで接近しているのはわかりますし、なによりワイヤー陣がありますからそれを越えて来るのは難しい。うっかり引っ掛かればそれでカメレオンの意味もなくなります。彼は単なる陽動要員もしくは若村さんの援護要員というところでしょうか。よってメインで襲って来るのは若村さんであるという結論が導かれ、彼は姿が丸見えの状態で射程距離まで近付かなければなりません」
「そして修がそうなることを予想していないわけがない、か」
「そのとおりです。ヨーコちゃんの存在は単にオサムくんの気を逸らせるためのものですから無視し、背後から近付いてくる
栞の指示で修は背後に接近した三浦の存在を知った。
当然すぐそばに若村がいることも承知の上で、スパイダーを起動して新たな
それを見た若村はまた「赤いワイヤーは目くらましで、普通のワイヤーに注意をする」という葉子の言葉を思い出した。
しかし彼はさっきの葉子と同じように足元の低い位置に張ってあったワイヤーには気付かず、派手に転んでしまった。
そこを修がスラスターで威力を上げたレイガストで斬りかかる。
若村はシールドでギリギリ耐えているが、修にマウントを取られた姿勢なので逃げられそうにない。
続いて修は前もって仕掛けておいた「
三浦は若村の援護に入ろうとするが、ここで若村は葉子を援護するよう三浦に指示し、次の瞬間に両サイドからの
ほぼ同じタイミングで遊真は葉子に襲いかかっていた。
遊真の初撃はかろうじて受け太刀して避けたものの、彼女は
その隙に遊真は彼女の右手を斬り落とした。
これで彼女は
そこに三浦が援護に入るものの、遊真の攻撃に対して防御しかできず、フリーになった修の
「オサムくん、過去の敗戦を糧にしてずいぶんと成長していますね。『
ツグミは修が実力で得点したことを心から喜んでいた。
自分が先輩としてできることに限界があり、壁を前にして悩んでいた彼に何もできなかったことを口惜しく思っていたのだが、それがいつの間にか格上の隊員とサシで対決し、勝ちを得るまでに至っていたのだから嬉しいのは当然である。
「そしてユーマくんと三浦さんの対決に割って入っての
「香取に対しては辛辣だな、おまえは。言っていることはもっともだが、そこまで言わなくてもいいんじゃねえのか?」
「そこまで言わせるような
照屋は「勝負」に出た。
彼女はグラスホッパーを持っていないため、最短距離を一気にジャンプするしかない。
千佳の狙撃を真正面から食らう位置で、照屋がジャンプした瞬間に千佳は
この時、誰もが照屋が一か八かの賭けに出たと思っただろう。
そして虎太郎のように
しかし結果はまったく違うものとなった。
照屋は建物か何かの破片を盾とし、重石が付いた状態でそれを投げ捨てた。
一気に距離を縮めた照屋の射程に入ってしまった千佳は逆に窮地に陥ってしまうが、こういった事態を想定してか
巨大な黒い
こうなるともう防ぎようはなく、照屋は全身重石が付けられて身動きが一切できなくなってしまった。
それでも最後に一矢報いようと
シールドは使用者のトリオン能力がダイレクトに影響するから、千佳のシールドなら照屋の弾は防ぐことは可能だ。
実際、千佳のシールドは
ここで千佳は
「あ…チカちゃん、頑張ったのに…」
ツグミが残念そうに呟いた。
「でもまさか
「
「ああ…そう言えばそうでしたね」
ツグミはRound4の生駒隊・王子隊との試合で、王子と樫尾を
夜間ステージであり、照明のない場所におびき出し、ギリギリまで敵に接近して射程と弾速が落ちる欠点を補ったことで成功した作戦である。
「チカちゃんくらいのトリオン能力があれば十分に通用するものですね…。だからユーマくんは迷うことなくオサムくんの援護に向かえたということ。玉狛第2はそれぞれの長所を活かし、短所を仲間がフォローするという好ましい
ボーダー隊員として信頼できる仲間を増やすことは重要である。
自隊の隊員同士の連携はもちろん、他隊との合同任務や今回のような
迅と三輪のように個人的にはいろいろ軋轢のあるふたりだが、いざという時には素晴らしい連携プレイを見せてくれる。
ならば仲の良い隊員同士であればさらに効果的な戦術を組み立てることもできるだろう。
葉子のように考えなしで勝手な行動をして失敗し「アタシは悪くない」と言って自らの行為を反省すらしないような人間と一緒に戦いたいと思う隊員はいない。
戦う際の士気の高さは勝敗にも影響する重要なポイントだ。
ツグミは旧ボーダー時代から仲間たちと協調しながら戦う大切さを身を持って知らされていたから、身勝手で周囲を振り回すばかりの葉子のことが大嫌いなのだ。
「どうやらヨーコちゃんが勝負をかけたみたいです。彼女に勝ち目はありませんが、負けるにしてもタダでは済ませないと言う気持ちなんでしょうね。戦いが長引けば不利なのは彼女。今なら
ツグミは残念そうに言ってテレビ画面を見つめた。