ワールドトリガー ~ I will fight for you ~   作:ルーチェ

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10話

 

 

レプリカの持つ情報とボーダーの情報を総合し、近界民(ネイバー)の大規模侵攻が近々起きると予測されたことはC級を含めた全隊員に知らされた。

もちろん無用な混乱を避けるため民間人には話してはいけないという箝口令が敷かれている。

侵攻してくると思われる国は「アフトクラトル」か「キオン」と予測され、こちらの世界に接近するのはそれぞれ10日間ほどということである。

迅の未来視(サイドエフェクト)でもいつ攻めてくるかまではわからず、その期間内は「特別警戒」を実施することとなる。

これは現在のボーダーが組織されてから初めてのことで、隊員には緊張が走った。

しかし近界民(ネイバー)の大規模侵攻が起きるといっても日々の暮らしが大きく変わるわけではない。

特別警戒が実施されているから通常より防衛任務に就く隊員の数を増やしたり、三門市外への外出も忍田の許可が必要になっているくらいだ。

もっとも大規模侵攻が起きると知っていて暢気に買い物やレジャーを楽しむ気分にはなれないのだが。

 

 

◆◆◆

 

 

玉狛第2の3人は放課後に玉狛支部へやって来て訓練をし、午後10時頃にレイジの運転する車で帰宅するという毎日を続けていた。

土・日はそれが朝からになり、1日中玉狛支部で過ごすこととなる。

特に近界民(ネイバー)の大規模侵攻が近々起きると予想されているから訓練にも力が入る。

しかしこの日は午後からレイジと小南が急遽防衛任務に就き、京介はバイトと夜まで師匠3人組が不在ということになってしまった。

そこでツグミと栞が新人たちの面倒をまとめてみることにした。

 

 

「じゃあ、ゲームでもしよっか」

 

栞が妙な提案をする。

 

「ゲームって…何をさせようっていうんですか?」

 

ツグミが訊く。

 

「缶けりよ」

 

「缶けりって…あの缶けりですよね?」

 

「そう。でもタダの缶けりじゃ訓練にならないから、ちょっとルールを変えるけどね」

 

「缶けりって、何?」

 

遊真が首をかしげて訊く。

近界民(ネイバー)の遊真が缶けりを知らないのは当然で、栞が基本ルールを説明すると遊真は興味を示した。

 

「そして玉狛ルールはこうよ。鬼はツグミちゃんで、修くんたち3人は制限時間の20分間鬼から逃げること。鬼への攻撃は常にOK。トリガーの使用制限はなし。ずっと隠れていてもいいし、戦って倒してもかまわない。だけど戦って負けたら緊急脱出(ベイルアウト)。そしてツグミちゃんが20分以内に3人を見つけて捕まえるか緊急脱出(ベイルアウト)させたらツグミちゃんの勝ち。できなかったら修くんたちの勝ち。これでどう?」

 

ふざけているようだが、このゲームは意外に理にかなっている。

基本はかくれんぼであるから隠密行動訓練になるし、どのようなフィールドであっても地形踏破訓練になる。

鬼のツグミに見つからないように彼女の居場所を探知する探知追跡訓練にもなる。

もちろん戦闘になるケースがあるわけだから、修と遊真はチームプレイの練習もできる。

だからただの遊びと侮ってはならないのだ。

 

「ああ、それからツグミちゃんは強化視覚(サイドエフェクト)使用禁止ね。そうしないとすぐに見つけちゃうから不公平だもの。ただし最後の5分間だけは使ってもいいわよ。そうすれば修くんたちも隠れっぱなしというわけにはいかないもんね。そしてトリガーは4つまで。このルールでいい?」

 

栞がそう付け加え、満場一致で可決となった。

ツグミにとってはかなり悪い条件だが、彼女には勝てる自信があったので、勝つつもりでトリガーをセットする。

その間に修たちは作戦会議を開き、修と遊真のふたりで千佳を守って時間切れ(タイムアップ)を狙うということに決めた。

 

審判・栞が選んだステージは「住宅地Z」。

玉狛オリジナルのマップで、昔懐かしい木造平屋家屋が建ち並び、舗装のされていない道路、土管の置いてある空き地などがあり、空き地の隅には犬の糞まで落ちているという妙にリアルな空間となっている。

天気は晴れで、時刻は夕方。

夕焼け空をカラスが飛んでいたり、どこからか子供たちの声や寺の鐘の音が聞こえ、郷愁を誘うこのステージは明らかに栞の趣味である。

 

「じゃあ、準備はいい? …転送開始!」

 

空き地の中央に転送された4人は栞の指示でゲームを開始した。

ゲームで使用する空き缶はトリオン製の非常に頑丈なもので「象が踏んでも壊れない」という栞特製のもの。

いつかこのゲームをやろうと考えていて用意したものと思われる。

 

「せーのっ!!」

 

遊真がありったけの力を込めて缶を蹴ると、缶はものすごい勢いで宙を飛んでいった。

そして修たちはそれぞれ散っていく。

ツグミは飛んでいった缶を掴むと元の空き地へ戻ってきた。

 

「さあ、数えるわよ!…1…2…3………100!」

 

100まで数えたツグミは修たちを探し始めた。

強化視覚(サイドエフェクト)だけでなくレーダーも使用できないということで、純粋に自分の勘と足で探さなければならない。

ただし隠れる場所もある程度限定されることからそう難しいものではなさそうだ。

 

(フィールドの広さは1000メートル×600メートルで、その中に民家が50軒から60軒、それ以外は寺や神社といった建物がいくつかあるくらい。建物の内部には入れないルールだから、隠れるとしたら塀の陰や縁の下といったところがメインよね…)

 

ツグミは空き地のそばにあるフィールド内で一番高い火の見櫓の上から辺りを見回し、適当な住宅密集地を見つけて炸裂弾(メテオラ)を放った。

すると炸裂弾(メテオラ)の火力で住宅は木っ端微塵になり、周辺は簡単に更地になってしまう。

それを隠れて見ていた修は動揺した。

 

(絨毯爆撃だって!? ぼくたちが隠れる場所をなくす気なのか!? マズイな…あの勢いなら制限時間内にほとんどのエリアが更地になるぞ。このままじゃいつかあぶり出される。身を潜めて時間稼ぎするというのは無理かもしれない。どうせ最後の5分間は先輩が強化視覚(サイドエフェクト)を使えるようになるから戦いは避けられないだろうけど、問題はどうやって戦うかだ)

 

修は考え始めた。

 

(このフィールドの広さを考慮するとイーグレットは使わない可能性が高い。先輩がセットできるトリガーは4つ。たぶん通常弾(アステロイド)炸裂弾(メテオラ)、弧月、シールドだな。だとするとぼくはレイガストの(シールド)モードで防御して…)

 

そこに遊真からの通信が入る。

 

[オサム、聞こえるか?]

 

[ああ、聞こえる。これはマズイぞ。先輩は隠れられそうな場所を焼き払い、ぼくたちをあぶり出すつもりだ。このままだといずれ見つかってしまう]

 

[だから先手必勝。ふたりできりしな先輩を攻撃してチカの隠れ場所から引き離すぞ]

 

[だが先輩はそう簡単に倒せる相手じゃない。空閑でも訓練用のスコーピオンじゃ無理だ]

 

[でもおれとオサムならできなくはない。それに倒さなくてもいいんだからな。チカが制限時間いっぱい見つからなければおれたちの勝ちだからな]

 

そんな会話をしている間も、ツグミの炸裂弾(メテオラ)が炸裂していた。

 

[迷っている時間はない。決めるのは隊長であるオサムだ]

 

遊真にせっつかれ、修は決めた。

 

[わかった。じゃあ、ぼくが西側から囮として動く。空閑は先輩に見つからないようにさっきの空き地のできるだけ近くで待機。ぼくと先輩が空き地に戻ってきたところで攻撃開始だ。ぼくも及ばずながらおまえの援護をする。そして千佳には南東側の神社の森に逃げるよう指示。これでかなり時間は稼げるはずだ]

 

[りょーかい。おれは先輩の東側に回るから、囮役だとバレないように上手くやってくれ]

 

ふたりは通信を切ると、それぞれの役目を果たすために行動を開始した。

 

一方、ツグミは空き地の中心から半径50メートルを完全な更地にし、缶に近付く者が隠れる場所をなくした。

そしてようやく修たちを探すために動き始め、間もなくツグミは西側の道路に停車しているオート三輪の下に修が隠れているのを見つけた。

 

「オサムくん、みーつけた!」

 

ツグミの声はオープンチャンネルに乗せているから全員に届くようになっている。

これで遊真と千佳にも修が見つかったことがわかる。

いよいよ三雲隊が作戦を開始した。

修は大げさに驚いて缶を踏まれまいとツグミを追いかけるが、彼女に缶をホールドされてしまう。

そして空き地の一角にある円の中に捕われの状態となった。

 

(さて、これでひとり…。でもこれがオサムくんたちの作戦であるのは見え見えよ。どうせオサムくんを助けようとしてユーマくんが缶を蹴りに来るはず。そこを叩くしかない。といってもそれは時間稼ぎで、わたしとユーマくんが戦っている間にチカちゃんが安全な場所に避難するんでしょうね。そうなるとわたしが勝つためには缶を蹴られる前にユーマくんを倒すしかない。そのあとゆっくりチカちゃんを探す。…いや、ゆっくりともいってられないわね)

 

残り時間は10分を切っている。

 

(武器が訓練用のスコーピオンとはいえ、相手はわたしのよりも実戦経験の豊富なユーマくんだもの。気を付けなきゃ)

 

いずれ修を助けに来る遊真を待ち受けるか、それとも先手を打ってこちらから攻撃を仕掛けるか…そんなことを考えている間に、彼女の視界に遊真の姿が入った。

サイドエフェクトを封じていても視覚情報を制限したことで逆に周囲の気配、特に殺気には敏感になるのだ。

 

「ユーマくん、みーつけた!」

 

「やべっ」

 

見つかってしまった以上、遊真はツグミに缶を踏まれる前に缶を蹴るか彼女を倒すしかない。

遊真はスコーピオンでツグミに斬りかかった。

それをツグミは弧月で受け、遊真はパッと離れて間合いを取る。

遊真のスコーピオンが刃毀れしたのだ。

訓練用のスコーピオンと正隊員の弧月では圧倒的に弧月の方が硬い。

こうなると遊真はツグミの隙を突いて缶を蹴り、修を救い出して逃走するより他ない。

ジリジリと間合いを取りながら対峙するツグミと遊真。

そこに円の中にいる囚われの修が背後から加勢した。

 

通常弾(アステロイド)!」

 

修の放った通常弾(アステロイド)はツグミの右腕を掠め、彼女は握っていた弧月を落としてしまう。

そしてその隙に遊真は缶を思い切り蹴り上げ、修を救出した。

 

「オサムくんの卑怯者! 捕まってるのに攻撃するなんてずるいぞ! ルール違反だ!」

 

ツグミはそう叫ぶが、栞からの通信で愕然とする。

 

[捕まったからって攻撃しちゃダメというルールはないわよ。鬼への攻撃は常にOKって言ったよね。だから今のはセーフ]

 

「……」

 

ツグミは即座に決めた。

 

「まずはオサムくんを潰してやる!」

 

 

ツグミは機動力の低いオサムに狙いを定めた。

作戦で別々の方向に逃げたふたりだから、修に援軍が来るのは望めない。

ツグミに追いつかれた修は覚悟を決めた。

 

「レイガスト、起動(オン)!」

 

修はレイガストを(シールド)モードにすると、右手に通常弾(アステロイド)のトリオンキューブを浮かべる。

 

「ふ~ん…隠れてばかりでなくやっと戦う気になったようね。なら、殺る気で来なさい!」

 

ツグミは修の前に立って叫んだ。

 

修はツグミの弧月をレイガストで防いで通常弾(アステロイド)で反撃するつもりでいた。

 

(どんな斬撃でもなんとか防いでやる! 無駄死になんてするものか!)

 

自分は負けても時間稼ぎができれば遊真や千佳の助けになると考えて、自分は捨て駒としての役目を果たそうというのだ。

しかしツグミの行動は修の考えと大きく違っていた。

ツグミは右手の弧月を鞘に戻すと、拳銃(ハンドガン)をホルダーから抜いたのだ。

 

拳銃(ハンドガン)!?」

 

ツグミは修の右横に大きくジャンプし、側面から攻撃をする。

拳銃(ハンドガン)型トリガーから撃ち出された通常弾(アステロイド)を修はとっさに避けようとした ── ツグミと自分のトリオン能力の差を考慮して防御より回避の方が良いと即座に判断した ── が、修は両脚と両腕に鉛弾(レッドバレット)を撃ち込まれてしまった。

その重さで両膝を地面につき、レイガストで身体を支えるしかない。

こうなると攻撃しようにも断然不利である。

 

「くっ…」

 

悔しげに呻き声を上げる修。

そんな彼にツグミは銃口を向けて近付いて来た。

 

「霧科先輩が銃手(ガンナー)用トリガーを使うなんて予想外でした。それも鉛弾(レッドバレット)だなんて」

 

鉛弾(レッドバレット)を使うなら拳銃(ハンドガン)の方がいいのよ。弾速が全然違うもの」

 

「つまり初めから鉛弾(レッドバレット)を使うつもりでいたってことですね?」

 

「そう。今回はメインに弧月、拳銃(ハンドガン)型トリガーで通常弾(アステロイド)、サブに炸裂弾(メテオラ)鉛弾(レッドバレット)をセットしてあるのよ。戦闘の際には相手の意表を突くことが大事。これまでわたしはあなたに一度も銃手(ガンナー)用トリガーを使った戦い方は見せていないからね。さあ、わたしに斬られて緊急脱出(ベイルアウト)する? それとも自分で負けを認めて白旗上げる?」

 

鉛弾(レッドバレット)を撃ち込まれているから身動きできない修。

ならば答えはひとつだ。

 

緊急脱出(ベイルアウト)!」

 

修は緊急脱出(ベイルアウト)して、栞のいるオペレータールームに戻った。

 

 

「さて、次はユーマくんだけど、どこに行ったのかしら?」

 

遊真と千佳は修が脱落したことで時間いっぱい隠れているという作戦をとるしかなくなってしまった。

ただし15分経過するとツグミが強化視覚(サイドエフェクト)を使えるようになるので、最後の5分間がポイントだ。

 

ツグミは遊真を探すために再び炸裂弾(メテオラ)で絨毯爆撃をする。

もちろんこれは仮想空間だからやっているのであり、普段は民家の壁に傷をつけるのさえ厭う彼女であるから、この戦い方は非常にレアである。

 

「ほらほら出てこないと焼き出されちゃうよ~!」

 

ツグミは警告するが遊真と千佳に動きはない。

 

(時間切れを狙っているようだけど、最後の5分でふたりを見つけるくらいなんてことはないわ)

 

ツグミには勝算があった。

発見してすぐに空き地に戻って缶をホールドするだけなので、遊真はともかく千佳は絶対に追いつけるわけがないのだ。

しかし彼女の予想は大きく外れてしまう。

遊真は自分が囮になり、千佳のいる場所から逆方向へと移動していた。

そしてツグミは遊真を発見し、彼もまた降参して離脱。

この時点で残り時間はあと5分。

ツグミは強化視覚(サイドエフェクト)を使って千佳を探そうとしたのだが、ここで想定外の状況となった。

千佳が換装を解いてしまったのだ。

生身で隠れていたものだから強化視覚(サイドエフェクト)で見つけることはできない上に、生身の彼女を炸裂弾(メテオラ)であぶり出すこともできない。

結局、時間切れで修たちの勝ちとなってしまったのだった。

千佳に換装を解くよう指示したのは修である。

ランク戦でもそうだが、緊急脱出(ベイルアウト)してしまった隊員が戦闘中の仲間に指示を出すことは許されているので、この場合も問題はないのだ。

 

 

◆◆◆

 

 

缶けりの後、ツグミはミーティングルームのソファにうつ伏せになってふて寝していた。

 

「疲れた…。もうヤダ」

 

疲れたといっても別にトリオン切れになったわけではなく、缶けりで後輩たちに負けたことで拗ねているだけだ。

そもそも彼女にとって不利な条件が多すぎた。

それで負けたのだから彼女が弱いわけではないのだが、負けることに慣れていない彼女にはショックが大きい。

 

「ほらほら機嫌直して。これはタダのゲーム、遊びなんだから」

 

栞の慰めもツグミには通じず、ますますふてくされて、クッションを抱きしめて丸くなった背中を向けてしまう。

 

「わたしは遊ぶ時でも全力なんです。それに後輩に負けたんですよ、悔しいじゃないですか! 勝てるって思ったのに…」

 

そんなツグミの大人げない様子を修たちは唖然と見ていた。

これまでの彼女は常に凛としていて、修たちには彼女がとても大人っぽく見えていた。

それなのに缶けりで負けたくらいでいじけてしまう子供じみた姿のツグミに驚いてしまったのだ。

 

「ツグミちゃんは個人(ソロ)ランク戦に参加していないから、誰かに負けるのって2年ぶりになるのよね。じゃあ仕方ないかな…アハハ」

 

ツグミの機嫌を取り戻そうとする栞だが、それは逆効果となる。

 

「ち・が・い・ま・す! 最後に負けたのは2年4ヶ月前に個人ランク戦(ソロ)で太刀川さんとガチで殺り合った時です! その後は全部勝ってました!」

 

「あ…」

 

栞のせいで不機嫌MAXのツグミを宥めるように修が声をかけた。

 

「霧科先輩、先輩にとってこの勝負は不本意なものだったと思いますが、ぼくにはすごく有意義なものになりました。普段見られない戦術とか先輩のいつもと違った一面が見られて。そしてなにより本気で遊べたことが楽しかったです」

 

「ほんと?」

 

ツグミが修をちらりと見て訊く。

 

「本当です。ぼくだって烏丸先輩みたいな嘘つきません」

 

「オサムはウソ言ってないよ」

 

今度は遊真が言う。

 

「それにおれも楽しかったし。でもきりしな先輩とはちゃんとした個人(ソロ)ランク戦で戦いたいな。おれがB級になったらやろうよ」

 

ツグミは身体を起こして千佳に訊いた。

 

「じゃあ、チカちゃんも楽しかった?」

 

「はい。最近は近界民(ネイバー)の大規模侵攻があるからってみんなの雰囲気がピリピリしてたから、いい気分転換になったと思います。隠れている間、見つかったらどうしようって、ドキドキして楽しかったです。あんなに真剣勝負な缶けりは生まれて初めてです」

 

ここまで言われてはツグミも子供っぽく拗ねているわけにはいかない。

彼女は大きくため息をつくと笑みを取り戻した。

 

「はぁ…。ということはわたしが受けた精神的ダメージも無駄にはならないってことね。わかった、今度は絶対に負けないから!」

 

「絶対に」というところを力強く言うと、ソファから立ち上がった。

 

「さて、そろそろ夕食の支度をしなきゃ。オサムくんたちも手伝って」

 

機嫌を直したツグミの姿を見て、栞は安堵した。

そしてお詫びとばかりに賄い当番ではないのにすすんでツグミの手伝いをしたのだった。

 

 

 






仮想訓練室で換装を解くことができるのかどうかわからなかったので「換装を解いて生身の状態に戻れる」ということにしてみました。
「そんなことはありえない」ということであっても、演出上こうした方が面白いと思ったものですから、どうかご勘弁くださいませ。



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