ワールドトリガー ~ I will fight for you ~ 作:ルーチェ
修は
その様子を見て安堵の表情となったツグミ。
それを米屋は見逃さなかった。
「キミってさ、玉狛のファン?」
「どうして米屋先輩はそう思うんですか?」
「だって玉狛の連中が活躍したり、殺られたり、助かったりするたびに一喜一憂してるってカンジで、力入ってるなーって思ってさ」
「別にファンというほどじゃありませんけど応援はしています。B級になりたてなのにもう上位グループで戦っているんですよ、すごい
「結果的に勝てば、って?」
「この試合は最後まで勝ち残った人がいる
「良く知ってんな」
「訓練生だからってバカにしないでください。それくらい知ってますよ。それにこのB級ランク戦のシステムは1試合ごと別のもののようですけど、試合ごとの得点が累計されてシーズン終了までに得点が多かった
「ああ」
「この試合だって玉狛第2と王子隊は2点ずつゲットしていて、生駒隊はまだゼロ。でも生駒隊はまだ3人が生きていて、玉狛2人に王子隊は王子隊長ひとり。まだ結果はわかりません。見せ場はこれからですね」
ツグミは楽しそうにメインモニターを見つめた。
(ユーマくんも無事にワイヤー陣に到着。これでチカちゃんの
ツグミ自身も生駒隊・王子隊との対戦の際、
隠岐を最初に落としたのも、彼が
もちろん接近されたらアウトという欠点があるものの、彼女のようにそれを補うことができれば試合のキーパーソンにもなりうる。
だから
(ああ、もういっそチカちゃんが隠岐さんを撃っちゃえばいいのに! チカちゃんが
ツグミは自分がこの戦場にいたらどうするかと考えた。
(わたしがチカちゃんの立場だったらアイビスで狙撃ポイントに適している建物をバンバン壊していくな。いくら優れた
戦闘フィールドでは生駒・水上のふたりが遊真に手を出せずにいた。
修の
さらに千佳のアイビスが炸裂し、生駒と水上はますます不利な状況に追い込まれる。
ここまで生駒隊は得点なしで、玉狛第2と王子隊はそれぞれ2得点。
勝つためには積極的に攻め込んでいくしかない。
一方、王子は仲間2人が落ちてしまい、残った自分ひとりで点を取りにいくしかないのだが、玉狛第2を攻めるかそれとも生駒隊にするかが問題だ。
生駒隊はワイヤーを使った遊真の動きに翻弄されていた。
そこで水上の弾トリガーと生駒の
その攻撃のついでにワイヤーを削っていくことでワイヤー陣を攻略することもできるというもの。
修がいないのだからこれ以上ワイヤーを張られることもないのだから、どんどん斬ってしまえばいいのだ。
ただし遊真もマンティスを使うので十分に注意を払う必要がある。
生駒と水上が遊真を押さえている間に隠岐が千佳を落とす作戦なのだが、重要な点を失念していた。
バッグワームで姿を隠している王子の存在である。
「玉狛第2を攻めるかそれとも生駒隊にするかが問題」なのだが、遊真と生駒・水上が戦闘中であるのだから、その近くに潜んでいれば双方から点を取れる可能性が高い。
(わたしなら漁夫の利を狙うけど。だから王子さんも同じことを考えていると思う)
ツグミはそんなことを考えながら見ていた。
(目の前の敵に集中している時が一番危ない。王子さんはハイリターン・ハイリスクな策をとることも厭わない策士だから、混戦状態の中に飛び込んで行くこともありうる。今頃近くでチャンスを狙っているはずよ。それはユーマくんもわかっているだろうけど、気を付けてね…)
遊真はグラスホッパーを起動するとコンクリートブロックの欠片をぶつけて飛ばした。
それが水上の顎に命中し、バランスを崩したところに千佳の
ここで遊真がスコーピオンで斬り付けて追加点…という流れだと思われたが、突然姿を現した王子が水上の首を掻っ斬って
王子が3点目をゲットしてしまったのだった。
(ほら…わたしの思ったとおりになっちゃった。この1点は大きいわよ。今の玉狛第2は1点でも多く欲しい状態だもの、せっかく頭を使って手に入れた得点のチャンスを横取りされて悔しいでしょう。でもこのままで済ますユーマくんじゃないわよね)
水上を落として貴重な1点をゲットした王子だが、そのためのリスクは非常に大きいかった。
建物越しの生駒旋空によって、王子は左脚を斬られてしまったのだ。
そこに千佳がアイビスで砲撃して周囲の建物を粉砕し、射線が通ったところで
着弾はしなかったものの、玉狛第2の勝ちパターンは完成しつつあるわけだ。
千佳は狙撃地点を変えながら狙撃を続けている。
これは
ツグミのRound4の時のように「居場所は確定していて逃げられないのだが、敵が迂闊に手を出せない」という場所に陣取っていれば狙撃地点を頻繁に変える必要はない。
(やっぱり先に隠岐さんを封じるべきだったのよ。チカちゃんは自分が狙われ続けるから身を守らなければならない。そうなるとユーマくんの援護ができなくなり、せっかくの必勝パターンも活かせなくなる。ああ…ほら生駒さんと王子さんへ狙撃ができなくなっちゃった)
ツグミの言うように隠岐が千佳へ狙撃することで、間接的に生駒の援護になっていた。
当然王子への援護にもなり、彼はワイヤー陣の中にいる遊真に向かって行く。
(王子さんの考えはわかる。片脚じゃ生駒さんから逃げ切れないし、ユーマくんを倒せば4点目をゲットして自分が落ちても
生駒は旋空を起動して建物ごとワイヤー斬り、ワイヤー陣を無効化していった。
周囲の建物が瓦礫と化す混乱した状況で王子は勝負に出る。
遊真に攻撃を仕掛ける王子に対し、遊真は余裕の表情でグラスホッパーを起動。
ワイヤーが打ち込まれていた壁の瓦礫をグラスホッパーで飛ばし、王子の右脚にワイヤーを引っ掛けてバランスを崩したところを一瞬で仕留めてしまった。
崩れる民家を利用して遊真を仕留めようとした王子だが、逆に遊真に利用されてしまったわけだ。
しかし王子は
千佳と隠岐はライトニングの撃ち合いとなり、千佳の弾は隠岐の胴体に重石を付け、隠岐の弾は千佳の左脚を撃ち抜いた。
それに気付いた遊真は生駒との一対一を避けて隠岐を落としにかかる。
グラスホッパーで高速移動し、隠岐のトリオン供給機関を破壊。
隠岐を
その様子を見ていた千佳が自発的に
最終スコアは4-3-3で玉狛第2の勝利となったのだった。
ツグミは試合を振り返ってみた。
(この試合、王子隊は序盤でオサムくんにワイヤー陣を作られることを恐れて真っ先に落とそうとしていたけど、わたしだったら彼よりチカちゃんを捜して落としたわね。ユーマくんとワイヤー陣を組み合わせたらヤバいけど、実際はチカちゃんの狙撃の援護があるから成り立つ作戦だもの。オサムくんに好きなだけワイヤー陣を作らせておけば良かったのよ。いくらワイヤー陣があったって、そこにユーマくんがいなければ無意味だし、チカちゃんを落としてしまえば
(生駒隊もそう。せっかく隠岐さんという
思わず笑みがこぼれてしまい、隣の米屋に見られまいとツグミは不自然に顔を背けたのだった。