ワールドトリガー ~ I will fight for you ~   作:ルーチェ

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「大規模侵攻編」が始まります。
原作と同じようにストーリーは進んでいきますが、オリ主を絡ませているので一部大きく違っています。
また、「霧科ツグミ」の物語なので、彼女に関わってこない部分(ランバネイン戦や風間隊とエネドラの遭遇戦など)はあらすじ程度の記述となります。
ご了承くださいませ。




大規模侵攻 と 後始末
12話


 

 

1月20日 ── いつもと変わらない月曜日の朝、迅には何か()()()らしく、朝食を早々に終えて玉狛支部を出て行った。

迅は何も言わなかったが、ツグミにはわかっていた。

近界民(ネイバー)がすぐそこまでやって来ているのだと。

 

 

待機中の彼女は自室で勉強していても近界民(ネイバー)のことが気になって集中できずにいた。

 

(来てほしいわけじゃないけど、来るとわかっているものがなかなか来ないというのもじれったいというかもどかしいというか…。早くカタをつけてしまいたいのに)

 

何事も後回しにすることが大嫌いなツグミ。

「どうせやらなければならないことなら、さっさと終わらせて楽になりたい。嫌なことほど後回しにはしない」という考えを持っており、小学生の頃から夏休みの宿題も7月中に終わらてしまうほどだ。

もちろん近界民(ネイバー)がやって来ないことが最善の未来(ベスト)なのだが、そうはいかない以上早く戦って終わらせたいと思うのは当然である。

 

 

そんなことを考えていると、携帯電話に着信があった。迅からである。

 

「ツグミ、今どこにいる?」

 

「玉狛の自分の部屋で待機しています」

 

「それはよかった。今回の近界民(ネイバー)はかなりヤバイぞ。俺の未来視(サイドエフェクト)によるとおまえの狙撃が鍵になってくる。だからリザーブは絶対に忘れるな。それから弧月より鉛弾(レッドバレット)の方が役立つ。交換しておけ」

 

「わかりました」

 

「それから…」

 

迅はそこまで言って口ごもってしまう。

 

「ジンさん?」

 

「あ、いや、なんでもない。…とにかく無茶はするな。おまえに何かあれば悲しむ奴がいることを忘れるなよ」

 

「…はい。ジンさんも気を付けてください。ジンさんに何かあったらわたし、泣いちゃいますから」

 

「ハハハ…久しぶりにおまえの泣き顔を見たい気もするが、こっちのことは心配するな。なんたって俺は実力派エリートだからな」

 

そう言って迅は電話を切った。

ツグミは迅が言いかけた言葉が気になったが、それよりも別の言葉に違和感を覚えた。

 

(わたしに何かあればって…。あの言い方だとわたしが無茶をして『何かがある』可能性があるということ。…怪我? 戦闘体なら怪我をすることはないはずなんだけど、戦闘中に換装が解けてしまうかもしれないということなのかな?…いや、自ら換装を解くという状況になるのかも。だとすればこの服も着替えておいた方がいいわね)

 

ツグミは戦闘体と同じデザインのライダースジャケットとショートパンツ、ロングブーツに着替える。

もちろんゴーグルも忘れない。

着替えが終わると、トリガーのチップを入れ替えるために開発室へと足を向けた。

鉛弾(レッドバレット)やリザーブなどは普段は使わないが、状況に合わせてセットできるようにいつでも用意はしてあるのだ。

 

(弧月と旋空は外して鉛弾(レッドバレット)をセットして…。それと鉛弾(レッドバレット)を撃つなら拳銃(ハンドガン)もセットしなきゃ。そうだ、通常弾(アステロイド)をダブルにしておこうっと。あとは…テレポーターかな? でリザーブを入れて…よしOK)

 

「リザーブ」とはスラッシュと同様にツグミ専用トリガーで、彼女が有するトリオン量と同量のトリオンをスラッシュ用のトリオンとして使うことができるものだ。

非番の日にトリオンを少しずつ貯めておくのだが、本人は「献血のようなもの」と言っている。

彼女のトリオン能力はボーダー内でもトップクラスであり、その同量を狙撃用に回せるのだから非常に有用なオプショントリガーなのだ。

特にアイビス並みの弾を何発も撃つ場合など、自身のトリオンを使うよりも効率が良いのも利点である。

ただしスラッシュにしか使えず、さらに使い捨てで制作にコストがかかるので、いざという時にしか使用できないのが難点といえるのだが。

 

迅からのアドバイスを考慮し、今回のトリガーはメインにスラッシュ(試作)、通常弾(アステロイド)、シールド、通常弾(アステロイド)(拳銃(ハンドガン))、サブにリザーブ(試作)、通常弾(アステロイド)鉛弾(レッドバレット)、テレポーターと決めた。

 

「さて…準備はこれでよし。…ん?」

 

再び携帯電話に着信があった。今度は忍田だ。

 

「忍田本部長、何かご用でしょか?」

 

「ああ。本日〇八〇〇時、林藤支部長から玉狛支部全隊員の指揮権を移譲された。話は聞いているな?」

 

「はい。本部長の指示があるまで玉狛支部で待機するよう言われています」

 

「では、準備が出来次第本部基地へ来い。本部待機に変更だ」

 

「霧科、了解しました。ただちに本部基地へ向かいます」

 

そう答えると電話を切り、ツグミは玉狛支部を出る。

玉狛支部所属の隊員たちの直属上司は林藤で、彼女に命令できるのは林藤のみである。

たとえ本部最高司令の城戸であっても直接彼女に命令はできない。

それは命令の重複を避けるためであり、遊真の(ブラック)トリガー強奪を命じられた迅の時のケースと同じで、すべて林藤を経由しなければならない。

しかし「近界民(ネイバー)の撃滅」というひとつの目標があっても、支部の隊員が勝手に行動してしまってはボーダー全体にとって不都合が生じるおそれがあり、そこでこのような隊員を総動員する大規模な作戦となる場合は、本部長が本部支部に関わらず全権を握ることとなるのだ。

先月に起きたイレギュラー(ゲート)とラッド掃討作戦の時もこのケースである。

 

(本部待機か…。無所属(フリー)のB級だもの、配置や他所の部隊(チーム)との連携などを考えると使いづらい()なのよね…。それともまた勝手なことをされては困るからと、城戸司令が自分の目の届く場所に居させようという魂胆かも。とにかく急いで本部に行かなきゃ)

 

ツグミはそんなことを考えているが、実際は「いざという時の切り札」として使えると考えた忍田の判断である。

迅から彼女の役目が重要なものとなることを聞いており、どの状況においてもすぐに使えるようにと本部詰めを命じたのだ。

後にこの判断が正しかったことは証明されることになる。

 

 

◆◆◆

 

 

本部基地の屋上でひとり佇んでいた三輪に迅が呼びかけた。

 

「よう、こんなとこで何へこんでんだよ」

 

「あんたには関係ない」

 

三輪は迅に冷ややかな視線を向けて言う。

しかし迅はおかまいなしで続けた。

 

「秀次、実はおまえに頼みたいことがあるんだ」

 

「…!? 俺に頼みだと…!?」

 

「うん、そう」

 

「…断る。他を当たれ」

 

三輪は迅を睨みながら言い放つ。

 

「おいおい、話だけでも聞いてくれよ。今回の大規模侵攻でうちのメガネくんがピンチになる。その時に助けてやってほしい」

 

「なぜ俺に頼む。あんたなり玉狛の連中なり、お供の近界民(ネイバー)にやらせるなりすればいい」

 

「そうしたいとこだけど、その時に駆けつけられそうな人間がおまえしかいないっぽいんだな」

 

「三雲は正隊員だ。自分の始末は自分でつけさせろ。それが無理なら玉狛に閉じ込めておけ」

 

大げさに困ったような顔で言う迅。

しかし三輪は頑として協力しないという態度だ。

 

「このあと…おまえは城戸さんに呼ばれて風刃を渡される」

 

「!?」

 

迅から風刃の名が出て、三輪は血相を変える。

 

「俺が城戸さんに推薦しておいたからな」

 

「ふざけるな。風刃の候補者は10人以上いると聞いている。あんたの一存で(ブラック)トリガーの持ち手が決まるわけがない」

 

事実、城戸は風刃の候補者を決めかねていたのだが、迅は三輪を推薦していた。

 

「おまえはきっとメガネくんを助けるよ。俺の未来視(サイドエフェクト)が言っている」

 

「……」

 

三輪は迅の言葉に何も言わず、屋上を後にした。

 

 

 

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