ワールドトリガー ~ I will fight for you ~ 作:ルーチェ
影浦隊、鈴鳴第一、そして玉狛第2という3
ヒュースがエスクードを展開したのだ。
しかしそれは防御のためではなく、また1枚だけでもない。
影浦と北添の間、そして吹き抜け側に多数の壁を作り、あっという間に影浦だけを自分たちの側に閉じ込めるような形にしてしまっていた。
それまで「遊真・ヒュース」対「影浦・北添」対「来馬・村上」の二対二対二であった戦場を「遊真・ヒュース」対「影浦」という二対一と、「北添」対「来馬・村上」という一対二に分断してしまったのだ。
もっともこの状況では「北添」対「来馬・村上」の戦闘は起きないだろう。
手負いの影浦を放っておくことのできない北添は来馬・村上コンビとの戦闘は避けるだろうし、鈴鳴第一のふたりも戦闘に突入するよりも状況を把握することを優先したいと考えるのが自然だ。
この展開は戦闘経験豊富なツグミであっても想像できなかったことで、モニター画面に見入ってしまっていた。
痛手を負った状態の影浦に対し百戦錬磨の遊真とヒュースであるから玉狛第2が圧倒的に有利に見えるが、影浦も半端な
問題行動を起こした罰としてポイントを減点されているが、それさえなければ
「これは面白いことになりました。本来エスクードは耐久力が高く防御のために使用する
周囲の環境を大きく変化させ、敵が動揺している隙に遊真とヒュースが同時に影浦に対して攻撃を開始した。
ヒュースは弧月を抜いて斬りかかると思わせるが、影浦は
彼の判断は正解で、ヒュースは抜刀と同時に大きなトリオンキューブを216分割して撃ち、そのタイミングで遊真とヒュースが影浦に斬りかかった。
影浦はシールドで防御するが、同時に斬りかかる遊真とヒュースを防御するのはほぼ不可能…のように見えたのだが、ヒュースの弧月をシールドで、遊真のスコーピオンをY型に変形させたスコーピオンで受けたのだ。
「凄い! これは
ツグミは興奮気味に解説するが、しかしそれで攻防が終わったわけではない。
影浦は即座にマンティスで遊真とヒュースに反撃し、遊真は左腕を斬られ、ヒュースは左腕にかすり傷を負ってしまった。
「ああっ、良い作戦だと思ったのですが…って、ええっ!?」
ツグミが残念がっている暇も与えず、モニター画面の向こう側では予想外の展開となっていた。
ヒュースのトリオンキューブが影浦を襲ったのだ。
さすがの彼もまったく無警戒であったために被弾してしまって脚はもう使い物にならない上に、さっきの村上の攻撃によるトリオンの漏出も大きく、このまま下手に動けば自滅しかねない。
そんな危機一髪の影浦にトドメを刺そうとした遊真とヒュースだったが、そこに北添がエスクードを破壊して乱入。
そこに遊真が飛び込んできて北添の首を一刀両断。
最後に相討ち狙いで北添は
影浦の方はヒュースの攻撃を受けて下のフロアに落下し、そこでトリオン漏出過多によって
ここで影浦隊はユズルを残すのみとなってしまった。
「これはどういうことなのか説明してもらえるかな?」
ゼノンの声に、ツグミは我に返った。
「あ…すみません。見入ってしまいました。…えっと、それでは空閑隊員とヒュースが影浦隊長を同時攻撃したところから説明します」
そう言ってからひとつ深呼吸して説明を始める。
「エスクードによって環境が大きく変化したことで動揺している影浦隊長に対して同時攻撃を仕掛けたわけですが、ヒュース隊員は弧月を抜刀したのと同時に 弾丸トリガーを起動させました。影浦隊長が弾丸から身を守るためにシールドを展開すればマンティスは使えません。さらに空閑隊員とヒュース隊員が同時に斬りかかれば彼らふたりに注意を向けるしかなく、それを承知でヒュース隊員は初弾で撃ち残しておいた弾を時差で撃つという『死角からの攻撃』を仕掛けたのです。影浦隊長は空閑隊員とヒュース隊員の攻撃には即座に対処できましたが、
ツグミの解説に、ゼノンたちは身を乗り出して聞き入っている。
彼らの祖国であるキオンは
こちら側の世界へやって来る
それにキオンはこれまで「
しかし
おまけにツグミという一隊員に謀略によって任務に失敗してしまった。
よってゼノンたちはボーダーがどのようにして
「そしてエスクードで分断されてしまった北添隊員はその壁を壊して影浦隊長の援護に入ろうとしますが時すでに遅し。さらにエスクードで四方を囲まれてしまって援護するどころか自らも危機的状況になり、結果は見てのとおりです。ただ北添隊員が最後に
玉狛第2が影浦隊から点を取って得点差を縮めたいと考えているのとは逆に影浦隊は玉狛第2に点を与えたくない。
影浦は「玉狛第2に取られるくらいなら鈴鳴第一に
「続いて玉狛第2は鈴鳴第一との戦闘に突入すると思われます。さっきの影浦隊長との戦闘でヒュース隊員がタダの
館内の照明を操作する作戦が潰えてしまい、太一が
ツグミのその予想は当たり、来馬が
それを遊真とヒュースはシールドで防御。
さらにヒュースは右手にトリオンキューブを浮かべると、それを鈴鳴第一に向けて撃つ。
村上がレイガストで自分と来馬を防御して来馬は
(やっぱりヒュースが装備したのは
ツグミは自分とほぼ同じレベルのトリオン量を持つヒュースにしては弾丸トリガーの威力が「
しかし
(でも出し惜しみしていてここで負けるようなことになれば本末転倒。いざという時には使うんだろうな。…それにしてもユズルくんはどう戦うつもりだろ? チームメイトを巻き込む心配はないからアイビスを使って壁抜きだろうと床抜きだろうとやりたいようにできる。わたしだったら見えても見えなくても適当に撃っちゃうけど、レーダー頼りでは厳しいから彼のような精度重視の
さらに未だに目立った動きを見せない東のことも気になっている。
(東さんの動きがないのが不気味なのよね…。
ユズルが動いて、そこを東が狙う。
そうすれば東の居場所が割れて修たちが「東が建物内にいる」とわかって警戒してくれる…となるのが理想だとツグミは考えている。
(でもそれだと東隊に得点が入っちゃう。玉狛第2は1点でも多く点が欲しいし、特に影浦隊から得点したいと考えているから、その点は残念なことになるけど東さんの居場所がわかるとなればそれくらいは仕方がないか。…あ~あ、チカちゃんが人を撃てないという弱点さえなければこんなに苦労せずとも済むのになあ。あのトリオン量だもの、彼女の
ツグミの考えるように千佳が人を撃てるのであれば、全員が集まっているショッピングモールから修たちを退避させて
(今は
ツグミは疑問を抱いているのだが、彼女なりの答えも持っている。
(ランク戦で戦っている時、オサムくんやユーマくんが敵を撃ったり斬ったりしているところをチカちゃんは目にしている。トリオン体であっても見た目は人間の身体を同じ。そんなトリオン体が斬られて千切れるとか撃たれて爆ぜる状況であっても目を背ける様子はないから、人体が破壊されること自体にはあまり抵抗感がないみたい。きっと第三者の立場でいられるからよね。自分とは無関係ってことで。…そうなると加害者、つまり自分が直接手を下すことで人体が壊れるところは見たくはないから撃ちたくないというエゴなんじゃないかな、って思えてくる)
鳩原は以前に
確かに武器を持った手や脚をピンポイントで撃つという超精密狙撃ができる隊員ではあったが、実戦向きではない。
1発でトドメを刺せるのであれば、そこで仕留めてしまうべきである。
例えば敵の武器を狙って撃ったとしても、換装が解けていないのであれば反撃をする可能性はゼロでない。
敵の手や脚を奪ったところで反撃をしてこないとは限らず、その反撃が自分や仲間を死なすことだってありえるからだ。
上層部が彼女のそんな部分を問題視して二宮隊を遠征部隊から外した経緯があるが、ツグミはその判断を間違ってはいないと思っている。
しかし千佳の場合は少し違う。
(Round4でチカちゃんは二宮隊や東隊のメンバーを撃った。あの場面では彼女が撃つのがベストだったから問題はない。でも躊躇したものだからそのタイミングを外し、好機を逃してしまうことになった。結果はどうであれ、彼女には自ら撃つ意思があったということになり、すなわち
鳩原は
そのせいで
千佳の場合、遠征参加は決定しており現状の
(でもチカちゃんの人を
試合に目を向けながらも、千佳のことを自分のことのように心配するツグミであった。