ワールドトリガー ~ I will fight for you ~   作:ルーチェ

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176話

非公式ながらもツグミと太刀川の模擬戦で太刀川が1勝したので、忍田は彼を正隊員として認めることにした。

ボーダー新本部基地は完成し、備品の搬入や機材の最終チェックなどが進んでいて、残すこところは新隊員の獲得だけの時期であったから、太刀川の正式入隊はこのタイミングがピッタリなのだ。

 

「これで俺も正隊員、堂々と市内巡回もできるし迅だけでなく木崎さんや小南とも殺り合えるぜ」

 

忍田から正隊員用のトリガーを渡された太刀川は上機嫌である。

一方、不本意な負け方をしたツグミは機嫌が悪いものの、弟弟子が一人前と認められたことは嬉しいと感じている。

 

(これで人員の補充ができたんだから少しは任務も楽になるかな?)

 

ツグミにとっては防衛隊員が少ないために忍田までもが市内巡回に参加しなければならず、本部長としての仕事と二足のわらじ的な働きを強いられている。

よって休日は月に2-3回で、毎日深夜まで新本部基地で働いているものだから、日付けが変わってから帰宅するようなことも多い。

忍田の身体のことを心配していたから、人員が増えることは歓迎すべきことなのである。

 

(真史叔父さんの話だと他にもあと4人の男性が入隊するってことだけど、どんな人たちなのか気になるな…)

 

忍田が前々から声をかけていた寺島、冬島、風間、東の4人に太刀川を加えた5人を新ボーダー1期生として迎え入れることになり、続いて嵐山、柿崎、三輪、月見、沢村らが入隊することになるのだが、彼らとツグミの出会いはもう少し先になる。

楽しみである反面、太刀川のような戦力にはなっても人間的に少々問題のある人物でなければ良いという不安もあった。

 

「なあ、ツグミ、せっかく正隊員のトリガーを貰ったんだからこれを使ってもう1回模擬戦やらねーか?」

 

太刀川が新しいトリガーを見せつけながらツグミを模擬戦に誘う。

ツグミの戦闘体は無事であるからやろうと思えばやれるのだが、太刀川の様子を見ると「マジで殺る」気満々である。

ここでツグミが負ければ翌朝の任務はできなくなる。

もっともそこに太刀川を当てることで彼女の穴を埋めることはできるだろう。

負けたままで引き下がるのは癪だと、ツグミは太刀川の挑戦を受けることにした。

 

「わかりました。でももしわたしが負けたら明日の朝の市内巡回は()()()()()にお願いしますけど、それでいいですか?」

 

太刀川はツグミからの呼びかけが変わったことに気付いた。

 

「あれ? 慶って呼ばないんだ?」

 

「ええ。正隊員になった年長者ですから名前の呼び捨てじゃ失礼でしょ? だからこれからは太刀川さん、と呼ぶことにします」

 

「……」

 

これまで太刀川は自分が名前で呼ばれるのを親しい関係にあるからだと思い込んでいた。

しかし実際は「弟弟子で格下だから」という理由でツグミは太刀川を慶と呼んでいた。

これが彼女の()()()で、その「格下」が外れて同格となったのだから、今度は「目上の人」という理由で苗字にさん付けとするルールに従ったまでである。

それを知らなかった太刀川はショックを受けたようだが、「正隊員になった」とツグミに認められたのだからダメージは少ないように見える。

そしてそんなツグミと太刀川のやり取りをそばで見ていた迅は苦笑するしかない。

 

(これからが楽しみだな…。ツグミのヤツも顔には出さないが今度こそ()()で勝負できるってワクワクしてんだろうな、きっと)

 

迅の想像どおり、ツグミはすでに新しい策を頭に思い浮かべていた。

 

「さあ、太刀川さん、()()()()のトリガーで戦いましょう」

 

そう言ってツグミは訓練生用のトリガーでの換装を解き、新たに自分のトリガーを起動させた。

さらに太刀川も正隊員用のトリガーで換装する。

 

「スゲェ~、忍田さんとお揃いの隊服だ~!」

 

太刀川にとって正隊員になるということは忍田とお揃いの隊服を着ることができるということ。

待ちに待っていた瞬間がやって来て、喜んで飛び跳ねている様子は「おまえは小学生か!?」とツッコミを入れたくなるほどである。

しかしその浮かれすぎた太刀川は数分後には別の形でツッコミを入れられることになる。

 

 

「両者、位置について…」

 

忍田が右手を高く挙げた。

 

「始め!」

 

忍田の合図でツグミと太刀川のふたりは同時に動いた。

が、一瞬で勝敗は決まってしまう。

 

「勝者、霧科ツグミ!」

 

太刀川の戦闘体は()()()にされてしまい、戦闘体活動限界で換装が解けてしまった。

その瞬間は状況がまったく掴めないという顔であったが、自分が負けたことに気が付くと顔を真っ赤にしてツグミを怒鳴りつけた。

 

「卑怯だぞ! 弾トリガーなんて飛び道具、反則だ!!」

 

太刀川の言うように、ツグミは弾丸トリガーを使用した。

開始の合図と同時にツグミは左手の手のひらにトリオンキューブを浮かべ、それを27分割して太刀川に向けて撃ったのだ。

これまでは訓練生用のトリガーであったから武器は弧月ひとつしかなかったが、正隊員用トリガーだとふたつ以上セットできる。

そしてツグミは弧月と弾丸トリガーのふたつをセットしてあったものだから、弾丸トリガーを使うのは当たり前のことであった。

 

「だって正隊員同士の試合ですから。前にわたしと一緒に巡回任務をした時、この前の近界民(ネイバー)との戦いではこれを使ったってことは話したはずですよ」

 

「それは…」

 

「実戦で敵がどんなトリガーを使うのかわからない状態で戦闘状態になり、自分が想像もしていなかったトリガーで攻撃しても卑怯だとか反則だなんて言えますか? わたしのトリガーには弾丸トリガーがセットしてあることを知っていたのに、これまでのように弧月オンリーで戦うだろうと勘違いしたあなたのミスです」

 

「……」

 

「審判の忍田さんがわたしに勝ちの判定を出したんですから、卑怯でも反則でもないということです。一度わたしに勝ったくらいでいい気にならないでください」

 

ついさっきまで大泣きしていたツグミだが、そのおかげでスッキリしたらしい。

おまけに太刀川に一矢報いたことにもなり、彼に対して強気にもなりたくなるわけだ。

片や太刀川は悔しそうな顔をして地団駄を踏んで叫んだ。

 

「あー、もうヤメだ! こうなったら俺が勝つまで続けるぞ! …さあ、来い!」

 

太刀川は道場の隅に置いてあった木刀を持ち出すと、その切っ先をツグミに向けた。

負けたことが悔しくて勝つまで続けるというという根性は見事なものだが、ツグミは呆れるしかない。

 

「明日まで待てばトリオン体の修復が終わるんだから、生身で木刀なんていう試合はしなくて済むのに」

 

「いいや、俺は今殺りたいんだー!!」

 

「おまえは小学生か!?」

 

呆れた忍田は太刀川にツッコミを入れる。

こうなると太刀川をおとなしくさせる方法はひとつしかない。

ツグミは嫌々ながらといった感じで太刀川に言った。

 

「太刀川さん、あなたの気が収まらないのは理解できます。わたしはやってもいいですよ。その代わりにこっちの条件をのんでくれたら、ですけど」

 

「条件て何だ、ツグミ?」

 

「わたしはこの戦闘体のままで木刀を持ちます。あなたは好きなだけわたしをボコボコにしてかまいません。トリオン体へはトリガーでの攻撃しか通用しませんから、いくら斬られようが殴られようがダメージを受けることはないです。あなたが満足するまで付き合えますよ。もちろんわたしもただやられるだけじゃ嫌なので、防御や反撃をします。あなたは生身でわたしが持つのは木刀ですからダメージを受けても死にはしませんけどかなり痛いと思います。それでいいなら殺りましょう」

 

「いいだろう。それでいい」

 

忍田と迅は心配そうにふたりを見ているが、心配なのは太刀川の方である。

いくら木刀であっても生身とトリオン体では条件が違う。

もちろんツグミが本気を出すことはなく適当に手加減するだろうが、それでも生身の太刀川は不利だ。

なぜ彼女がそんなことを言いだしたのか彼女の意図がわからずにいたが、すぐに迅は気が付いた。

 

「忍田さん、ツグミに任せておきましょう。きっと大丈夫ですよ」

 

「何か視えたのか?」

 

「そうじゃありませんけど、大丈夫だってわかるんです」

 

ふたりがそんな会話をしている間にツグミと太刀川の準備ができた。

 

「忍田さん、こっちは準備できましたよ。審判、よろしく」

 

太刀川に急かされた忍田は迅との会話を中断してツグミたちのそばに歩いて行った。

 

「両者、位置について…」

 

忍田が右手を高く挙げた。

 

「始め!」

 

開始の合図とほぼ同時に激しい木刀のぶつかり合う音が道場に響いた。

太刀川がツグミに斬りかかり、それをツグミが受け太刀したのだ。

続いてツグミは太刀川の木刀を押し返し、鍔迫り合いが始まった。

生身の勝負なら体力のないツグミが不利となる展開だが、ツグミはトリオン体で筋力の底上げをしているからこういう状態でも五分で戦える。

こうなると疲れを感じないトリオン体のツグミを生身の太刀川がギブアップさせることはできない。

太刀川が体力を消耗して動けなくなるだけだ。

 

(そうか、ツグミは慶に好きなだけ打たせて動けなくなるまで疲れさせるつもりなのか…。興奮状態の慶を言葉でおとなしくさせることはできない。だから本人に納得させる形でこの騒動を収めようと言うのだな。さすがはツグミだ。よくもまあ即座に賢い判断ができるものだ)

 

忍田が考えていたとおり、ツグミは太刀川のストレス発散のために好きにさせ、同時に体力を消耗させておとなしくさせる策を用いたのだった。

実際、ツグミは受け太刀だけで攻撃はせず、太刀川に好きなだけ打たせていた。

しかし太刀川は全力で木刀を振るものだから15分ほどで体力ゼロとなり、ツグミの前に臥した。

 

「ハァ…ハァ…ハァ…」

 

太刀川は汗まみれで、息を切らせているものだから言葉を発することができずにいる。

しかし表情で言いたいことはわかった。

彼の表情は清々しいもので、やれるだけのことはやったと言わんばかりの満足気なものなのだ。

 

「俺、水を持って来ますよ」

 

迅はそう言い残して道場を出て行く。

残ったツグミと忍田は床の上で大の字になっている太刀川の顔を見下ろした。

 

「これで満足ですか?」

 

ツグミの問いに太刀川は首を縦に振った。

 

「これに懲りたら、無茶なことを言わないようにしてくださいな」

 

再び首を縦に振る太刀川。

 

「これからは同じボーダー隊員として一緒に戦う仲間なんですから、これまで以上に仲良くしましょう」

 

そう言ってツグミは太刀川に右手を差し伸べ、太刀川も素直にその手を握った。

そしてツグミが太刀川を引き起こしたタイミングで迅が戻って来る。

 

「太刀川さん、どうぞ」

 

グラスに注がれた水を一気に飲み干し、ひと息ついた太刀川がやっと声を発する。

 

「はぁ…今日はもうヤメだ。次はトリオン体で正々堂々と戦ってやる」

 

「いつでも受けて立ちますよ」

 

ツグミと太刀川が笑顔で頷くのを見て、忍田は思った。

 

(慶はこれからもっと強くなる。そしてボーダーの防衛面での屋台骨を支える柱の1本となるだろう。いろいろあったが結果オーライと言ったところか)

 

すべてが丸く収まったかのようだが、忍田は渋い顔をしている。

 

(しかし慶の奴、高校での成績が壊滅的だということじゃないか。こっちをどうするかが問題だ…)

 

この日の午前中、忍田は近いうちに太刀川を正式に入隊させるつもりでいたので、その事情を話すために彼の高校の担任教師に会いに行ったのだが、そこで衝撃的なことを聞かされていた。

1学期の中間と期末、2学期の中間テストの成績を知らされた忍田は教師に「これは10点満点のテストだったのですか?」などという間抜けな質問をしてしまうくらいだ。

そして苦笑しながら「普通に100点満点ですよ」と言われ、魂が抜けかけたほどショックを受けてしまったのだった。

太刀川は戦力として欲しい人材であるし、本人もやる気満々であるから入隊させたい。

しかし学業との両立は()()()不可能であることを宣告されたようなものだから、どうするのかギリギリまで迷っていた。

それでも彼に正隊員用のトリガーを与えたのは単純にそれが忍田の「希望」であったからだ。

同世代の仲間たちに囲まれているうちに、勉強好きにはならずともせめて普通の高校生になってくれれば良いという親心にも似た切なる願いであるのだ。

本人は忍田の苦悩に気付いてもおらず能天気にツグミと迅と3人で楽しそうに駄弁っている。

 

(さて、トリオン体の修復の時間もあるからな、明日の午後の巡回任務を任せてみようか。念の為に…いや、ひとりで大丈夫だろう。これまでもツグミや迅と一緒に行動していたんだからな)

 

こうして太刀川の正隊員としての初任務が決まった。

 

「慶、ちょっといいか?」

 

「何ですか、忍田さん」

 

太刀川はツグミたちとの会話を一時中止し、忍田の次の言葉を待った。

 

「慶、明日の一一〇〇(ひとひとまるまる)時に新本部基地に出頭しろ。午後はおまえひとりで市内巡回をしてもらう」

 

「それって…」

 

「おまえの正隊員になっての初任務だ」

 

「…やったぁ!!」

 

太刀川は両腕を高く挙げて万歳をする。

 

「だから今日の訓練はここまでにしておく。詳しい説明は明日する」

 

「了解です!」

 

「それから重要な話がある。ツグミ、迅、おまえたちも良く聞け」

 

そう言って忍田は続けた。

 

「本日をもってこの旧本部基地は閉鎖となる」

 

「「「……」」」

 

「これまでここを使っていたのはまだ他に稽古場がなかったからだが、新本部基地に訓練室が完成したからな。以後はそこを使うようになる。おまえたちにとってはここに思い入れがあって離れがたい気持ちもあるだろうが、これは城戸さんが厚意で使わせてくれたこと。使わなくなった基地を維持するにもお金はかかるから仕方がないんだ」

 

申し訳なさそうに言う忍田がだ、ここでワガママを言うような()()はいない。

 

「わかりました。それなら今日はこれからジンさんと太刀川さんに手伝ってもらって道場の掃除をします。これまでの感謝の意味を込めてピカピカにしてお返しします。ねえ、ジンさん、太刀川さん、お手伝いしてくれますよね?」

 

ツグミが笑顔で迅と太刀川に訊くと、迅は大きく頷いた。

 

「ああ、もちろんOKさ」

 

しかし太刀川は浮かない顔だ。

 

「俺もいいんだけど、体力ゼロだから何も手伝えそうにないぜ」

 

ふたりともやる意思はあるのだが、太刀川の方はさっきの地稽古のような試合のせいでヘトヘトである。

 

「そっか…。じゃあ、ジンさんとふたりでやります。太刀川さんは帰ってもいいし、見物していてもいいですよ」

 

「すまないな」

 

謝る太刀川にツグミは言う。

 

「仕方がないですよ。あれだけ派手に木刀を振れば疲れて動けなくなるに決まってます」

 

太刀川が参加せずとも迅がいることでツグミは十分だと思っているのだ。

 

「…そうだ、今夜はジンさんを家にご招待します。お礼ってことで、夕飯はジンさんの好物をたくさん作りますよ」

 

「お、そりゃいいな。おまえのご馳走が褒美だってことなら張り切って掃除するぞ」

 

迅が嬉しそうに言うと、ツグミはさらに続けた。

 

「帰る時に一緒にスーパーへ行って買い物をしましょう」

 

「ああ。荷物持ちなら俺に任せろ」

 

ツグミと迅が親しげに会話している様子を太刀川は見ているしかない。

 

(あー、何かムカつく…)

 

それは迅がツグミと太刀川の仲の良い様子を見てムシャクシャしたのと同じ感覚である。

ツグミとの関係が良好なものとなったことで、迅に対する嫉妬心が湧き上がって来たのだ。

おまけにふたりだけで楽しそうにしているものだから、太刀川は自分だけが除け者になっているような気分になってきた。

 

「やっぱ、俺も手伝う」

 

仲間外れにされたくない太刀川は無理を承知で掃除をすると言い出した。

そんな彼のことを心配するツグミ。

 

「無理をしなくてもいいですよ」

 

「いいや、俺もやる」

 

「じゃあ、木刀を乾拭きしたり、使った道具を片付けてください。床拭きはわたしとジンさんでやります」

 

「なら、俺もおまえんちに行っていいか?」

 

「もちろんです。太刀川さんもご招待しますよ」

 

「おー、やったぁぁあ!」

 

喜ぶ太刀川にツグミが釘を刺す。

 

「その分ちゃんとお手伝いしてくださいね」

 

「わかってるさ。…で、忍田さんも晩飯は俺たちと一緒に食べられるんだろ?」

 

太刀川が忍田に訊くと、忍田は残念そうな顔をする。

 

「いや、今夜は城戸さんや外務・営業担当の唐沢さんたちと一緒にスポンサーと会食をすることになっているんだ」

 

「ちぇっ、つまらねーの。俺の正式入隊を祝うパーティーでもしてもらおうかと思ったのにな」

 

「慶、お祝いなら別の機会にしてやるから今日は勘弁しろ。こっちも好き好んで会食なんてするんじゃない。ボーダー組織の運営にはお金がかかるんだ」

 

「そうだよな~、あんなでっかい基地を作るだけでもお金がかかるのに、これからもっとかかるんだもんな。じゃ、忍田さんが暇な時にご馳走してよ」

 

「わかった。…ん?」

 

このタイミングで忍田の携帯電話に着信があった。

 

「…林藤からだと? …はい、忍田だ。…………いや、それは私のせいではない。……………だが、それは…………しかし……………城戸さんに訊いてもダメなのか? ………わかった、今から急いで戻る」

 

ツグミたちが見守る中、忍田は林藤との電話でのやり取りを終えた。

 

「本部でトラブルが発生したようだ。私はこれから本部に戻る。後のことは、迅、おまえに任せた」

 

「了解!」

 

迅は忍田におどけて敬礼をする。

すると忍田は駆け足で道場を出て行った。

その後ろ姿を3人で見送ると、ツグミは迅と太刀川に言う。

 

「さあ、さっさと始めましょう。長い間お世話になった場所だもの、心を込めてお掃除しなきゃ」

 

こうして道場の掃除を始め、約2時間かかって満足のいく結果を出せたのだった。

 

「うん、これでさよならすることになるけど、この場所がなくなっちゃうわけじゃないものね。…バイバイ」

 

最後に道場を出たツグミは誰もいないガランとした空間に向かって名残惜しげに別れの声をかけた。

のちにここは玉狛支部として再出発し、この道場も最新の技術を導入した訓練室となる。

そして再びここに仲間が集うのは2年後のこと。

ツグミもその一員として自らを鍛え、後輩たちを迎え入れることになるのだった。

 





ここで一旦ツグミと太刀川のエピソードを終えます。
剣の腕前()()は立派な「弟弟子」を持ってしまったツグミの苦労は続き、事あるごとに彼女は太刀川に振り回されます。
続きはいずれ、また。

次回からは「東春秋」との出会いから彼に師事して狙撃と戦術を学ぶエピソードとなります。




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