ワールドトリガー ~ I will fight for you ~ 作:ルーチェ
ハイレインと出水の戦いは一進一退の状況であったが、とうとうそのバランスが崩れ始めた。
出水は無数の魚型の弾のひとつひとつを
もちろん出水もそれに応じて
「ぐっ!! 相殺しきれねえ…!!」
「どうした? 一発お返しするんじゃなかったのか?」
余裕たっぷりのハイレインに出水が言い返す。
「余裕こいてんじゃねーぞ、このわくわく動物野郎。わかってきたぜ。てめーのトリガーは…トリオンにしか効かねーと見た」
一瞬、ハイレインの表情が変わる。
「
出水の撃ち出した
細かい破片と砂埃がハイレインの姿を消すが、再び現れた彼はかすり傷ひとつ負っていなかった。
「
「あらら…もっとビルとかあるとこだったらなあ…」
そう言いながら出水は上半身を起こす。
そして続いて言った。
「…なんちゃって」
「…!?」
その答えはその直後に判明した。
どこからかの狙撃で、ハイレインの腹に大きな穴が開いたのだ。
「なに…!?」
想像もしていなかった攻撃にさすがのハイレインも動揺する。
それは本部基地屋上に陣取った奈良坂と古寺のイーグレットによる狙撃であった。
出水が
2射目は防がれてしまったが、腹の傷からトリオンが漏れていく。
そうなれば敵のトリオンをどんどん消費させて撤退に持ち込めばいい。
「さあて、スタミナ勝負といこうか」
ハイレインが魚型の弾をシールドのように使って
そして冬島隊の当真勇(とうまいさみ)も加わり、できた隙間を狙っての狙撃。
超精密な狙撃であるが、彼らには雑作もないことである。
しかしそう簡単にダメージを与えることはできない。
「さすがに頭と心臓はガッチリ守ってやがんな。あと地味にマントが硬てぇ」
当真が言うようにハイレインのマントはヴィザのそれと同じくトリオンによる攻撃を防ぐものらしい。
それはこちらにとって非常に不利となるが、奈良坂は全然動じない。
「問題ない。端から削ればそのうち倒せる」
奈良坂は黙々と撃ち続けた。
さすがのハイレインも
[ミラ、今どこに
[
[その屋上に狙撃手がいる。ラービットで追い払ってくれ]
[了解致しました。…目標確認。ラービットを拝借します]
ミラは当真たちの姿を確認すると、京介と米屋が相手にしていたラービットを「大窓」で本部基地屋上に転送した。
続い「大窓」を通って現れたラービットが
そしてラービットから離れてミラを狙撃するが、彼女は「小窓」でその弾を撃ち返してきた。
しかしミラを攻撃せずにいると、彼女やラービットからの攻撃はない。
どうやら敵の目的は
つまりハイレインの邪魔をさせないことであるようだ。
「…『勝負は決まった』と思っている顔だな」
出水の心の中を読んだようなハイレインの言葉に出水は動揺する。
この言葉は逆に「勝負はまだ決まっていない」という意味にとれ、ハイレインにはこの状況を打開する何か秘策があるのだと考えられるからだ。
実際、信じられないような光景が出水の目の前で起きた。
「おいおい…反則だろ…!」
「無駄骨だったが健闘したな、
トリオンを補給したハイレインは出水に向けて魚型の弾を撃ち始めた。
ボーダー内でも有数のトリオン量を誇る出水だが、これまでにトリオン使いすぎてしまっている。
「…ムカつくぜ。
キューブにされるよりはマシだと、出水は悔しそうな顔で
「なかなか惜しい
ハイレインは出水の才能を惜しみ、
出水はハイレインを仕留め損なったが、それでも十分な時間稼ぎをしてくれた。
そのおかげで修は本部基地まであと3分の場所までたどり着いている。
それを確認した京介はガイストを起動した。
「ガイスト、
ガイストは京介専用のオプショントリガーで、トリオン体の安定性をわざと崩し、トリオンを武器や足に流し込み武器の威力や機動力を大幅に強化するもの。
発動後は不安定になったトリオンが漏れ出すため、一定の時間 ── トリオン量最大で約5分 ── 経つと戦闘体を維持できず強制的に
京介はラービットを一撃で仕留める。
[米屋先輩、逃がしたC級が迂回しつつ基地に向かってます。キューブにされた隊員も何人かそっちの道に転がってます。保護して
[OK。おまえが
[了解っす。じゃあ3分間だけ付き合ってください]
京介と米屋は連絡を取り合い、ふたりでハイレインに攻撃を仕掛けた。
米屋は散らばっている瓦礫を槍で投擲しての攻撃。
そのコンビネーションは見事で、隙を突いてハイレインの背後から京介が弧月で斬りかかったが、マントで防がれてしまう。
さすがの弧月も刃が折れてしまい、さらにはマントの下に隠していた蜂型の弾に襲われてしまった。
それでも瞬時に
このままあと数十秒足止めができれば修たちは本部基地にたどり着く。
京介が修のことを気にかけた時だった。
ハイレインの背後に「大窓」が開き、ミラが現れた。
「ハイレイン隊長、金の雛鳥が間もなく到着します」
「そうか、ではそちらに向かおう。
京介たちは自分たちこそがハイレインの足止めをして修たちを逃がしたのだと考えていた。
しかし実際は京介たち護衛と修を引き離すためにハイレインはあえてここに残っていたのだ。
ミラは修たちの居場所をピンポイントで把握しており、このままでは護衛がいない状態の修たちのもとへ行ってしまう。
「待て!!」
京介はハイレインたちを追おうとしたが、背後に「小窓」が開いて魚型の弾が京介を強襲した。
ふたつの窓でハイレインの弾をワープさせるという攻撃だ。
これは初見でかわせるものではない。
「腕がいい。工夫もある。『戦う力』は持っている。だが勝敗は
ハイレインはそんな言葉を残して「大窓」の奥へ消えていった。
そして京介は戦闘体を維持できなくなって
玉狛支部に戻った京介はハイレインの
「…おっ、なんだ? 何かやったな、京介。未来がまた動いたぞ」
迅は京介の行動がまたひとつ未来を変えたことに気付いて笑みを浮かべた。