ワールドトリガー ~ I will fight for you ~   作:ルーチェ

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194話

 

 

試合直後の反省会。

隊室では二宮と三輪が東に詰め寄って質問攻めにしていた。

月見はというと、彼女はあの作戦が東の考えたものではないことに気付いていて、ツグミの顔を意味深な目で黙って見ている。

ツグミは東にはすべてを話してあるので、彼の説明を黙って聞くことにした。

もちろん東が困った状態になればフォローするつもりではあるが。

 

「東さん、嵐山隊が例のマンションと児童公園を戦闘フィールドにすることは前もってわかっていたわけですから、俺たちもそれに合わせて動くのは理解できます。ですがあなたの指示はまるで敵の動きをすべて把握していたかのように思えるんですが、これはいったいどういうことですか?」

 

三輪が東の「すべてを見通していた」かのように思える的確な指示に疑問を抱いたのは無理もない。

児童公園で戦闘が始まるまではすべての隊員がバッグワームを起動していて、オペレーターですら把握できずにいたのだから。

 

「嵐山隊の転送された位置はわからないが、俺たち4人の転送先はわかる。そしてこのマップを頭に思い浮かべ、俺たちの居場所をマークすると、所々空白エリアが見えてくる。そこに嵐山隊が転送されたのだと考えれば、そこからおおよその見当はつく。転送先はランダムだが、各個人の距離が極端に近かったり遠かったりすることはないそうだからな。まあ、霧科と柿崎の初期位置が比較的近かったが、運良く遭遇(エンカウント)せずに済んだ」

 

そこにツグミがすかさず口を挟む。

 

「運良く、ってことはありません。もし柿崎さんと遭遇(エンカウント)してしまったとしても、わたしなら対等に戦えました」

 

「しかしそこで勝てたかどうかはわからない。もし落とされていたら以降の戦いは非常に不利になっていただろう。もちろんきみが勝てば残りは3人になって楽な戦いになっていたかもしれない。序盤での戦闘はお互いに準備ができていない状態での戦いになるから、さすがのきみでも苦戦しただろう。それにきみたちが予定にない場所で戦闘を開始したら嵐山隊にとって都合が悪いだけでなく、俺たちにとっても条件が悪くなっていた。なにしろ俺ときみという狙撃手(スナイパー)が同時に同じ場所にいるという()()()()()()()()()()作戦が実行できなくなってしまったのだからな」

 

東に指摘されてしゅんとしてしまうツグミ。

これは予め東と口裏合わせをしていた「茶番劇」である。

あくまでも東の立てた作戦だということになっているので、ツグミはあえて自分の浅はかさをアピールするようなことを言うことで()()であることを隠しているのだ。

彼女がシナリオを書いて、東を通して他の隊員に指示を出す。

これは彼女が脚本・監督・出演の3つを行っていたようなもの。

おまけに試合だけでなくその後の反省会についてもこうなることを予想して、隊室に戻る前に東を呼び出して打ち合わせをしていたのだった。

そしてツグミの()()()()()により、二宮と三輪は自分たちが彼女の手のひらの上で踊らされていたなどと露ほども思い浮かぶことはなかった。

さらに二宮が東に言う。

 

「嵐山隊の動きをほぼ完璧に想定して、それに合わせたシナリオを書いた東さんは凄いと思います。ですがなんだか上手くいき過ぎているような感じがします。なんかこう…このステージをチェス盤に見立てて、あなたがプレイヤーとなっていたような。全体を客観的に見下ろしていて、相手のプレイヤーを上手く誘導して罠に嵌めているような感じですね」

 

「まあ、実際に目に見えているわけではないが、見えているのと同じだな。プレイヤーになって自分を含めた隊員を駒として考えて、相手の心理状態を読みながら先の先…いやもっと先まで考えて駒を動かす。だから格下…と言うと嵐山に失礼だが彼の動きは簡単に読めて、さらにこちらの思いどおり動かすことはそう難しくない。彼はまだ慣れていないから戦術に関しても正道で行く。あの『市街地B』のマップで狙撃手(スナイパー)を活かした作戦となれば近くに高い建物のある広い場所で戦おうと考え、実際にそのとおりだった。だからこちらは彼らの動きを予め読んでいて、その先の行動ができたわけだ」

 

「なるほど…さすがは東さんですね。嵐山隊と我が隊はポジションも戦力もほぼ互角。どちらが勝ってもおかしくないと思われていましたが、戦術というもののおかげで完全勝利を得ました。相手の裏をかいたり、意表を突くような策を用いることで本来の力を出さずとも楽に勝てるというわけですか」

 

二宮は感心したように言うが、最後に嫌味っぽいことを付け加えた。

 

「しかしおかげで俺や秀次はまったく見せ場がありませんでした。目立ったのは東さんと霧科だけ。本気で撃ち合おうとしていたのに生かさず殺さずの状態にするために半端な攻撃しかできませんでした。せっかくの記念すべき初戦にゼロ得点とは悔しいですよ。秀次もそう思うだろ?」

 

三輪は黙って大きく頷いた。

 

「悪かったな、ふたりとも。今回の戦いでは狙撃手(スナイパー)の有用性を証明したかった。なにしろ新入隊員の多くは攻撃手(アタッカー)銃手(ガンナー)射手(シューター)希望で入隊してくる。だから狙撃手(スナイパー)の俺としてはもっと興味を持ってもらいたいと考えた末の作戦だった」

 

東は申し訳なさそうな顔で言う。

 

「この試合で活躍できなかったからといって、おまえたちの実力が否定されたわけじゃない。むしろ次回も今回同様に狙撃手(スナイパー)をメインとした作戦では見物している隊員たちもつまらないだろう。この部隊(チーム)ランク戦開催の主旨は見て学ぶことにあるのだから、毎回様々な戦術を披露してそれを彼らの成長の糧にしてもらいたいと思っている。だから次の試合ではおまえや秀次が活躍して勝利を掴む作戦を考えるよ。それで勘弁してくれ」

 

すると二宮は東に頭を下げた。

 

「すみません。別に東さんに詫びてもらおうだなんて思っていませんでした。少し悔しかったもので言いすぎてしまっただけです。ですがあなたが自分の部隊(チーム)のことだけでなく他の隊員の育成を目的として先の先まで読んで行動しているなどとまったく気付きませんでした。俺が浅はかでした」

 

東は困惑してしまった。

なにしろ自分はツグミのシナリオに沿って行動しているだけで、言うなれば彼は監督のように見えてタダの出演者でしかないのだから。

師匠である自分の手に余る状態になってきていると感じていた時にこの試合である。

戦術とは言い難い稚拙なものではあったが、それを考えたのは戦術を学び初めて数ヶ月の12歳の子供なのは紛れもない事実だ。

手に余ると言うよりは、自分の育て方によって彼女の進む先を大きく変えてしまうことにもなりかねない可能性に戸惑っていると言い換えた方が正しいかもしれない。

 

「とにかく今日の試合は俺や霧科だけでは勝ち得なかった。二宮、秀次、月見…この5人のチームワークで掴んだ勝利だ。近いうちに諏訪隊が参戦してくるだろうし、新たな部隊(チーム)が結成されれば俺たちのライバルは増えてくる。暫定1位というのはあくまで次の試合までの仮の1位であるということ。嵐山隊だって負けっぱなしでおとなしくしているはずがない。次の試合は今回よりも厳しいものになるだろうが、俺たちなら油断しない限り必ず勝てる。それだけの力を持っているのだからな。ひとまず次の合同任務まで個人で訓練に励むように。以上だ」

 

そこで解散となり、誰もが思うところがいろいろある様子で隊室を出て行ったのだった。

 

 

◆◆◆

 

 

部隊(チーム)ランク戦の行われた日の夜、帰宅した忍田はツグミに試合の内容についていくつか質問をした。

内容は二宮や三輪の抱いた疑問と同じようなものである。

ツグミは東に話したように忍田に詳しく説明をすることにした。

まずあの試合の作戦は東の立案ということになっているが、実際は彼女自身が考えたものであることを告白し、それには忍田も納得する。

そして「すべてはツグミの計算通り」の試合であったのだと知り、忍田は感心する反面、呆れてしまったのだった。

 

「まあ、裏の事情はどうであれ面白いものを見せてもらったことには変わりない。あの城戸さんですら平静を保っているように見せかけていたが、おまえが佐鳥くんを斬った辺りから身を乗り出して見るようになっていたくらいだ。それに林藤はあの()()()()のある戦い方は東の策ではないと見破っていたぞ」

 

「そうですか? 東さんから学んだ戦術の知識を踏まえた上での策ですけど…」

 

「初戦で用いるというところが東らしくないと感じたんだろう。林藤は『東なら()()()アレはやらない』と言っていた」

 

「なるほど…。たしかにそうかもしれません。東さんなら誰でも使うことのできる基本中の基本といった感じのノーマルな作戦で東隊を勝利に導くことはできますし、当初はそのつもりでいたと考えられます。でもわたしが途中で面白いことを考えてしまったので、東さんはわたしの好きにさせてくれたってことですね」

 

「ああ。東はおまえの戦闘員としての成長を評価しているが、自分の想像もしないような奇抜な策を考える戦術面でもおまえのことを認めている。私もおまえの試合を見て、そして事情を知ってそのとおりだと感じた。成長したな、ツグミ」

 

忍田に褒められるのが嬉しくて、ツグミはさらに続けた。

 

「嵐山隊の4人は万能手(オールラウンダー)ふたりと銃手(ガンナー)という3人の地上部隊が狙撃手(スナイパー)の援護を受けて全員で戦うという教科書に出てくるような戦い方をすると推測しました。東さんも同様に他の隊員のお手本になるような戦術を考えていたと思います。でもそれでは面白くない。相手の意表を突く戦術は相手が驚くだけでなく観客も驚いてくれる。そう思ったので誰も想像もしないことを初戦でやってみたくなったんです。それに次の対戦相手がどこの誰になるかわかりませんが、少なくとも『東隊は並大抵のことでは敵わない』と考えて挑んでくるようになるでしょう。そしてより一層頭を使うことになり、戦術が重要であることを知るようになります。きっと『東塾』の入塾希望者が増えるんじゃないでしょうか」

 

「それは歓迎すべきことだが、東も戦闘員としての役目を果たしながら狙撃手(スナイパー)の教官役をさせてその上での戦術の教師だからな、あまり無理はさせられない」

 

「わたしも同感です。そこでわたしはそろそろ東隊を()()しようかと考えています」

 

「何だって?」

 

「別にもう教わることはないという意味ではありません。まだたくさん学ぶことはあります。でもわたしがひとりで席をずっと占めていると他の希望者が学ぶことができなくなってしまいます。まだすぐに東隊を脱退するということではなく、そう考えているという段階です。東さんからの指導を受けることでもっと多くの優秀な隊員、隊長となるべき人材が生まれるならその方がボーダーにとって有益だとわたしは思うんです。とんでもなく強い隊員が数人で回すよりも、平均以上の力が出せてチームワークで戦える大勢の隊員がいる方がボーダーという組織には重要です。東さんは人としても立派な方で、一緒にいて彼の人となりを見ているだけでも自分の未熟さや上には上がいるということを思い知らされます。あの()()な二宮さんですら東さんの前では借りてきた猫のように大人しくなるくらいです。もし隊員の中で問題のある人がいるなら、東さんに預けて彼の教えを受けさせるべきですね」

 

「……」

 

やっと部隊(チーム)としての体裁を整えてランク戦ができるようになったというのに、ツグミは東隊を辞めることを考えていた。

忍田にとってはショックなことだったが、彼女がボーダーの未来を考えて自ら身を引こうというのだから無闇に止めることもできない。

それに優秀であるが少々問題のある隊員がひとりいて、それをなんとかしたいと考えていたところでもあったから都合が良い。

しかしツグミが東隊を辞めたとしてその後のことが気にかかった。

 

「それで東隊を辞めた後はどうするんだ? 自分が隊長になって新しい部隊(チーム)を作るのか?」

 

「う~ん…今のところはそんな気はないです。わたしにはリーダーとしての資質はないですから、どちらかといえば東さんのような優秀なリーダーの部下になるか、もしくはどこにも所属しないフリーな立場でいた方が()()()()()()()()ができるような気がします」

 

「おまえらしい戦いか…。まあ、私は本部長としておまえたちの上司であるからボーダーにとって都合の悪いことは止めるしかないが、個人がどの部隊(チーム)に入ろうと辞めようと口を挟む権利はない。おまえが自分で考えて出した答えなら後悔することもなかろう。好きにしなさい」

 

「はい。そう言ってくれると思っていました」

 

ツグミの晴れ晴れとした顔を見ている忍田は複雑な気分である。

 

「それはそうと、おまえは大事なことを決めるにも父親である私に何も相談してくれないのだな?」

 

「だって家族とはいえ真史叔父さんにボーダーのことをペラペラ話すわけにはいきませんからね。おばあちゃんにもボーダー関係のことは相談したことはありませんよ」

 

あっけらかんと話すツグミ。

たしかにボーダーの任務に関することは家族にも話せないことが多い。

一般市民に対して極秘にしていることを家族に話してしまえばそれだけで処分を受けることにもなり、ツグミにとって忍田はボーダー本部長であると同時に隊員の家族でもある。

だから相談をしなかったということにしたいのだ。

もちろんボーダー運営のことで日々頭を悩ませて多忙な忍田に余計な心労を与えたくないという彼女なりの心遣いであり、忍田もそのことを理解しているからもう何も言わないことにした。

 

「そうだったな。…だがすべてを自分ひとりで背負い込んでしまって潰れるようなことにはなるなよ。ボーダー以外のことならば私にも相談できるはずだ」

 

「はい、わかっています。学校や進路のこととか()()()()()()()には遠慮なく相談します。…さて、今日の試合のことについてのお話はこれくらいにしておきますか?」

 

「ああ」

 

「それじゃわたしの方から重要なお話があります」

 

ツグミに重要な話と言われ、忍田は緊張する。

しかしその話とは本人にとって大したことではなかった。

 

「明日は真史叔父さんの誕生日ですからご馳走を用意しておきます。なので定時には必ず仕事を終えて帰って来てくださいね」

 

「そうか…そう言えば明日は16日だったな。まあ、会議は入っていないし急ぎの仕事もないから定時に帰ることはできるだろう。しかし重要な話というからどんなことかと思って面食らったぞ」

 

「だってわたしにとっては重要な話ですもの。年に一回の大事な日ですから」

 

「…そうだったな。また1年無事に生きていられたお祝いをする、か」

 

「そうです。来年も祝えるように、今年もきちんとお祝いしておかなきゃいけませんからね」

 

笑顔で言うツグミの顔を見ている忍田は複雑な気分である。

自分の誕生日を祝うパーティーは嫌うくせに他人の誕生日は全力で祝いたいという矛盾。

2年前の誕生パーティーが仲間とのお別れパーティーになってしまったことが彼女にとってトラウマとなっていた。

それは未だに彼女が近界(ネイバーフッド)遠征に参加できなかったことを後ろめたく思っている証拠で、幼い少女が心に負った「弱い自分に対する自責の念」による傷は癒えてはいないということなのだ。

見送る側でいたくないとの一念から彼女は人一倍どころか2倍3倍の稽古をし、友人と遊ぶ子供らしい時間を捨ててボーダー活動に打ち込んできたおかげでボーダー隊員としては一番の年少であるが、実力は十分な戦闘員に育った。

それを父親としては見るに忍びなく、近界民(ネイバー)との戦いに引きずり込んだ自分を責めたことも一度や二度ではない。

このままではいけないと考えた忍田は彼女を三門市から遠く離れた安全な場所に住む自分の伯母に預けようと考えたことすらあったのだが、亡き姉の遺言とツグミが自分を唯一絶対の保護者であると信じて愛情を向けてくるものだから彼女を手放すことができなかったのだった。

それを後悔はしていないものの、自分は父親として不適格であると考えている。

そのような不甲斐ない自分を無条件で慕う彼女が愛おしくてたまらず忍田は溺愛してしまうのだ。

ところがボーダーの本部長としての立場もあり、そちらを優先すると娘を死地に送り込む非情な上官にならざるをえない。

その板挟みの状況にある忍田は精神的にも肉体的にも疲れている。

そんな忍田の姿を見ているツグミは自分という「お荷物」を抱えてしまった彼への罪の償いの意味も込めて家事を手伝ったりボーダー隊員としての責務を果たそうと日々働いているのだった。

 

こうして()()としての会話をしているうちに忍田は大切なことを思い出した。

 

「そういえばそろそろ中間テストの時期なんじゃないか?」

 

ボーダー隊員であり、同時に中学生でもあるツグミ。

学校のことは最低限のことしか話さないものだから、学校生活に関する雑事は彼女の祖母に任せていた。

しかし自分が父親であることを改めて確認したことで、急に思い出してしまって心配になったのだ。

するとツグミは事もなげな顔で答えた。

 

「中間テストなら先週やってしまいましたよ。水・木が試験日だったので午前中で学校はおしまい。午後から本部基地で東さんと一緒に狙撃訓練をしました」

 

「はあ? おまえ、試験勉強はどうしたんだ? 部隊(チーム)ランク戦のことがあって勉強する暇などなかっただろ? 深夜に勉強している様子もなかったが、大丈夫だったのか?」

 

するとツグミは思わず失笑してしまった。

 

「ぷっ、何を言っているんですか~。普段の授業を真面目に受けていれば試験の直前に慌てて勉強する必要なんてないんですよ。わたしのことを心配してくれるのは嬉しいんですけど、全然その必要はありませんから。それよりも太刀川さんなんてかなりヤバそうですよ。1学期の期末で赤点取って補講と追試で夏休みの半分を無駄にしちゃったというのに、2学期になったとたんにそのことを忘れてボーダー三昧。たしか第一高校の中間テストはまだ終わっていなかったはずです」

 

「…忘れていた。次の試験でひとつでも赤点を取ったら本部出禁にすると言い渡してあったが、あの様子だと私と同様にすっかり忘れてしまっているようだな」

 

忍田は頭を抱えてしまった。

ボーダー隊員としては優秀な太刀川だが、高校生という面で見るといつ退学になってもおかしくないくらいのダメダメな学生である。

第一高等学校がボーダーの提携校であるからいろいろな点で融通を利かせてくれているので、かろうじて彼は退学を免れている。

普通の学生なら赤点を取れば追試を受けて、そこでほぼ全員が合格となるのだが、太刀川の場合は追試を2回やって、さらに彼のためだけに特別補講を受けさせる。

そして3回目の追試 ── 過去3回の試験内容と同じもの ── をやって4割正解なら合格というとんでもなくハードルを低くしているのであった。

防衛任務で欠席や早退・遅刻をしなければならないのは仕方がないと学校側も大目に見てくれるが、さすがに彼の成績ではいかんともしがたい。

そういうこともあってボーダーの責任者である忍田が学校に呼び出されたのは夏休みがそろそろ終わろうとしている頃だった。

その時の担任と学年主任が苦渋に満ちた顔で「2学期はこのようなことにならないようにお願いします」と忍田に懇願していたことを思い出した。

さらにツグミがトドメを刺した。

 

「太刀川さんはボーダーのために必要な人材ですけど、あのまま好きにさせていたら無事に高校を卒業できるとは思えません。まさか大学に進学しようなんて考えてはいないでしょうが、高校中退だと最終学歴は中学卒。いくら提携校だと言ってもあまりに成績が悪いと卒業させられないでしょうから。留年で済めばいいんですけど…。とにかくボーダーで働き続けるにしても戦闘員でいられるのは二十代まで。その後の保証は何もないんです。早いうちに手を打っておかないと太刀川さんのご両親に恨まれますよ、きっと」

 

「はあ…」

 

忍田は大きくため息をついて頭を抱えてしまったのだった。

 

 

 

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