ワールドトリガー ~ I will fight for you ~   作:ルーチェ

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199話

 

 

2日目、ツグミと迅はまだ薄暗いうちに登山道を登り始めた。

今回は家を出る時から換装しており、バッグワームを起動した状態でいる。

探している近界民(ネイバー)のレーダーの索敵範囲がどれくらいなのかわからない以上、できるだけ遠くにいる間に姿を隠しておこうということだ。

前日のうちに本部基地へ行って研究室(ラボ)でバッグワームの色を迷彩に変更してもらうと同時にチップの交換をしてある。

城戸からの極秘任務に絡むことは開発室でも鬼怒田と寺島のふたりだけが承知しており、毎回面倒なことを依頼するのだが今回も他の作業を中断して最優先でやってもらえた。

おかげで練り直した計画を朝一で実行できることになるわけだ。

迅も予備のノーマルトリガーを装備している。

風刃だけではバッグワームやカメレオンといったオプショントリガーを使うことはできないし、なにより緊急脱出(ベイルアウト)ができるようにとの備えであった。

もちろん緊急脱出(ベイルアウト)を使うような事態にさせるつもりはないが、念のためにということである。

さらに前日の失敗を考慮に入れ、2万5千分の1の地図の他に例の採石場が稼働していた頃のものを探して取り寄せた。

坑内の様子がわかる地図があれば良かったのだが、さすがにそこまではこの短時間ではできない。

手探りで夜道を歩くようなものだが、迅がいることでツグミには不安はなかった。

誰もが思春期という時期に様々な悩みを抱えて挫折や失敗を繰り返し、その経験が本人の成長を促すものである。

もちろんすべての若者が良い方向へ進むとは限らず、たった一度蹴つまずいただけで絶望して自ら命を絶つ者もいるくらいだ。

ツグミは昨日の茶店で迅に自らの気持ちを告白したものだから、吹っ切れたとはいえないまでも気持ちの整理ができ、彼女の話を聞いてくれた迅に対して絶対的な信頼と安心を持つことになって彼女自身がより一層強くなったからだろう。

 

「トリオン体だと生身の時に比べて身体能力が大幅に強化されるからこうして山を登るのも楽ですね~」

 

40リットルの大きなリュックサックを背負ったツグミが足取りも軽やかに言う。

今回は弁当や飲料水だけでなく野営の可能性があるため非常食や着替え用の衣類、医療キット、携帯トイレといった登山用のアイテムをまで詰めてある。

生身の身体では到底背負えるものではないのだが、トリオン体であればへっちゃらなのだ。

ツグミの横で並んで歩く迅は彼女よりもさらにひと回り大きなリュックサックを背負っている。

その中にはガスバーナーやコッヘルといった「山ごはん」の調理に必要なアイテムと食材が追加で入っていて、本格的な登山に近い装備だ。

その荷物を背負った迅は何か考えているらしく黙々と歩いている。

 

(いくら大荷物を持つのが楽になったからといって不要なものを担いで来るほどジンさんはバカじゃない。何も言わないけど、きっと必要となる未来が視えたのね。そうするとやっぱりこの先に近界民(ネイバー)がいるってこと。気を引き締めて、ジンさんの足手まといにならないようにしなきゃ)

 

ツグミがそう考えたように迅には()()()()が視えていた。

まだ漠然とではあるが、ツグミの未来を決める分岐点が近いうちに訪れ、捜索している近界民(ネイバー)と彼女がどう関わるかによって自分と彼女の進む道が近付くか離れるかが決まるというもの。

さらにボーダーという組織にも影響を与えるものとなるのだから慎重に事を進めなければならない。

そこで重要なポイントが「食事」で、そのために調理器具と食材を用意してきたのだ。

 

 

登山道と旧道の分岐までやって来たツグミと迅。

前日にもここを通過したのだが、その時に気が付かなかったくらい道としての形跡が残っていない旧道は生い茂った木々と草に覆われている。

 

「何年も使われていなかったせいで自然に戻ってしまってますね」

 

「ああ。だけどここを行くしかない。大丈夫、途中で迷うことはなく目的地には着ける。ま、ちょっと時間はかかるだろうが」

 

「ジンさんがそう言うなら自信持って行くことができます。さあ、行きましょうか」

 

「じゃ、俺の後を付いて来い。…あ、足元、気を付けろ。ここに段差があるぞ」

 

迅はツグミのことを気遣い自らが道を作るつもりで先を歩き始めた。

足元は石を敷き詰めた石畳と石段になっていて、その隙間から雑草が生えて地面が見えなくなっている。

かつてはこちらが正式な登山道であったため足元はしっかりとしていて道が崩れるようなことはなさそうだ。

ただし蚊や虻といった虫がいっぱいいて、生身でいたらひとたまりもない状態であるが、それもトリオン体であるから文字通り痛くも痒くもない。

とはいえもう何年も整備されていない道を歩くのだから楽ではなく、しばらく歩くとふたりが休憩できるだけのスペースを見付け、そこで腰を下ろして一時休憩することにした。

するとツグミはすぐに地図を開くとコンパスで場所を確認した。

 

「ここは地図上のこの地点だと思われます。あと1400メートルほど歩いて…約50メートル登ると尾根に出ます。たぶんそこからだと石切場の一部が見えるでしょう。あと一息です。でもそこからは旧道を外れるので完全な山道になります。これまで以上に大変な道とはいえない道を歩くのですから、ここで軽く食事をしておきましょう」

 

空腹ではないのでゼリー飲料をひとつと水分補給のためにスポーツドリンクを口にして15分の休憩の後に再び歩き始めた。

 

 

 

 

ツグミたちの行く手に採石場跡が見えてきたのは正午近くになってからだった。

確認できるのはかつて何台もの大型トラックが切り出された石材を積み込んでいたと思われる場所で、現在は雑草の生い茂ったタダの空き地である。

広さは一般的なサッカーコートの3分の1くらいで、坑道の入口はそこからでは死角になって見えない。

山の稜線を歩いて反対側に回れば見えるのだろうが、ひとまず最短で山を降りて採石場の敷地を歩いた方が楽だということになって、30度近くある急勾配を滑り降りるような感じで下って行った。

 

人の背丈ほどもあるススキをかき分けて進んで行くと、目の前がパッと開けて採石場の入口が見えた。

入口の大きさは高さと幅が共に約10メートルで、小型の艇なら坑内に隠すことも可能だろう。

 

「見張りはいないようですね」

 

ツグミが言うと、迅は頷いた。

 

「ああ、そのようだな。ここは周囲を囲まれていて上空以外から近付くのは難しい。だから安心しているんだろう。だがどんな奴が潜んでいるのかわからない。ここで相手の動きを待っていたらいつまで経ってもキリがないから中へ入ってみよう。もしトリガー使いがいたらいきなり一戦交えることにもなりかねないが、たぶんそんなことにはならないと思う」

 

「ジンさんが言うならきっと大丈夫ですね。では、荷物はここに隠しておいて身軽な状態で行きましょう」

 

ツグミと迅はリュックサックを置くと静かに採石場の入口に近付いた。

 

「ジンさん、ここに車輪のようなものの跡があります。さっきの草が踏み潰されていた場所に着陸し、そこから真っ直ぐ進んで奥の方に入って行ったんでしょうね」

 

「だろうな。少なくともこの形跡は新しいものだから、この奥に誰かがいるのはまず間違いないだろう」

 

「こんな場所に来られるのは近界民(ネイバー)の艇だけでしょうし。ビンゴですね」

 

いくつもの状況証拠を集め、ツグミの知識と経験と頭の良さで導き出した答えは正解であった。

音を立てずに奥へと進んで行くと、真っ暗なはずなのにぼんやりと明るい。

 

[ジンさん、この先に大きな空間があってそこに艇があります。レーダーに反応しないということは、やっぱりバックワーム的なものを起動しているみたいですね。人型のトリオン体はありませんので、きっと生身のままだと思います。人数はわかりませんが、艇の大きさからして2-3人ってところでしょう]

 

ツグミは迅に内部通話で呼びかけた。

 

[それでこれからどうする?]

 

[相手を刺激しないように接触しなきゃなりませんが、どんな人物なのかわからないので慎重に行動しないと後で取り返しがつかないことにもなりかねません。もう少し近付いてみて様子を探りましょう]

 

ツグミと迅は光源のある方へと足を進めた。

すると少年の声が聞こえ、続いて成人男性の声が聞こえた。

会話の内容まではわからないが、大人と子供のふたりの男性がいるのは確かだ。

 

さらに近付いて行き、会話の内容がわかる場所にまで到達した。

どうやらこのふたりは父親と息子で、さらに母親もいるらしい。

そしてその母親の身体を心配するようなことを言っていて、彼女が病に伏せっているものと思われる。

 

[何だか想像していたのとずいぶん違うカンジです。病人がいるのなら早く病院に運んで手当をしないと ──]

 

[待て。逆に病人がいるなら彼らの扱いは難しくなる。俺たちはトリオン体でいるから問題はないだろうが、万が一彼らが何らかのウィルスに感染しているのであれば、彼らを外に出すことで民間人に感染させてしまうかもしれない]

 

[あ…]

 

[相手はどこから来たのかわからない近界民(ネイバー)だ。俺たちボーダーの使命は三門市民の生命と財産を守ることで、市民の利益を優先しなければならない立場にいることを忘れるなよ]

 

[はい…]

 

迅の言うことは正論である。

別に近界民(ネイバー)でなくとも外国からやって来た人間が入国を希望しても、その人物が得体の知れない病気に罹っているのであれば対応は慎重を期するものだ。

このケースは対象が近界民(ネイバー)であり、人類の敵だとされている相手である。

そうなると正しいかどうかは別として「社会の秩序や平穏という公共的な価値のために、個人の犠牲はやむをえない」という一般的な考えが浸透している社会で彼らを積極的に救おうとして賛同を得られるものではない。

それを頭に入れた上で行動しろと迅は言うのだ。

ツグミもバカではないから迅の言うことの意味は理解しており、彼の指示に従うべきであると判断した。

 

(ツグミは城戸さんや三輪のように近界民(ネイバー)に対する激しい憎しみを抱いていない。むしろ旧ボーダー時代からの友好的な交流を目指しているから、目の前に助けを求めている近界民(ネイバー)がいれば積極的に手を差し伸べるに決まっている。それが城戸さんとの確執を生み、さらにボーダーという組織にも大きな影響を与えるきっかけともなる。ここで対応を間違えてしまえば取り返しのつかないことにもなりかねない)

 

迅は自分が予知した未来で今後のボーダーにとって最善であると思われる道に進むようにツグミの行動をコントロールしようとしていた。

彼女の言動のひとつひとつが未来に影響するもので、それを迅が上手く導かないと「Bad end」どころか「Dead end」にもなりかねないものだから慎重にならざるをえないのだ。

こうして釘を刺しておけば()()()()は言わなくなると踏んで、迅は冷淡な言い方をしたのだった。

 

[ひとまず俺たちに敵意がないことを示し、平和的な話し合いに持ち込みたい。相手がトリガー使いではないとわかれば、こちらもトリガーを使わずに済む。だからツグミ、弧月は外しておけ。明らかに武器を持っているという外見だと向こうも警戒するだろうからな]

 

[了解です]

 

ツグミは腰の弧月を外して地面に置き、迅と一緒に歩き出した。

 

 

ツグミたちが目的地としていた場所は高さが20メートルくらいある広いホールで、その中央に近界(ネイバーフッド)の艇が停められている。

ボーダーで使用するものよりずっと小型の艇で、それもかなり旧式のものだということはツグミにもわかった。

そして艇のそばには30歳前後の褐色の肌を持つ男と、その男に良く似た顔立ちの少年がいる。

少年の歳は6-7歳といったところで、焚き火の番をしている男の隣でボールのようなものを転がして遊んでいた。

病気だと思われる女性の姿はないので、彼女は艇の中で休んでいるのだと思われる。

 

[ツグミ、行くぞ]

 

迅は柄にもなく緊張しているツグミの右手を握ると迅は大きく一歩を踏み出した。

 

暗闇の中から突然現れたふたり組に驚いた男性はとっさに少年を庇うように立ち上がり、ツグミたちに銃のようなものを向けた。

 

「それ以上近付くな!」

 

男はそう叫んでツグミたちを威嚇するように銃を1発撃つ。

それがトリガーでなく普通の火薬式の銃であることはすぐにわかったが、相手を追い詰めないようにツグミと迅は両手を挙げて立ち止まった。

 

「そう警戒しないでほしいな。俺たちは別にあんたたちを捕まえるつもりで来たわけじゃないんだから」

 

迅はさり気なくツグミを背中に隠すように1歩前に出て言った。

 

「俺とこいつはボーダーって組織の人間で、近界民(ネイバー)絡みの事件が起きたらそれを解決するのが仕事なんだ。あんたたちがこちら側の世界の人間に危害を加えないってことなら、俺たちもあんたたちをどうこうしようだなんて思わない。何か困っていることがあれば相談にも乗る。だから銃を下ろしてくれ」

 

「ならば今から確認する。そのまま手を挙げた格好でその場を動くな」

 

男は迅に言うと、少年に何か小声で話しかけた。

そしてその少年はツグミと迅の元に走って来てそれぞれの手に触れて訊く。

 

「おにいさんとおねえさんはぼくたちの()()? それとも()()()?」

 

少年の漆黒の瞳で見つめられ、ツグミは答えた。

 

「味方よ。わたしたちはあなたたちの敵じゃない」

 

「俺だって敵にならずに済ませたいと思っている」

 

迅ははっきりと味方とは言わないが、正直な気持ちを伝える。

すると少年はニコリと笑い、男の元に走って戻って行った。

そして男は少年から何か聞いたようで、銃を下ろした。

 

「おまえたちに敵意がないことはわかった。何か困っていることがあれば相談にも乗ると言ったな? 実は病人がいて困っているんだ。助けてくれ」

 

男の態度はさっきとは打って変わって低姿勢になった。

何らかの手段でツグミたちが敵ではないと認識したからだろう。

その手段が少年の行動に関わっているのは間違いないのだが、それを詮索するよりも病人の手当の方が先だ。

 

「俺たちは医師ではないから詳しいことはわからないが、とにかくその病人の様子を確認させてほしい。いざという時には上司に連絡して判断を仰ぎ、適切な対応をしたいと思う」

 

「わかった。病人は艇の中にいる。こっちへ来てくれ」

 

ツグミと迅は男に案内されて艇の中へ入った。

その中の居住室のベッドには20代半ばくらいの女性が横たわっていた。

熱があるらしく、彼女の額の上には水で濡らした手拭いのような布が置かれている。

 

「私はアマド。そして妻のパメラと息子のリーノだ。プラーヌスという国から来た。祖国で正体不明の病気が発生し、次々に人々が倒れていくものだから、私たちは国外へと脱出した。妻はしばらく前に発熱して咳や鼻水がひどかったんだが、一度は熱も下がって治ったと思ったのに3-4日くらい前からまた発熱してこんな具合だ。近界(ネイバーフッド)ではどうすることもできないために玄界(ミデン)まで来た。玄界(ミデン)では医療技術が発達していて、庶民でも医療を受けられると聞いた。何とかしてくれ!」

 

アマドが必死になって訴えた。

 

近界(ネイバーフッド)の国々はトリオンを根幹とした文明はこちら側の世界よりもはるかに進んでいるものの、他の面ではかなり劣っている。

特に一般市民の衣食住に関してはどれをとっても「貧しい」としか言いようがない。

それは近界(ネイバーフッド)の国々の国土の成り立ちや()()()をトリオンに依存している体質が原因であるが、とにかくこちら側の世界の100年以上昔の生活様式であるのは間違いない。

さらに様々な理由で戦争が絶えないから人々の健康的な生活など二の次で、病気に罹っても裕福な貴族や商人などの上級市民しか治療を受けられず、下級市民は何の手も施されずに死んでいくといったことは日常茶飯事なのである。

 

「ジンさん、わたしのリュックサックの中に医療キットを入れたポーチが入ってます。それを取りに行ってきますね」

 

「いや、俺が行って来る。おまえはここでこの人たちの話を聞いて自分にできることを考えておけ」

 

「わかりました。じゃあ、よろしくお願いします」

 

迅を送り出したツグミはパメラの様子を観察した。

彼女の額に手を置いて熱を測る。

 

(熱は…かなり高そう。38度くらいはあるカンジ。インフルエンザかな…? いや、素人が勝手に判断しちゃダメ。…ん? これって…発疹? 耳の後ろから顔にかけてブツブツが見える。ウィルス性の感染症だとすれば結構ヤバイかも。国外に脱出しなければならないほど深刻な流行になってるわけだし。医師でないわたしにできることは…)

 

 

その頃、迅は採石場の外に出て城戸に連絡を入れていた。

 

「城戸さん、近界民(ネイバー)を発見しました。だけどちょっと問題があって、そちらの判断を仰ぎたいと…」

 

迅は探していた近界民(ネイバー)がボーダーと交流が一切ない国からの亡命者であり、3人家族で母親が病気に罹っているということを伝えた。

城戸の顔は見えずとも苦虫を噛み潰したような表情になっていることは迅にもわかり、どのような指示をされるのかも想像がついた。

 

「その近界民(ネイバー)を採石場から一歩たりとも外に出すな。わけのわからない病気を持ち込まれては困る」

 

「それは承知しています。それでそれ以外の対応は?」

 

「おまえたちはそこから一刻も早く退避しろ。トリオン体なら感染することはないだろうから心配はいらないが、念の為に現在の身体は破壊して緊急脱出(ベイルアウト)した方がいいだろう」

 

近界民(ネイバー)は放っておくんですか? 俺たちふたりとも帰ってしまったら、彼らは艇を使って街へ出ようとするかもしれませんよ」

 

「坑道の入口を塞げばいい」

 

「そんなことをしたら彼らは ──」

 

「わかっている。しかしそんな近界民(ネイバー)は初めからいなかったことにすれば良いだけだ」

 

城戸は暗に「その近界民(ネイバー)を殺せ」と言っているのである。

たしかに同盟国でもない国の人間を助けなければならない義務はないし、三門市民の生命を危険に晒す可能性があるとなればその起因となるものを()()してしまおうと考えるのは当然のことだ。

しかしだからといって救えるかもしれない命を、さらに症状のないふたりの命を絶てと言うのはあまりにも乱暴で、さすがの迅でも素直に「了解」とは言えない。

 

「城戸さん、あんたの言っていることは無茶苦茶だよ。あんたひとりの判断でなく、忍田さんや林藤さんたちと相談して()()()()()()()として決めてからにしてくれ。俺は敵意のない近界民(ネイバー)を殺すのは嫌だし、ツグミにそんな指示はできない」

 

迅は城戸に逆らうことは滅多にないが、だからといって無条件に従うこともない。

今回の命令は明らかに非人道的なもので、城戸の個人的な恨みによる部分が大きい。

城戸もそこはわかっているらしく、それ以上は強く言わなかった。

 

「いいだろう。忍田たちを含めた上層部で話し合いをする。そこで決まったことなら従うのだな?」

 

「もちろんです。俺はボーダー隊員ですからね」

 

「ならば次の指示まで近界民(ネイバー)をそこに縛り付けておけ」

 

「了解です」

 

電話を切った迅は空を仰ぎ見て言った。

 

「これで少しは時間稼ぎができたわけだが、彼らにとっての明るい未来はまだ視えない。やっぱツグミがどう動くかで決まるんだよな…」

 

迅はツグミと自分のふたり分のリュックサックを担ぐと不安げな顔で戻って行くのであった。

 

 






この亡命近界民(ネイバー)のエピソードはご覧のとおりウィルスに感染している女性とその家族の話になります。
世の中が「COVID-19」で大騒ぎになっているところで、似たような病気の話を載せるのはどうかと思い、ストーリーを一部変えようかとも考えましたが、そのまま変更なしに投稿することに決めました。
このプロットは去年の連載開始当時から決めていたことで、オリ主の考え方や行動に大きく影響するエピソードとして重要なものです。
近界民(ネイバー)が感染する病気に罹っているという点がポイントになっているもので、近界民(ネイバー)の亡命理由を他のものに変えることができませんでした。
もしこの199話を読んでご気分を害した方がいらしたらお詫び申し上げます。
なおこの亡命近界民(ネイバー)のエピソードは次回も続きます。


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