ワールドトリガー ~ I will fight for you ~ 作:ルーチェ
遊真はヴィザとの戦闘を続けている。
レプリカ本体を修の護衛に回したため、彼の
ヴィザはというと遊真を足止めするためにのらりくらりと攻撃をかわしている。
さらに遊真の戦闘体からはトリオン漏れが相次ぎ、このままでは活動限界を迎えて負けとなってしまう。
「攻撃から多彩さが失われた。自律トリオン兵と離れたのは失敗でしたな」
ヴィザの言葉に耳を貸さず、遊真はちびレプリカに修たちの状況を訊く。
「レプリカ、オサムとチカは?」
〔ついさっきツグミが合流した。気にしなくていい。目の前の敵に集中しろ〕
ツグミの援護があれば安心とばかりに微笑む遊真。
しかしだからといって「最悪の未来」を回避できるとはかぎらない。
ただ自分のできることをやるだけだと気合を入れる。
〔この老人はおそらく敵の中で一番の使い手。しかも面倒なのはこの相手が我々に対し『足止めで充分』と考えていることだ。余裕のある相手を崩すのは難しい。こちらが欲を出せばその隙を突かれるぞ〕
「わかってる」
遊真は父・有吾の教えを思い出していた。
自分より強い相手と戦う時は勝とうとしてはいけない。
引いて守って時間を稼ぐことで、他の仲間が楽になる。
「弱い駒が強い駒の働きを止めてる」ことで、すでに戦果としては充分である、と。
自分の力を見極めて、自分にやれることをやる。
戦場で自分の力を見誤ると死ぬことになる。
それは遊真自身が4年前に身をもって経験したことだ。
「でも、勝ち目が薄いからって逃げるわけにはいかない。空間操作のトリガー使いが仲間にいるんだ、倒さないかぎりオサムやチカが危険な目に合う可能性がある。時間稼ぎで済ませられる敵じゃない」
遊真は父の教えに反し、徹底的に戦うことに決めたのだった。
◆◆◆
三輪はハイレインとの戦闘に有利に動いていた。
彼は
そして弧月での斬撃を加える。
しかし、魚型の弾の攻撃にばかり気を取られ、足元に忍び寄ったクラゲ型の弾には気付かなかい。
「!!」
三輪は左脚に何かぶつかったような感触を覚えた。
見るとちびレプリカが
「ちっ、失せろ。
〔戦いに集中しろ。おまえのためにやってるわけじゃない。謝意は無用だ〕
「豆粒が…」
三輪にとって全
しかし助けられたのは事実であり、今は「敵の敵は味方」として共闘するしかない。
そこにミラからハイレインへ通信が入る。
[ハイレイン隊長、女の方が来ました]
[わかった。
ハイレインの前に「大窓」が開く。
「逃げるのか、
「大窓」に入ろうとするハイレインに叫ぶ三輪。
「貴様の相手をしている暇はなくなった。こちらにもこちらの都合があるのでな」
「ふざけるな!!」
三輪は
「ちくしょう!!…っ、おい、豆粒。ヤツがどこへ行ったかわかるか?」
三輪がちびレプリカに訊く。
〔
ちびレプリカが嫌味を言う。
しかし続けた。
〔あの
「霧科を…?」
〔そうだ。彼女とオサムの行動の成否が未来の分岐点となっているのだ〕
「ちっ…」
三輪は舌打ちをすると、本部基地入口へと全力で走り出した。
◆◆◆
「爺さんはさ、自分より強いやつと戦ったことあんの?」
遊真がヴィザに訊く。
「はて…有利な相手、不利な相手なら覚えがありますが、真に己より強いか弱いかは勝負決してのち判ることでありましょう」
「なるほど、強いやつのセリフだ」
遊真は敵の強さを再認識し、さっと後退して姿を消した。
正攻法では太刀打ちできないと判断したのだ。
「撤退…ということでもなさそうですな。できれば向こうの決着がつくまでおしゃべりをしておきたかったが…向かって来るならば手は抜きますまい」
ヴィザは
警戒区域内であるから人的被害は出ないものの、軌道上にある建物はすべて斬られて瓦礫の山と化す。
遊真に隠れる場所を与えないようにをあぶり出すためだ。
〔今の私のサイズでは複合印や多重印を使うには時間がかかる。最初の蹴りで付けた
「わかってる。火力勝負にはつきあわない。…
姿を隠しながら敵の死角に移動するなど、奇襲攻撃に適しているといえよう。
遊真は地下道を通ってヴィザの真下から攻撃する。
「
「下か」
ヴィザは足元の遊真に気付き
「
予め仕掛けておいた弾を
しかしそれは
「ふむ…
「この野郎…」
強者の余裕で遊真の戦術を評するヴィザに遊真はムカついた。
再び遊真は
「どんどん近付けなくなるな」
〔こちらの動きに対応されている。もう一度策を練ろう。この相手は意識の外から攻めなければ勝てない〕
「…いや、たぶんそれでもだめだ」
〔…!〕
「揺さぶり合いじゃ勝負になんないのはわかった。このままじゃ時間とトリオンを削られるだけだ。勝負をかけるなら、技術とか経験とかとはちがうとこだろ。しかけはシンプルにして正面から最短最速で叩く。読み合いのポイントをしぼって相手を
〔勝算はあるのか?〕
「ないと思うか?」
〔…いや、それを決めるのは私ではない。ユーマ自身だ〕
遊真は頑丈なコンクリートの壁に
続いて
〔さすがに読んでいた…いや、備えていたというべきか、ブレードの軌道を一本だけ視界の外に広げていたのか。しかし即死は避けた。攻撃も届く。こちらの狙い通りの展開だ〕
しかしヴィザの斬撃で遊真の両脚は膝の部分で切り裂かれてしまう。
〔よし〕
戦闘体を失ったが遊真は勢いそのままでヴィザめがけて飛んで行く。
ヴィザは遊真が生身で特攻してきたものだと勘違いをして、一瞬だけ反応が鈍った。
さらに
遊真が自身の戦闘体を斬らせたのは、この重石をつけるためだったのだ。
「
遊真は
しかし遊真の
だから戦闘体を解除しても生身にはならず、トリオン体であるから攻撃は可能である。
ヴィザはそのことを知らなかったために「生身での攻撃ではトリオン体である自分を倒すことはできない」と高を括っていた。
よって遊真の行動に反応できなかったのだ。
「…やれやれ、これだから戦いはやめられない」
戦闘体を破壊されたヴィザは、戦闘体を失いながらも仲間の危機にかけつける遊真の背中を見ながらハイレインに連絡する。
[申し訳ありません…。突破されました。…ご安心を。
ミラと合流したハイレインはヴィザが負けたことを知り焦りだした。