ワールドトリガー ~ I will fight for you ~ 作:ルーチェ
アフトクラトルの遠征艇が消えると同時に空を覆っていた雲も消え去り、三門市上空には青空が戻ってきた。
重傷を負った修を真っ先に見つけたのは遊真で、続いて現れた米屋と出穂に手伝ってもらい修は本部基地の医務室へ運ばれた。
キューブ化されたツグミは研究室へ持ち込まれ、諏訪の時と同じように復活。
ツグミは直ちに千佳のキューブを隠した民家へと向かってキューブを回収し、さらに彼女が倒したラービットからこぼれ落ちたC級たちのキューブも全部回収して本部基地へと運び、彼らを次々に復活させていった。
人型は去ったものの、残されたトリオン兵は依然として街を破壊し続けていた。
トリオン兵は市内各所に散らばっており掃討作戦は難航していたものの、次々と投入される隊員のおかげで次第に数を減らしていく。
そして迅とヒュースの戦いにも終わりがやって来た。
[人型
栞からの通信が入り、安心した迅は脱力して仰向けに倒れ込んだ。
「くあ~~~~~~~っ。もう大丈夫だ」
「貴様…!!」
それを見ていたヒュースは唖然とし、続いて怒りがこみ上げてきた。
迅にとって「大丈夫」ということは、ヒュース側から見れば「都合が悪い」ということになる。
ずっと足止めされ続け、他の人型がどうなったのかまったくわからない状態だったのだからイライラがMAXとなっている。
それで迅の態度が緊張感の欠片もないのだから怒るのも当然だ。
「足止めして悪かった。おまえをフリーにすると、うちの後輩たちがヤバかったんだ。…けどたぶん、おまえ、
「…!」
「もう俺たちが戦っても意味はない。投降しろ。悪いようにはしない」
「……」
ヒュースにとって選択肢はたったひとつしか残っていなかった。
◆◆◆
日が沈んでしばらくすると、防衛隊員が三々五々と帰還してきた。
誰もが疲れきった顔をしており、勝利に浮かれている者は誰ひとりとしていない。
本部では6人もの死者が出て、30人を超えるC級隊員が行方不明であることを知っているのだ。
当然ツグミもその中のひとりであり、さらには修が重傷を負ったこともあって沈んだ顔をしている。
「霧科」
ツグミの名を呼ぶ声がして、ツグミは声のした方を向いた。
「三輪さん…」
ツグミは三輪の風刃が自分と修の危機を救ったのだと聞かされていたので、彼の前に駆け寄ると頭を下げた。
「さっきはどうもありがとうございました。三輪さんのおかげで ──」
「おまえたちのためにやったことじゃない。それよりも手を出せ」
「あ、…はい」
素直に右手を出すと、三輪はツグミの手のひらの上にちびレプリカを載せた。
「これは…!」
「心ならずもこいつには助けられた。突然動かなくなったが、いちおう返しておく。あの
それだけ言うと三輪は立ち去ってしまった。
ツグミはちびレプリカを握り締めながら三輪の姿を見送っていたが、何かを思い出したかのように慌てて本部基地の外に飛び出した。
向かったのは最後の戦いが繰り広げられた場所。
そしてそこには彼女の想像していた通りに遊真の姿があった。
「ユーマくん…ここにいたのね?」
瓦礫の山をかき分けながらレプリカの姿を探している遊真にツグミは声をかけた。
そしてその声に振り向いた遊真の声はあまりにも弱々しい。
「きりしな先輩…」
「オサムくんの病院へは行ってきた?」
「うん。チカとレイジさんととりまる先輩と一緒に行ってきた。しばらくの間、目が覚めないそうだから、おれだけ戻ってきたんだ」
「レプリカを探しているのよね? これ…」
ツグミはちびレプリカを遊真に渡した。
「わたしが三輪さんの援護を頼んでいて、このコのおかげで風刃を正確に撃つことができたみたい。わざわざ返しに来てくれたのよ、あの
「…そうか」
「わたしもレプリカを探すのを手伝いんだけど…仕事がまだ残っているの。明日も午後から防衛任務があるから…」
「レプリカを探すのはおれひとりで大丈夫。先輩もいろいろ大変だったようだから、無理しないで休んでよ」
「ありがとう、ユーマくん。あなたも適当な時間で切り上げて玉狛へ帰るのよ。みんなが心配するからね」
「りょーかい」
ツグミは遊真のことが気になったが、後ろ髪を引かれる思いでその場を離れるしかなかった。
◆◆◆
民間人の死者0名、重傷者22名、軽傷者68名
ボーダー関係の死者6名(すべて通信室オペレーター)、重傷者4名、行方不明者32名(すべてC級隊員)
対
これは迅のサイドエフェクトによっていくつか示された予知の中で最高から2-3番目のものであったという。
A級やB級が捕まったり、民間人に死者が出る
しかし多大な犠牲が生じたのも事実。
ツグミを庇って大怪我をした修の意識が戻るまで一週間もかかることになる。