ワールドトリガー ~ I will fight for you ~   作:ルーチェ

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242話

 

 

ツグミはクロスバイクを走らせてボーダー本部基地へと向かっていた。

 

(約束の時間は一二四五時から一三〇〇時までの15分間。1分たりとも無駄にはできないんだから急がなきゃ!)

 

ゼノンたちの遠征艇を出て一旦玉狛支部に戻ったツグミは次の段階へと進むために城戸との面会を考えた。

しかし本部総司令という肩書きを持つ城戸は非常に忙しい人物であり、確認をした結果面会できるのは12時45分から13時までのたった15分しかなかったのだった。

その後だと3日後の朝一でなければ無理だとわかったものだから、ツグミは本部基地へと全速力で走っているのである。

15分だけでは城戸を説得するの不可能であっても彼女の行動目標と動機を伝えることはできるだろう。

忍田については夕食後にでも本部長と隊員という立場で話をすれば良いと考えていた。

 

(だけど真史叔父さんって本部長の時でもわたしに接する場合は父親7:本部長3の割合だから、こんな話をすれば父親10割になって全力で反対するんだろうな…)

 

 

 

 

ツグミがボーダー本部基地の隊員専用通用口に到着したのは12時半を過ぎていて、本部司令執務室まではまだかなりの距離があった。

ここで大規模侵攻の時の忍田のように外壁を駆け上がるというショートカットができれば良いのだがそれをやると城戸の眉間のシワが深くなるので諦め、通常のコースを行くことにした。

そして本部司令執務室のドアの前にたどり着いたのは12時45分ピッタリで、息を整える暇もなくドアの向こうにいる城戸に声をかけた。

 

「霧科ツグミ、参りました」

 

「入れ」

 

城戸に促されて中へ入ると、ツグミの目に入ってきたのは執務机を挟んで会話をしている城戸と迅の姿であった。

それを見たツグミは一瞬で理解した。

 

(たぶんジンさんが自分の視た未来を城戸司令に話し、わたしの話をふたりで聞こうというんだわ。忍田本部長がいないのはあの人だけ忙しくて同席できなかったのか、もしくはあの人が加わると話が15分で終わらないと判断したからだろうな)

 

そんなことを考えながら前に進み、城戸の前に立った。

 

「お忙しいところ申し訳ございません。あまり時間がありませんから単刀直入に言います。近界(ネイバーフッド)へ行く許可をください」

 

「「……」」

 

ツグミの言葉に城戸と迅はほぼ無反応であった。

わずかに城戸の眉がピクリと動いたくらいで、本来ならもっと驚いたような反応があってしかるべきなのだが、これこそ前もって迅から話を聞かされていた証拠であろう。

 

「近いうちにキオンの遠征艇が近界(ネイバーフッド)へ発ちますので、その時に一緒に連れて行ってもらおうと考えています。近界(ネイバーフッド)…キオンとアフトクラトルへ行きたいんですが、いかがでしょうか?」

 

すると城戸は迅の顔をちらりと見てから大きくため息をついた。

そして顔の大きな傷跡を指で摩りならが言う。

 

「おまえのことだから計画は万全で、近界民(ネイバー)たちへの根回しは済み、残るは私たちボーダーの上層部の理解と許可を得ることだけになっているのだろうな」

 

「はい。そこまでおわかりならお許しがもらえないとわたしが何をするかもご承知なんでしょうね。鳩原さんのように密航するようなことになってしまったらお互いに損をするだけですから、ここは城戸司令のボーダー隊員への任務として命令していただくのが一番良いかと思います。まずはわたしの話を聞いてください」

 

ツグミはキオンへ行く理由とキオンへの途中でアフトクラトルに立ち寄り、エリン家当主と面会をして彼とヒュースをボーダーの味方にするという内容を説明した。

アフトクラトル遠征の問題を解決するのが緊急課題であるから、その先の彼女の「壮大な夢」についてはまだ秘密である。

城戸たちにとってアフトクラトル遠征で現地に到着してからのヒュースの()()が争点になっていた。

場合によっては「消す」ことも選択肢のひとつにあるのだから、ここでツグミが動いてディルク・エリンとその家族をアフトクラトル遠征前にボーダーで確保してしまえばヒュースを駒として利用できるという点に興味を持つのは当然である。

彼女のシナリオは非常に良くできているが、それはキオンの元首との会談が成功することが前提である。

それに彼女がキオンへ行くことができても帰還することができるとは限らない。

彼女がキオンで捕らわれてしまえばエリン家の亡命も叶わないのだ。

その点を城戸に論及されるが、ツグミは平然と答えた。

 

「現時点ではキオンの元首がどのような人間かわかりませんから対応に苦慮するかも知れません。ですがゼノン隊長たちの話の断片から判断すると考え方が非常に合理的で、視野が広く仕事に私情を持ち込まないタイプのようです。ゼノン隊長たちが()()()()()()()帰還したとなれば大歓迎で会ってくれるでしょうし、そこでわたしの話を聞けばその内容を無視することはできないと思います。そして使()()()()()()(ブラック)トリガーにこだわるよりも、はるかにキオンのためになる道があるとわかればそちらを選ぶはずなんです。そして最悪の事態に陥った時にはどんな手を使ってでも帰還する覚悟と『最終手段』がここにありますから」

 

そう言ってツグミは自分の胸に左手を当てて言った。

その時に腕時計をチラリと見て時間切れであることに気が付いた。

 

「これだけの話ですぐに答えが出るものではありません。時間切れのようですから、城戸司令のご都合のよろしい時にわたしを呼び出して続きの話を聞いてください。早朝でも深夜でも動けるように待機していますので。忍田本部長には今夜にでも話をしておきます。お忙しい中、貴重なお時間を割いていただきありがとうございました」

 

時間がないということで自分の言いたいことだけ言っておしまいにしようとしてのだが、城戸の返答は彼女の想定外のものであった。

 

「ちょうどいい、この後の遠征会議におまえも出席しなさい。その会議には忍田も出席する。さすがにあの男でも会議の場でおまえとの父娘関係が露見するような馬鹿なマネはせぬだろう。本部長としての立場で意見を言ってくれるだろうからおまえにとっても都合が良いのではないか?」

 

これは城戸が上層部のメンバーの出席する会議に正式な案件として上程することを勧めているもので、少なくとも城戸()()は賛成ではないまでも反対はしていないと思える。

彼の立場であればひと言「却下だ」と言えば終わりにできるものだが、それをしないのだから半ば認めているように感じられるが実際はそうではない。

ここで彼が総司令の命令で却下してもツグミがおとなしく引き下がらないことを承知していて、上層部の会議で席上の人間を説得することができないなら諦めろと圧をかけているのだ。

ツグミも城戸の意図がわかるものだから、心の準備はできていないものの挑戦することにした。

 

「はい、わかりました。得難い機会を与えてくださってありがとうございます」

 

 

 

 

会議室には忍田、根付、鬼怒田、唐沢、林藤といった上層部の面々がいた。

そこに城戸が迅とツグミを連れて姿を現したものだから、事情を知らない者たちは彼女が訓練のアドバイザーを務めていた関係での出席だと勘違いをしているようだった。

しかしあえて否定するのもおかしいので、ツグミは末席に腰を下ろして会議の様子を黙って見守ることに決めた。

 

会議はそれぞれの担当分野での仕事の進捗具合を報告会のようなもので、1週間に1回開かれるものである。

問題が発生したらこの場で話し合うことになっていたが今のところ特に問題は起きておらず、通常ならこれで会議は終了となるはずだったが、城戸が解散の宣言をする前に立ち上がって言った。

 

「予定にはなかったことだが、ひとつ新規で審議したい案件があるので少し時間をくれ」

 

そして続けた。

 

「なお、これは極秘扱いである。ここでの話は口外しないでくれ」

 

皆が黙って頷くと、それを合図にツグミがすっと立ち上がる。

そこでこの会議に彼女がなぜ出席していたのかを誰もが理解したのだった。

しかし彼女の話の内容までは想像もできずにいて、本人の口から近界(ネイバーフッド)へ行って様々な「工作」をしようと考えている旨を聞くと各人がそれぞれの立場と彼女の計画を突き合わせて様々な反応を見せた。

まず忍田が立ち上がって激しく反対した。

 

「そんな計画が認められるはずがないだろ!? おまけにおまえをさらうためにやって来たキオンの連中の手を借り、あまつさえ奴らの国へ行くなど…絶対に私は認めん!」

 

「ですがこの計画が成功すればアフトクラトル遠征に参加する隊員たちにとって ──」

 

「成功すれば、だろ? しかし成功するとは限らず、おまえひとりにそんな危険な仕事を任せるわけにはいかない。アフトクラトルへ行ってエリン家当主に亡命を促すのは良い案かも知れないキオンの連中に協力を求めるのは見当違いだ」

 

「つまり忍田本部長はキオンの人たちの手を借りなければ問題はないとおっしゃるのでしょうか?」

 

「…あ、ああ…そういうことになるな」

 

「ですがわたしに限らずボーダーの人間にとってアフトクラトルは未知の国で、現地の情報はほとんどありません。ですがゼノン隊長たちは何度か潜入しており、ベルティストン家の城下町についても詳しいですから案内人として相応しい。いえ、彼らの協力がなければアフトクラトルでの工作が上手くいくかどうかわかりません」

 

「ならば初めからやらなければいい」

 

「そう言われてしまっては身も蓋もないです。それにわたしだって自分が危険な目に遭うのは嫌ですから、勝算のない戦いに挑むつもりはまったくありませんよ。それに万が一わたしがキオンで拘束されたとしてもボーダーに実害はありませんし、アフトクラトルへの遠征は()()()計画どおり行えば良いだけです」

 

忍田は事あるごとにツグミをボーダーに入隊させたことを後悔していた。

特にこの数ヶ月間は彼女の身にいろいろなことが起きたものだから、その度に自分を責めていた。

そして本人の意思を尊重するとして現状維持でいたのだが、さすがに自分の身を危険に晒してまでボーダーのために働く ── ツグミ本人にとっては「自分のため」である ── ことを見過ごすわけにはいかない。

 

「勝算があるとかないとかは関係ない! 私の目の届く範囲での行動ならまだしも近界(ネイバーフッド)へ行くなんてことは絶対に許可できるはずがないだろ!」

 

「ええ、忍田本部長の許可はもらえないと思っていました。ですが今のわたしはS級隊員で、わたしに命令できるのは城戸司令のみです」

 

「うっ…」

 

「もっともわたしに近界(ネイバーフッド)へ行く命令が下されたとしても保護者の承諾がなければ不可能だということは重々承知しております。そちらは家に帰ってから時間をかけて説得するつもりです。…それにしてもボーダーの本部長ともあろう方が組織の利益よりも隊員個人の身の安全を優先するなんて甘い考えの人だったんですね?」

 

「なんだと?」

 

「たしかに隊員の安全を最優先に考えるのは当然なんですが、32名のC級隊員を救出に30名近くの隊員・職員を派遣する遠征と、たったひとりが裏工作をする隠密作戦のふたつを天秤にかけたらどちらに重きを置くか…考えるまでもないでしょうに」

 

忍田が本部長であろうと父親であろうと彼女のことを心配するのは当然のことで、人数の多いとか少ないとかは関係ない。

小を切り捨てて大に就くことが当然であると訴えているが、もちろん彼女自身それを正しいとは思ってはおらず、これはツグミによる精一杯の抵抗なのだ。

父親としての忍田の許しをもらうのはかなり難しいことは彼女自身承知しているから、せめてボーダー本部長としての忍田からは認めてもらわなければこの先の予定が大きく狂ってしまうだろう。

 

ツグミが次の手をどう打つか考えていた時だった。

そこに彼女にとっての救世主が現れたのだ。

 

「忍田さん、俺が一緒に行きますよ」

 

その場にいた人間全員がその声の主の顔を一斉に見た。

 

「ジンさん…本気、ですか?」

 

ツグミが信じられないといった顔で迅を見た。

 

「ああ、もちろん。俺はおまえが無事に帰って来る未来が視えたから心配はしていないんだが、ここで俺が一緒に行ったら忍田さんも安心して許してくれるんじゃないかな、って。忍田さんも俺がいれば心配いらないでしょ?」

 

「それは…」

 

忍田は口ごもるが、少し考えてから答えた。

 

「おまえが一緒に行くというなら認めるしかなかろう。ただしツグミは未成年で保護者の承諾がなければ近界(ネイバーフッド)へ行くことはできないぞ」

 

「わかってますって。今夜にでも彼女の家に行って一緒に談判しましょうか。彼女の叔父さんは彼女を溺愛していますが物わかりの悪い人ではありませんから大丈夫ですよ、きっと」

 

「……」

 

ツグミが忍田の姪であり戸籍上は父娘であることを知っている人間からは苦笑の声が漏れ、慌てて口を閉じた者もいた。

そして城戸が表情を変えずに言う。

 

「忍田本部長の考えはわかった。…誰か意見はあるか?」

 

唐沢、鬼怒田、根付の順で意見や質問を受け付け、ツグミはそれのすべてに丁寧に答えた。

ハイリスクではあるがハイリターンでもあるためすぐに賛成とはいかないが、迅の未来視(サイドエフェクト)によって彼女の身の安全は心配ないというのだから、彼女の計画に賭けてみようという気にはなる。

そして最後に城戸が立ち上がって意見を述べた。

 

「私は彼女の計画を支持する。現時点での最優先事項はアフトクラトルにいるC級隊員を全員無事に連れ戻すことであり、そのために役立つことであれば多少の危険や犠牲があってもやるべきだと思う。もちろん近界(ネイバーフッド)、それもキオンという未知の国へ赴くふたりの隊員の安全が第一だが、冒険をしなければ手に入らないものもあるのだ。本人たちがやりたいと言っている以上、私はふたりの希望を叶えたい。…ここでこの案件に対しての賛否を確認したい。賛成の者は起立を」

 

着席していた参加者は全員立ち上がり、忍田も渋々だが賛成の意思を示した。

結局全員賛成という形でツグミの計画は進められることとなった。

もっとも忍田は()()()()()絶対に許さないつもりでいるから、ツグミにとってここから先が正念場なのである。

 

 

◆◆◆

 

 

会議室を出たツグミは迅と並んで廊下を歩いていた。

 

「ジンさん、さっきはどうもありがとうございました。一緒に行ってくれると言った時の忍田本部長の顔、驚くというよりも困ったといった感じでしたね。『おまえひとりにそんな危険な仕事を任せるわけにはいかない』と言ってしまった以上、ふたりになったなら反対する理由がなくなっちゃいますもんね」

 

「まあな。だがあの人の気持ちもわからなくはないからな。もし本部長ではなく一隊員だったら間違いなくおまえと一緒に行くと言い出しただろう。俺みたいに」

 

「そうでしょうね。…でもジンさんがいなくなると遠征計画に影響が出るんじゃないですか? キオンまでの往復でどれくらいの時間がかかるかわかりませんけど、近界(ネイバーフッド)にいる間に重要なことが視えても連絡の手段がありませんよ」

 

「それはそうだが、アフトへ行くには少なくともあと2ヶ月はかかる。その間に戻って来て伝えても間に合うだろ。それよりもアフトとキオンでの交渉を上手く進めることで遠征が楽になる方が重要だ。おまえひとりに任せておいても大丈夫だが、俺が一緒にいた方がスムーズに事が運ぶ。そうすれば早く戻って来られて忍田さんも安心する。いいこと尽くめじゃないか」

 

「言われてみればそうですね。…それと城戸司令の反応が意外で少し驚きました。わたしが近界(ネイバーフッド)へ行きたいと言えば賛成3で反対7くらいの割合で却下されると考えていたんです。これってジンさんが前もって視えたわたしの未来のことを説明しておいてくれたからじゃないんですか?」

 

ツグミが訊くと、迅は意味深な目で答えた。

 

「城戸さんは個人的な感情で物事を判断する人じゃないからな」

 

「つまりわたしの計画は成功するから近界(ネイバーフッド)へ行く許可を出してくれって頼んでくれたんですね?」

 

すると意外な答えが返ってきた。

 

「いいや、成功するとは限らない」

 

「え?」

 

「俺にはふたつの未来が視えた。ひとつはおまえが言うように交渉が成功して、アフトへの遠征部隊が万全の状態で出発できる未来。もうひとつはキオンでの滞在時間が予定よりも延びてしまい、ボーダーが遠征を先延ばしにできなくておまえの帰還を待たずに出発してしまう未来だ。後者だとおまえは無事で戻って来るが、俺は…いや、何でもない」

 

迅は歯切れの悪い感じで口を閉じた。

するとツグミが彼の心の内を察して言う。

 

「もしかしたらわたしと二度と会えなくなる…なんていう最悪の未来だったんじゃありませか? わたしにも不安な未来が視えていたんです。ここでわたしたちの心にすれ違いが生じてしまったら二度と会えなくなるという未来が。もしあなたがわたしの計画に反対をして、わたしが無理矢理にでも近界(ネイバーフッド)へ行ってしまったら最悪の未来が実現してしまう。だから絶対に説得しようと決めて本部へ来たんですよ。わたしのことであなたに不安な気持ちにさせてしまってごめんなさい。でもわたしはあなたのことが大好きだから絶対にあなたが哀しむようなことはしないって約束します」

 

「ツグミ…」

 

ツグミの瞳に自分の姿が映っているのを見た瞬間、迅は彼女を愛おしげに抱きしめた。

そして耳元で囁くように言う。

 

「俺も約束するよ。おまえのことは俺が必ず守る。だからおまえは自分の信じた道を行け。俺はその隣に必ずいるから大丈夫だ」

 

「ありがとう、ジンさん。…あっ!」

 

突然ツグミは何かを思い出したかのように声を上げ、迅から離れて言った。

 

「大事なことを忘れていました。ジンさんが一緒に行くとしてもゼノン隊長たちに訊かないと。艇の定員もありますし、わたしたちが勝手に決められることじゃないですよ」

 

「それは問題ない。快く…とまではいかないが、俺が加わることであいつらにもメリットはあるから断りゃしないさ。それに俺も事前にアフトの調査ができれば後々役立つから、少しくらい無理をしてでも行きたいんだ」

 

「そうですね、今のところ遠征に参加するメンバーで現地のことを知っているのはヒュースだけで、彼が着いたとたんに離脱してしまう可能性もまだ残っているわけですから。それにジンさんが現地の市民の顔を見ることで未来が視えるようになる確率も高まります。…あ、城戸司令が協力的だったのはそれもあるんじゃないですか? わたしが着く前にいろいろ根回し済みだったとか」

 

すると迅はドヤ顔で言う。

 

「当然。…だけど城戸さんもおまえがとんでもないことをやろうとしてるって薄々は感じていたみたいだぜ。俺が話をしたらあの人、何て言ったと思う?」

 

「…?」

 

「『ツグミのやることに何から何まで驚いていたら身が持たない』だと。そして『あの子は見た目こそ母親に似ているが、性格や行動パターンは父親の織羽にそっくりだ。放っておけば何をしでかすかわからないはねっ返り娘だが、リードを付けたところでおとなしくなるものでもない』とも言っていた」

 

「あー、ひどい言われようだこと。でも仕方がないのよね…。身から出た錆と言うか、自分で蒔いた種だし。だけど城戸司令が味方になってくれたのは結果がボーダーのためになっているからで、今回のことも遠征に役立つって判断をしたからなんでしょうね。とにかく正式の場で審議して賛成多数となったわけだから、いずれ城戸司令からの正式な任務として出発することができそう」

 

「まだ難関が残っているが、その顔だと忍田さんを説得する名案がありそうだな?」

 

「ええ。そこで今夜の夕食にジンさんをご招待します。その後に真史叔父さんの『攻略作戦』を行いますので協力してください」

 

ツグミが意味ありげな目で迅に言う。

 

(何か悪いことを企んでいるな、これは。だけど自信あるって顔だ)

 

迅がそんなことを考えていると、ツグミが続けた。

 

「別に何か特別なことをしてくれと言うんじゃありません。わたしの隣にいてわたしのやることに合わせてくれるだけでいいんです。…それじゃあまずゼノン隊長たちのところへ行きましょうか」

 

 

 

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