ワールドトリガー ~ I will fight for you ~   作:ルーチェ

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287話

 

 

「雨取隊員の試験についてですが、わたしに提案があります」

 

ツグミはそう言って説明を始めた。

 

「わたしの見た感じでは()()彼女だとまだ誰かを撃てばその人か、または別の人に責められるという気持ちがゼロになったとは言い切れません。それに彼女は追い詰めれば撃つんですが、その追い詰め方が撃たなければ不合格というのではあまり意味はなく、撃たなければ仲間が死ぬという差し迫った状況でないと彼女は撃てそうにないんです。だったらもし撃たなければ自分が死ぬという状況になったら彼女はどうするのか気になりませんか?」

 

「撃たなければ自分が死ぬという状況?」

 

「…たとえば三雲隊長、空閑隊員、雨取隊員の3人の玉狛第2に対してわたしと迅隊員のふたりの即席部隊(チーム)で模擬戦をします。玉狛第2はこの試合に負けたら3人とも遠征に参加できないということにしておきます。ここで絶対に負けられないというプレッシャーを与えるんです。オペの支援はなし。ノーマルトリガーだけというルールで、もちろん鉛弾(レッドバレット)緊急脱出(ベイルアウト)は使えません。彼女は三雲隊長と空閑隊員の援護のためにバッグワームで姿を消して狙撃地点で待機するでしょう。そこにわたしはバッグワームを使って真っ直ぐに彼女に近付きます。ある程度まで近付いたところで姿を現しますが、その時点では三雲隊長と空閑隊員の助けは間に合いません。そうなると彼女はわたしを撃つしか身を守る手段はないんです」

 

「……」

 

「仮に彼女が落ちても三雲隊長と空閑隊員がわたしと迅隊員をふたりとも倒せば部隊(チーム)としては勝ちになりますが、いくら空閑隊員がA級レベルでもひとりでA級レベルの隊員ふたりを相手にするのは難しい。特に三雲隊長を守りながらではかなりきついでしょう。撃たなければ自分が死んでチームメイトを不利な状態に陥れてしまうと追い詰めてやるんです。チームメイトが死ぬかも知れないとなれば撃つんですから、自分が死ぬ状態で撃てるかどうか確認してみたいものです。本来なら追い詰められなくても自分で撃つタイミングかどうか考えて戦わなければいけないんですけどね、ハァ…」

 

ツグミは大きくため息をついた。

誰にも彼女のため息の意味はよくわかっている。

玉狛第2…修と千佳は本来なら近界(ネイバーフッド)遠征に参加できるレベルの隊員ではない。

修は実力が伴わないのに迅と遊真の活躍で、千佳はC級だと緊急脱出(ベイルアウト)が使えないという理由でB級に昇格()()()()()()()のであって実力で勝ち得たのではないのだから。

そしてA級レベルの遊真をチームメイトにしたことでB級ランク戦を勝ち抜いてきたが、上位グループでの初戦でその力不足が露見してしまう。

すると周囲の先輩たちがいろいろと面倒を見てやり、小手先の技を覚えるだけで根本的な問題の解決には至っていない。

おまけにヒュースを仲間に加えるという裏ワザを使ってやっとのことでB級2位になったが、この結果は実戦では何の意味もないことなのに自分たちは強くなったと大きな勘違いをしている。

その場にいる男たちは数々の戦場で実戦を経験した戦士であるからこそ彼女の気持ちがよくわかるのだ。

実戦経験がすべてではないが、いざという時には自分と仲間の命を守るために敵を殺すことができるというくらいの覚悟がない者は近界(ネイバーフッド)へ行くべきではない。

 

「ツグミ、俺はおまえの案に賛成する。ノーマルトリガーで2対3ならメガネくんたちも本気出してくるだろう。千佳ちゃんも自分が殺られるとなれば撃たざるをえなくなるだろうし、撃つことができればひとまず安心だ。忍田さんはどう思う?」

 

迅から意見を求められた忍田だが、彼もまた賛成のようだ。

 

「私もいいと思う。模擬戦で撃てないなら実戦で撃てるはずがない。ツグミの言うようにクリアできたのはプログラミングされた『人型近界民(ネイバー)を模した物体』を撃つところまでだからな。B級ランク戦でも最終戦ですら得点のチャンス撃つことができず、最後の最後に撃つことは撃ったがそれも三雲くんが危うい状況だったからと言えばそれまでだ。自分のピンチに撃てるかどうかは重要なことで、それを確かめるにはちょうどいいかも知れないな」

 

「他に意見のある方はいらっしゃいますか? …では雨取隊員の試験は模擬戦形式で撃てるかどうかで合否を判断することにします。なおこの模擬戦は本隊最終訓練の前に行いたいですので、20日の火曜日の午後でいかがでしょう? さっき調べたところ20日は玉狛第2に防衛任務は入っていませんので、学校が終わった放課後に本部基地まで来てもらって行いたいと思います。本部長、よろしいですか?」

 

ツグミはこうなることを想定して玉狛第2のスケジュールを調べておいたのだ。

 

「いいだろう。私も今のところは夜の幹部会議まで予定は入っていない。審判を務めさせてもらおう」

 

「どうもありがとうございます。…あ、そろそろ夕食の時間ですので会議をおしまいにしましょう。必要とあらばボーダーの広報番組を一緒に見た後に続きを行いますけど、どうしますか?」

 

「今日のところはこれくらいでいいだろう。もし何か名案があれば改めて会議をするが、特になければ詳細はツグミに一任しようと思う。どうだ?」

 

「はい、わかりました。では以上でアフトクラトル遠征部隊の最終試験内容についての会議をおしまいにします。みなさん、お疲れさまでした。このあと一九〇〇時から夕食になりますので、各自担当部署に就いてください」

 

「了解!」

 

迅、ゼノン、リヌス、テオ、そしてヒュースまでもがツグミの号令に従い、一斉に自分の役割を果たすために行動を開始した。

 

「あ…」

 

その様子を忍田は呆然と見ているだけである。

 

「忍田本部長、あなたはお客様なのでみんなの邪魔にならないように部屋の隅っこにいてください」

 

「わかった…」

 

そして忍田は部屋の隅で迅たちが長テーブルの配置を変えて並べたり、ヒュースがホワイトボードを片付けている様子を見ながら考えていた。

 

(ツグミのヤツ、これだけの男たちを顎で使っているのか…? 集団のリーダーなど自分の性に合わないなどと言っていたが、やはりこうして見ているとその才能は十分にある。いずれはボーダーの幹部として働いてもらいたいと思うが、その時にやる気になってくれるといいんだがな…)

 

 

◆◆◆

 

 

忍田を交えて合計9人での賑やかな夕食となった。

その光景は忍田に最上たちが生きていた旧ボーダー時代の日々を思い出させた。

様々な年齢の男女がひとつの目的に向かって共同生活を送っていた彼らの「日常」を崩壊させたのは近界(ネイバーフッド)遠征であった。

今また激しい戦いを前提とした遠征が行われようとしていて、その悲劇を繰り返さないようにと頑張っているのが自分の娘であると思うと目頭が熱くなってしまう。

 

(あれから5年以上経ったというのに、ボーダー(私たち)はまだ若者を死地へ送り込むようなことをしている。おまけに有吾さんや織羽義兄さんの遺志を正しく継いでいるのは直接託された私や城戸さんや林藤ではなくツグミで、私たち大人は子供たちのために何をしてきたというのだろう…?)

 

旧ボーダー時代はメンバー全員がこちら側の世界の人間だったが、今ここにいる9人のうち6人が近界民(ネイバー)である。

それもキオンとアフトクラトルという近界(ネイバーフッド)の二大軍事国家の人間だ。

本来なら敵対し合う国同士の人間が一同に集い、こうして和やかに食事をしている光景はまさに有吾と織羽が願った本来のボーダーの姿で、3つの国を結びつけたのがツグミの強い意思と行動によるもの。

この流れを止めなければボーダーは現在の界境防衛のみの組織ではなくなり、さらに近界(ネイバーフッド)の進んだトリオン文明を導入した産業革命が起きるかも知れない。

 

(それは素晴らしいことのように思えるが、ボーダーという民間の一組織が近界(ネイバーフッド)の技術を掌握するとなれば今まで以上に諸外国から注目されることになる。単に注目されるだけならいいが、またスパイの潜入や隊員・技術者(エンジニア)を拉致などトラブルに巻き込まれる機会が増えるだろう。単純に喜んでばかりはいられない。ツグミはそのことに気付かないような馬鹿じゃない。なんらかの考えがあって動いているのだろうが、私たちはまだこの子に頼ろうとしている。この子がまた名案を出して上手く解決してくれることを期待してしまっているのだ)

 

不甲斐ない大人たちのせいで子供たちを死なせたり、生き残った者にも心に一生残るほどの深い傷を負わせてしまったと忍田は思い込んでいる。

実際5年前の遠征で未成年者に犠牲が多く出ているが、その誰もが行きたくもない近界(ネイバーフッド)へ連行されて戦闘を強要されたのではない。

どの隊員も自分の意思で遠征参加を決め、自分の大切なものを守るために命を散らせただけ。

生き残った誰かが意図して彼らを死に至らしめたのではない。

それなのに生き残った人間は彼らの死を自分のせいだと決めつけて自らを追い詰める習性がある。

ツグミから見れば忍田の()()申し訳ないという気持ちは非常に愚かなもので、過去を振り返って死んだ者たちに詫びたり将来起こりうる可能性について憂いている暇があれば今を全力で生きて、それを贖罪としたり未来の憂いをなくすよう努力すればいいと言うに決まっている。

その時に精一杯できることをやった結果であれば悔いはないというツグミの考え方はここが根本的に違う。

彼女が5年前の遠征に対して後悔しているのは自分の無力ゆえに参加できなかったことで、二度とそんな後悔をしないためにと日々鍛錬を積んでいるのだ。

もし忍田の心の声がツグミに聞こえていたら彼女はきっと「そんなくだらないことを考えていないでさっさとご飯を味わって食べてください」と言うに決まっている。

なにしろ余計なことを考えているので箸が止まっているし、せっかくのダシ巻き玉子も美味しそうに食べていないのだから。

 

 

◆◆◆

 

 

午後8時、三門ケーブルテレビにおいてボーダー広報番組「こちらボーダー広報室」が始まった。

毎月第1・3日曜の夜にボーダー唯一の公式情報発信番組として放映され、活動の最新情報や隊員募集などの内容を嵐山隊のメンバーが紹介する1時間番組として人気がある。

1月の大規模侵攻の直後に近界(ネイバーフッド)への遠征を行う旨を記者会見で発表して以降は遠征計画の進行状況なども一部は市民に公開されることになった。

この日の内容は2日前に行われた記者会見の様子を中心として近界(ネイバーフッド)遠征に関する内容だけで1時間放映されるため嵐山隊は出演しないのだが、内容が内容だけに市民の注目を集めている。

嵐山隊のファンは多いので、せめてもの償いの意味も込めてナレーションとして綾辻が声のみで出演することになっていた。

 

[みなさん、こんばんは。『こちらボーダー広報室』、本日は内容を変更して有人機による近界(ネイバーフッド)往還が成功したという報告が行われた記者会見の模様を中心に遠征計画について嵐山隊・綾辻遥がお送りします]

 

 

「ああっ、ツグミとジンがいるよ」

 

画面の中心に映るツグミと迅の姿を見付けたレクスが声を上げた。

彼がこれまで見ていたのは世界遺産のDVDだから知らないものばかりが映っていた。

しかしツグミと迅という自分の見知った人間がテレビに映ったものだからレクスは興奮気味でいる。

さらにツグミたちの後ろには忍田や城戸、鬼怒田といった本部基地で出迎えてもらったメンバーも登場し、レクスは信じられないという顔をしてツグミに訊いた。

 

「どうしてみんながテレビに映っているの?」

 

「それは一昨日にみんなで集まって三門市の人に大切なことを伝える報告会をやったからよ。今からその報告会で話をしたことをテレビで放映して、市民の人たちに知ってもらうの。こうすれば何万人もの人たちに一度に大切な情報を教えることができるから。ほら、時々食事の時に『ニュース』という番組を見るでしょ? あれはどこでどんなことがあったかということを大勢の人に伝える番組で、これからやるのはボーダーのことをみんなに知ってもらうためのものなのよ」

 

ツグミの説明で納得したらしく、レクスは再びテレビの画面に釘付けになった。

しかしここでオープニングが終わって一旦CMが入る。

ボーダーの大口スポンサーの企業のCMが90秒流れ、続いて記者会見の映像に変わる。

今度は記者会見の初めからの映像で、根付の挨拶から始まった。

続いて有人機による近界(ネイバーフッド)往還が成功したとの旨を発表すると会場から歓声が上がる。

 

[では()()()()()()異世界へ行って無事に帰還した隊員たちをご紹介します。霧科ツグミ隊員と迅悠一隊員です]

 

根付の合図でツグミと迅が舞台へと上がると中央に並び、一礼すると迅が先に座ってグミは立ったままで会場の記者たちを見回して言った。

 

[今回の有人機による近界(ネイバーフッド)往還計画につきましてはわたくし霧科を中心として行われましたので、わたくしが自分の言葉で報告をいたします。…では、着席をさせていただきます]

 

ツグミは椅子に腰掛けると資料を見ずに説明を始めた。

彼女の説明は真実と嘘を上手く混ぜたもので、ボーダー関係者以外の人間には「今回初めて近界(ネイバーフッド)往還に成功した」ことを信じ込ませるには十分な説得力がある。

しかしレクスは不思議そうな顔をしてツグミに訊く。

 

「ボーダーの人はこれまでにも何度も近界(ネイバーフッド)へ来たんだよね? どうして初めてだなんて嘘をつくの? 嘘をつくのは悪いことだよ」

 

「そうね。嘘をつくのは良くないことが多いけど、必要なこともあるのよ。嘘も自分の身を守るためにつくものもあれば、大切な人に心配をかけたくなくて嘘をつくこともある。この近界(ネイバーフッド)へ初めて行ったという嘘はボーダーが活動をするために必要なもので、もし本当のことを言ってしまったら市民からどうして今まで黙っていたのかって責められちゃう。ボーダーは三門市民に不要な心配をかけたくなくて内緒にしていたことがいくつもあるから、今さら本当のことを言うと逆にボーダーは三門市民から信用されなくなっちゃうわけ。わかる?」

 

「う~ん…」

 

レクスが悩むとマーナが声をかけた。

 

「レクス、前にお父様が遠征でお家を留守にしていたことがあったでしょ? その時にあなたは病気になってひどい熱を出した。でもお父様が帰って来た時に元気だったかと訊かれてずっと元気だったって答えたことがあったのを覚えている?」

 

「うん。病気になったと本当のことを言ってお父様に心配をかけたくなかったから嘘をついたんだった。…そうか、ツグミが嘘をついたのもちゃんと理由があって、本当のことを言うよりも嘘を言った方がみんなのためになるってことなんだね?」

 

「そうよ、レクスは賢い子ね」

 

マーナはそう言って微笑みながらレクスの頭を撫でた。

レクスも嬉しそうに笑い、ツグミにも笑顔を向ける。

 

「ツグミはボクに嘘はつかない。それはそんなことをする理由がないからで、もし嘘をつくことがあったらそれはボクのためだってことなんだね?」

 

「うん。あなたには嘘はつきたくないもの。どうしてもという時には嘘をつくかも知れないけどその時には許してね」

 

「わかった」

 

ツグミとレクスとマーナが話をしている間に記者会見は進んでいて、ツグミと迅が計画に参加した理由についての説明が行われていた。

続いて近界(ネイバーフッド)の国を調査して人類が生存するのに適している場所であることを話すと会場がざわめいた。

それをツグミが一喝して静かにさせて、この記者会見でもっとも重要な情報を伝える。

 

[みなさんが近界民(ネイバー)と呼んでいるあの怪物はトリオン兵という兵器で、その兵器を作っているのは我々と同じ姿をしている人間です]

 

ツグミの言葉に会場内はざわめきたった。

たぶんテレビを見ている視聴者の三門市民も同様に驚き、そして恐怖したに違いない。

自分たちが敵だと考えていた怪物が兵器で、それを作ったのが人間であるというのだから当然である。

こうなることが予想されたためにボーダーはこれまで敵が人間であることをずっと隠していたのだが、公にしなければならないと考えた結果この記者会見で発表することになったのだ。

そしてこの場を上手く利用してツグミと城戸が茶番劇を演じ、市民に隠し事をしていた事実を公にしただけでなく市民の信頼を得られるような形で丸く収めた。

近界民(ネイバー)が人間であることを隠していたことがバレたらボーダーは市民の信頼を失うわけだから、この重要な情報をもっとも理想的なのタイミングと手段で発表したことになる。

「我々の活動目的は侵略しようとするものから市民の生命と財産を守ることです。近界民(ネイバー)を殺すことではありません。しかし近界民(ネイバー)を殺さなければみなさんを守ることができないというのであれば、我々は躊躇することなく敵を斬り、撃ち、自らの命とみなさんを守るとここで宣言いたします!」という城戸の力強い言葉に記者会見会場にいたすべての人間が惜しみない拍手を彼に向けたのだが、その光景を見た視聴者も同様に拍手をしていることだろう。

 

その後ツグミは「今回の近界(ネイバーフッド)往還で知り得たこと」としていくつかの()()()()()()()()事実を伝え、日下の質問に答えたところで記者会見の場面は終わった。

記者会見の様子はほぼノーカット編集なしのままで放映され、ここで120秒間CMが入る。

番組の後半はメディア対策室で撮影した城戸や忍田の近界(ネイバーフッド)遠征に向けての意気込みや現在の状況などのインタビュー、遠征部隊の特別訓練の様子などのVTRが流れて終わったのだった。

 

一昨日の記者会見であるからすでに新聞では報道されている内容だ。

だから市民の多くは有人機による近界(ネイバーフッド)往還が成功したことと近界民(ネイバー)が人間であることは昨日の朝刊で知ったことだろう。

しかしその事実を経験したツグミの口から話が聞けるとなれば誰もが注目するに決まっていて、市民の半数以上が彼女の言葉に耳を傾けた。

ボーダーに対する不信や不満の気持ちを抱く者はいたが、それよりも近界(ネイバーフッド)遠征という大きな目標への希望や期待の方が大きくなったことで気持ちが上書きされてしまった。

それはボーダーにとって非常に好ましいもので、このアフトクラトル遠征が成功すればボーダーに対する市民の感情はますます良好なものになるだろう。

ただし成功すればという絶対条件があり、逆に失敗したとなれば盛り上がった分だけ落胆し、勝手に失望したり不信感を募らせる。

人間とは勝手なもので自分に都合の良いように相手に期待して、それが叶わないと行き場のない悲しみや苦しみをぶつけたりするものだ。

だからこうして遠征のことを大々的に発表してしまったボーダーは市民の期待に応えなければならないのだが「C級隊員32人を救出し、参加者全員が生還する」というミッションは非常に難易度が高い。

近界(ネイバーフッド)遠征の経験がない隊員が半数いるだけでなく、敵地に乗り込んでの戦闘の経験者は旧ボーダーメンバー4人と遊真しかいない。

()()()()のメンバーで軍事大国アフトクラトルのトリガー使いと戦おうというのである。

いくら一度戦って敵の武器(トリガー)の情報があるといっても、ボーダー(こちら)の手の内もバレているのだ。

三門市民はボーダー側の不利な条件を何も知らず、ただ32人の子供たちが無事に戻って来ると信じて疑わない。

ツグミの話を聞いていて忍田は少し不安になっていた。

 

(迅の未来視(サイドエフェクト)では今のところ犠牲者は出ないということだが、犠牲者が出ないとしてもC級隊員を救出できるかどうかは別物だ。遠征メンバーが全員生還してもC級隊員を救出できなければ何のためにアフトくんだりまで行ってきたのかと責め立てられるのは間違いない。これはボーダー始まって以来の一大ミッションで、公になった以上は失敗しましたでは済まされないことなんだ)

 

ツグミが堂々と主役を果たした記者会見を見ながら忍田は改めて自分の責任の重さを痛感していた。

 

 

 

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