ワールドトリガー ~ I will fight for you ~   作:ルーチェ

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310話

 

 

アフトクラトル滞在2日目、ツグミはさっそく行動を開始した。

彼女の設定はマーナの遠縁の15歳の少女で、行儀見習いとしてエリン家で働いていおり、病で臥せっているマーナの専属の侍女ということにして、女主人のプライベートな用事をするなどの理由で街の中を歩き回りながら情報収集をする。

マーナからアフトクラトルのことについて詳しく聞いており、寮で一緒に暮らしている間に「身分はそれほど高くないがいちおう貴族と呼ばれる家柄の娘」らしい振る舞いができるよう稽古を重ねてきた。

生来物覚えの良いツグミであるから数日で「アフトクラトルの下級貴族の娘」の演技が上手くなり、マーナのお墨付きが得られたことで実行することにしたのだった。

ツグミは屋敷の使用人部屋の一室を与えられ、そこに玄界(ミデン)から持ってきた道具や武器を運び込んでいる。

その中から使えそうなものをいくつか選び出して身に付けると街へ出た。

 

 

前回の訪問で街の中を散策した経験があるからひとりで歩いていても迷うことはなくすぐに南市場へとやって来ることができた。

仮にエリン家の屋敷から誰かが彼女を尾行していても彼女が玄界(ミデン)の少女だとは想像もできないくらい自然な動きで、周囲の人間も彼女のことを見かけたことはないが他所者だと考える者はいない。

 

(さて、まずは市場の中をひと通り回ってみて、適当な人を見付けなきゃ)

 

ツグミは買い物カゴを腕にかけて野菜や果物を品定めしながらも店員や買い物客も同時に品定めしていた。

 

(前に来た時と比べて季節が変わったという点もあるけど種類・品数共に減っている。(マザー)トリガーの寿命が近付いてきていることでアフト国内での生産ができなくなっていて、ここにある作物のほとんどが従属国から接収しているって話。でも市民の様子はあまり深刻そうじゃない。市民も『神選び』のことは知っているそうだけど、100日後に行われる『神選び』さえ無事に済めばまたこれまでのように豊かな暮らしが戻って来ると信じているからなのかな?)

 

アフトクラトルでは次の「神」を見付け出した者が次期国王となるわけで、もしハイレインが次期国王ともなればここにいる人たちはベルティストン家つまり王家の直轄地の領民ということになり他の国民よりも優遇されるのは間違いない。

事実、現在の王家であるコヴェリ家の領民は比較的恵まれた生活を送っていたそうだ。

だから彼らはコヴェリ家が王家として存続することを、他の国民は自分たちの領主が国王になれば良いと願っている。

 

(ハイレインとランバネインが視察をしていた時、市民は好意的に接していた。ボーダー(わたしたち)にとって奴らは憎たらしい敵だけど、ここに住む人たちにとっては良き領主様たちなんだろうな…)

 

もしツグミがこの街の住人であったなら、ハイレインが国王になることを心から願うだろう。

それは自分の家族や友人がこの街に住んでいて、自分と彼らが幸せならそれで十分だからだ。

しかしそのために悲しんだり苦しんだりする人間がいるのは紛れもない事実で、生贄になる人物が自分とは無関係な人間であればさほど心を痛めることはないが、自分と親しい人間であったら悲しむどころか全力で阻止しようとするはずだ。

 

(ひとりひとりがささやかな幸せを求めて生きていく分には他人を犠牲にするということは滅多にない。でも誰かひとりがその身に余るような大それた権力を手に入れようとすば弱い立場の人間がその犠牲になってしまうのは昔も今も変わらないし、近界(ネイバーフッド)とか玄界(ミデン)といった生きる世界が違っても同じ。ハイレインの蛮行が領民のためにやっていることだとしても、奴の野望のために多くの人間が辛い目に遭わされているのは事実。わたし自身が奴の犠牲者になりうる立場なんだから、降りかかる火の粉は払うなんてレベルではなく、火の元を断つという覚悟で戦わなきゃね)

 

 

市場の中をひと通り回ったところで目星をつけていた屋台に戻って買い物をすることにした。

 

「いらっしゃい。何を探しているんだい?」

 

人の良さそうな50歳くらいの女性がツグミに声をかけた。

 

「奥様がお好きなケルシーのクラフティを作って差し上げようと思ってケルシーを探しているんですけど、最近はなかなか手に入らなくなりましたよね」

 

ツグミがそう言うと店の女主人はうんざり顔で答える。

 

「ああ、ケルシーに限らず新鮮な果物は入荷しなくなったねえ。…ってあんた、その紋章はエリン家のものじゃないか?」

 

女主人はツグミのつけていたペンダントを目敏く見付けて訊いた。

 

「はい。わたしはマーナ奥様専属の侍女で、最近食が細くなってしまったために旦那様が心配なさって…。そこで好物のケルシーを使ったお菓子なら食べていただけると思ったものですから。料理人ではありませんが、料理は得意ですので」

 

「クラフティ」とはカスタード生地にフルーツが入っているフランスの伝統菓子で、基本はサクランボで作るのだが様々な果物でアレンジが利く。

中流階級から上の子女であればパンやケーキなどを焼くことができるのが当然で、逆にできないと嫁に行けないという話だ。

そして料理が得意なツグミも作ることができ、実際に何度も作ったことがある。

 

「エリン家の奥様のためなら何とかしてあげたいが、こればっかりはどうしようもないねぇ。そういえば最近奥様の姿を見かけないけど、病気か何かなのかい?」

 

「…ええ。ここだけの話ですから誰にも言わないでくださいね」

 

ツグミはそう言ってから声を潜めて女店主に話を始めた。

 

「実は奥様は心の病にかかってしまったようなんです。お医者様のお話ですと特効薬というものはなく、本人が元気になりたいという気持ちがなければ治らず、逆に元気になりたいと思えばいつでも回復できるということですから、美味しいものを食べれば元気になるかな、って。でも…南市場にないなら他の市場を回るしかないかしら…?」

 

「他の市場ねえ…。たぶん他所も同じ状態だろうよ。ここにあるリンゴやクランベリーだってロドクルーンから取り寄せたもので、もう国内で生産したものはお貴族様でも首都のコヴェリ家の人たちの口にしか入らないだろね。あたしだって売ってはいるものの食べることはできないくらい高価なものになっちまった」

 

「わたしも久しく好物のブドウやイチゴを食べていません。最後に食べたのがいつか思い出せないくらいですよ」

 

「ははは…。それでもハイレイン様のおかげでこの街はまだ他の街よりも恵まれているってことだから、首都以外の街はどんなになっちまってんだろうねえ…」

 

「次の『神選び』でハイレイン様が王になればきっと生活も楽になりますよ」

 

「だといいねえ。ところでケルシーはないがリンゴでパイを作ったらどうだい? 奥様が喜んでくれるかわからないけど」

 

「そうですね。…じゃあ、リンゴを6つください」

 

「あいよ」

 

噂話が三度の飯よりも好きだと言わんばかりの様子の女主人であるから、彼女に言ったことはその日のうちに街中に広がってしまうだろう。

「ここだけの話」と言えば逆に大勢に広まってしまうのは近界(ネイバーフッド)であっても変わらない。

だからこそ嘘と真実を上手い具合に混ぜた話をすれば大嘘も真実であるかのように人々は思うようになる。

その話を広めてくれる人物としてツグミはこの女店主を選んだのだった。

女主人はできるだけ美味しそうなリンゴを6つ選ぶと紙袋に入れてツグミに手渡しながら言う。

 

「マーナ奥様に『お大事に』って言っといておくれよ。あたしは奥様の知り合いじゃないけど、庶民の中にはあたしみたいにエリン家のみなさんのことを慕っていて心配している者もいるって知っていてほしいんだ」

 

「はい、わかりました。必ず伝えますね」

 

ツグミはそう言い残して屋台を去る。

 

(嘘をついてごめんなさい)

 

心の中でそう呟くと、ツグミは場所を移動して情報収集を本格的に開始することにした。

 

 

 

 

市場を出て少々歩くと住宅街がある。

裕福でも貧しくもないごく普通の庶民階級の人間が住む家々が並び、中心となる場所に広場には共同井戸があって主婦が集まって水汲みや炊事・洗濯をしている。

こうした人の噂や世間話に花を咲かせている様子は日本でも100年前には普通にあった光景で、こういった場所で交わされる会話は他愛のないものが多いものの、中にはいくらベテラン諜報員であっても男性では知り得ない情報が含まれていることもあるのだ。

もっとも他所者がそう簡単に井戸端会議に参加することはできず、仲間意識が強い彼女たちの中に赤の他人が入り込むのは至難の業だ。

しかしだからといってコソコソ聞き耳を立てていたら余計に怪しまれるので、ここは堂々と行動するのが自然な姿といえよう。

ツグミはリンゴの入った買い物カゴを抱えて自然な歩みで主婦たちの輪の中に進んで行く。

 

「すみません、喉が渇いてしまったのでお水を少し分けていただけませんか?」

 

この集団のリーダー格と思われる年長の女性にツグミは声をかけた。

するとその女性は少し驚いたような顔をしたがすぐにニッコリと笑って答える。

 

「ああ、かまわないさね。好きなだけ飲んでおいき」

 

「ありがとうございます」

 

ツグミは違和感なく主婦たちの集団の中に入って行き、井戸で水を汲むと手ですくって飲んだ。

その様子を見ていた別の女性が彼女に訊く。

 

「あんた、見かけない顔だね?」

 

「はい。わたしはエリン家の奥様専属の侍女でして、普段はお屋敷の中だけで仕事をしていて外に出ることは滅多にありませんから。…申し遅れました、わたしはイデアと申します」

 

ツグミは礼儀正しく挨拶をした。

 

「マーナ奥様の侍女かい。どうりで育ちが良いお嬢ちゃんに見えたわけだ。そんで貴族様の奥様のお付の侍女がこんな場所で何をやってんだい?」

 

「奥様のご用事をいくつか済ませて、その帰り道です。たくさん歩いたので疲れてしまいました」

 

「それはご苦労なこった。じゃ、そこで少し休んでおいきよ」

 

「はい」

 

ツグミは主婦たちの邪魔にならないような場所にあるベンチに腰掛けた。

そして寛いでいる風を装って彼女たちの会話に耳を傾ける。

こういう場所での会話はいつの世でも同じもので、だいたいが愚痴や世間話になるもので、ツグミが耳にしたのも何処其処の旦那さんが浮気をしたとか、給料が減って家計が厳しいとか、自分の息子が学校で一番の成績だったといった自慢話であった。

今の彼女にとってどうでも良いことだが、優秀な息子の話題から発展して彼女に話題を振られた。

 

「ところでリヌス坊ちゃんは今度の誕生日で9歳になるけど、2回目のトリオン計測では良い結果が出そうかねえ?」

 

リーダー格の女性がツグミに訊いた。

 

「あなたはエリン家のことにお詳しいのですか?」

 

「ああ。3年前までエリン家の賄い婦をやってたからね。ちょっと変わった坊ちゃんだけどいい子だよねぇ。でもトリオンが少ないとトリガー使いとしてやっていけないから、エリン家の後継として難しいと思うんだ。あの家は騎士候の家柄だから、トリガー使いにならないとダメなんだそうだよ。それでヒュースって優秀な養子を迎えたのにこの前の遠征で死んでしまったそうだから、これからどうなるのか心配なんだよ」

 

ヒュースが死んだことになっているのは周知の事実らしい。

またレクスの将来がどうなるかで自分たちの生活も変わると思えば不安にもなるというものだ。

洗濯や炊事をしながらいろいろな話をするのが彼女たちの娯楽のひとつでもあるのだが、明るい話題が少ないのは(マザー)トリガーの寿命が近付いてきているのだから仕方がない。

 

「しばらく前に個人的にトリオンの計測をしたようですけど芳しい結果は出ていないみたいです。ヒュースさんが残念なことになりましたから、新しい養子を迎えるしかないと旦那様は悩んでいらっしゃるようです」

 

「そうかい…。でもハイレイン様はしばらく前に玄界(ミデン)でさらってきた子供たちを一人前の兵士にしようと訓練をさせているそうだよ。そこで優秀な男子がいればその子を養子にするかもねえ」

 

「その話はわたしも奥様から聞かされました。30人以上さらってきてその半分くらいがヴィザ翁のところに預けられて剣の稽古をしているということですけど、残りの半分はどこにいるんでしょうね?」

 

ツグミがそう言うと、別の30代半ばくらいの女性が口を挟んできた。

 

「それについてはあたしが知ってるよ」

 

「え?」

 

「幼年学校に行っている息子からの手紙に『生意気な奴らが入学してきた』って書かれていたんだけどさ」

 

「生意気な奴ら?」

 

「ああ。息子は授業や訓練、寮の部屋といった生活のすべてをその子たちとは完全に分けられているから顔も見たことがないってのに生意気だと書かれていて、休みの日に家に帰って来た時に理由を訊いてみたんだよ。そしたら玄界(ミデン)の捕虜のくせに俺たちより優遇されてる、って言うのさ。改装された新しい寮に部屋を与えられているとか、食事が特別製だとか。それに玄界(ミデン)の子供たちは座学が少なくて午前中に4時間も外で実技訓練をしているらしいよ。息子は座学が嫌いで実技訓練が午後の2時間しかできないと愚痴っていたねえ。あたしには詳しいことはわからないけど、同じ学校に入れて学ばせるなら同じ扱いをしないと不平不満が起きるのは当然さね」

 

「う~ん…それは不公平ですね。将来この国を背負う優秀なトリガー使いになるためなら座学は必須ですけど、一兵卒として戦うだけなら歴史や戦術といった座学は不要ですから、玄界(ミデン)の子供たちには不要だと考えたのではないでしょうか。生還率の低い危険な戦場にトリガー使いを送り込む場合、捕虜として連れて来られた子供たちなら心を痛めることがないでしょうし。同族よりも異世界から連れて来た人間なら惜しげもなく投入できるというものです」

 

「そういう考え方もあるねえ」

 

「はい。それに捕虜といってもトリガー使いとして使えそうな人材なら厚遇するんじゃないでしょうか? あの学校は実力主義ですから優秀であれば個室を与えられるとか門限の時間が緩くなるとか特典が得られます。そこから考えると玄界(ミデン)の子供たちは将来に期待できるのかもしれません。もしくは異世界から無理矢理連れて来た彼らを懐柔するためにしているとも考えられます」

 

「なるほど」

 

「それに知らない国で慣れない生活を強いられ、他の生徒のように実家に帰ることができないんですから、誰かひとりでも精神的に不安定になってしまうとそれが他の生徒にも伝染して悪影響を与えます。だから普通の生徒と玄界(ミデン)の子供たちを隔離して会わせないようにしていると考えれば納得できますよ」

 

ツグミがそう解説すると周囲の主婦たちは感心したような顔で彼女を見つめた。

 

「やっぱりエリン家の奥様付きの侍女ともなると賢いねえ。そう言われるとそのとおりだって気がしてきたよ」

 

「本当かどうか確かめようがありませんけど、ハイレイン様のお考えでしょうから少なくともわたしたちにとって不都合が生じることはないでしょう。『神選び』で良い結果が出たらわたしたちも生活も楽になるではずです。玄界(ミデン)の子供たちは故郷に帰ることはないと思いますから、この国での暮らしに一日でも早く慣れてくれたらいいですね」

 

「可哀想だけどこればかりは仕方がない。せめて戦場に行っても死なないように強くなってもらわないといけないねえ」

 

異世界から来た子供だといっても彼女たちは子供を持つ親であるからそういう気持ちになるのだろう。

しんみりとしてしまった場の空気を変えるためと必要な情報をいくつか仕入れたことでツグミは撤退することにした。

 

「すみません。みなさんのお仕事をお邪魔してしまったようで。あまり長居をすると奥様が心配なさるのでこれで失礼いたします。お水、ごちそうさまでした」

 

そう言ってお辞儀をするとツグミは彼女たちに背を向ける。

そして彼女たちにも嘘をついたことを心の中で詫び、エリン家の屋敷へ急ぎ足で歩き出した。

 

 

(C級の子たちが幼年学校にいることは確かのようね。念の為に明日の午前中に確認してみよう。でもいることが確定してもどうやって救出するのかが問題。逃亡を防ぐために厳しい監視があるに決まっているもの。ヴィザに預けられた子たちの方だって監視の目があるのは間違いないけど、こっちの方がまだマシだろうな。…でも仮にヴィザの方の14人を救出できたとしても、幼年学校の方の18人の監視が厳しくなって救出が難しくなりそう。同時進行がベストだけど、そうなると本隊との連携が必要になってくる。どうしたものかな…?)

 

ツグミは歩きながら作戦を考える。

まずは自分の知る限りの情報を整理することから始めた。

 

(ディルクさんの情報だとベルティストン家の戦力は大規模侵攻の際にトリオン兵を多く失ってはいるものの、それでもまだあの時と同規模のトリオン兵を投入できるということだから、ボーダー側が物量差で圧倒的に不利だということはわかっている。それにトリガー使いと一般兵を合わせたらこの街だけでも50人以上になるらしい。他のベルティストン家の領地から兵士を呼ばれたら面倒なことになりそう。戦闘状態になったら短期決戦でないと勝ち目はないな。それに未知の(ブラック)トリガーが出て来たらヤバイ。(ブラック)トリガーに関してはディルクさんですら知らされていないということだからトップシークレットなんだろうな)

 

一度戦ったことがある相手と再戦するのは非常に難しい。

敵の手の内がわかっているのと同時にこちらの手の内もバレているのだから、双方とも戦うとなれば相手の想像のできない手段を考えるしかない。

トリオンとトリガーに由来しない技術()持つボーダー。

戦闘状態に陥っても瞬殺されることはないだろうが、被害を極力出さないようにするためにはトリガーを使わない戦いに重点を置くべきである。

 

(アフトクラトルが『神の国』と呼ばれ(マザー)トリガーの力を高めてきて他国を武力で侵略してきたといってもトリオンが無限にあるわけじゃない。現実にこの城郭都市の中でもトリオンを使っているのは都市を囲む城壁とベルティストン家の居城と幼年学校の塀といった重要な施設の一部のだけ。他の建物や施設は玄界(ミデン)と同じように木材やレンガといった自然由来のものが多い。まあ、自然由来といってもこの国土自体がトリガーによって造られたものだから厳密にはトリオン由来といえるけど。でもトリガーを使わなくても破壊できるのは事実。庶民の家屋なんて火をつければ燃えるし、オノやハンマーで破壊することも可能だもの。だから頑丈な城壁に囲まれた都市を造ることで人命と財産を守っているのよね)

 

アフトクラトルに限らず近界(ネイバーフッド)の国々の多くがここのように頑丈な城壁を造ることによって街を守ろうとしている。

キオンでもそうだったが、人々の生活エリアをバラバラにせず集約することでトリオンの消費を効率良くさせているという点も重要だ。

アフトクラトルの(マザー)トリガーの寿命が近付いてきている現在、王家のコヴェリ家にとって不要な街からトリオンの供給を断ち、そこに住んでいた住民たちが難民となって他の街へ散らばっているそうだ。

コヴェリ家にとって最も目障りなベルティストン家の支配する領地の小さな街がいくつか姿を消していて、ハイレインとしては一刻も早く新しい「神」を探し出し、「神選び」で絶対に勝たなくてはならない状況に追い詰められている。

そこに近々ボーダーの遠征があるかもしれないというのだから、ハイレインは枕を高くして眠ることができないでいるはずだ。

 

(ここに住む人たちに恨みはないけど、C級を助け出すために多少は犠牲になってもらわなきゃならない。もちろん死者を出すようなことは絶対にしないけど、建物の破壊やそれに伴う怪我人は勘弁してもらうわよ。悪いのは全部ハイレインのせいだもの。奴がC級をさらわなきゃ遠征なんてする必要はなかったんだから)

 

そんなことを考えているうちにツグミはエリン家の屋敷に戻って来ていた。

 

 

 

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