ワールドトリガー ~ I will fight for you ~   作:ルーチェ

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ここから新章へと入ります。
これまでの流れでいくつかあった伏線をまだ回収しきれていないものですから、それらを回収しつつアフトクラトル遠征後のボーダーとオリ主・ツグミの物語をもうしばらく続けさせていただくことになりました。
原作でのアフトクラトル遠征はずっと先のことのようですので、この物語でボーダーとボーダーやツグミに縁のある近界(ネイバーフッド)の国々の未来がどうなっていくのかをお楽しみくださいませ。
なお、原作にも登場する国家が出てきますが詳細がわからないため、こちらで想像して描いております。
ご了承ください。





希望へのapproach
337話


 

 

アフトクラトル遠征に参加していたメンバーもひとまず普段の生活に戻り、三門市には平和な日常が再び戻って来た。

とはいえ遠征成功の余波はなかなか収まらず、記者会見がテレビで中継されたものだから有名人となってしまった本隊メンバーたちは街を歩けば通りすがりの市民から写真やサインを求められたり、学校へ行けば同級生だけでなく上級生も下級生も教室を覗きに来る始末。

これまでボーダーのアイドルといえば嵐山隊オンリーだったが、太刀川隊、風間隊、三輪隊といったA級部隊(チーム)にも注目が集まったことでメディア対策室はこの3部隊(チーム)のグッズの制作に取りかかったそうだ。

記者会見に参加すれば嫌が応でも有名人になってしまうことはただひとりを除いて皆がわかっていた。

わかっていなかったひとりとは小南のことである。

今までずっとオペレーターだと()()()()していた彼女だったが戦闘員であることがバレてしまったのだ。

猫をかぶっていたことが学校中に知れ渡り、それが恥ずかしくて退学したいとまで言い出して「何でこうなるって誰も教えてくれなかったの!?」と玉狛支部のメンバー全員に詰め寄り、林藤に諭されてやっとボーダーも学業も続ける気になったのだった。

久しぶりに登校した日、小南を出迎えた同級生たちの態度は全然変わらず、むしろ自分を偽らない()の彼女の方が生き生きとして可愛らしいという意見が多かったことで、本人も自然体のままで学校生活を送れるようになったことを素直に喜んでいるようである。

 

 

◆◆◆

 

 

6月というのは本来ならB級ランク戦が行われている時期である。

通常1シーズンは3ヶ月で、20戦行われてその結果で上位2部隊(チーム)がA級への挑戦権が得られるはずであったが、そのランク戦自体が行われていないので順位は3月5日に決まったまま変動がない。

B級で部隊(チーム)を組んでいる隊員は「A級になること」を目的として訓練に励んでいるのでランク戦がないというのは残念というよりも不満だと感じている者が多い。

アフトクラトル遠征に参加したB級隊員は二宮隊の3人と玉狛第2の4人、個人では東、影浦、村上の合計10人である。

彼ら以外の生駒隊や王子隊などの上位部隊(チーム)はもちろんのこと中位・下位部隊(チーム)であっても上を目指している隊員たちには遠征に行かない3位以下の部隊(チーム)内だけでもランク戦をやったらどうかという意見も上がっていたほどだ。

A級に手の届きそうな上位部隊(チーム)にとっては特に深刻である。

A級とB級では給与にも大きな違いが出てくることや「A級=精鋭、B級=主力」というイメージの違いがあって、A級になれるだけの実力がある者たちにとってランク戦が行われないことは順位が変わらないだけでなくA級への挑戦権も得られないということになり非常に悔しい思いをしているのだ。

今後も市民救出のための遠征に力を入れることになれば通常のランク戦が行われないのは明らかで、遠征に参加をしないB級隊員たちのモチベーションは下がりかねない。

新入隊員の増加でそのうちにB級隊員も数が増えてくるだろうが、B級ランク戦が行われないとなると正隊員になって部隊(チーム)を組んでも面白みがない。

そこで遠征参加の条件をA級以上に限定し、B級は原則として不可とするという案が出された。

B級の1位・2位は()A級としての参加を認めることになる。

そうすればB級3位以下の部隊(チーム)によってランク戦が行われるようになり、多くのB級隊員の納得できるものとなるだろう。

しかしそうなるとB級3位以下から個人で参加したいという隊員がいればその意思を無視することになるので、条件付きでの参加を認めることにした。

その条件とは無所属(フリー)になるか、ランク戦は残りのメンバーだけで参加するというもの。

例を挙げれば村上が遠征に参加するとなった場合、彼が鈴鳴第一を辞めて無所属(フリー)になるか、鈴鳴第一が村上抜きで参加するかのどちらかになるということで、どちらも苦渋の選択となるから結局のところ村上が遠征に参加することを諦めるということになってしまう。

つまりB級から個人単位での参加は実質上不可能だということになるわけだ。

それにこの案だと大きな問題があった。

それは玉狛第2の扱いである。

現在のB級2位では仮A級ということになるのだが、主戦力であるヒュースが抜けてしまうとなれば仮であってもA級として実力を伴っているとは言い難い。

そこで二宮隊と玉狛第2に対して「仮」ではなく正式にA級にするために昇格試験を行うこととなった。

ルールは簡単で、それぞれが現在のA級部隊(チーム)のいずれかと一対一で戦って勝つだけである。

さらに単純に勝てばいいというものではなく、対戦相手ではない他のA級隊員による審査もあって総合的に判断される。

このルールであれば玉狛第2にも勝ち筋はあるわけで、不利ではあっても不可能ではない。

二宮隊・玉狛第2ともに昇格試験のルールを承諾し、日曜日に行うことが正式に決まったのだった。

元々B級上位2部隊(チーム)はA級への挑戦権を得ただけであって、アフトクラトル遠征を優先したことで昇格試験が後回しになっていただけなのだから拒否することはありえない。

第一試合の二宮隊の対戦相手は嵐山隊で、第二試合の玉狛第2は三輪隊。

しかし部隊(チーム)の人数とポジションのバランスを考慮し、嵐山隊は狙撃手(スナイパー)の佐鳥、三輪隊は同じく狙撃手(スナイパー)の古寺抜きとなる。

近・中距離攻撃のみの3人の二宮隊に対して嵐山隊も同様に近・中距離攻撃のみの3人の編成となるし、ヒュースを欠いて3人になった玉狛第2の近・中・遠のポジションに対して三輪隊の3人も近・中・遠をひとりずつカバーできるという()()()()なのであった。

ただし二宮隊と玉狛第2は敵となる部隊(チーム)を最後まで知らされず、もちろんマップもどんなものになるかわからないので、戦闘フィールドに転送されてやっとオペレーター経由で知ることとなるから事前に作戦を立てることはできない。

この試合は当事者だけでなく他のB級隊員にとっても重要なものである。

なにしろ二宮隊と玉狛第2がA級に昇格するかしないかでB級3位以下の部隊(チーム)の順位が変わってくるからだ。

それに次期のB級ランク戦が10月から通常どおりに行われることになるから、上位2部隊(チーム)がいるといないとでは結果も大きく変わることが予想されるため二宮隊と玉狛第2を応援したくもなる。

もっとも関係者以外には非公開とされるため、結果のみしか知ることはできないのだが。

 

 

◆◆◆

 

 

ツグミと迅とゼノン隊の3人は本部基地で行われる次回の遠征に関わる上層部メンバーの会議に呼び出された。

アフトクラトル遠征に参加したメンバーはゼノンとリヌスとテオがキオンから来た近界民(ネイバー)であることを承知しているが、他の隊員たちはそのことを知らない。

いずれは知らせることにはなるがそれが今ではないと考えている城戸は考えている。

よってキオンで使用している変身トリガーを用いて民間人協力者を装ってもらうことにした。

行動は必ずツグミと一緒なので他の隊員とのトラブルも起きる心配もないだろう。

 

会議室ではロの字型のテーブルの下座にツグミと迅の席が並んでいて、その両脇にゼノンとリヌス・テオの椅子が用意されていた。

会議の開始時間までまだ15分近くあるが、ツグミの「部下は上司よりも先に席についているべきである」との考えによって少々早めに到着したのだ。

上司よりも早く来ているというたったそれだけのことなのだが効果は非常に大きい。

10分前になって唐沢が会議室へと入って来た。

 

「やあ、きみたち、早いねえ」

 

きみ()()と言っていながらも唐沢の意識はツグミにのみ向けられている。

 

「おはようございます、唐沢部長。部長こそお忙しいのに早いじゃありませんか。まだ10分もありますよ」

 

「いや、早く来たのはたぶんきみがもう来ていると思ったからなんだ。頼まれていた例の件、先方が来週の平日ならいつでもかまわないと言ってくれている。きみたちの都合にあわせたいと思うが、いつがいいかな?」

 

唐沢はツグミと話をする時間を取るためにわざわざ早く来てくれたのだ。

 

「それなら早い方がいいので月曜日にお願いしたいです」

 

「わかった。じゃあ、おれが先方に連絡して時間を決めておく。後でメールを入れておくよ」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

そんなふたりだけがわかる会話をしていると、根付、鬼怒田、忍田、城戸の順で会議室へと次々に入って来て、最後に林藤が時間ギリギリになってやって来た。

 

 

全員が着席すると上座の城戸が言う。

 

「全員揃ったようなのでこれからの遠征計画についての会議を始める。まずはこれを見てもらおう」

 

すると会議室の照明が落とされて暗くなり、中央の空間に近界(ネイバーフッド)の軌道配置図が浮かび上がった。

以前に見たレプリカの提供したものよりもはるかに多くの国とその軌道が表示されている。

 

「これはゼノン()()()()から提供されたキオンで使用している軌道配置図だ。レプリカ特別顧問のものと比べてこちらの方が新しい上に詳細であるために今後はこちらを使用することとする。…さて本日の議題は行方不明になっている約400人の市民の救出作戦を行う遠征計画で現状わかっていることについての整理だ。手元にある資料とこの軌道配置図を参考にして、資料作成責任者である霧科隊員から話を聞かせてもらうことにした。霧科隊員、頼む」

 

「はい」

 

ツグミは一旦立ち上がって礼をするとすぐに着席して説明を始めた。

 

「大変恐縮ですが、着座にて失礼させていただきます。…わたしたち『遠征対策準備室(仮)』は第一次近界民(ネイバー)侵攻が行われた5年前の6月に三門市に接近していた国を割り出す作業をし、数ある国々の中で特に可能性の高い国を3つに絞りました。その国の名前はリーベリー、レオフォリオ、そしてエクトスです」

 

その場にいた上層部メンバーはざわめいた。

先の大規模侵攻で名前の挙がっていたリーベリー、レオフォリオのふたつがあったことと、エクトスという今まで聞いたことのない国の名前が挙がっていたからだ。

 

「もちろんこの3つのどれかというのではなく可能性が高いというレベルでしかありません。またキオンでも把握できていない国や乱星国家である可能性も捨てきれません。ただいま挙げた3つの国に断定するのは危険ですが他に手がかりがない以上はまずこの3ヶ国を優先して調査すべきではないかと考えております。お手元にある資料にはどのようにしてこの3ヶ国に絞ったのかの理由について詳細に記載してありますので、のちほどお読みくださいませ。…では、続いてゼノン臨時顧問からこの3ヶ国の国情、特に軍事に関わる情報について話していただきます」

 

ツグミからゼノンにバトンタッチし、ゼノンがリーベリー、レオフォリオ、エクトスの3ヶ国について説明を始めた。

さすがは軍事大国キオンのベテラン諜報員で、仲間との情報共有がしっかりとできているらしく実際に自分が見聞きしたことだけでなく他の国のことも把握していた。

 

海洋国家リーベリーは広大な海を持つ豊かな国…と表向きはそうなっているが実際のところ海が広いということは国民の住む陸地面積が非常に狭く、一番広い島に首都があって人口の約半分が集中していて、残った国民は海に浮かぶ小島に数十人から数百人の単位で分散して住んでいるそうだ。

農作物を耕作する土地はほとんどないものだから、必要な穀物や野菜などは他国からの輸入に頼るしかない。

リーベリーの()()は海の恵みで、近界(ネイバーフッド)の多くが海のない国であるから、この国の海産物は他国で人気がある。

しかし新鮮な魚介類を運ぶ手段はなく、すべてが乾物等の常温で保存のできるものばかりで価値は低い。

だから財政的に豊かであるとは言えず、国民は政府が輸入した外国産の食料の配給によって()()()()()()()()()()()()()

近界(ネイバーフッド)に海のある国が少ないのは国土の維持で海を持つことは非常にトリオンコストが高いらしく、リーベリーが海洋国家として名を馳せているのは(マザー)トリガーが他の国よりも強力でありトリオン能力の高い「神」がいるからで、この国が他国に戦争を仕掛けてまでトリオン能力者をさらうということは考えにくいためリストから外しても良さそうなものなのだが、10年ほど前に国王が代替わりしてから様子が変わったというから現状ではまだ判断できないということであった。

 

騎兵国家レオフォリオは特殊なトリオン兵に騎乗して戦う戦闘民族の国である。

国土が狭いため、領土拡大のために常に他国へ侵攻して戦争をしているという。

よってトリオン能力の高い人間は非常に優遇され、逆に低い人間は虐げられて当然だというのが「国是」であった。

なにしろトリオン能力の低い国民よりも他国からさらってきたトリオン能力の高い捕虜の方が()()()()()扱ってもらえるというくらいで、極端な「トリオン能力至上主義」を貫いている。

ハイリスク・ハイリターンよりもローリスク・ローリターンを選ぶことが多い国民性のため、アフトクラトルのような大国に牙を向けることはなく、内政に力を入れている戦争を好まない小国をターゲットにすることが多い。

しかし5年前の玄界(ミデン)ならローリスク・ハイリターンでトリオン能力者を狩り放題であったことから第一次近界民(ネイバー)侵攻がレオフォリオによるものであった可能性は高いと言える。

 

そして最後のエクトスだが、もしこの国が第一次近界民(ネイバー)侵攻の敵国であった場合は非常に厄介なことになるらしい。

エクトスは隊商国家と称され、多くの国と接近する長大な軌道を持っているためにそれぞれの国で必要とされているものを別の国で仕入れて高く売りつけるという商売を国ぐるみで行っている。

自国で生産できない食料や特定の国でしか採れないレア鉱石などは輸入に頼るしかないのだが、近場の国なら簡単に手に入れることは可能だ。

しかし遠方の国となると輸送等のコストがかかりすぎてしまい、エクトスのように広域をカバーする国から少々高めでも買うことになる。

近界(ネイバーフッド)で最も値段の高い交易品は人間である。

もちろんトリオン能力の高い人間ほど高価で、エクトスはトリオン能力者をさらって別の国で売るという人身売買もやっており、そんな国だから三門市民をさらって他国で売っている可能性は高い。

ただそうなると約400人の市民がひとつの国にいるとは限らないわけで、いくつもの国に散らばっているとなると探すのは面倒だ。

エクトスの軌道を辿って市民のいる可能性のある国をひとつひとつ調べていかなければならないのだから気が遠くなる話である。

この国と交易をしていると思われる国が数十あるということなのでそれだけでも大変なのだが、売り渡された国と第三国が戦争をしてその第三国に捕虜として連れ去られたとなれば捜索範囲はもっと広がってしまうだろう。

そしてリーベリー、レオフォリオ、エクトスの位置だが、現時点でボーダーの遠征艇を使って行くとすると、それぞれ片道約20日、15日、40日となっている。

途中の寄港地での情報収集や目的の国に潜入して調査する等を含めると一番近い場所にあるレオフォリオでも40日から50日はかかるだろうし、エクトスだと3ヶ月近くかかってしまう。

それも現在の位置関係であり、どの国も玄界(ミデン)から遠ざかっているので出発が遅くなればなるほど調査隊の遠征期間が長くなる。

つまり上層部の迅速な決断が必要だということだ。

 

 

ゼノンの説明が終わると会議室の照明が再び点灯した。

城戸たちの表情は険しい。

それぞれが自分の役職に応じた問題を抱えているからだ。

3つの国を同時進行で調査するのであれば調査隊を3編成作らなければならないだけでなく艇も3つ必要となる。

ひとつずつ調査することにすると運が悪ければ1・2番目はハズレで3番目の国がアタリとなり、そこに行き着くまでに途方もない時間がかかってしまう。

調査隊も特別な訓練をさせなければ安心して送り出すことはできず、希望者を募っても人数が集まるかどうかわからない上に訓練にも相当な時間は必要だ。

とにかくツグミたちにできることはひとまずここまでで、後は上層部のメンバーが自分の役目を果たすだけである。

まだこの時点では質問すら出なかったため、会議は30分ほどで終了となった。

 

「霧科隊員とゼノン臨時顧問から現在の時点でわかっている範囲での情報を報告してもらったわけだが、各自持ち帰って検討してもらいたい。検討していく上でわからないことがあれば霧科隊員に連絡をして訊いてくれ。もちろん彼女の本分は学生であるから ──」

 

「城戸司令、お待ちください」

 

城戸がそこまで言いかけたところでツグミが制止した。

 

「ボーダー活動に専念するには学業との両立は無理だと感じましたので、六頴館高校には先日退学届を出して現在はフリーです。でも城戸司令から遠征とは別件の任務を与えられて並行して行っていますので少々忙しい身です。連絡をいただいてもすぐにはお答えできないこともあるかもしれませんが、その点はご了承くださいませ」

 

ツグミが高校を中退したことは城戸も知らなかったようで、あきらかに驚きと困惑の色が顔に浮かんでいた。

いくら彼女にしかできないことであったとしても彼女に甘えてしまい、16歳の少女の人生をボーダー一色に染めてしまうことに対しての心苦しい気持ちが顔に表れたのだ。

それにすぐ気付いたツグミが静かに笑みを浮かべて言った。

 

「学校で教わる勉強なんて今後いつだってできます。でも今でなければ意味のないことは今すぐにやらなければいけません。一日でも早く次の遠征を行い、行方不明になった市民を救出することこそ()()()()()()()()最優先事項なんですから、隊員であるわたしも自分のやりたいことややるべきことを整理し、優先すべきことからひとつずつ片付けていくことに()()()決めたんです。誰かに強いられたのではありませんからそんな顔をしないでください」

 

「すまない、ツグミ」

 

城戸はつい()()()と下の名で呼んでしまった。

この「すまない」という謝罪の言葉はボーダーの総司令官であるというよりも城戸正宗個人の気持ちが強かったからだ。

 

「謝罪の言葉はいりません。仕事を完遂した時に『よくやった』と褒めてくださればそれで十分です」

 

「そうか。ありがとう」

 

「感謝の言葉もいりませんよ。わたしは誰かのためだとか感謝されたいと思って行動しているのではなく、自分自身のためにやっていることなんですから」

 

「わかった」

 

城戸はツグミの言葉を聞き「相変わらずだな」と苦笑してしまった。

 

「では、ここで解散とする。次回の会議は4日後の7月2日の同じ時間。以上だ」

 

 

上層部のメンバーが会議室から出て行く様子を見送り、最後に城戸が出て行く時にツグミは声をかけた。

 

「城戸司令、少しだけよろしいですか?」

 

「ああ」

 

「以前にお願いしておいた医師(ドクター)のことですけど、どうなっていますか?」

 

「それなら白峰医院の院長に頼んでみたが承諾してくれたよ」

 

「ああ、わたしがトリオン切れで倒れた時に精密検査でお世話になった先生ですね。あの方なら安心です。でも医院のことは大丈夫なんでしょうか?」

 

「息子さんに任せるそうだ。まだ若いが腕が良く患者たちから信頼されているらしく、本人曰く『息子に譲って自分は楽隠居する気でいた』ということだから心配しなくてもいい。まあ、少々不安はあるらしいが優秀なトリガー使いが護衛をしてくれるのなら安心だと言ってくれた」

 

「よかった…。これも一日でも早い方がいいですからさっそく準備を始めます」

 

アフトクラトル遠征でしばらく保留となっていた件であったから急ぐ必要がある。

すでにツグミの頭の中からは次回の遠征のことはさっぱり消えてなくなり、エウクラートンへの再訪に置き換わっていたのだった。

 

 

 

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