ワールドトリガー ~ I will fight for you ~   作:ルーチェ

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352話

 

 

ミーティングルームに残されたガトリン、コスケロ、ラタリコフ。

彼らは自分たちの想像をはるかに超えていた「現実」を知り、頭と心の整理が必要である。

3人は敷かれた布団の上にあぐらをかいて座ると顔を見合わせた。

そしてラタリコフがガトリンに言う。

 

「隊長、ボーダーが協力してくれるのは想定していた範囲内のことですが、まさかアフトやキオンの連中と遭遇するとは思ってもみませんでした」

 

「俺も同じだ。アフトとキオンといえば近界(ネイバーフッド)の軍事大国の双璧で、そのトリガー使いどもが同じ家で暮らしているなど今でも信じがたい」

 

「それにしてもキオンが玄界(ミデン)に擦り寄っていたなんて初耳でしたね。おまけにボーダーとアフトは敵同士だというのに、エリン家当主を匿っている。ボーダーはこのふたつの国を天秤にかけて近界(ネイバーフッド)への進出を狙っているのではないでしょうか?」

 

コスケロがそう疑うのも無理はない。

玄界(ミデン)へ侵攻してきたハイレイン隊を追い返し、さらにさらわれた仲間を被害ゼロで救出している事実はボーダーがここ数年で力をつけてきた証拠で、キオンと手を結んだとなればアフトクラトルと徹底的に戦うのだと考えるのは当然だ。

しかし敵であるはずのアフトクラトルの人間、それもトリガー使いとして名を馳せているディルクを仲間にしてキオンの人間と一緒に住まわせているのだから誰であってもボーダーが何か企んでいると思うはずである。

 

「待て。今の情報の少ない状況で判断するのは危険だ。ボーダーがどちらに付こうとも俺たちには直接のところ関係ない。シノダ本部長が約束どおりに()()()()を提供してくれて作戦が成功すればガロプラはアフトから解放される。もちろんアフトによる報復を覚悟しなければならないが、少なくとも『神選び』が終わるまでは本格的な侵攻はないだろう。あと60日…その間にこちらも打つ手を考えよう」

 

「隊長は玄界(ミデン)の人間を信じているんですか?」

 

コスケロの質問にガトリンは即答した。

 

「俺たちは玄界(ミデン)に対して一方的に攻撃を仕掛け、少なからずボーダーに対して被害を与えている。彼らにとって俺たちはあきらかに敵だ。誘拐事件の時には利害が一致したことでひとまず手を結んだが、今回は俺たちのために協力をする理由はない。さっさと捕まえて武器(トリガー)を取り上げて情報を吐かせればいいというのに、彼らは俺たちを客人として扱ってくれている。そもそも信用できない人間に助けを求めてはるばる玄界(ミデン)までやって来るか? シノダという人間が武人であることに疑う余地はない。俺にはその確信があり、その男が信頼しているツグミという少女のことも信用できる」

 

「それはいつもの隊長の勘というヤツですか?」

 

「まあ、それもあるがそれだけではない。とにかく俺たちはボーダーを利用するつもりでいて彼らも俺たちのことを利用しているわけだが、双方に利益があるのであれば問題はない。それにガロプラが玄界(ミデン)を敵に回したくはないという理由で本部基地にのみ攻撃を仕掛けたように、ボーダーも我が国を敵にするのは得策ではないとわかっている。だからお互いに今の関係は壊したくはない」

 

ガトリンの言うことはもっともで、近界(ネイバーフッド)にあるガロプラと同様の境遇にある国と共同戦線を張るよりも有益だと判断してやって来たのである。

今さらボーダーの人間を疑ったところで意味はなく、逆に怪しい動きを見せれば今の関係は破綻してしまうだろう。

 

「ひとまず彼らの準備が整うまで俺たちにできることは特にない。()()()()と引き換えにトリガーと情報を渡せばそれで取引成立だ」

 

「しかし渡されたものが本物かどうか確認する手段はありませんよ」

 

「ラタ、その心配は無用だ。シノダはそんな卑怯な真似はせぬ。こちらのトリガーの情報が欲しいなら無理やり奪う手もあるというのにそれをしないということが証明している。ここは彼らの本拠地で、格納庫前で俺たちを手こずらせてくれた『斧使い』や『盾使い』、『ヒゲ』に『若いの』の4人以外にも優秀なトリガー使いは大勢いる。彼らがやろうと思えば俺たち3人などあっという間に制圧できるんだ。それをしないというのは穏便にことを済ませたいという意思を表していると俺は思う」

 

「たしかにそのとおりですね。わかりました。隊長がそう決めたのであれば我々はそれに従うまでです」

 

「そう言ってくれると助かる。…じゃ、玄界(ミデン)の文明の利器を使わせてもらおうか」

 

「それなら隊長が先に風呂を使ってくださいよ。風呂なんて近界(ネイバーフッド)では貴族や大金持ちしか使えない贅沢品だというのに、玄界(ミデン)では庶民でもごく普通に使っているというんだから驚きですよね」

 

「ああ。それにスイッチひとつでお湯が出てくるとか、水で流れるトイレとか近界(ネイバーフッド)のどの国にだってないだろうな。それだけ玄界(ミデン)は庶民の生活レベルが高いということだ。そういった点でも学ぶところは多い。思わぬ経験ができそうだ」

 

ガトリンはそう言って立ち上がるとバスルームへ入って行った。

彼らにとってバスタブに湯を張って入るという経験は生まれて初めてのことで、ガトリン、コスケロ、ラタリコフの順に入浴をする。

そして風呂上がりには冷蔵庫の中に入っている冷えたドリンクを飲み、清潔で心地良い寝具によって深い眠りに落ちていったのだった。

 

 

◆◆◆

 

 

翌朝、迅が自分の部屋で調理した朝食をミーティングルームへ運び、4人で食事をする。

メニューはトースト、ベーコンエッグ、生野菜サラダとシンプルなものだが、添えられたコーヒーがインスタントとはいえガロプラの人間にとっては超が付くほどの高級品であったため、玄界(ミデン)における庶民の生活のレベルの高さに改めて驚かされた。

 

「今日の予定は昨日の夜に言ったように、ガトリン隊長には俺たちと一緒にダムの見学に付き合ってもらう。で、残ったおふたりにはここでマーナとレクス、そしてテオの3人と一緒に過ごしてくれ。レクスとテオは年齢の割に賢いから話し相手にはちょうどいいだろう」

 

ガトリンの今日の予定は決まっていたがコスケロとラタリコフのふたりはこれといってやることはなく、また忍田が()()()()を用意するまでの数日間は彼らにとって何もすることはない。

だからといってアフトクラトルやキオンの人間、それも子供たちと交流して意味があるのかと考えてしまう。

だが考えたところで意味はなく、ここは素直に迅の指示に従うことにした。

 

「わかった。どうせすることがないのだから、玄界(ミデン)の生活に馴染んでいる近界民(ネイバー)の子供たちの観察も面白かろう」

 

コスケロがそう言うと、ラタリコフも同意とばかりに頷いた。

 

「そう言ってくれて助かる。ま、つまらなければテレビでも見ながら部屋でゴロゴロしてくれていてもいい。昼食はマーナがふたりに何かご馳走したいそうだからお任せした。楽しみにしていてくれ」

 

迅はそう言い残すと朝食の皿の片付けをしてしまい、ガトリンを連れてミーティングルームを出て行った。

 

 

◆◆◆

 

 

コスケロとラタリコフがマーナの部屋を訪ねると、ダイニングテーブルでレクスとテオが向かい合って「将棋」をしていた。

近界(ネイバーフッド)にも将棋やチェスに似たゲームはあるが一般的ではなく、ましてや子供がやるゲームではない。

 

「おはようございます、ガロプラのお兄さんたち。ここにお座りください」

 

レクスが無邪気に声をかける。

いくら子供であってもガロプラとアフトクラトルの関係を知らないはずがなく、彼の言動にラタリコフは驚いた。

レクスは自分の隣の席にラタリコフを座らせるのだが、アフトクラトルでは自分よりも格下の人間を隣に座らせるということは絶対にしない。

8歳にもなればそのルールを知らないはずもなく、よってレクスはラタリコフを自分と同格か目上の人物として遇しているということである。

 

(そうか…大人たちの確執を知らないというのではなく、子供である自分までもが大人たちのマネをして同じように従属国に人間を軽んずるべきではないと考えているんだな。そうでなければ私のような従属国の一兵卒に声をかけるなんてことすらしないだろう。それに子供ながらにも自分の価値観というものを持っていて、それが大人たちの決めたものではなく、自分が経験をした上でそれが正しいと考えて行動しているにちがいない。おまけに気位の高い貴族の息子だというのにそれを感じさせない。まるで親戚の子供のように親しげに話しかけてくる。しかしどうしてそんな態度ができるんだ?)

 

コスケロも同じことを感じていたようで、困惑した顔でテオの隣に腰掛けた。

 

「ジンの話だと勉強をしているという話だったが、これは玄界(ミデン)のゲームか?」

 

コスケロが訊くと、テオが答えた。

 

「そうです。これは『将棋』といってこの国特有のルールを持つゲームで、似たようなものなら近界(ネイバーフッド)にもありますよね?」

 

「ああ」

 

「でもこれは特別なルールがあって、敵の駒を取ると今度はそれを自分の駒として使用できたり、敵の陣地に入ると裏返って能力の高い駒になったりするんですよ。だからなかなか難しい。戦術や戦略、それに駆け引きなどを学ぶにはちょうどいいゲームだとツグミが教えてくれました。レクスはまだ8歳だというのにオレよりもずっと物覚えが早くて、今ではオレなんか全然勝てないんですよ、ハハハ…」

 

そんな話をしていると、マーナがふたり分の麦茶のグラスを運んで来てコスケロとラタリコフの前にそれぞれ置いた。

 

「レクスは将棋を覚えたばかりの頃は負けばかりでしたので、それが悔しくていろいろな人を相手に何度も何度も対局したんですよ。この子はせっかく玄界(ミデン)に滞在しているのだから玄界(ミデン)らしい勉強がしたいと言い出して、ツグミがこの将棋というボードゲームを教えてくれたんです。もうすっかりハマっちゃって、朝の一局が毎日の日課になってしまいました」

 

チェスでは対戦相手のキングを追い詰めた方が「チェックメイト」と勝ちの名乗りを上げるものだが、将棋の対局では負けた方が「負けました」と相手に告げて終わるのが常だ。

この自分自身で「負け」を決定するという仕組みの効果は子供にとっては絶大である。

一対一で戦い、運が介在する要素がないために負けた時には「言い訳」のできないゲームで、自分自身でゲームの負けを決定して宣言するのは精神的にキツイもの。

特にこれまで順調に進んできて挫折を知らない人間にとって赤の他人に「負けました」と言うのは屈辱ものである。

だから次は必ず勝ちたいと心に決め、自らを鍛えて高めようとする気持ちが生まれる。

レクスの周りには同世代の子供がおらず自然に年長者との対局となるわけだが、自分のことを子供だからと手を抜いたり甘やかす大人がいないために初めの頃は負けてばかりいた。

だから対局するたびに負けを宣言してばかりいてそれが相当悔しかったらしく、本人なりに努力したおかげで2週間も経つとレクスに勝てるのはディルクとツグミだけになってしまったくらいだ。

ツグミがレクスに将棋を教えた理由は他にもある。

集中して根気良く考えることが重要で、この「集中力×根気」が頭脳を鍛えることになるため、すぐに集中力が切れてしまう子供には良い訓練になるのだ。

それに対局の後には必ず「検討」を行い、どこが良かったのか、どこが悪かったのかを検討することで次へのステップアップになる。

そういった総合的な理由で将棋を教えたのだが、ツグミの想像以上にレクスは上達してしまったものだから嬉しい誤算というものであった。

今は対局相手がテオしかいないため、レクスは「自分の飛車・角はなし」とか「王将は相手の駒を取る時だけしか動けない」など自分にハンデとなる特別ルールを作ってテオにも勝つチャンスを与えるという余裕たっぷりながらも慎重に駒を動かしている。

一瞬の気の緩みが負けに繋がることを知っているからというだけでなく、二度と「負けました」とは言いたくないからだ。

 

「ボクはお父さまのような立派な人間になりたいんです。お父さまのことはトリガー使いとして尊敬していますが、それよりも領民を大事にする領主としてのお父さまが大好きで、いつかボクもそんな領主になって領民たちが安心して暮らせる世界を創りたい。別に将棋が上手くなったからといって立派な領主になれるわけではありませんが、いつか役に立つかもしれないと何でもやっておきたいんです」

 

レクスが嬉しそうに言う。

 

「ツグミに玄界(ミデン)へ連れて来てもらってからボクは毎日いろいろな経験をしています。今までに見たことのないものを見たり、食べたことのないものを食べたり、とにかく何でも初めてばかりのもので玄界(ミデン)近界(ネイバーフッド)に比べて進んでいるなと感じました。トリオンとトリガーに関しては近界(ネイバーフッド)の方が進んでいますが、人が普通に暮らすことに関して玄界(ミデン)はボクたちが想像もできないほど豊かで、それにこの街の人間は近界民(ネイバー)の侵攻さえなければ平和で幸せに暮らしています」

 

「……」

 

「ボクたち近界民(ネイバー)玄界(ミデン)へやって来てトリオン能力者をさらうことはあっても、ボーダーが近界(ネイバーフッド)へ侵攻することはありません。それは玄界(ミデン)の人たちはトリオンを必要としない文明を発展させてきたからです。ツグミがボクたち近界民(ネイバー)玄界(ミデン)でいろいろな経験をさせようとするのは、学ぶべきことがたくさんあるからだと思います。トリオンを使わなくてもこんなに豊かな生活ができるのですから、ボクたちだって近界(ネイバーフッド)で同じようにトリオンなしの文明を築くことができるはずです」

 

コスケロとラタリコフはレクスの利発さに驚くと同時に子供の頃から広い視野を持つことによって既成の概念に縛られない自由な発想ができるようになるのだと感心してしまった。

レクスが三門市に来てから2ヶ月ほどになるが、その間にツグミと迅は可能な限りいろいろな場所へと連れて行った。

遊園地や水族館などの娯楽施設だけでなく図書館や博物館、美術館などの知的好奇心をくすぐる場所を選んで連れて行ったのだが、レクスは特に玄界(ミデン)の地理に深く興味を抱いた。

ツグミは自分が小学生時代に使った教科書や地図帳を実家から持って来てレクスに与えると、毎晩夕食後に1時間ずつ講義をしてやったくらいだ。

彼は玄界(ミデン)に数千メートルを越える山や深海があるということ、見渡す限りの氷原や砂漠など想像もできない世界があるということを知り、テレビの紀行番組を目を輝かせて見入っていた。

彼にとっての世界の全てはアフトクラトルでもエリン家の領地という狭い限られたエリアであったが、自分の想像もできないほど広くて様々なものがあると知ったことで知識欲というものが目覚めたのだった。

それはちょうど小学生だった時期のツグミと同じで、知識欲を満たすためなら歩いて30分もかかる図書館まで通い、小遣いは書籍代に費やされていった。

レクスを見ていると自分の幼い頃を思い出し、つい面倒を見てやりたくなるのも無理はない。

そしてやりたいことを自由にさせていて、経験が自分の血肉になっていくような感覚をレクスもまた気付いたのだろう。

知識が増えることはいろいろなものを見る時にも一方向からだけでなくあらゆる面を見ることができるようになり、近界民(ネイバー)である彼が近界民(ネイバー)としてだけでなく玄界(ミデン)の人間から見たらどう感じるかなど理解できるようになったのだ。

そんな息子のことをディルクとマーナは頼もしく思えるようになり、レクスが欲するままにできる限りのものを与え、経験をさせるようにしている。

もちろんそれはボーダーの協力があってのことだが、城戸たち本部の上層部は特に関知せずツグミと迅の判断に任せっぱなしで、レクスはのびのびと育っているようだ。

 

マーナはレクスの頭を撫でながら言う。

 

「わたしはこの子に偏見というものを持たせたくはありません。ツグミから聞いた話ですが、アインシュタインというとても優れた物理学者がいて彼は『常識とは18歳までに身につけた偏見のコレクションのことをいう』という名言を残しているのだそうです。18歳までというのは子供の時という意味だということで、大人たちから『そんなこと常識外れだ』『常識的に考えてこうだ』とい教えられてしまうとそれを信じてしまい、固定観念とか偏見など柔軟な考え方ができなくなってしまいます。国や文化が違えば常識が異なったり、住んでる地域、性別、年代によっても考え方は違います。いろいろな要素を含め、それぞれの常識があるわけですが、常識は世間一般が決めていることではなくて個人個人の環境によって決められているものなのではないかとツグミは言うのです。常識は社会で健全であり実用的であるとされているけれども自分にとっての『常識』が相手にとっても『常識』とは限らない。さらに『常識』だと言われていることが必ずしも『真理』ではないと彼女は考えていて、わたしは彼女のような考え方や行動力を持つ人間に今まで会ったことがありませんでした。相手のことを考えるにはその人物のことを知らなければなりません。だからこの子にはいろいろな人に会わせたいと考えています。それが良い影響を与えるか悪い影響となるかはやってみなければわかりませんからね。ですからわたしはアフトから見れば従属国であるガロプラのあなたたちとこの子を交流させたい。そうすればアフトの人間であるこの子にも従属国の人たちの考え方や気持ちがわかるようになると信じているからです」

 

マーナの「息子を慈しむ母親」の気持ちを理解することは難しいが、人との出会いを大切にしたいという考え方にはコスケロとラタリコフも同意できる。

なにしろボーダーと敵対関係のままで終わっていれば自分たちがここにいることはなく、さらにアフトクラトルの人間は全て敵であるという考え方を改めようという気にはならなかったはずなのだ。

 

(アフト、特にベルティストン家の奴らはガロプラに攻め込んで来た『敵』であり『悪』だ。しかしその配下のディルク・エリンは直接手を下したのではなく、その家族であるマーナやレクスは我々に好意的に接してくれている。我々がボーダーと戦った時だって玄界(ミデン)の人間に恨みがあったわけでなくハイレインの命令で仕方なくやったこと。ごく一部の人間の考え方や行動によってそれがその国の総意であると思われたとすればガロプラは今頃玄界(ミデン)の敵となっていただろう。そうならなかったのは我々が任務に失敗し、ボーダーの人間と直接対話をする機会を得られたからで、相手が何を考えて何を望んでいるかを知れば戦わずに済むという道も開けるということをツグミは証明してくれたということだ)

 

コスケロはボーダーというよりもツグミという一個人の強い意思が近界(ネイバーフッド)玄界(ミデン)というふたつの世界を変えようとしていることをひしひしと感じ取っていた。

それはラタリコフも同じで自分たちが世界の変革の中心に近い場所にいることに気付き、「真理」だと信じ込んでいたものが音を立てて崩れていく様子を最前列の席で見ることができるのではないかという期待に胸が熱くなってくる気がした。

 

 

レクスとテオの対局は2時間ほどでレクスの勝利となり、コスケロとラタリコフはレクスから将棋のルールを教わると早速ふたりで対局をすることになった。

それをそばで身を乗り出しながら真剣に見ているレクスの姿にはあらゆるものから知識と経験を得ようとする知的好奇心の塊であることをまざまざと見せつけられたのだった。

 

 

 

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