ワールドトリガー ~ I will fight for you ~   作:ルーチェ

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353話

 

 

昼食はマーナが玄界(ミデン)へやって来て初めて知り、一番のお気に入りになった「お好み焼き」であった。

ダイニングテーブルの上に家庭用ホットプレートを置いて、彼女自ら豚玉を焼いてコスケロとラタリコフにもご馳走をする。

貴族の夫人が従属国の兵士に対してもてなしをすることにふたりは驚くが、玄界(ミデン)では身分差などなく、料理好きな人間が客にご馳走するのは普通のことだと言って楽しそうに豚玉を焼いていく。

コスケロとラタリコフのふたりは身分の差などない自由な世界の一片を見たような気がしたのだった。

 

 

午後は自由時間ということでレクスのお気に入りのプールで水遊びをすることになっている。

ポリ塩化ビニールのシートを組み立てたフレームに設置するだけでプールが完成するという手軽な「フレームプール」が1階のピロティーに設置してあり、ここでレクスだけでなくテオやマーナたちも水浴びをするのだ。

サイズは4メートル×3メートル×0.8メートルの大きなものなので大人でも十分に使うことができるため、今日はコスケロとラタリコフも参加しての水遊びとなる。

梅雨もまだ明けていないというのに正午の気温が30度を超える暑さだ。

住む世界や年齢は違っても水遊びは誰にとても楽しいもので、特に近界民(ネイバー)たちにとって水遊びは贅を尽くした娯楽なのである。

なにしろ水はすべて井戸か河川で汲んで運ぶという手間がかかるため入浴すら滅多にできないことだというのだから、きれいな水を惜しげもなく使うことができるとなればこれ以上の贅沢はない。

なみなみと注がれた冷水に身体を浸し玄界(ミデン)の庶民の娯楽を満喫している頃、迅に連れられた近界民(ネイバー)一行は七尾市にあるダムの見学をしていた。

 

 

◆◆◆

 

 

近界(ネイバーフッド)の国々において一般に言う「ダム」は存在しない。

河川をせき止めて水を貯めるための構造物を造るよりも優先順位が高いものが他にあるからである。

トリオン兵やトリガーに優先的にトリオンを注ぎ、人間の日常生活に必要なものは後回しというのだから仕方がない。

ダムだけでなく大規模で頑丈なものを造ることはすなわちトリオンを大量に消費することであり、城郭や城のような大規模な構造物でも戦争と直接関係のあるものにはトリオンを大量に注ぎ込むが、人々の暮らしに必要なものであっても王が不要だと判断したものには一切トリオンを使うことはないという始末。

近界(ネイバーフッド)で戦争が絶えないのもトリオンの元となる人間の奪い合いをやっているからで、トリオンだけに頼っている文明の弊害がこういったところに表れているのだ。

もし玄界(ミデン)の技術を取り入れた文明を広げることができたなら、人々の生活は一変するだろう。

河川にダムや堰を造ることができれば治水や利水に役立つことになり、上水道の整備だけでなく農業用水としても使うことができ、条件が整えば水力発電も可能となる。

人々の生活を豊かなものにすることを優先する指導者が登場すれば、玄界(ミデン)の技術は必ず役に立つはずなのだ。

キオンでは現在の元首であるテスタ・スカルキが玄界(ミデン)の文明にひとかたならぬ興味を抱いているから、彼が失脚するなどして国の方針が変わらないのであればゼノンが玄界(ミデン)で見聞きして得た知識はキオンにとって有益なものとなる。

アフトクラトルの場合は次の神と王がどうなるかわからないが、ディルクが国内でも有名なトリガー使いで領民から慕われているという事実がある以上は彼が玄界(ミデン)の知識を得るのは良いことである。

ガロプラに関してはガトリンたちが計画している「蜂起」が成功するか否かで大きく変わってくるのだが、迅がダムを見学させたことには別の意味があった。

 

 

ダム本体だけでなくそれに付随する各種施設をひと通り見学すると迅たちは三門市への帰途についた。

そして運転をしながら助手席に座っているガトリンに言う。

 

「あのダムだけでなく玄界(ミデン)の構造物はすべてがトリオンによる攻撃を受ければ簡単に破壊できる」

 

「ああ、それはわかっている」

 

「実を言うとああいったものは簡単に他所者には見せられないものなんだ。というのも玄界(ミデン)でも国同士の争いは絶えないわけで、もし敵がさっきのダムを破壊しようとして工作員を潜入させたとしよう。そうなるとダムのある川の下流に住む市民を人質にすることができる。ダムが破壊されたら大量の水が一気に川を下ってすべてを押し流してしまうからな。もちろんダムだけでなく空港や港湾、公共交通機関や大型商業施設なども同様で狙われやすい。だから本来なら近界民(ネイバー)のあんたたちには見せてはダメな施設なんだ。だけどあえてツグミが上層部にお願いして見学ができるようにしたんだが、どうしてそんなことをしたのか理由が分かるか?」

 

「それは玄界(ミデン)のトリオンを使わない技術を我々近界民(ネイバー)に教えたいから…だろ?」

 

「もちろんそれもあるが、それだけじゃない。ツグミはあんたたちがボーダーの敵にはならないと確信しているからだ。もし俺が近界民(ネイバー)の立場で玄界(ミデン)に侵攻しようと考えた場合、イルガーが1体いれば簡単にこのダムを破壊できるからボーダーに無茶な要求をしようとするだろうな。そうすれば無駄な戦力を使わずにトリオン能力者を捕獲できる。ツグミは非常に危険な賭けをしているのかもしれない。だけどあいつはあんたたちがそんな敵対行為は絶対にしないと信じている。あいつのことだから守りたいもののためなら命を懸けることに躊躇はない。だから仮によからぬことを企んでいるのであれば、あいつは(ブラック)トリガーを使って敵となる国を滅ぼしかねないだろう。ディルクとゼノンはツグミのことを良く知っているから俺の言っていることが大げさなことではないとわかるはずだ」

 

「ああ」

「わかっている」

 

ディルクとゼノンは静かに返事をした。

 

「一度仲間と認めたものに関しては全力で守るが、それを裏切るようなことをすれば敵とみなして全力で戦う。そういうヤツなんだ、ツグミって人間は」

 

迅はそう言ってから最後に付け加えた。

 

「ボーダーにとってあんたたちはアフトに利用された従属国の兵士であり、過去の本部基地襲撃はガロプラという国の意思ではないと判断している。だからボーダーはガロプラに対して報復しようなどという考えはないし、むしろ虐げられている国をアフトから解放させたいと考えているくらいだ。だからこそ俺たちは協力することにして例のモノを渡す段取りを進めている。そして蜂起に成功したとして、そのことでガロプラに対して恩を着せようという気持ちはない。そのことは覚えておいてくれ」

 

「承知した」

 

ガトリンは力強く答えた。

彼はボーダーや玄界(ミデン)に対して何の恨みなどなく、逆にボーダーの遠征艇を破壊できなかったことでアフトクラトルから独立しようとする気概が生まれたのだから結果オーライだと考えている。

もし遠征艇の破壊に成功したならばボーダーはまだC級隊員の救出はできずにいて、ベルティストン家が力を蓄えたままでディルクを生贄にして「神選び」に臨むことになるだろう。

そしてガロプラは特に恩恵を受けることなく、これまでどおりにアフトクラトルによる様々な搾取と不本意な戦闘を強いられる日々が続いたはずなのだ。

それがボーダー…というよりもツグミの機転によって「遠征艇の破壊によって遠征が遅れる」という虚偽の報告をし、ガトリン隊は任務を無事遂行したとして本国に帰還することができたのだった。

ボーダーの遠征艇の一部を物的証拠として示したおかげでハイレインを信じ込ませることができたわけで、仮に破壊に成功したとしてもあの時のガトリン隊のメンバーの中で証拠を持ち帰るというところまで頭が回った者がいたかどうかも怪しい。

そういった点でボーダー・ガロプラの両者にとって最善の結果を得られたのだった。

だからガトリンは玄界(ミデン)の重要な機密を近界民(ネイバー)である自分に見せたことを信頼の証として受け取り、自分もそれに全力で応えようと決心した。

 

玄界(ミデン)ではトリオンとトリガーとは無関係な文明が発達し、使い方によっては近界(ネイバーフッド)の国々を易々と滅ぼすことができるだけの力も持っている。玄界(ミデン)では使えないという兵器も近界(ネイバーフッド)へ持ち込んで使用することはそう難しくはないだろう。一瞬にして数万数十万の人間を殺し、その後何年にもわたって人類が生きられない不毛の土地に変えてしまうという恐ろしい『核兵器』というものも持っているということだから、ボーダーとの関係をこじらせてしまえばどうなるかわからない。それにツグミの持つ(ブラック)トリガーはその力こそ見たことはないが、数万にも及ぶキオンの大軍が大敗したという話が事実である以上は彼女に使わせてはならない。…なるほど、強大な力はそれを所持することで使用せずとも敵となる国々に圧力を掛けることができる。使ってしまったらそこでおしまいだが、使わないからこそ効果があるというものなのだな)

 

近界民(ネイバー)にとっての兵器はすべてトリオンによるもので、貴重なトリオンを使いもしないものに大量に費やすのは馬鹿げているという考えを持つのは当然である。

イルガーやラービットなど大量にトリオンを使うトリオン兵を作るのは使うためで、持っていることを誇示して敵の戦意を失わせるという使い方はしない。

しかしガトリンは人の手に余るような強大な力を持つ兵器や武器は使わずに敵を屈服させることができるのだという結果を導き出した。

 

(ボーダーがもし近界(ネイバーフッド)の国々を支配しようと考えたなら恐ろしいことになる。どこか適当な国を核兵器で滅ぼし、他の国に対して力を見せ付ければ簡単に支配できる。トリオンでできたものには効果はないが、そうではない一般市民の住む街は消え、生身の人間はそこで死ぬだろう。トリオン体に換装していたならばそこで死ぬことはないが永遠にトリオン体でいられるわけではなく、放射能とかいう目に見えない化学物質で身体が蝕まれて死んでいくということだ。玄界(ミデン)にはそんな恐ろしい兵器が15000以上もあるらしい。玄界(ミデン)の人間は何十回も人類を滅ぼせるだけの兵器を有し、そのおかげで国対国がバランスをとって見せかけだけの平和を維持しているのだとシノダは言っていた。我々近界民(ネイバー)はその核兵器に対抗する手段はないし、だからといって玄界(ミデン)を支配するだけの力もない。ならばボーダーとは良好な関係を築き、戦争状態にならないようにするしかないのだ。シノダが恐ろしい兵器の話をするのはボーダーと玄界(ミデン)に手を出せば滅びるのだから絶対に裏切るなという意味で、ツグミが我々のことを信頼していることをこうして証明しているのは『信義を守れば相手も信義で応えてくれる』ということを言いたいからなのだ)

 

ツグミの意図は正しくガトリンに伝わっているようだ。

彼女は自分がその場にいなくても迅や忍田が間違いなくやってくれると確信していて、エウクラートンへ発つ前にこれらのシナリオを作っていたのだった。

城戸に認めさせるには少々骨を折ったものの、これまでの彼女の行動と結果を鑑みて城戸も許可を与えるしかなかった。

実際に手配をしてくれる唐沢もツグミの()()()であるから嫌な顔ひとつせず面倒なこともやってくれているし、()()()()の手配も彼がやってくれている。

近界(ネイバーフッド)を旅しているツグミには知る由もないが、彼女が三門市に帰って来る頃にはボーダーだけでなく近界(ネイバーフッド)の国の中にも良い変化が表れていることだろう。

 

 

◆◆◆

 

 

迅たちがダム見学から帰って来ると、寮の庭にはバーベキューをするための準備ができていた。

近界(ネイバーフッド)の国々では肉食は極めて贅沢な行為だとされている。

それは食用の牛や豚を育てるために大量の穀物を栽培しなければならず、また育成に時間がかかるためにあまり普及していないのだ。

もっとも貴族や金持ちなら価格が高くても手に入れられるので毎日は無理であっても5日や10日に1回は夕食の食卓にのぼる。

しかし一般庶民には手が出ないので、養鶏で卵を産まなくなった鶏を食肉に転用するか、森で野生の鹿や熊を捕まえることができると煮込み料理にするのが精一杯であった。

だから牛肉やソーセージなどはガトリンたちにとって滅多に口に入らないご馳走で、それが自分で焼いて好きなだけ食べてもかまわないとなれば人生の中で最高の食事となるだろう。

ちょうど市内巡回任務から戻って来たヒュースが合流し、全員揃ったところで「ガトリン隊の歓迎会」が始まった。

ディルクのそばにいてハイレインの魔の手から守るという目的が果たされ、玉狛第2が解散したことでヒュースはボーダーを辞めるつもりでいたのだが、C級隊員の育成とB級隊員のレベルアップを最優先としているボーダーにとって彼は失いたくない「駒」なのである。

少なくとも「神選び」が終了してディルクがアフトクラトルに戻っても大丈夫だというまでは三門市に滞在しなければならず、それまでは玉狛支部の無所属(フリー)のB級隊員として働くという「契約」になっていた。

これはディルクが命じたことなのでヒュースは渋々従っているらしいが、ライバルとなる攻撃手(アタッカー)たちが何人もいるものだから本人もボーダーでの活動を適当に楽しんでいるようである。

 

ツグミは「赤の他人と仲良くなるには美味しい料理でもてなすのが一番」という考えを持っていて、ヒュースの時も自らポトフを作ってやったり、ゼノン隊の3人にもリクエストを聞いてできる限り要望に応えた。

そのおかげで彼らをボーダーの味方にし、アフトクラトル遠征を無事に終えることができたのだった。

一緒に同じものを食べて感動を共有し、同じ思い出を作って親密さを増していくことにより「兵士」ではなく「個人」として打ち解けて、生まれや育ちが異なっても同じ人間であると知るのである。

どこの国でもそうだが、戦争をしたい人間と実際に戦場で戦う人間は別である場合が多い。

戦争をしたい人間は戦争によって利益を得るからであり、そういった輩は戦場から遠く離れた安全な場所にいて死ぬことはまずない。

しかし兵士として戦う人間が戦争などしたくはなく、家族や友人と一緒に語り合い食事をしてささやかな幸せを満喫したいのだが、階級が下になればなるほど使い捨て感が強くなり、無事に帰還できる確率は非常に低くなる。

この場にいるゼノン隊、ガトリン隊は軍の組織の中で底辺というほどではないが、戦争になれば最前線で戦わなければならない兵士だ。

祖国に忠誠を誓っているといってもその根底にあるのは家族や友人を守るためで、嫌々ながら上の人間の命令に従っているだけなのである。

よって国の壁を取り除いてしまえば気持ちは一緒となり、腹を割って話し合えば争い事など起きようはずもない。

 

いや…3国間の争いは起きていた。

食べ盛りのヒュースとテオとラタリコフの3人が先を争うようにして肉を焼き、焼けた瞬間にはもう彼らの胃袋に収まってしまうという始末。

だから大量に用意した肉であってもどんどん減っていき、その減る様子を見れば我先にと加速してしまうのは無理もない。

大人組は缶ビールや缶チューハイ片手に優雅に食べているように見えるが、やはり肉メインであるから若者組に負けじとなる。

それをマーナとレクスが冷ややかな目で見ていて、肉と野菜をバランス良く食べていた。

 

「お母さま、近界(ネイバーフッド)でも食肉の増産に力を入れたら誰でも普通に肉料理が食べられるようになって、あんなふうに先を争いながら食べるなんてことをしなくて済むようになるよね?」

 

「そうかもしれないわね。こんなに美味しいお肉なんだからもっとゆっくり味わって食べればいいのに。…ほら、こっちのトウモロコシが焼けたみたい。レクス、食べる?」

 

「うん。玄界(ミデン)の食べ物はお肉だけでなく野菜も美味しいんだからみんなも食べればいいのに…。ああやって自分だけが良ければいいという考え方が争いを生むことになるって理解しないとダメだよ」

 

トウモロコシにかぶりつきながらレクスが子供なのに大人らしい感想を言う。

 

「みんながあなたみたいに賢い子供じゃなかったのよ。さあ、わたしたちはゆっくりと食事をしましょう」

 

マーナはそう言いながら優雅な手つきで自分の脇に置いた皿から肉を網の上に載せた。

実は肉の追加分は傷まないように冷蔵庫に保管しているのであり、テーブルの上に置かれている肉がすべてではないことを準備したマーナだけが知っているのである。

 

 

◆◆◆

 

 

ガロプラの3人にとって有意義な一日が終わろうとしていた。

 

「隊長、今日はとても充実した時間を過ごすことができました」

 

そう言うコスケロにガトリンが訊く。

 

「アフトやキオンの子供たちから学ぶものでもあったのか?」

 

「はい。ふたりとも良い意味で近界民(ネイバー)らしからぬ考え方を持ち、特にディルク・エリンの息子はこのまま玄界(ミデン)での経験を積むようであれば末恐ろしい領主になりそうです」

 

「ほう…。おまえがそんなことを言うとはよほどのことがあったらしいな?」

 

「はい。実は…」

 

コスケロは一日の出来事を説明した。

それを聞いたガトリンは腕組みをしながら黙って聞いており、話が終わるとしばらく目を瞑って何かを考えているようだった。

そして口を開くとコスケロとラタリコフが想像もしていなかったようなことを言い出した。

 

「我々は数日の内にボーダーから例の兵器を受け取ったらすぐに帰国し、タイミングを見計らって作戦を決行する。そして上手くアフトの連中を無力化したとしよう。しかし(マザー)トリガーと巫女を奪い返すことができてもアフト本国にこの情報が知られたら報復攻撃を受けることになる。もっともすぐにはできないだろうが、新しい神と王が決まればただちに侵攻してくるのは間違いない。よってそれまでに対策を考えておかなければならないのだが、我々には『旗頭』が必要だ。残念なことに7年前に王家は滅びてしまっていて、かろうじて王家の遠縁に当たる巫女はいるものの彼女では王にはなれない。そうなると我々の政治的・精神的な指導者となる者がおらず、国民の意思統一をすることは難しい。それではまたアフトに攻め込まれて(マザー)トリガーを押さえられてしまうだろう。そんなことになれば今度は従属国ではなく植民地とされ、国民はすべて奴隷とされるにちがいない。そこで影響力のある人間を暫定的に代表者とし、その人物の下で意思を統一してアフト支配からの脱却を目指したいと俺は考えている」

 

「その代表者とは…? 心当たりがあるんですか?」

 

「ああ。適任者ではあるがその人物を口説き落とすのはなかなか難儀しそうだ」

 

「それはもしかしてツグミのことですか?」

 

ラタリコフが口を挟んだ。

 

「彼女なら我々を導くこともできるだろうが、彼女には知恵だけ借りて実際に行動するのは我々でなければならない。これ以上彼女に負担はかけられないからな」

 

「それなら誰なんですか?」

 

「いや、今は言えない。本人の承諾を得てない以上はここで名を出すことは控えたい」

 

「気になりますが隊長がそう考えているのなら我々は従うまでです」

 

「すまないな。これはすべて俺の独断によるもので、おまえたちはそれに仕方がなく付き合わされたということになっているのだ。今聞いた話も俺の絵空事だと思ってくれ」

 

ガトリンが誰よりも祖国(ガロプラ)のことを愛していて、アフトクラトルの支配から同胞を解放したいと願って行動していることをコスケロとラタリコフは良く知っている。

だからガトリンが何をしようも信じて共に進む覚悟はあるのだが、万が一の時に部下である自分たちが罪に問われないようにといつも考えていて、隠し事をしている部分もあるために心配の種は尽きない。

しかしいざとなれば全面的に頼ってくれるので、コスケロとラタリコフはガトリンが再び計画を話してくれることを待つことにしたのだった。

 

 

 

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