ワールドトリガー ~ I will fight for you ~   作:ルーチェ

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363話

 

 

政庁前広場には会議場にいたすべての人間が集合していた。

興味がなければ見なくてもいいとリベラートが言ったものだから、逆に見てやろうという気になったのだろう。

そして何が始まるのかと待ち構えていると、ツグミがトランシーバーでリヌスに合図をする。

するとリヌスが動力付きのキックスクーターに乗って登場した。

電動機や内燃機関付きのキックスクーターは道路交通法および道路運送車両法の双方で原動機付自転車または自動車扱いとなる。

したがって免許がなくノーヘルのリヌスが使用するとなると問題があるのだが、ここは近界(ネイバーフッド)であるからそんなものは関係ない。

三門市にいる時には寮の敷地内でこっそり練習をしていて、これがツグミ以外の人間には初のお披露目となる。

見慣れない形の乗り物に乗って颯爽と走るリヌスの姿を観衆は珍しそうに見ており、リヌスは広場を一周するとツグミとリベラートのいる場所で停止した。

 

「みなさまにご紹介いたします。彼の名はリヌス。ここエウクラートン出身のトリガー使いで、現在はキオンの兵士ですがわたしの従者です」

 

リヌスを「従者」として紹介したのはリベラートの指示である。

エウクラートンの人間でありながらキオンのために働く兵士を「友人」として紹介しては彼女の王族としての()を下げると言うのだ。

たしかに平民でありキオンの軍属であるリヌスと王家の一員で次期女王候補のツグミが友人では釣り合わない。

 

(身分とか()とかそんなものにこだわる時点で旧態依然な考え方なのよね。友人になるってことは相手の人間性を認めるってことで、その人がどんな出自だとか現在の立場がどうかなんて関係ない。そんなことだからミリアムさんとリベラート殿下は不幸なことになったわけだもの。…でもふたりが結婚できなかったからわたしはここで生きているのだと思うと複雑な気分。まあ、エウクラートンにいる間だけだものね。その間は主従関係を演じてやるわよ)

 

ツグミはそんなことを考えているが、リヌスの気持ちは複雑である。

彼はツグミのことをひとりの女性として慕っているが、その恋慕の情が報われることがないことを理解している。

しかし諦められない気持ちもあり、友人という立場で心の空洞を埋めようとしていた。

そしてこの従者という役は彼にとって非常に歓迎すべきもので、全力でその役を演じようとしているのだった。

だからツグミに恭しくお辞儀をしてから次の指示を待つ。

 

「ここにご紹介するのは玄界(ミデン)の庶民の間で普及している『キックスクーター』という乗り物です。これには電動機が付いていて、このハンドルを操作するだけで走ってくれる非常に手軽な移動手段となっております。これは『電気』というものを貯めてそれを原動力として動くもので、その電気とは近界(ネイバーフッド)におけるトリオンと同じようなものです。ですがトリオンと大きく違う点があり、電気は太陽光や風力などによって作り出すことができるもので、近界(ネイバーフッド)でも発電は可能。つまり太陽が大地を照らし風が吹く限り、人々の生活に必要なエネルギーは生み出されるのでトリオンを使わずに済むのです」

 

見たことのない乗り物に乗ってひとりの青年が登場しただけなのだから、いくらトリオンを使わずに済むといってもそう簡単にイメージできるものではない。

しかし「玄界(ミデン)の庶民の間で普及している」という点で興味を引かれる人間が数人いるようだ。

その中のひとりの議員が手を挙げた。

 

「質問があります。先ほど庶民の間で普及しているとおっしゃいました。元技術者として申し上げたいのは、そのような機械が走ることができるのはこの広場のように舗装された滑らかな地面だけのはずです。ですから庶民の暮らしの中でどれだけ有用なのかどうも信じ難い。疑うつもりはないのですが、納得できる証拠のようなものはないでしょうか?」

 

若い頃は政庁にある研究室(ラボ)技術者(エンジニア)であったが引退して先代を継いで領主となった男性であるから目の付け所が他の人間とは少し違うようだ。

ツグミはその質問に答えた。

 

「たしかにエウクラートンや近界(ネイバーフッド)の国々のことしか知らない方にはにわかに信じられないのも無理はありません。首都・ニネミアを一歩出ると周囲は石畳の道が各地方へ伸びていますが、普段の生活に使う道のほとんどが自然のままの未舗装の道で、たしかにそんな道でキックスクーターは使いにくいですね。ですが玄界(ミデン)の…わたしの暮らしている街では舗装されている道の方が多く、庶民の手軽な移動手段としてこのキックスクーターだけでなく自転車というこれに似た乗り物などが普及しています。それも大人はもちろんのこと子供でも普通に利用しており、価格も高額なものではないので手軽に購入することができるものです。わたしは玄界(ミデン)でごく普通の庶民として育ちましたが、その庶民で子供のわたしでも買うことができます。それくらい玄界(ミデン)では庶民の暮らしが豊かで、子供でも自分の判断で物を購入することができるのです」

 

議員たちもキックスクーターが安価な玩具ではないことはすぐにわかった。

しかしそれを子供が市場で菓子を買うのと同じように購入できると聞けば気になるもの。

さらに別の議員から質問の手が挙がった。

 

「私にも質問させてください。その乗り物を動かす原動力が電気というものだとお聞きしましたが、その電気についてもう少し詳しい話をお願いします」

 

「わかりました。…といってもわたしは専門家ではないのでわかりやすく説明することはできません。でも説明しないと先に進めませんから、わたしにできる範囲でお話しいたします。まず、近界(ネイバーフッド)にも電気が存在するということから説明しましょう」

 

ツグミは雷の正体が電気であることや、異なる二種の物質を擦り合わせた時に埃などの細かいものを吸い寄せる現象も静電気という自然界に存在する電気だということから説明を始めた。

そしてその電気というもの ── 物理学の知識のない者に電子とか電荷などの専門用語を使っても理解できないのでアバウトな言い方にした ── を利用しようという学問が発達し、大勢の人間が研究して様々な機械や道具の原動力として使えるようにしたこと。

さらにその電気を作り出す方法がいくつかあり、近界民(ネイバー)にも馴染みのある風車や水車による小麦の精粉作業を例にして、それを電気に変える手順を話すと理解できた者とできなかった者の二派に分かれた。

ここまで理解できた者はさらに彼女の話に聞き入った。

運動エネルギーの概念について説明し、高いところにある水の持つ位置エネルギーが水車の羽を動かして電気を作ることや、熱エネルギーや光エネルギーによる太陽光発電はなんとなく理解できたように見えた。

燃料を燃やしてお湯を沸かし、その蒸気の力で蒸気タービンを回転させて電力を発生させる火力発電についてはヤカンで湯を沸かした時の蒸気の例を話すとこちらは大半の人間が理解できたようであった。

 

「電気についての説明はこれくらいにしてください。つまり近界(ネイバーフッド)で使用されている照明や暖房、機械や道具を動かすための動力がトリオンで、玄界(ミデン)ではそれが電気である割合が大きいということになります。トリオンが人間の生体で作られるものに対し電気は自然界にあるものから作ることができるため、人的負担がほとんどありません。こうしてトリオンを使わない文明が発達したわけです。いえ、トリオンの存在を知らなかったためにそれに代わるエネルギーが必要で、自然界にそれを求めたのでしょう。近界(ネイバーフッド)でもこの技術を使えばこれまでトリオンに頼っていたものの大部分を代替えして、その分のトリオンを節約することができるようになります。つまり(マザー)トリガーから供給されるトリオンの多くを国土の維持や天候・季節の調整に回すことができれば『神』の寿命は伸びますし、任意の割合で固定してしまえば女王が操作する必要もなくなるのです。玄界(ミデン)のボーダーという組織にも(マザー)トリガーが存在し、稼働しております。近界民(ネイバー)による襲撃からの防衛に使うだけですから操作する人間は不要なのです。わたしが女王に即位する条件として提示したのは女王になったら玄界(ミデン)の技術を導入して玄界(ミデン)と同じような生活を実現させ、(マザー)トリガーは国土の維持と天候・季節の調整()()に固定してしまおうというものです」

 

「そんなことをすれば敵に攻め込まれた時に国を守るためのトリオンはどうするんですか!?」

 

60代くらいの議員が手も挙げずに叫んだ。

 

「わたしは自ら他国に戦争を仕掛けることも、また他国の侵攻を黙って見過ごすこともしません。したがって戦争が起こらないように努力するのです。キオンとは不可侵条約を結び、一方が危機に陥っている時にはもう一方が全力で支援するという話は先ほどご説明しました。エウクラートンが玄界(ミデン)の技術を導入して食料の増産に力を入れ、食料不足のキオンを助けることによって軍事的な面では支援をしてもらうという密約がテスタ総統との間にできていますので、戦争になった時のことは考えずに平時の利益のことだけを考えてください。キオンは自分たちの食料確保のためにエウクラートンを他国に奪われたくないことはご理解できていますよね? それにわたしがミリアムの(ブラック)トリガーの所有者であり唯一の適合者だという情報が近界(ネイバーフッド)に広まりつつありますので、よほどの大軍で攻めて勝つ自信がなければ襲ってはこないはずです」

 

「しかし防衛に関するトリオン量をゼロにして万が一のことがあれば国が滅んでしまう。これまでのように一定の割合で武器(トリガー)の開発を続けるべきではないだろうか?」

 

「それはキオンが盟約を一方的に破棄してこの国を占領して国民を虐げるようになるとか、第三国の侵攻に対してキオンが一切救援をしてくれないとか…ですか? たしかにその可能性はゼロではありません。あなたのおっしゃるように万が一のことを考えて対策を講じなければなりませんね。この国の未来を案じて準備を怠らないようにしようという考えは必要です。では国防のためにどれだけのトリオンを使おうとおっしゃるのでしょうか? 1割ならどうでしょうか? 2割ないと不安ですか? 3割あれば大丈夫だと確信持てますか?」

 

「それは…」

 

何も言えなくなってしまう老議員。

国防に使うトリオン割合など決まった答えがあるわけではない。

それに国防にトリオンを注ぎ込めばその他に回す分のトリオンの量が減ってしまうことになり、国民の生活を圧迫してしまうことになるのだ。

そして(マザー)トリガーの出力を上げてしまえば「神」の寿命を縮めることになる。

近界(ネイバーフッド)ではトリオン不足を補うために戦争を行っていて、勝つためには国民の生活に費やす以上のトリオンを戦争に費やしてしまうことが一般的である。

為政者は戦争に勝てば豊かな暮らしが保証されるのだと国民を言いくるめて戦争のためには貴重なトリオンを湯水のように使い、有能な若者をトリガー使いにして戦わせている。

国民の生活を向上させる研究や技術開発よりも戦争に勝つための武器(トリガー)開発にのみ熱心で、庶民の生活レベルが玄界(ミデン)と比べると何百年も遅れていると感じてしまう。

近界民(ネイバー)とは戦争が起きないように働きかけることや武器(トリガー)開発以外のことに力を入れようなどと考えたことすらない民族であるから、ツグミの提案を「異端」のものだと思うのも無理はない。

 

玄界(ミデン)でも過去にはたくさんの戦争が各地で起きていて庶民の生活を圧迫していました。わたしから見ると今の近界(ネイバーフッド)はそれと同じ状況で、愚かなことを繰り返してお互いに疲弊しているものですから非常にバカバカしいことをしているなと感じます。現在の玄界(ミデン)でも戦争はゼロにはなりませんが、重要なのは戦争を起こさないよう努力することで、それは人々の意識の改革から始めるしかないのです」

 

この場に集まっている議員たちも戦争などなく平和な日々が続けば良いと思っている。

エウクラートンの人間は権力欲や金銭欲があまりなく温厚な性格であるため、国内での争いは起こらない。

だから自分の領地の領民が飢えることなく、毎日が平穏であればそれで十分だと考えている。

しかし他国からの侵略には非常に神経質になっており、国防に関する武器(トリガー)開発には熱心なのだ。

そこに近界(ネイバーフッド)の実情に詳しくない玄界(ミデン)の小娘が事実上武器(トリガー)開発を中止にしようと言い出したわけで、いくら美辞麗句を並び立てたところで納得できるはずがないと頑固に否定する者がいるのは仕方がないことである。

もちろんツグミも彼らの感情やエウクラートンの置かれている状況は理解していて国防に使うトリオンをゼロにする気などない。

ここはゼロにすると言っておきながら、議員たちの気持ちも汲んで妥協するという形で収める予定なのだ。

もしツグミが()()()玄界(ミデン)の小娘であれば聞く耳を持たない人間であっても、彼女が次期女王候補者であるという「力」を持つ立場であるから議員たちを交渉の場に引きずり出すことができた。

あとは彼女の交渉術次第である。

 

ツグミはリヌスに指示をする。

 

「アレを出してください」

 

リヌスは背負ってきたリュックサックの中からドローンとそのコントローラーを取り出した。

ドローン本体は地面に置き、コントローラーをツグミに渡す。

 

「ではこれからもうひとつ面白いものをお目にかけましょう。これはドローンという機械で様々な目的に利用できますが、こうして上空から地上の様子を撮影することが多いです」

 

そう言ってツグミはドローンの操縦を始め、手元のモニターに上空から撮影した映像を映し出した。

議員たちはドローンが飛行する様子を物珍しそうに見ている様子が映っているので、彼女は適当なタイミングで声をかけた。

 

「興味のある方はこちらへいらしてください。ここにあるモニターにみなさまの様子が映し出されていますよ」

 

数名の議員がツグミに近付き彼女の背後からモニターを覗き込んだ。

すると大げさな声を上げて驚く。

 

「おおっ! これは…!?」

 

ひとりの議員が映像を見ながらドローンに向かって手を振ったりジャンプをする。

自分の姿がモニターに映るものだから面白いのだろう。

さらにその議員の様子が滑稽だと、さらに数人の議員が近付いて来た。

しかし小さいモニターだから全員が覗き込むことは不可能だ。

 

「順番に交代で見てください。…じゃあ、もう少し高度を上げて広域を撮影してみますね」

 

ツグミはドローンの高度を上げて広場全体が映るようにし、さらに政庁の建物全体が映るまで高度を上げた。

 

「偵察用トリオン兵の中にこのように上空から地上の様子を撮影してトリガー使いに伝える役目をするものもあるようですけど、これは庶民が自分の趣味のために使用したり、軍事以外の作業などに使ったりするものです。これもまた電気を使用していて、本体・エネルギー共にトリオンは使用していません」

 

そう言ってからスイッチをONにするとドローンの姿が消えてしまった。

それが一瞬のことだから観衆は驚く。

しかしこれはアフトクラトル遠征用に調整した偵察用ドローンで、本体の底面を曇りガラスのような素材にしておき、中にあるカラーLEDライトで光を当ててやると全体がぼんやりとLEDの色で発光するようになっていて、これでドローン本体を任意の色に変化させる「光学迷彩」を利用したのだ。

アフト遠征では使用することはなかったが、ツグミがエウクラートンへ行くことになったので冬島から借りていた。

コントローラーも冬島のスイッチボックスではなく普通のものに変更してあるのでツグミでも容易に操作できるのである。

 

「姿を消したのはドローンの色を背景の空と同じ色に変化させたためで、これならトリオンを使っていませんので敵のレーダーにも見付かることはなく、軍事目的にも使用できるのです。そしてこれもまたさっきのキックスクーターと同じく庶民が普通に購入できるほどの価格で、ドローンを使って撮影した映像を大勢の人で共有して()()()文化も広まっています。さらにもっと大型のドローンですと荷物を運ぶこともできますし、農作業に使用できるドローンもありますから様々な分野において人手不足の解消も可能です」

 

スイッチをOFFにして姿を元に戻してからドローンの高度を下げて無事に回収をした。

 

「キックスクーターとドローンのエネルギーは電気で、その電気を作る…つまり発電ですが、それを行うための機材も持って来ていてそれをわたしが滞在している迎賓館の中庭に設置してあります。そこで太陽光を集めて発電をし、これらの機械の中にあるバッテリーに充電をして動かすのです。興味のある方は申し出ていただければ会議の終了後にわたしがご案内いたしますよ」

 

これだけのものを見せられたら誰だって興味を持つに決まっている。

中には元技術者(エンジニア)もいて、近界(ネイバーフッド)にはない技術を見てしまったらもっと詳しく知りたいと思うものだ。

新しい武器(トリガー)を開発するには長い時間と大量のトリオンを消費するしトリオン兵を1体作るにもかなりの量のトリオンが必要となる。

しかし今見た玄界(ミデン)の道具はすでに完成されたものであり、トリオンを使わずに済むとなればその有用性は誰よりもわかるのだからぜひ自分でも使ってみたいとも思うはずだ。

 

リヌスがドローンを片付けていると議員の中で最も若い20代の青年がツグミに質問した。

 

「質問があります。あなたは玄界(ミデン)の人間であり、自分から望んで女王になりたいとは考えていないように思えるのですが、正直な気持ちを教えてもらえますか?」

 

王族の人間に個人的なことを直接質問してくるとは不敬であると一蹴してもかまわないのだが、ツグミはこの青年議員に自分と似たものを感じて答えることにした。

 

「あなたのおっしゃるとおりです。わたしは自分がオーラクル家の血筋であることを知らなければ玄界(ミデン)の家族や友人たちとささやかな幸せに満ちた日々を過ごすことができたでしょう。ですがわたしが次期女王候補だと教えられてしまったら無視することもできません。ならばわたしにしかできないことはわたしがやるしかないと、こうしてみなさまの前で自分の身分を明かしてエウクラートンをどのような国にしたいかを表明したのです」

 

「では玄界(ミデン)の技術を導入してこの国をより良い国にすることであなたには何か得をすることはあるのですか? 近界(ネイバーフッド)のトリオン技術は玄界(ミデン)にとってあまり価値のないもののように感じるのですが」

 

これまでツグミは玄界(ミデン)ではトリオンなどなくても何も問題なく、むしろトリオンを使わない文明が栄えていると証明したのだからそう言われても当然だ。

 

「価値があるとかないというものはあなたが判断するのではなく玄界(ミデン)の人間が決めるものですよ。他人から見たらくらだないものであっても自分にとってはかけがえのない大切なものってあなたにもあるのではなくて? それに価値といってもいろいろなものがあります。金銭的なもの、軍事的なもの、精神的なもの…それぞれ違いますし、何に高い価値を見出すかは人それぞれですから価値があるとかないとかはそう簡単に判断できるものではないとわたしは考えています。そしてこの国と国民が幸せになることができたなら、それはわたしが満足するというよりも亡くなった祖母や父の方が喜ぶと思うのです。ふたりにとっては命を懸けてまで守りたかった大切な国なのですから。正直言うとわたしにはこの国に対して深い思い入れはありません。ですがわたしの祖父や大叔母が今を生きている国であり、わたしに助けを求めているのであればそれを無碍にはできませんから、わたしにやれることを全力でやろうとするのは当然です。これを損得勘定で判断できはしません。損であってもやらなければならないことはやります。得をするのなら張り切ってやりますけどね」

 

そう言ってツグミは微笑んだ。

 

 

 

 

中断していた議会を再開するために議員たちは会議場へと引き返し、改めて審議をやり直すことになった。

ツグミがどのような気持ちで女王の大役を引き受けることになったのか、また彼女が女王になることでエウクラートンにどのような変化が訪れるのかなどが理解しやすくなったことで審議も順調に進んでいく。

しかし数時間の話し合いで決められることではなく、続きは翌日に持ち越しとなる。

そして会議終了後、希望者45人 ── つまり全員がソーラーパネルとポータブル電源装置の設置してある場所へと案内されてツグミから太陽光発電の仕組みについて説明を聞いた。

普段何気なくその恩恵を享受していたエウクラートンの人間も改めて太陽のありがたさを意識したようで、(マザー)トリガーが文字通り「母」であることを心に刻み込むことになったのだった。

 

 

 

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