ワールドトリガー ~ I will fight for you ~   作:ルーチェ

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372話

 

 

忍田が自宅に帰り、迅も自室に戻ってしまうとツグミは城戸から与えられた「課題」に取りかかった。

課題とはボーダーという組織全体で行う茶番劇のシナリオを考えることだ。

「三門市民救出計画」を進める上でどうしても人型近界民(ネイバー)の協力なしにはできないので、いつまでも隠し通すのではなくいっそのこと情報公開してしまおうという()()()()である。

20年以上前から近界民(ネイバー)が人間であることを知っていて彼らの技術を使った武器を作っていたり、近界(ネイバーフッド)へは何度も行っていることなど「事実」を話すことは絶対にできないから、これまでの公式発表及び事実に矛盾しない「真実」を作り上げなければならないのだ。

ツグミはすでに城戸からいろいろ聞かされていて、新体制になってから参加した根付や鬼怒田、唐沢たちですら知らないディープな事実を知っている。

そうやっていくつもの()()は与えられているので、後はそれらを使って()()をする。

たしかにツグミの得意分野である。

 

(可能な限りは真実を伝えなければならないけど、少しでも矛盾したところがあればマスコミの連中に突っ込まれるだろうし、変に探りを入れられてはかなりヤバイ。その時には上手く誤魔化すための答えも用意しておかなきゃいけないけど、まずは時系列に沿って起きた出来事からまとめてみよう)

 

ツグミは自分のノートPCを起動させ、Excelで表を作って織羽と有吾が三門市に姿を現した時点からの出来事を入力していった。

21年前にふたりがやって来て、城戸と最上を仲間に入れてボーダーが発足。

軍資金は織羽の養父となった霧科文蔵から出ており、現在の玉狛支部が旧ボーダーの本部基地として新体制になるまで使用されることになる。

織羽が所持していた(ブラック)トリガーを(マザー)トリガーとして運用し、トリガー作成にはここからトリオンを抽出していた。

翌年に中学生だった忍田と林藤が加入し、さらに美琴が加わってしばらくの間は7人で活動していった。

19年前に織羽と美琴が結婚し、16年前にツグミが誕生。

13年前には文蔵が他界し、ボーダーの財源は織羽に遺された遺産から賄われた。

9年前に織羽と美琴が()()()()で他界、ツグミは忍田に引き取られた。

ここで迅や最上と出会うことになり、7年前にツグミはボーダーに仮入隊した。

以降、次々に隊員が増えていき、そして5年半前に遠征が行われて隊員の数が半減。

5年前の第一次近界民(ネイバー)侵攻と続き、この時点でボーダーという組織が公となった。

ここまではボーダー関係者でも一部の人間しか知らない「事実」とされるもので、当然のことながら民間人が知る由もない。

 

さらに続く。

4年半前に新体制のボーダーが発足し、本部基地が現在の場所に建設される。

この時にボーダーの(マザー)トリガーが玉狛支部から密かに運び込まれていた。

組織の拡大に連れて隊員・職員・技術者(エンジニア)を募集し、活動内容も一部を除いては公表されていく。

そして今年の1月20日にアフトクラトルによる大規模侵攻と2月19日のガロプラによる本部基地襲撃。

6月12日には遠征部隊がアフトクラトルにおいてC級隊員を救出…等の重要な事項を入力していった。

この表を基本として、そこにキオンの諜報員による拉致事件やガロプラとの取引といった自分と近界民(ネイバー)の関わりを追加していく。

 

(第一次侵攻の時には武器(トリガー)を使ってトリオン兵と戦っている姿を民間人に見られているのだから、それ以前にトリオンとトリガーの技術を手に入れていたことにしないと矛盾が出てくる。この時に人型もいたけど民間人には目撃されていなかったのはラッキーだった。人型が確認されたのはわたしが有人での近界(ネイバーフッド)往還に成功した時になっているんだから、武器(トリガー)近界民(ネイバー)から手に入れたという言い訳はできない。そうなると遅くとも5年以上前には何らかの手段で武器(トリガー)を手に入れていて、それが近界民(ネイバー)の武器とは知らない状態で複数所持していて、10人弱の隊員たちがそれを使ってトリオン兵と戦ったことにしなければならない。う~ん…そこを誰にも突っ込まれないものにしないとその後の話が説得力のないものになっちゃう。難しいな…)

 

難しいと言いながら頭を悩ませるツグミだが、彼女にとってそれは難易度の高いゲームを楽しむようなものである。

困難なものや誰にもできそうにないものをクリアする快感を得るためと、それが自分の将来のためになるとなれば張り切ってしまうのも無理はない。

 

(つまり武器(トリガー)をこちら側の世界に持ち込んだ近界民(ネイバー)がいたけれど、城戸司令たちはその人物が異世界から来たとは想像もしていなかったということにすればいいのよね。だったら…)

 

ツグミには名案が浮かんだようで、机の上に置いてあった手帳に思い付いたことを書き連ねる。

 

(そうなるとボーダーの創設時期が問題になるけど、今の玉狛支部の建物を購入したのが21年前だからその記録は調べればわかること。意味もなくあんな建物を購入したんだから、それなりの理由とお金の出処は明らかにしないと変だわ。だから…)

 

また名案を思い付いたらしく、ツグミは手帳にサラサラとペンを走らせた。

順調に進んでいくが時間切れとなってしまった。

現在の時間は深夜11時。

ツグミの絶対に曲げられない信念の中に「十分な睡眠」がある以上はいくら重要な案件であっても後回しにし、間違っても夜更かしや徹夜をしてはならないのだ。

それに毎朝の木刀の素振りと朝食の準備などやることもたくさんある。

 

(続きは明日にしよう。そして明日は今日よりも良い日にしなきゃいけないものね)

 

ツグミは自分にそう言うと寝間着に着替えてベッドに横になった。

久しぶりの自分の「家」、そして自分のベッドで寝たために、瞬く間に深い眠りの中に落ちていったのだった。

 

 

◆◆◆

 

 

翌朝、ツグミは朝の仕事を済ませてしまうと自室の大掃除をした。

部屋の換気は迅にお願いしていたものの、40日以上も使っていなかったのだから埃は溜まっている。

だから雑巾がけや掃除機をかけながら前夜の仕事の続きをすることにしたのだ。

 

ツグミは掃除をしながら思い付いたことがあると、その都度机の上に置いてあった手帳に書き込んでいく。

そして自室の掃除が終わると道具を片付けてから机に向かった。

ここから本格的にシナリオを考えようということで、昨日のうちに作っておいたアイスティーでクールダウンしながら年表と自分のアイデアを見比べる。

問題となる点を上げ、それをひとつひとつ解決する手段を考えて箇条書きにしていくと、ひとつの物語のプロットのようなものができあがった。

それをExcelで作った年表に加えていき、それをプリントアウトして「第一案」は完成だ。

 

大雑把ではあるがひと通りの流れができあがったところでツグミは城戸に面会のアポを取ろうとしてメールを入れた。

できるだけ早いうちに30分ほどでかまわないので話がしたいという内容である。

毎日のように行われる会議だけでなくスポンサーとの面会や会食など忙しい人であるから、会える時間がある時に会わなければ次はいつになるかわからない。

それにツグミ自身もやることが多いので空き時間を効率良く使わないと睡眠時間を削られてしまうのだ。

 

 

すると1分も経たないうちに城戸からの音声通話の着信があった。

 

「はい、ツグミです。お電話ありがとうございます」

 

「今すぐに本部基地まで来ることができるか?」

 

「あ、はい」

 

「ではすぐに私の部屋まで来い。今日は午後1時から出かけてしまうが、それまでならここにいる」

 

「わかりました。ではすぐに…20分以内にそちらにうかがいます」

 

「ああ、待っている」

 

電話は城戸の方から切ってしまい、ツグミは約束を守るために急いで出かける準備をした。

 

 

◆◆◆

 

 

城戸はツグミの作成した資料を見ながら彼女の説明を聞いた。

時系列に沿って実際に起きた「事実」、その中で公になっている事項と秘密になっている事項、そして実際には起きていないが公表するに当たって起きた出来事ということにする「嘘」と3色で区別した資料は非常にわかりやすくできていて、城戸はツグミの手際の良さに感心してしまった。

 

「この短い時間に良くここまで考えついたな。ただし気になる点がある」

 

「はい。ご質問をどうぞ」

 

「この年表は良くできているが、重要な点で必ず最上ひとりだけが関わっていることになっている。それはどうしてだ?」

 

「簡単なことです。最上さんは故人ですから、マスコミや市民に公表する時に何か疑問を持たれても本人がもういないのですから確認する方法はありません。それで諦めてもらいます。もしこれが存命中の人物、たとえば城戸司令だったとすればきちんとした答えを貰わないうちはマスコミたちも引き下がらないでしょう。そのために最上さんには重要な役目を負ってもらうことにしました」

 

「ふむ、たしかにわずかな矛盾に気が付いた人物に突っ込まれると他の部分にも影響が出てくる恐れがある。誤魔化す必要がある時には最上が関わったことで我々は詳しいことを知らないと突っぱねることで済まそうというのか。なかなか悪知恵が働くな」

 

「お褒めいただき光栄です。他に何かありますか?」

 

「ああ。ボーダー創設に関しては空閑と織羽が中心となっているが、おまえのシナリオでは空閑は出て来ないのだな?」

 

「はい。以前に城戸司令からお聞きした話ですと実際には大きな役目を果たしていたわけですが、その事実を公表すると空閑有吾という人間のことを探られます。まさか20年以上も前に自分の意思で近界(ネイバーフッド)へ赴き、近界民(ネイバー)と交流があってその後何度もこちら側の世界と近界(ネイバーフッド)を行き来していたなんてことがバレたらそれこそボーダーは近界民(ネイバー)と組んでいて、第一次侵攻はボーダーの()()()だったということにされてしまいます。有吾さんは()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということになっているんですから、あの人にはこの茶番劇に登場しないでもらいました」

 

「なるほど、良く考えているな。それにこのシナリオではボーダー創設の際のスポンサーの文蔵氏との関係や本部基地に使用していた玉狛の建物の購入の理由も違和感はない。たしかにあの頃の私たちは全員が剣術を学んでいたから、その同好会を作ってその稽古場所として文蔵氏にあの建物を買ってもらったという流れには、当時の事情を詳しく知る者がいなければ反論できはしない。おまえが言うように川の上の建物で周囲に人家がないことは誰にも迷惑をかけずに済むということで理屈が通る」

 

「玉狛のあの場所は若い男の子が思う存分暴れられる場所としては理想的ですもの。それに文蔵氏は元が侠客ですから、そんな元気な男の子のことが気に入っていたというのも自然な成り行きですし、若い有能な人物には惜しげもなく援助をしたという霧科文蔵という人間のエピソードのひとつとしてありそうじゃありませんか」

 

「そうだな。実際にあの人はボーダー創設の理念に同意して空閑の意見を取り入れ、身寄りのない織羽を養子にしたのだからな。…それで織羽のことは最後まで近界民(ネイバー)とは気付かなかったということにしたようだがそれはどうしてだ?」

 

「だって近界民(ネイバー)が人間だったということはわたしが近界(ネイバーフッド)へ行って()()()()()()ことになっているんですから。織羽のことは何らかの理由で記憶を失った正体不明の人物だったことにして、身寄りがないので文蔵氏の養子になったという設定にしてあります。山中で保護された時には大怪我を負っていて衰弱し、自分の名前しか覚えていなかったという謎の青年が持っていた『武器(トリガー)』。こういう設定にしておくと、こちら側の世界のどこかにトリオンを研究したり武器(トリガー)を作る秘密研究所があり、そこから脱出してきたかのように思えると考えました。いかにも漫画やドラマの中にあるチープな設定ですけど、だからこそ異世界からの侵略者が蔓延る今の三門市にはピッタリで誰もが信じそうなものになるわけです。この織羽という青年はどこかの秘密研究所で研究員かトリオン体の被験者で、そこから武器(トリガー)を奪って逃亡。逃走中に事故に遭って記憶を失うほどの負傷をしてしまったと当時の城戸司令たちは考えていた…という流れであれば不自然ながら自然な感じになります」

 

ツグミの言うように秘密研究所だとか、そこの研究員が機密事項の武器(トリガー)を奪って逃走したとか、大怪我をして記憶喪失になったとか、普通の世界では奇想天外なフィクションのネタであるが、三門市の現状はそれ自体がフィクションであるかのようだから、こんな嘘のような本当の話があってもおかしくはない。

さらにこの話は若い頃の城戸たちが想像したことであり実際にそんな秘密研究所の存在が確認されたのではないという設定であるから、真相は誰にもわからないこととして済ませてしまうこともできるわけだ。

 

「正体不明の謎の青年、それが何の目的で作られたのかわからない()()…なんてものがあれば若い好奇心の塊のような()()()たちが興味を示さないわけがありません。最上さんがその物体を持ってどこかへ行き、複製したものを持ち帰って来た。それがボーダー初の武器(トリガー)、のちに『弧月』と呼ばれるものになったという設定はどうでしょう? もちろんそれは最上さんが勝手に行ったことであり詳しい話を聞かされていないのでどのようにして解析して複製をしたのかはわからないということにしておきます。そして今になって思えば、当時は日本人だと疑う余地のなかった織羽が近界民(ネイバー)だったのではないかと考えられるということにしておくことで、人型近界民(ネイバー)の存在をつい最近まで知らなかったことにできますし、武器(トリガー)ついても最上さんだけが真相を知っているということにすれば城戸司令には答えたくても答えることはできない。そして最上さんやスポンサーになってくれた文蔵氏のことは故人であり遺族に迷惑がかからないようにということで匿名扱いにするという手もあります」

 

城戸はツグミが賢い子供だと考えていたが、自分の想像をはるかに超えた才覚の持ち主だということに気が付いた。

()()は用意してあったといってもこの短時間で良くできた()()に仕上げてあるのだから、並の人間にはできない芸当である。

そんな並の人間にはない才能を持つもうひとりの人間の顔を城戸は思い浮かべていた。

 

(織羽、おまえの娘はおまえに良く似ている。近界(ネイバーフッド)玄界(ミデン)の友好の架け橋になる組織を作りたいと言い出した時のおまえと同じような嬉々とした顔で未来(ゆめ)を語るこの子は間違いなくおまえの娘だ。今もこうしてボーダーのために身を粉にして働いてくれている。おまえの遺志はこの子に引き継がれているようだ。いつまでも見守ってやってくれ)

 

織羽のことを思い出したせいか、城戸の表情はかつての朗らかで良く笑っていた頃のものに戻っていた。

それを見たツグミはその「正宗おじさん」と呼んでいた頃の彼に戻ってくれたことが嬉しくて、次の話に移るのをためらってしまう。

話を続けると再び城戸()()になってしまうものだから、このままでいてほしいと願うのは無理もない。

しかし城戸の方からツグミの「小さな願い」を壊してしまったのだった。

本部総司令の顔に戻ってツグミに言う。

 

「このボーダーの元になったのがトリオン兵による市民の拉致、いわゆる神隠し事件を個人的に追っていた自警団ということにして、その行動の中で武器(トリガー)がトリオン兵に対して効果があることを知り、第一次侵攻の時にはその自警団のメンバーがすべての人員と武器(トリガー)を使って近界民(ネイバー)に挑んだ。トリオン兵にはこちら側の世界の既存の兵器が一切効果なしと知り、自分たちなら戦えると判断したために出動が少し遅れたという理由にもなる。ボーダーがもっと早く出動すれば犠牲を減らすことができたなどと一部の市民から非難されたからな」

 

「はい。あの時は『こいつらのことは任せてほしい。我々はこの日のためにずっと備えてきた』なんて格好つけていましたけど、実際にはその前の遠征で隊員は半数になり、本格的な迎撃や防衛戦は初めてでしたから被害をあれ以上広げないことが精一杯でしたね。それでも死者約1200人、行方不明者約400人は旧ボーダーの当時の実力の結果。二度とこんな悲劇を生まないためにあなたは冷徹な人間として振る舞い、組織をここまでに大きくした。そんなあなたのことをわたしは何も知らず、ただ近界民(ネイバー)への憎しみだけで動いていたと思い込んでしまいました」

 

「それは仕方がないことだ。それに実際私は近界民(ネイバー)許すまじという信念で動いていたのだからな。そころでボーダーで使用している遠征艇は近界民(ネイバー)由来ではなく、こちら側の世界の技術だということにしたのはどうしてだ?」

 

「無人機なら大きさやトリオンの使用量も上手く誤魔化せる範囲ですが、人間を乗せて近界(ネイバーフッド)まで行って戻って来るだけのものを造るには相当な技術とトリオンが必要になります。有人機での往還成功の段階ではまだ『トリオン兵=近界民(ネイバー)』ですから人間の乗る艇が存在するはずがないんです。だから民間の宇宙開発企業のノウハウを提供してもらって艇を造ったことにしたわけです。誰も近界(ネイバーフッド)がどのようなところなのか知らないんですから、宇宙に点在する惑星のような近界(ネイバーフッド)の国と三門市をその宇宙船で往復したことにすればいい。そうすれば艇のエネルギーとなる大量のトリオンのことも誤魔化せる。なにしろ近界(ネイバーフッド)へ行くための艇のエネルギーがトリオンである必要はないんです。武器(トリガー)を使うにはその人間のトリオン能力が重要で、トリオンを消費して戦うことは紛れもない事実で隠しておくことはできないですが、艇の方は宇宙船と同じ燃料を使っていることにしてしまえばいい。もしかしたら本当に使えるかもしれないですし。もし実際に宇宙船のように原子核の分裂で放出される膨大なエネルギーを用いる『原子力推進』が可能であればボーダーで使用するトリオンを節約することができるでしょうから、(マザー)トリガーの寿命も少しは延びるというものです。ボーダーは各方面にスポンサーがいて、宇宙開発関連の企業とも繋がりがあるということにすればOKですし、深く追求されたら企業秘密ということで誤魔化しちゃいましょう」

 

「なかなか良くできている。これなら大きな手直しをすることなく使えそうだ。近いうちに上層部での会議で審議することになるが、その時にはおまえにも出席してもらうことになる。それまでにメンバーに配布できる形にしておいてもらいたい」

 

「了解しました。ここまでできていて城戸司令のOKが出たのですから次の段階に進みます。あと近界民(ネイバー)の協力者の件については名案がありますので、こちらの方もどのようなタイミングで発表するのかを考えておきます。…お忙しいところをわざわざお時間を割いていただきありがとうございました。事情は理解していますが、過密なスケジュールはお身体にストレスを与えます。無理はしないでくださいね」

 

「ああ、わかっている。おまえに仕事を与えている私が言うのもなんだが…おまえも無理はするなよ。近界(ネイバーフッド)から帰還したばかりなのだ、トリオンの回復はまだできていないのだろ?」

 

「ええ。キオンの艇は性能が良くて高速航行が可能ですけどトリオンはそれなりに消費しますからね。供給源がリヌスさんとわたしのふたりだけですから大変でしたけど、彼は自分の方がトリオン能力は高いのだからと言って頑張ってくれたおかげでわたしは少しだけ楽をさせてもらいました。キオンの男性は女性に対して非常に紳士的ですから、わたしに負担をかけさせないようにと無理をしてくれたんです。今頃彼はトリオン回復のために寮の自室でぐっすり眠っているはずですよ。夕食には彼の好きなものをたくさん作ってあげようと思っています」

 

「そうか…。そのうちに私の方からも礼をしたいと思う。時間ができたら慰安の宴席を設けようと思うがどうだろうか?」

 

「そうですね…。できることなら上層部メンバーとの懇親会にしていただけると喜ぶと思います。あ…でもゼノン隊長たちよりも鬼怒田さんや唐沢部長たちの方が大喜びしそうですけど」

 

「フッ…そうかもしれないな。ではこの話はまたにしよう」

 

「では、これで失礼いたします」

 

城戸の貴重な時間を無駄にはできないと、ツグミは早々に退出した。

 

 

 

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